SF百科図鑑
Nancy Kress "Beggars In Spain"
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匿名ユーザー
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September 20, 2005
Nancy Kress "Beggars In Spain"
無眠人シリーズ第1巻 第1の書を構成する中編がヒューゴー賞、ネビュラ賞を受賞。受賞部分のみをだいぶ前に読んでいたが、今般残りの部分を読んだ。
細かい内容をきれいさっぱり忘れており、受精卵の段階で遺伝子操作により睡眠せずに生活できるようになった<無眠人>が並外れた知能と活動力と長寿性を発揮するという基本設定ぐらいしか覚えていなかったから、最初は話を思い出すのに苦労したものの、作者の類まれなるストーリーテリングと人物描写の妙であっという間に引き込まれ、完読。
面白かった。名作だ。
<第1の書>では、無眠人第一世代のレイシャ・カムデン(本書全体の主人公)らが誕生し、能力を発揮し、迫害を受け、逃れるまでのストーリーを描いているが、むしろ、本書の本領は、そのようにして誕生した<無眠人>がアメリカ社会にどのような形で受け入れられ、<有眠人>との関係を築き、どのように行動していくかをリアリティ十分にエクストラポレートした、<第2の書>以降にこそある。
<第2の書>では、弁護士となったレイシャが、無眠人を統べる<サンクチュアリ>を指導し、有眠人に対する優位を決定付けるべきだと主張するジェニファーと対立する。無尽蔵なYエネルギーを用いたスクーターなどを製造する有眠人企業の研究者が、<成人した有眠人が無眠人になる特許技術を無眠人に盗まれた>と主張し、レイシャに相談する。その犯人がジェニファーであることをその夫でレイシャと不倫関係にある男がレイシャに密告したことから、レイシャは有眠人企業側に立ち、特許盗用でジェニファーを提訴させる。折りしも、有眠人を無眠人にする技術を開発者の一人がスクーター事故で殺害される。その痕跡から犯人が無眠人である疑いが強まり、ジェニファーは殺人容疑でも起訴。息詰まる法廷闘争が始まる。しかし、最終的に、無眠技術発明者の一人であるスーザン・メリングが<成人した有眠人が無眠人になる特許技術は虚偽であり、存在し得ない>ことを立証。レイシャは、すべてが有眠人企業によるサンクチュアリの評判を落とすための策略であったことを見破る。殺人も、このことを暴露しようとした研究者を有眠人企業自らが口封じのために消したものであろう。結局、証拠不十分のままジェニファーは無罪となり、サンクチュアリのメンバーは、地球を周回する宇宙ステーションに移住する。
<第3の書>では、レイシャら地球上に残された協調派の無眠人のストーリーと、ジェニファーら宇宙ステーション上の孤立派無眠人のストーリーが交互に進行する。レイシャらは、地球上で、能力向上を目指す有眠人を支援するボランティア施設を建設し、慈善活動を行っていた。この施設に、ドリューという知恵遅れ気味の少年がやってくる。かれは、<サンクチュアリの宇宙ステーションを所有したい>という野望を語る。だが、訓練にもかかわらず能力は向上せず、情緒不安定で、学校で次々と問題を起こし放校処分になる。業を煮やした先輩の男がかれに遺伝子操作ウイルスを用いて脳の機能を向上させる手術をレイシャに無断で受けさせてしまう。これによってかれはホログラム美術を用いて<無眠人に明瞭な夢を見させる術>を獲得する。レイシャは、ドリューのホログラムで生まれて初めて<夢を見>、<有眠人にあって無眠人に欠けているもの>が何であるかを知り衝撃を受けるが、自分の年齢ではもはやその衝撃に耐えられないと、ドリューを拒否する。ドリューは、レイシャに求愛をするが、レイシャは年齢の差を理由に拒絶。ドリューは施設を去る。
