『異郷 ~幻覚72柱を作ろう~』

交換したお題で神様を作る 目指せ72柱コンプリート
+ 第 1回「神様その一」 (「司るもの」×「色」)
+ イリャシス        「指先」×「白黒」
イリャシス   「指先」×「白黒」【だいたか】
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指先を司る神。
権能は意識・関心・興味。

指先は通常内側に閉じて掌を向く。
指先が何かに触れる時。それは心を差し向け、関りを持ちたいと感じた時である。
好奇心を始め、人間が何かに関心を持ち行動することについて、イリャシスの力が働いていると考えられている。

善の面として、積極的な行動を促し、文化・文明の発展を助けてきた。
一方で衝動的な欲求の暴走をも引き起こす。


主な信仰者は子の成長を願う母であり、子育ての神としての扱われる。。
教会に置かれた石像は、そのほとんどが掌を下にして前に腕を伸ばした女性の姿をしている。


実体に由来を持つ神だが、信仰が生まれたのはその姿を消しておよそ1000年の時が経った後。
その姿は人間に近い形の泥と肉の塊であり、大きさも人間と遜色はない。
人間の文明には近づかず、沼と森を徘徊する習性をもつ。
知的生命体(主に人間)に興味があり、近づくと肉の部分から触手を多数伸ばし、コミュニケーションを図る。
多くの人間はその姿を見て逃走するか倒そうとしたが、ある生態学者が興味を持ち、隠れて交流を持っていた。

その知能と好奇心の強さについて残された記録が、後に神格として昇華された。

その生き物の行方は記されていない。
信仰の対象となったことから正体は秘匿されており、知るものは少ない。
+ ホオズキ         「悪意」×「緑黒」
ホオズキ   「悪意」×「緑黒」【たじ】
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  • 精霊より神に格上げされたもの。鬼灯、転じて堕胎、女性の守護、水子、男性の悪意を司る。
  • もともとはただのある花の精霊であったが、司る花が堕胎の効果があることが知れることで信仰されるようになり、神に格上げされた。
  • 浮世絵で花魁の姿で描かれたことによって姿を得、美しく気品があり、どこか不気味な姿として現れるようになる。
  • 子を為すことで客を取れなくなることを嫌う妓女にとっては彼女はまさに守り神であり、そういった信仰を集める。
  • 時代が下ると、彼女はふくよかな母性のある女性として描かれ、水子をあやす神として描かれる。子供を流してしまった若い夫婦が彼女に祈ることで水子の冥福を祈るようになった。
  • さらに時代が進むと、彼女は男たちに信仰されるようになる。身ごもった女からそれを流すために。あるいは、もはや女を殺すためだけに。
  • 時代によってそんな変化を遂げる彼女の神聖を、後世の学者が同情的に、悲哀を背負った女神であると描いた。
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  • そんな変遷を遂げた彼女だが、他の神は同情すら向けていない。何故なら彼女はどの姿でも薄ら笑いを浮かべているのだから。
  • もともと赤子を殺すためだけの権能。そんなものに悲哀などあるはずもなく、あるのは悪意そのものなのだろう。
+ 双つ神          「双子」×「青白」
双つ神   「双子」×「青白」【ほうじ茶】
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二対一組の守護神。対なるもの、二つで一つのものである事象概念事物を問わずあらゆる「ニコイチ」となるものに宿るとされ、便宜上『双子の神』と呼ばれている。対になることで完成されたその「対」同士が決して離れ離れにならないようにその間隔を守護するために存在する。転じて兄弟家族友人や恋人といった固い絆を保ち続けたい関係性の人や兵士などが信仰することが多い。また建築や製造の場では城塞や建物の要所に祀られたり、継ぎ目などの繊細な作業が求められるときに職人たちは祈りの言葉を囁く。絆、命綱、堅固、堅牢、要衝、完全、完璧、美、二分の一、均等、天秤、鎖などを司る。神話でも不可視の存在として語られ、姿や偶像で表現されることはない。「見えないけれど確かに存在する何か」そういった性格が尊ばれている。
+ アイシャルタイア     「ギャンブル」×「緑白」
アイシャルタイア   「ギャンブル」×「緑白」【きぬ】
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ギャンブル、契約、遵守、公平性を司る。印章は金の天秤。
人は生まれながらにして幸と不幸の徳を持ち合わせており、然るべき時、然るべき徳により導かれている。
……という教えの神様。
その性質上庶民の間では、
「昨日負けたから今日は勝てる」、「ここ暫く勝ち続けているからそろそろ負けるだろう」
などと、もっぱら賭け事において持ち上げられがちな神様である。
教会では、より契約を遵守することに重きをおいた教えを説く。
全ては円環のごとく回るものであり、絶対的な幸不幸の徳に差は無いのであるから、どのような結果であれ約束は守ること。そしてその結果に対し公平であること。
度々輪廻の神と同一視されがちではあるものの、そのようなことを言うと信徒は怒る。
ちなみに名前を口にする人間の半数以上がギャンブル中願掛けとして出すだけなので、実際の信者数はそこまで多くない。

