1-592-598

1-579-587つづき?

―UNRECORDED ORDER―
「…そう言えば、この部屋はまだドッキリさせてなかったわね…」
「そりゃそうですわ、だってこの地区は滅多な人物しか踏み込める場所じゃありませんもの。…って、ちょっと…ここは…!」
「そう、だからこそよ。今こそ、誰もが知らざるあの女性を丸裸に…!」
「ほ、本気ですの!?下手すれば、ボーダーとしての生命が…!」
「ここで逃げたらボーダーの名が廃るってもんよ…さぁ、行くわよ!」

システムオペレーターの部屋
「ドアにまでご丁寧に「入っちゃダメ(はぁと)」って書いてありますわね…。」
「ふふ、その猫被った面も今日までよ…!どいつもこいつもオペレーターオペレーターって、あたしはノー眼中ってワケ…!?」
「…嫉妬丸出しの女…」
「ふふふ、それでは失礼しまぁす…。」

「…なんか、普通の感じですわね。思ったよりは清楚と言うか。」
「確かに、どっちかと言うと質素な感じ…あ、ねぇ、あれってもしかして…」
「え?あっ、あのロゴ…!ま、間違いありませんわ、いつも持ってるあのボードです…! ま、まさかまじめさん…」
「…あたしはあれを白日の下に晒してやる。そしてそれをダシに今度はあたしがシステムオペレーターに成り上がるのよ…!」
「…貴女と言う人は…」
「よし、もうちょっとで手が届く、それぇっ…取ったぁ! どれどれ、中身は…」
「…ちょっとワクワクしますわね、普段から謎の多い存在だけに…」

「誰?」
「「っ!?!?」」
「あら、貴女達は…。こんな時間に、何かご用事でしょうか?」
「あ、あの、いえ、わ、私たちは…」
「わ、わたくしたちはサワードロケットでカチコミをかけているだけですわおほほほほほ!」

「…見ましたね?ボードの中身を。 …ならば、貴女たちを抹消しなければなりません。」

TO BE NEXT…

「ま、まじめさん!逃げますわよ、早く!」
「わ、わかってるわよっ!」
全速力で部屋から逃げ出そうとするあたし達。ドアまで後、ちょっと…と思った所で。
「っ!?」
あ、足をっ!って、でもあの場所からどうやって…!?
「ひっ!て、手が…!」
まるで、ゴムのように手が伸びていた。そしてドス黒い瘴気を放出した「それ」は、足音も無くこちらに近付いてくる。
「くぅっ、離せ、離して!」
「ホショクコウドウヲカイシシマス…」
がぱぁ、と頭が割れ、中から剣のような歯が現れる。まるで白銀のような牙が、あたしに食らい付かんと距離を詰めて来る。
やられる…!と、思ったその瞬間。
「まじめさんから離れなさい、バケモノ!」
あの子が放ったサワードロケットが「それ」の頭部に直撃する。流石にロケットの直撃には耐えられなかったようで、石ころのように吹っ飛ばされる「それ」。
「逃げましょう!捕まれば、間違いなく殺されます!」
「う、うん…!」
ボードをひっしと手に掴み、あたし達は駆け出した。それは、終わりなき追撃者との戦いの始まりでもあった。

「ぜいっ、ぜいっ…」
「…こ、ここまでくれば…!っはぁ、はぁっ…」
「しっ、しかし…なんだったんですの、あれは…」
「あ、あたしが知るわけ、はぁっ、ないでしょっ…!」
と、一息付いていた所に。

かんかんかんかん…

何か、軽い鉄を叩いたような音が響く。でもこれ、何かしら…?
「? 何でしょう、この音…。…ねぇ、まさかとは思いますけれど…仮の話ですわ、もし「あれ」がまだ私たちを追って来ているのだとしたら…」
「…ダクト!」

