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スタニスワフ・レム『星からの帰還』ハヤカワ文庫SF

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匿名ユーザー

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August 07, 2005

スタニスワフ・レム『星からの帰還』ハヤカワ文庫SF

久々にレム。61年の長編。
読了。微妙。
地球時間で127年(ウラシマ効果による。主観時間ははるかに短い)かけた宇宙探査で地球外生命と出会うことなく多くの仲間を失って地球に帰還した男たちが、変わり果てた地球社会になじめず苦悩するという話。未来社会の人間たちは、ベトリゼーション措置といって、人間及びそれに似た生物を殺すという指令を自らになしえないようにする措置を施され、攻撃性を喪失しているという設定。その結果として、宇宙探査などは無意味なものと考えられるようになっている。テーマ設定は一見、バーナード・ウルフの『リンボー』と似ているが、本書のメインテーマはユートピアの考察よりもむしろ、そのような「人間性が抜き取られた」未来社会と対比されることで浮き彫りになる、現代社会や宇宙探査に象徴される人間性の本質、悲劇性の描出にある点が異なっている。
未来社会の描写は陳腐で滑稽である。攻撃性を抜き取られたという設定の割に、未来社会の人々が普通にあざ笑ったり怒ったりするなど、あまり現代人との違いが感じられないのもいかにも甘く、素朴な感じがする。ストーリー的にも、出てくる女が美女や魅力的な女ばかりで、かつ、全員が主人公と関係するなど、展開がご都合主義過ぎるし、筋立ても脈絡がなく、物語としての出来は悪い。
だが、そういう欠点にもかかわらず、圧倒的に不可解な巨大な宇宙に挑戦せずにいられない、そういう性質を取り去ることへ抵抗せずにいられない人間の性向の悲劇性の考究に迫力があることは否定できない。主人公が妻に語る、単独で惑星探査に降下して自らを死んだと思い込んだ男を助けられなかったエピソードなど、探査中のエピソードは見違えるような迫力がある。巨大で不可解な宇宙と無力で翻弄されながらもそれに立ち向かう人間という構図は『ソラリスの陽のもとに』などとも通ずるレム節といえる。
エンディングでは再び宇宙を目指す同僚たちを尻目に主人公は妻とこの世界に同化して生きることを決意する。シリアスぶっているが、「要するに女かよ」というのが笑える。このラストに象徴されるように、本書全体を通じて、(インテリぶっているイメージのある)レムの女好き振りが際立っているのがけっこう可笑しかった。
テーマ性  ★★★★
奇想性   ★
物語性   ★★
一般性   ★★
平均    2.25
文体    ★★★
意外な結末 ★
感情移入力 ★★
主観評価  ★★(20/50)
silvering at 16:35 │Comments(0)読書
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