今日アイシャルタイアと呼ばれる神がもともとは二柱の兄弟神であったことは、余り知られていない。
『幸運の神、アイシャ』と『公平の神、テイエル』。
二人は仲が悪かった。
アイシャは弟の司る性質ゆえの生真面目さが。
テイエルは兄の与えられるべきものを全て手に入れる傲慢さが。
互いに与えられた領分の反りが合わず、幼い頃から喧嘩ばかりしていた。
ある時、二人は勝負をする。何度目になるかも分からない喧嘩の末、いい加減白黒はっきりさせようということになった。
アイシャが勝てばテイエルは神の都を出て野に溢れた他の神と共に生きる。
テイエルが勝てばアイシャは人として地上へ堕ちる。
しかし結局、決着はつかなかった。
二人は困ってしまう。勝負がつかなかった時のことは考えていなかった。
兄弟は主神たる父に相談した。すると父は言った。
「決着がつかなかったのであればそれが答えだ。お前たちはその神性尽きる時まで共にいろ」
そのような主神の判決も有り。アイシャとテイエルは今も神の都にて、ずーっとそばにいながら喧嘩を続けている。
適当な眼下の人間を見繕っては、その幸と不幸が一方的にならないよう、お互いの徳を押し付けあっているのだという。
+ オムジク         「故郷」×「赤青」
オムジク   「故郷」×「赤青」【ずむ】
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誰にとっても新天地にはなりえなくなった、人の痕跡。
焼けた家が雨に濡れるとき、村が海に沈むとき、町が噴火に飲まれるときに、わずかに顔を覗かせる。
郷愁で流れた涙に映る神。

姿を奪われた神、オムジク

元々人間で泥棒だった男オムジクは、町から町へ逃げて回る義賊だったが、気のいい好漢で皆に愛され、時に詩人も彼のことを唄うほどだった。
しかし、ある日忍び込んだ屋敷で盗んだ金品の中に、薬箱が紛れていることに気づかなかった。
その屋敷には病に伏せる子供がおり、その薬が盗まれてしまったことで命を落とし、その子の母はオムジクを呪った。
その呪いを聞き届けた神は、オムジクに罰を与えるべく兵士に化けて彼を追った。
オムジクはことの顛末を知ることなく逃げ続け、神の目をも欺きながらにぎやかに暮らしていた。
ついに神は激怒し、オムジクの向かおうとした町々を深い霧で隠すようになり、彼はどこにもたどり着けなくなった。
何も得ることができなくなったオムジクは、踵を返し故郷へ戻ることに決めた。
そして故郷にたどり着こうかというとき、ようやく神は罰を下す機会を得て、彼の故郷を目のまえで焼いてしまった。
燃え盛る村を前に膝をつき項垂れる彼は火の風に呑まれ、塵とも霧ともつかない姿になってしまった。
死後、自分のしたことを知ったオムジクは、せめて薬を盗んでしまった母と子にあやまりたいと願った。
神は聞き届けたが、怒りはまだおさまらず、たどり着けるものなら行くがよいと、塵の姿のまま放逐された。

絵に描かれるときは、水面に映る影や、木葉の舞う風の中などに、鑑賞者を見つめる瞳の形で表現される。

homesickの語源
+ 第 2回「神様その二」 (「司るもの」×「色」)
+ スールィヤスタ      「夕方に死んだ魂」×「赤」
スールィヤスタ 「夕方に死んだ魂」×「赤」【ずむ】
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死んだ魂は、天に昇ろうと光を目指す。
昼間や明け方に死んだ者は、太陽を目指せば天に昇れる。
夜中に死んだ者は、月を目指しているうちに夜を一周して、また太陽を見つけることができる。
しかし夕方に死んだ者は、太陽を目指して目がくらみ、そして見失い夜を彷徨うことになる。