がしゃあん!と、「それ」は金網をぶち破って再び私たちの前に舞い降りた。色を失った眼を私達に向け、無情に呟く。
「貴女たちを抹消します。」

「はぁっ、本当に、はぁっ、しっつこいわねぇ!」
「し、しつこい女は嫌われますわよ!?」
「貴女たちを抹消します。貴女たちを抹消します。」

延々と繰り広げられるチェイスゲーム。もし、あたしが捕まったらその時点でゲームオーバーだ。
…でも待てよ、さっきからコイツが狙ってるのはあたし一人…としたら!
「ねぇ、お願いがあるの!」
「はぁっ、な、なんですの!?」
「多分、ここからならナルシーさんの部屋まで近いから!あの人に、事情を話して手助けして貰うのよ!」
「はぁ!?なんで、ここでナルシーさんが出て来るんですの!?」
「いいから、早く!多分あの人ならきっと何とかしてくれる!」
…そう、まずはこいつが何なのかを確かめなければならない。見た目こそシステムオペレーターだが、明らかに違う。
でも、博識なナルシーさんならそうなった原因や、どうすればいいかを多分知っているはずだ!
「で、ですが…貴女は…!」
「あたしなら大丈夫よ!こんなこともあろうかと、ほら!」
実は、小型化したのは何もサワードロケットだけじゃない。GAXガトリングガンや試験型ECMも一応作っておいて貰ったのだ。
「足止めくらいなら、多分いける!だから、お願い!」
「…わかりましたわ、貴女もお気をつけて!」

これで、味方はいなくなった。後は、このバケモノとあたしの一騎打ち。どちらかが食うか、食われるか。
「まぁ、毛頭食われるつもりはないけどねっ!」
まずはこいつだ、GAXガトリングガン。秒間1500発はダテじゃないわ!
GAXから発射された鉛玉が、吸い込まれるように「それ」へと食らいつく。よし、これならいける!

「…って、嘘でしょ…!?」
ふ、防がれた…!?何だってのよ、あいつの身体は!超剛性メタルで出来てるとでも言うの!?
「くぅっ…!こんのぉ、22世紀をナメんじゃないわよ!」
撃って撃って撃ちまくる。とにかく、近づけちゃいけない!このまま撃ち続けていれば…!
「…って、あれ?ちょっと、どうしたのよ!? あ、そうか!オーバーヒート!って、そんなところまで似せないでよ!」
弾の嵐が止んだ所で、再び「それ」が動き出す。…激ヤバっ!
「貴女を抹消します。」

―BOY'S SIGHT―
僕は、その時丁度買出しから戻った所だった。
「えへへ、今日も隊長の為に沢山作らなきゃ。」
今日のメニューはカツカレーだ。僕は胃が強い方じゃないのでそんなには食べられないけれど、隊長は逆に脂物を好んで食べる。
「まずは、豚肉を仕込んで…それから、カレーに取り掛かって…」
等と考えていると、ふいに視界に人が入ってくる。あれ、お嬢…さん?
見た所かなり慌てている様で、息も切らしている姿を見るとここまで走って来たらしいことが伺える。それも、全速力で。

「…これで、気にするなって言う方が無理だよね…?」
僕は部屋に荷物を置き、ナルシーさんの部屋へ直行する。これは何かあるに違いない。
扉に近付き、そっと耳をそばだてる。
「…です…さんが!い…」
「…した、わかりましたから…いて…」
いまいちよく聞こえない。もうちょっと身体を…と、重心をずらしたその時。
「うわっ!?」
「!?」
「おやおや」
無作為にドアが開き、部屋に倒れこんでしまう。
「あ、あのっ…す、すみません!悪気は…!」
とりあえず必死に謝る僕を尻目に、ナルシーさんがふと思い付いたように口を開いた。
「まずは、彼女を静めることが先決でしょう。ですが、そのためには協力者が必要です。…ふふふ、良い所に良い人物が来たものですねぇ。」
二人の視線が、一斉に僕を貫く。
「一肌脱いで頂きましょうか?」

何か、嫌な予感がして後ろを振り返った時、その「予感」が突如降りかかって来た。

―REINCARNATION―
しまった…!失策だった!
「ECMグレネードを投げ付けるまでは良かったんだけど…まさか、逃げ出すなんて…!」
役立たずのガトリングガンを盾になんとか凌いだものの、それだけでは足りない。
そこで登場したのが試験型ECMだ。元々ブラスト戦闘では防衛用に使われるこの武装、この局面で役立たずしていつ役に立つ!
と、投げたのはいいがどうも当たった所が弱点だったらしく、またダクトに逃げ帰られてしまう。
「ひ、ひとまず助かったってワケ…?」
…早合点な気がしなくもないが、とりあえずは役立たずのガトリングガンを再び背負って走り出す。
目指すは、ナルシーさんの部屋だ。彼なら、何か良い考えをくれるに違いない。