他方、ステーション上では、ジェニファー率いる委員会が、民主的に見せかけた独裁体制を徐々に固めていく。彼女は、遺伝子改変によって知能の向上した新たなタイプの子供を作っていた。また、極秘裏に、遺伝子操作によってウイルス兵器を製造し、新たに購入した中古人工衛星内で実験を行っていた。彼女は、有眠人であるという以外健康な赤ん坊の処分を命じるなど、差別的な独裁色を強め、次第に無眠人内に反発が広まりつつあった。新たに開発された赤ん坊たちは、脳細胞の活動スピードが通常の無眠人の何倍にも達するため、様々な概念をストリング状に結合する能力に長けてはいたが、あまりに思考速度が速い上に言語的に整理されていないために、例外なく<どもり>であった。ミリもそんな子供の一人だった。ミリは成長し、委員会に抜擢されるが、事故で脳に障害を負った無眠人の処分に反対したため、更迭される。
<第4の書>は、サンクチュアリが米国に独立宣言をし、敗北するまでを描く。米国政府が、サンクチュアリに重税を課する法案を通し、サンクチュアリは、米国に独立宣言。しかし、サンクチュアリ内では、ミリら<スーパー種族>がジェニファー率いる委員会への反発を強め、ジェニファーらの陰謀を察知し、妨害工作を完了していた。ミリの弟が事故で脳に打撃をこうむり、逆に超越的な能力を発揮するようになったことを恐れたジェニファーらがその処刑を実行したことで、ミリのジェニファーへの反発は決定的になっていた。米国は、サンクチュアリの宣言を拒否し、話し合いの施設を送ると伝えるが、ジェニファーは、強行するなら細菌兵器をばら撒くと脅迫し、実験の様子を放送する。一方、ドリューのホログラムの放送を傍受し<夢見ることの力>を知ったミリらは、ジェニファーら委員会に抗議し、すべてのシステムを乗っ取ったことを告げ、クーデターに成功、武力行使を阻止する。ミリは、レイシャに連絡を取り、委員会のメンバーが逮捕された後の自分たちの保護を依頼する。
サンクチュアリのメンバーは全員地上に降ろされ、委員会メンバーは裁判にかけられ、ミリら<スーパー種族>はレイシャの施設に保護された。レイシャはジェニファーの弁護人を買って出た。ジェニハーは道を誤ったとはいえ、迫害されていた無眠人と有眠人の調和という夢をはじめは持っていたことに変わりはないからだ。やらなければならないことはたくさんある。
&&以上が大まかなあらすじ。
とにかく、無眠人というアイデアを表面的に扱うにとどまらず、その仮定条件からどのような社会経済的変化が導かれるかをリアルに予測し描写しているのが凄い。人物描写も巧みであるし、ストーリーも面白い。ミステリ、政治スリラーといったエンターテインメントの基本要素を投入し、飽きさせない筆力を持っている。続編2冊もいつになるかはわからないが読んでみたいと思っている。
テーマ性 ★★★★★
奇想性 ★★★
物語性 ★★★★★
一般性 ★★★★
平均 4.25
文体 ★★★
意外な結末 ★★★
感情移入力 ★★★★★
主観評価 ★★★1/2(38/50)
面白かった。名作だ。
<第1の書>では、無眠人第一世代のレイシャ・カムデン(本書全体の主人公)らが誕生し、能力を発揮し、迫害を受け、逃れるまでのストーリーを描いているが、むしろ、本書の本領は、そのようにして誕生した<無眠人>がアメリカ社会にどのような形で受け入れられ、<有眠人>との関係を築き、どのように行動していくかをリアリティ十分にエクストラポレートした、<第2の書>以降にこそある。
<第2の書>では、弁護士となったレイシャが、無眠人を統べる<サンクチュアリ>を指導し、有眠人に対する優位を決定付けるべきだと主張するジェニファーと対立する。無尽蔵なYエネルギーを用いたスクーターなどを製造する有眠人企業の研究者が、<成人した有眠人が無眠人になる特許技術を無眠人に盗まれた>と主張し、レイシャに相談する。その犯人がジェニファーであることをその夫でレイシャと不倫関係にある男がレイシャに密告したことから、レイシャは有眠人企業側に立ち、特許盗用でジェニファーを提訴させる。折りしも、有眠人を無眠人にする技術を開発者の一人がスクーター事故で殺害される。その痕跡から犯人が無眠人である疑いが強まり、ジェニファーは殺人容疑でも起訴。息詰まる法廷闘争が始まる。しかし、最終的に、無眠技術発明者の一人であるスーザン・メリングが<成人した有眠人が無眠人になる特許技術は虚偽であり、存在し得ない>ことを立証。レイシャは、すべてが有眠人企業によるサンクチュアリの評判を落とすための策略であったことを見破る。殺人も、このことを暴露しようとした研究者を有眠人企業自らが口封じのために消したものであろう。結局、証拠不十分のままジェニファーは無罪となり、サンクチュアリのメンバーは、地球を周回する宇宙ステーションに移住する。