そんなものを導くため、夕に失われた者の神スールィヤスタは、常に灯を携えている。
彼女は広大な裾のドレスを着た麗人の姿をしており、その裾を翻すと瞬く間に消えることができる。
時に地平線や水平線がより眩しく輝いて見えるのは、彼女を目指す魂たちが連なり光を拡散させているからである。

日の出ている間は慈悲深い彼女は、裾をめいっぱい伸ばし眩く輝くドレスと灯で彷徨えるものを一同に集めて導くが、同時に非常に飽き性なため、夜になった瞬間にドレスを翻し、裾の先の魂をはじき飛ばす。星が瞬くのはそのため。

彼女のアトリビュートは手持ちのランタン。ドレスに身を包んだ婦人がランタンを持っている場合が多い。
変わった絵画としては、松明を振り回し人を困らせる若い娘の絵に彼女の名前が冠されているものがある。

多くの神に求婚され、どれも期待に応じて婚約するが、直ぐに破棄して別の婚約を取り付けている。
結果的にどの神とも結ばれることなく、彼女の恋の逸話を集めていくと処女である説が有力となる。
多くの恋をしたいが貞操を守りたい乙女の神でもある。
+ クロカタ         「遊戯」×「青白」
クロカタ 「遊戯」×「青白」【たじー】
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「クロカタが出てきたらもうその日は諦めて家に帰れって意味さ」
「麻雀打ってると、どうしようもないほどの運の違いみたいなもんがあることあるだろ? ずっとその状態でいると、クロカタが現れる。クロカタは勝ってる相手は狙うんだ。まるでそいつのため込んだ運を食うみたいに」
「で、運を食い終わるとすっと消える。クロカタを見ちまった奴以外はずっとそこには別の奴が座っていたって話すのさ。別に全然時間は進んでないし、別に大して負けてない。だから勝負を続けようとすると、その後は勝ち分が全部吹っ飛ぶくらい大負けするのさ」
「クロカタが何かって? いやぁ……そりゃ、なんつーか。負けを教えてくれる奴というか、運を平にしちまう疫病神っていうか……。まぁ、なんだな、多分、麻雀の神ってやつなんじゃないかね」
+ クン・プー        「香辛料」×「緑白赤」
クン・プー 「香辛料」×「緑白赤」【きぬ】
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渡りの神、クン・プーは薫る芳香と探求、海から海を渡る者のために祈られる。
開拓の時代、食材と調味料の発見は特に歓迎された。
人々は海を出て島に至り、その地に様々な恵みを得た。
長い時をかけ、人々は多くの海を渡り、多くを得て、多くを故郷へ持ち帰った。
開拓者が帰ると、人々はクン・プーの名のもとに盛大に祝う。
神と島々がもたらした素晴らしき恵みに感謝し、また来たる航海の無事を願うために。
現代、クン・プーの名は忘れられて久しい。
平穏の時代がもたらした停滞は、人々から開拓と探訪の心を失わせた。
しかしいつの時代にも、世界の外を求め旅する者は少なからずいる。
人々は彼らを無謀者と、愚か者と呼ぶ。その声は彼らの旅路を惑わす隘路となる。
そんな時、故郷の人々は祈るだろう。
どうか、開拓者たちが、そのような隘路に導かれぬよう。
正しき香りが、彼らを旅の成功へ導くよう。
+ ヤソココノエウケノカミ  「お粥」×「青白緑」
ヤソココノエウケノカミ(八十九重宇気神)「お粥」×「青白緑」【ほうじ茶】
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お米には7柱の神様が宿るとも88の神が宿るとも言われている。米作りには88の工程があり、それだけの手間がかかるものとして、古来尊いものとして扱われてきた。
そして「粥」である。お粥はすなわちお米を用いた料理であり、調理というプラス1の工程が加わっている。ヤソココノエの名はその89個目の工程から由来されている。その工程が調理であることから、調理の神、料理人の神としても扱われ、台所や飲食店などに由来の物品が祀られることが多い。
不浄不衛生を嫌い、食品衛生の神や食中毒予防の神として扱われることもある。また米作りという計画と伝統に基づく性格から無計画さやいい加減な仕事を嫌う繊細な一面もある。
トヨウケビメノカミ、オオゲツヒメノカミと並ぶ食物を司る神である(架空)
+ エイとソイヤ       「線と点」×「赤黒白」
エイとソイヤ 「線と点」×「青黒白」【べっきー】
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双子神 姉:エイ 妹:ソイヤ