「ひぃっ…!」
その「予感」は、まるで悪夢をデコレートした怪物のようだ。余りにもグロテスクで、そして美麗だった。
「ど、どうして…!」
「アアアアオオオアアアァァオオァォォォォォォォオオオアア!!!」
「これは…参りましたね…。」
ま、参ってる場合じゃないよ!僕、もしかして…死ぬの…?
「ここまで来ると、最早通常の方法では鎮められません。…覚悟は、いいですね?」
「…あの子を助けるためならば、なんでも致しますわ!」
ぼ、僕だって、立派なお嫁さんになるんだ物、こんなところで死ぬのはゴメンだ!
それにまだ結婚指輪だって、プロポーズだってされてないんだもの!
「や、やってやるっ!」
三人の気持ちが一つになり、怪物へとぶつけられる。
「参りますわ!」
「行きますよぉ!」
「い、いくぞっ!」

―LAST GRAVE―
あたしが辿り着いた場所は、さながら地獄絵図だった。
向こうで倒れているのは、あたしが頼りにしていた…そう、ナルシーさん。
少年君も、触手に貫かれ既に息は無いみたいだ。手にはマーゲイが握られている。
そして、あそこに吊るされているのは…まさか…
「そ…そんな…」
あの金髪とイヤリング、それにカチューシャ…寧ろ、あの子じゃない訳が無い…。
「…全部、全部あたしが悪いの…!?ごめんなさい、みんな…ごめん…ごめんなさい…!」
いや、こんなことをしたって何もならない。だって、もう…
「…死んじゃったのよ…あたしの、せいで…」
そこに、すっと…「それ」が姿を現す。
「見ィツケタァ…」
「……。」
もう、いいんだ。もう無理なのよ、どうせ生きたって。あたしのせいで、ナルシーさんが、少年君が、そしてあの子が死んだ。
「…でも、どうして、どうしてなのよ…!あたしが、何をしたって…!」

ぐさっ。
お腹に触手が突き刺さる。
「うっ、ぐぅっ…!?」
痛い。いたい。イタイ。そのまま回したり、抜いたり、また刺したり。血が止まらない。
「あがぁ、っぐ…」
ぐちゃぐちゃと腸が掻き混ぜられる音が聞こえる。口から血が噴き出し、口の中が錆の味で一杯になる。
…しばらく刺された後、ぐちゅっと引き抜かれる触手。もう痛みも感じやしない。
って言うか、何も見えない。何も聞こえない。何も考えられない。

…結局、あたし…何もできなかった。想いを伝える事も、あいつらを見返すことも。でもそれすらもどうでもいい。

…ごめん、ごめんなさい…。

―LAST BRAVE―
気付いたら、あたしは自分の部屋で寝ていた。
「…っ!?」
お腹を捲り上げても、そこには何事も無かったかのように自分の臍が見える。
「…なんだ、夢かぁ…。」
ふとテーブルに目を向けると、ピンク色のメモ用紙が見える。あの子からかな?
どっこいしょ、とベッドから起き出し、メモに目をやると。
「確かに、返していただきました。 もう二度とこんなことはしないでくださいね。」

全身の血がサッと引くのを感じた。
「夢じゃ、なかった…。」

あの後、ナルシーさんや少年君、あの子に話を聞いても、全く見に覚えが無いらしい。
しかも、その時間ナルシーさんはテレビを見ていたし、少年君は昼食の支度、あの子はショッピングモールで買い物をしていたそうだ。目撃者までいる。
「…でも、じゃあ、何で…?」
…どれだけ考えても答えが出ない。と、そこへいつぞやのディープな少年君が入ってきた。
「失礼します。あの、昼食にカレーを作ったんですけど、ちょっと多く作りすぎてしまって…。一緒に、食べませんか?」
「…うーん、そうね。丁度お腹ペコペコだし、ご一緒させて貰うわね?」
「はい、どうぞ!実は、ナルシーさんにお嬢さんも誘ってあるんです。実は、隊長が帰って来なくて、とても僕一人じゃ食べきれないって困ってたんですよ。」

…まぁ、いっか。こうして生きてるんだし。あれは悪い夢よ、そうよ!人生前向きに行かなきゃ!
「よっし、食べるぞーっ!」
「はい!たくさん食べてください!」
これでいい、これでいいんだ!


「…申し訳ありません、ファイルは既に取り戻してあります。肉体破損箇所はニュードの再生技術で既に…。
…すみません、一旦通信を終了させて頂きます。どうやらまた、イレギュラーが現れたようで。…はい、すぐに。了解しました。」


見ましたね?


+ タグ編集
  • タグ:
  • まじめ
  • お嬢
  • ナルシー
  • 少年
  • オペ子

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2009年12月13日 17:51
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。