SF百科図鑑
リサ・タトル「骨笛」
最終更新:
匿名ユーザー
2001年
12/9
今後の予定
<12/9~15>
盲目の幾何学者(ロビンスン)
去年の夏火星の丘で(ハンド)
ダヴィンチ復活(ダン)
燃える海のライフボート(ロジャース)
誕生日(フリーズナー)
置き去りにされて(オルシオン)
骨読み(フィンチ)
消えた娘たち(ヨーレン)
水をまく13の方法(ロジャース)
火星に子供はお呼びじゃない(タージロ)
ビジネスの代価(ホワット)
<12/16~>
真理の都市(モロウ)
吸血鬼つづれ織り(チャーナス)
自由軌道/鏡の中の踊り(ビジョルド)
時だけが敵
ゲド戦記
寓話シリーズ
ハリーポッターシリーズ
ダイヤモンドエイジ
ブルーマーズ
<未入手>
新しい太陽の書
ダーウィンの使者
常識はずれ(クレメント)
大理石のアーチに吹く風(ウィリス)
女神たち(リンダ・ナガタ)
お父さんの世界(ウォルター・ジョン・ウィリアムス)
究極の地球(ウィリアムスン)
ミレニアムベビー(ラッシュ)
以下順次訳す。または読んでレビューする(粗筋付き)。
「骨笛」リサ・タトル★★★★
なかなかよかったっす。ちょっとファンタジーがかっているが未来の宇宙を舞台にしている。
人類が宇宙植民をして幾星霜が過ぎ、植民した世界では別種の文明が成立している。主人公は女性で色んな世界を渡り歩く仕事だが、ある日地球のバーで作曲家の美青年と知り合う。二人は異種の文明が成立する星を訪ねるが、都市の様子が地球と変わり映えしないのに失望しつつ、ある村を訪れたとき、一人の男が吹く骨笛の音に感動する。男は亡き妻の骨で笛を作り吹いているという。村人の娘もこの笛に魅せられ、次に彼が現れる場所を教えてほしいという。作曲家の男はこの地にとどまりたいというが主人公は仕事でこの地を離れる必要があり結局男を放って2週間ほどしてから戻ってみると、男はいない。あるパーティの席上、男が村人の娘と一緒にいるところを見かける。男は娘と愛しあっており一生沿い遂げたいという。主人公は男を諦め地球に戻る。10年後、この星の音楽家が地球に来てコンサートを開く。主人公がいってみるとあの娘、楽器は骨笛。見事な演奏だ。会場で主人公はあの男を見かける。男の性格から別れたに違いないと思っていたが、まだつきあっているのか? 話してみると、一度別れたが思い直して追ってきた、しかし受け入れてもらえないという。娘は聴衆に、この笛はつきあっていた男の骨で作ったという。聴衆は、その男ならここにいるといって男を指し、娘を男の方に追いやる。男は娘に駆け寄る。娘は嘘をいっているのか? しかし、男の体は娘の体を通り過ぎ、いったん非実体化したあと再び実体化する。娘にとっては男は存在しないのだ。
という粗筋の奇妙な味の話。娘にとって男が物理的にも存在しないことになるという事実で、何をいいたいのかは今一つ不鮮明だが、主人公の恋愛とからめており不思議な幻想味が本作の売りでしょう。男が本当に殺されて骨笛にされていればホラーとしても成功したと思うが、本作はホラーよりファンタジーの結末を採用しておりひねっているところがネビュラ賞の理由か。タトルは「肉体の記憶」(人工の肉体に脳を移植された女性が肉体、五官の記憶に焦がれるという話。但しこの真相は後半まで伏せられているのがうまい。インターゾーン第3集に収録)なども読んでいるが、いかにも女性的な視点で、女性を主人公に据えて作品を書く点に特徴がある。アイデアは良いが突っ込みが甘く、雰囲気づくりの方に力を注ぐ傾向がある。本作も例外でなく、タトルの作風を如実に表した逸品だ。