<第3の書>では、レイシャら地球上に残された協調派の無眠人のストーリーと、ジェニファーら宇宙ステーション上の孤立派無眠人のストーリーが交互に進行する。レイシャらは、地球上で、能力向上を目指す有眠人を支援するボランティア施設を建設し、慈善活動を行っていた。この施設に、ドリューという知恵遅れ気味の少年がやってくる。かれは、<サンクチュアリの宇宙ステーションを所有したい>という野望を語る。だが、訓練にもかかわらず能力は向上せず、情緒不安定で、学校で次々と問題を起こし放校処分になる。業を煮やした先輩の男がかれに遺伝子操作ウイルスを用いて脳の機能を向上させる手術をレイシャに無断で受けさせてしまう。これによってかれはホログラム美術を用いて<無眠人に明瞭な夢を見させる術>を獲得する。レイシャは、ドリューのホログラムで生まれて初めて<夢を見>、<有眠人にあって無眠人に欠けているもの>が何であるかを知り衝撃を受けるが、自分の年齢ではもはやその衝撃に耐えられないと、ドリューを拒否する。ドリューは、レイシャに求愛をするが、レイシャは年齢の差を理由に拒絶。ドリューは施設を去る。
他方、ステーション上では、ジェニファー率いる委員会が、民主的に見せかけた独裁体制を徐々に固めていく。彼女は、遺伝子改変によって知能の向上した新たなタイプの子供を作っていた。また、極秘裏に、遺伝子操作によってウイルス兵器を製造し、新たに購入した中古人工衛星内で実験を行っていた。彼女は、有眠人であるという以外健康な赤ん坊の処分を命じるなど、差別的な独裁色を強め、次第に無眠人内に反発が広まりつつあった。新たに開発された赤ん坊たちは、脳細胞の活動スピードが通常の無眠人の何倍にも達するため、様々な概念をストリング状に結合する能力に長けてはいたが、あまりに思考速度が速い上に言語的に整理されていないために、例外なく<どもり>であった。ミリもそんな子供の一人だった。ミリは成長し、委員会に抜擢されるが、事故で脳に障害を負った無眠人の処分に反対したため、更迭される。
<第4の書>は、サンクチュアリが米国に独立宣言をし、敗北するまでを描く。米国政府が、サンクチュアリに重税を課する法案を通し、サンクチュアリは、米国に独立宣言。しかし、サンクチュアリ内では、ミリら<スーパー種族>がジェニファー率いる委員会への反発を強め、ジェニファーらの陰謀を察知し、妨害工作を完了していた。ミリの弟が事故で脳に打撃をこうむり、逆に超越的な能力を発揮するようになったことを恐れたジェニファーらがその処刑を実行したことで、ミリのジェニファーへの反発は決定的になっていた。米国は、サンクチュアリの宣言を拒否し、話し合いの施設を送ると伝えるが、ジェニファーは、強行するなら細菌兵器をばら撒くと脅迫し、実験の様子を放送する。一方、ドリューのホログラムの放送を傍受し<夢見ることの力>を知ったミリらは、ジェニファーら委員会に抗議し、すべてのシステムを乗っ取ったことを告げ、クーデターに成功、武力行使を阻止する。ミリは、レイシャに連絡を取り、委員会のメンバーが逮捕された後の自分たちの保護を依頼する。
サンクチュアリのメンバーは全員地上に降ろされ、委員会メンバーは裁判にかけられ、ミリら<スーパー種族>はレイシャの施設に保護された。レイシャはジェニファーの弁護人を買って出た。ジェニハーは道を誤ったとはいえ、迫害されていた無眠人と有眠人の調和という夢をはじめは持っていたことに変わりはないからだ。やらなければならないことはたくさんある。
&&以上が大まかなあらすじ。
とにかく、無眠人というアイデアを表面的に扱うにとどまらず、その仮定条件からどのような社会経済的変化が導かれるかをリアルに予測し描写しているのが凄い。人物描写も巧みであるし、ストーリーも面白い。ミステリ、政治スリラーといったエンターテインメントの基本要素を投入し、飽きさせない筆力を持っている。続編2冊もいつになるかはわからないが読んでみたいと思っている。
テーマ性 ★★★★★
奇想性 ★★★
物語性 ★★★★★
一般性 ★★★★
平均 4.25
文体 ★★★
意外な結末 ★★★
感情移入力 ★★★★★
主観評価 ★★★1/2(38/50)
silvering at 01:27 │Comments(0)│読書