彼女たちはとても気分屋な神様だ。
エイが点を勢いよくつけて、ソイヤがその上に線を引く。
そうして出来たのがこの世界の基礎だった。
そのうえに緑や水(人間までも?)を加えていったのは他の神様だからまた次回。
彼女たちはとても気分屋だったため、点は大きかったり小さかったり。線は真っ直ぐだったり飛び出したり曲がったり。
地中には断層があって、それがずれたり擦れたりすると地震が起きてしまう。
その原因は彼女たちが思い思いに点や線を引っ張ってしまったからだ。
ーーでも、気分屋だからこそこんなにも大きな世界を作ってくれたんだろう。
そこには感謝をしなくちゃならない。
最近の若者は世界は丸くできている。
つまり点と線しか書かないエイとソイヤが作ったわけじゃない、なんていうがそれは違う。
丸とは無限に拡大していくと線になる。
そしてそれらをもっともっと拡大すると連続した点になる。
彼女達の姿はあまりに大きくて、線を引いたつもりでも、小さな私たちからすれば、丸く見えているだけってことなんだ。
もしかしたら私たちの世界は点の中で作られたのかもしれない。
ほら……地図を見てごらんなさい。
この端、何かが伸びているだろう?
この先には誰も進めなかった……。真っ黒で先も見えない。
だけど確かに続いている。
まぁ多分ソイヤが勢いよく線を書きすぎて、エイが面白がって終わりの点をかかなかったんだろう。
もしかしたらあの先に、違う世界もあるかもしれないね。
まぁ、そんな自由で気分屋な我らが愛する神様なんだけど困った所もあってね。
一昨日起きたこと覚えているかい?
……そう、とある諸島が消えたって話。
エイとソイヤはただ点と線を書くだけじゃない。
気分で点と線を消してしまうことがある。
だからこそ、自分達がこうして地面の上に立っていられることを感謝しながら日々を過ごすんだよ。
多分あの綺麗な砂浜があった島の話も漁ってくらいには私たちの頭の中からすっぽり消えてしまうだろう。
何故かって……?
だって世界の基礎が消えてしまうんだ。
人の頭からだって抜け落ちてしまうに決まってるだろう?
+ 大火々野延刺刀比古    「刀剣」×「無色+青」
大火々野延刺刀比古(おおひひのののぶさすがひこ)「刀剣」×「無色+青」【はしみつ】
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東北地方山間部で伝承される、刀剣鍛鉄の神。大別水笹良伸比売(おおわけみささらのべひめ)と共に祀られているケースが多く、ともに記紀には記述がない。その名称から伸比売は山間部より河川中域へと流された砂鉄を神格化したもの、対し刺刀比古は精錬した鉄を加工する職能集団を神格したものと推測される。
刺刀比古が祀られている地域からは、その名の通り槍の穂先のような小ぶりで鋭角な刀が発見される。これは山間及び森林では大振りな刀を使いにくい点、真っすぐであれば加工が簡易である点、希少な鉄資源を最小限の使用で大きな効果を発揮する形状を模索した点などが想定される。このことから刺刀比古の母系となった職能集団は非常に合理的・経済的な思考を行っていたことがうかがえる。
「火々野」という単語からはただちに火瓊瓊杵尊が連想されよう。確かに当時の文明圏から遠く離れた地において非常に高度な製鉄・鍛造技術を有していたことは大きな疑問点である。ゆえに朝廷から追放された氏族がかの地に流れ祀られるに至ったものの、記紀成立の年代においてはかの氏族は中央から閑却されていた……そのような想像は容易であるが、結論を出すにはまだ資料が足りないと言わざるを得ない。今後の研究が待たれる。
+ 第 3回「神様その三」 (「司るもの」×「色」)
+ 嘘の神          「嘘」×「黒」
嘘の神   「嘘」×「黒」【ほうじ茶】
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この神は紛れもなく造られた人造の神である。何故ならば『嘘』をつくのはヒトだけであり、その罪悪感や気まずさといった感情を誤魔化し、全てを嘘の神のせいにして自らの責や悪感情を棚上げする紛れもない利己の感情から造られたからだ。
しかし造られたとはいえ、神は神であり信仰が生まれた時点でそれは顕在し機能する。
ヒトはついうっかり嘘をついてしまったときにこの神のせいにする。神に唆された。つい魔が差した。その『魔』こそがこの神の正体である。幼児ですら嘘をつく。悪意からだけではなく、嘘はヒトとは切っても切れない関係性でありヒトの特権でもあるからだ。故にこの神は常にヒトの側におり、我々が嘘をつくのをただただ無言で待っている。ヒトが自らの心にこの神を見出すのは神が反省を促す為という側面もあろう。
嘘は常に内に在る。汝が騙る時、語りかける者に心せよ。
+ コルコン         「秘密」×「緑白」
秘密のコルコン   「秘密」×「緑白」【きぬ】
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ヒトの生活を形取る九の神格の末妹。一族が黙する秘密を守る神。
その姿は、左の眼窩と口蓋を両腕で塞がれた乙女として描かれる。
コルコンとの契約は九日を要する儀式によって成立するとされる。
契約が成れば、神のもとに明かされた秘密はその契約が保たれる限り、コルコンの覆い隠された口蓋に含まれ、外部に漏らされることは無い。
コルコンを信仰するということは、一族が秘密を抱いているということの証左でもあり、信者はその名を口にすることを避け、神像は蔵や奥間に隠される。一種の仄暗い背景を匂わせる神ゆえか、彼女を信仰しない者からは様々な名前で呼ばれる。ありうべからざるコルコン、排他の乙女、煤の守り人、など。

そうしたイメージに反して、コルコンは人間への慈悲深き愛情と友好的な姿勢を見せる。
しばしば信者の前に姿を現しては、その秘密が保たれていることを賛美し、褒賞を与えると言う。また、秘密によって一族が立ち行かなくなることが無いよう、様々な啓示と助言をもたらすとされる。
このような性質を持ち合わせることは、当然知られていない。誰もその名を口にしないためだ。

近年その信仰の形が明らかになりつつある九の神格たち。ここ数百年の間に、農村地域を中心に広がったものと考えられている。
しかしその神格たちが九つに分かたれて別々に信仰されている由縁は未だ明確になっていない。
コルコンに関して言えば、その名が知られるようになったのはここ数十年の間である。現在信者と判明した者たちは、皆一様に「先代から引き継いだ信仰だ」と答え、秘密を受け継いだものの、儀式には立ち会っていないと言う。
その神像の描かれ方についても疑問が残る。その神像に描かれる手は、コルコンのものではない。暗闇から伸びた何者かの手が、掴むようにして眼窩と口蓋を覆っているのである。誰が? なんのために? 秘密を守ると言うその権能を保持するのは、本当にコルコン本人なのだろうか。
なんにせよ、その口蓋には、無数の秘密が隠されていることだろう。
+ マニとウメニ       「決着」×「青赤白」
決着の神、マニとウメニ  「決着」×「青赤白」【ずむ】
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一つの身にありながら、彼と彼女ほど反りが合わずに歪みあっている者は無い。
神の座に一つ空いた時、空位を埋めるためにマニとウメニが他の神々から推薦された。
しかし困ったことに、それぞれ35柱からの推薦を受けており、残るは主神の応えを仰ぐのみだったが、しかし主審は二人で決めた勝負をし、勝ったものがその席に座すものとした。
まず二人はその武勇で決着ををつけようとしたが、三日三晩お互いの武具が粉々になるまで戦っても決着がつかなかった。
次に、お互いの知性で決着をつけようとし、知恵の神に出題された謎かけを先に解いた者が神の座に相応しいとしたが、二人とも解くことができずこの勝負を無かったことにした。
最後にその勇気を競うべく、天界から落ち、人界に激突するまでに先に音を上げた方がその座を譲る事としたが、二人とも譲らず結局どちらも地上に落ちてしまった。
もう自分たちが競ったところで決着がつかないことを悟った二人は、人の戦争に目をつけ、その勝敗に神の座を賭けることにした。
二人は今度こそ決着をつけるために、互いに人間に手を出さないと約束したが、二人とも直後に約束を破って各陣営に手を貸したため、この戦争は泥沼となり、勝者も敗者も無いような惨憺たる有様となってしまった。
このような過ちを二度と起こすまいと誓った二人は、お互いがお互いの不正を防ぐ為に、その身を一つにした。
一つの身の中で反発し合う二柱の神は、今でも決着を付けるべく争いを続けている。

その姿は、錯乱し自らを傷つける男の姿、自らを罰し悦にいる女、争う男女など、様々な形で描かれるが、どれもが倒錯しており主要人物が生傷を負っている点で共通している。
+ イシュトゥニトゥグ    「骨」×「赤黒」
イシュトゥニトゥグ  「骨」×「赤黒」【はしみつ】
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人跡の途絶えた霧深き森、夜になればあまたの霊魂さ迷う戦場、鐘楼の焼け落ちた教会のある街で、風になびかず地を這う黒い煙を見かけたものは用心するがよい。その煙が肉を焦がす臭いを運んで来たら、ただちにその場を離れるがよい。さもなくば、イシュトゥニトゥグの食事に加えられてしまうことだろう。君ではなく、君の骨が。
イシュトゥニトゥグはボロボロの外套一枚だけを羽織る老人、クズリの毛皮を被る男、あるいは赤い目のクズリの頭をした小人の姿で現れるとされる。異説はあるが、イシュトゥニトゥグについての物語は次のようなものである。
イシュトゥニトゥグはかつて王神バハンの季節宮に使える、キラエンシという名の半神の牧童であった。ある日、キラエンシはその日の晩餐に捧げる仔山羊を一頭あやまって逃がしてしまった。王神の怒りを恐れたキラエンシは一計を案じ、水底の粘土の肉、白樺の枝の骨、高原の芝の毛で偽物の仔山羊をこしらえた。そしてその仔山羊は焼かれたあと自身の前に配膳されるよう妖精の女給仕に頼み込んだ。
しかし、頼んだのが風の妖精であったことが災いした。忘れっぽく気分屋の彼女はあろうことか王神の前にかの仔山羊を配してしまった。王神はキラエンシを呼び出し、丸焼きの仔山羊を指して問うた。
「キラエンシ、この山羊を捧げたのは汝か」
「さようでございます、主上様」
「汝の山羊には骨が入っておらん。なにゆえ骨を山羊から奪った」
「おそれながら、主上様。手違いがあったのでございましょう」
「骨のない肉は種のない果実、柱のない家である。捧げ物から骨を抜くほど求むるのであれば、汝はこれから骨より他のものを口にしてはならない」
そうしてキラエンシは季節宮を追放され、名前も取り上げられた。今呼ばれるイシュトゥニトゥグとは「荒れ野をあてどなくゆくもの」というような意味であるとされ、その名前の通り彼は今なお無人の山野を歩き、不運に巡り会った人畜の肉を焼き捨てて骨をかじっているのだという。
+ ンドレア         「死角」×「青赤」
死角の神、ンドレア 「死角」×「青赤」【みにやび】
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盗人・諜者・闇商い・あるいはただのならず者。
影の世界に住む者共は、事の佳境に至ってとある共通の箴言を思い出す。

─死角の神、ンドレアを軽んじてはならない。
 法の天網や千里の眼の粗を突いた時、今一度心を鎮め息を潜めよ。
 そこで己が力量に驕った者は、ンドレアの恩寵に賜れず陽の下に晒されてしまうだろう─

彼の神は決して悪しき神でもなければ、世の溢者の味方という訳でもない。
ただ冥暗を拠り所とする者へ刹那的な目こぼしを与え、もしくは気まぐれにその覆布を暴いてしまうのだ。
世間的に認知度の低いその神について、
およそ敬虔という概念から縁遠い裏稼業の人間ほど仄暗い信奉を抱いているのは、
その邪道な体験談から身を以て、ンドレアの存在を確信しているからに他ならない。

柱の裏、丘陵の奥、木立の影、或いは認識の外側にンドレアは潜んでいる。

厄介なことに、その神は直視しようとしても常には認識できず、しかし完全に背けると足元を掬われてしまう。
だから一流の暗躍者ほど、ここ一番の局面でまた、己が身を隠す物影の中でその存在に「気付けるか」が肝要となっているのだ。

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最終更新:2021年12月16日 00:03