【生年月日】
1942年3月10日
【出身地】
東京都
生後すぐに愛知県豊田市に引っ越した。
【肩書】
東京大学特別栄誉教授
東京理科大学学長
等
【学歴】
学部…横浜国立大学工学部 (1966年卒業)
大学院…東京大学大学院工学系研究科博士課程(1971年博士号取得)。
【予想授賞理由】
本多・藤嶋効果(酸化チタンの光触媒反応)の発見により。
【受賞歴】
1983年 朝日賞
2000年 日本化学会賞
2003年 紫綬褒章
2004年 日本国際賞
2004年 日本学士院賞
2004年 内閣総理大臣賞
2010年 文化功労者
2012年 トムソン・ロイター引用栄誉賞
等
【著書】
【主要業績】
- TiO2 Photocatalysis: A Historical Overview and Future Prospects (Hashimoto, K., Irie, H., and Fujishima, A.). Jpn. J. Appl. Phys. 44: 8269-8285. (2005).
- Light-induced amphiphilic surfaces (Wang, R., Hashimoto, K., Fujishima, A., Chikuni, M., Kojima, E., Kitamura, A., Shimohigoshi, M., and Watanabe, T.). Nature 388: 431-432. (1997).
- Photoinduced Magnetization of a Cobalt-Iron Cyanide (Sato, O., Iyoda, T., Fujishima, A., and Hashimoto, K.). Science 272 (5262): 704-705. (1996).
- Electrochemically Tunable Magnetic Phase Transition in a High-Tc Chromium Cyanide Thin Film (Sato, O., Iyoda, T., Fujishima, A., and Hashimoto, K.). Science 271 (5245): 5393-5408. (1996).
- Electrochemical Photolysis of Water at a Semiconductor Electrode (Fujishima, A. and Honda, K.). Nature 238: 37-38. (1972).
【研究内容】
大学を卒業したのち、東京大学の大学院に進み、水の中に入れた酸化チタンに光をあてる実験をしてみたところ、水が光分解して酸素と水素が得られる現象を見つけました。
この現象は植物が葉の上でおこしている光合成反応と類似した反応であることに気がつき、人工光合成ができたと感動したことが研究者になるスタートでした。今ではこの反応は光触媒の原理となる反応として注目していただいておりますが、1972年には神奈川大学の助教授をしているときに、世界でもっとも注目される論文誌「Nature」にこの水の光分解が起こる現象について発表したのです。今では酸化チタンをうすくコーティングして建物が汚れないという効果を生み出す光触媒が色々なところに応用されています。
私が光触媒の講演をする際に最初におみせするのがみなとみらいにある白い建物群の写真です。この辺一帯は周囲の美観を保つために白色系の建物だけになっているそうですが、白い建物は汚れやすいものです。この汚れを防ぐのが光触媒の主な効果ですので、例えばMMタワーズのビル群は全て酸化チタンが透明にタイルの上にぬってあります。
東横線の元住吉の駅や、田園都市線の高津駅など、最近はホームにかかるテント材料もすべて光触媒コーティングされています。このように、実際に使われている様々な建物への光触媒の応用が拡がってきているところです。
また、空気清浄機にも光触媒が応用されています。私たち神奈川科学技術アカデミーが中心となって開発したインフルエンザにも効果のある「造花付光触媒空気清浄機」は松沢知事の執務室でも稼動しています。
光触媒は今、いろいろなところで使っていただいていますが、キーワードは2つあります。それは酸化チタンと光です。酸化チタンを10-20nm(ナノメートル)の大きさの粉末にして、いろいろな物質にコーティングします。すると、酸化チタンの粒は非常に小さいので透明コーティングになります。これに太陽光が当たると強い酸化力がはたらきます。これが、光触媒の原理であり、これにより殺菌効果が確認されています。また、コーティングされた表面に水をかけると水が全面を覆ってしまう、超親水性効果という現象も確認されています。すると、油汚れがあっても、水が油を浮かせてしまうわけです。これも光触媒の大きな特徴の1つです。これらの効果は、既に建材のセルフクリーニングや、空気や水の浄化、殺菌、ガラスの曇り防止など、様々な場面で利用されており、製品も出ています。
Nature誌よりも前に私が書いた一番初めの英語の論文のテーマはこれでした。ところが、日本の学会では全く相手にされなかった。むしろ、こてんぱんにやられたのです。何故なら当時は、電気分解は電圧をかけなければ起こらないという常識しかなく、光エネルギーの認識もなかった。それが光をあてるだけで電気が流れるというわけですから、お前は何を言っているのだという調子です(笑)。もっと勉強してから発表しろといわれました。どうしてみな理解してくれないか不思議でした。今なら、光をエネルギーに替える原理を利用した典型的な技術として、太陽電池がありますけどね。
さらに当時東陶(株)にいた渡部俊也氏(注:現在東京大学先端科学技術研究センター教授)がディスカッションしたいと言ってきました。東陶ではトイレの汚れを解消する問題をかかえていたのですが、東陶のタイルに酸化チタンをコーティングしたらどうかというのです。まず殺菌できるかを試験したところ、光をあてるだけで殺菌できる。次に病院の手術室の床と壁に使用したところ、空中の菌さえなくなった。これは本当に効果があるということで、現在も東陶のタイルで使われています。
それから、東陶とのディスカッションのなかで、鏡が曇ってしまう現象をどうにかできないかという話もありました。シャワーで鏡が曇ってしまう。はじめ、これは油汚れによるものかと思い、鏡に酸化チタンをコーティングしたらどうかと思った。すると確かに曇らなくなる。ところがよく調べるとどうも油汚れが原因ではないらしい。そこでまた基礎研究に戻り、酸化チタンの単結晶に光をあてるとどういう現象が起こっているか、オングストロームオーダーで調べようということなった。当時中国から来ていた留学生の女性に調べてもらいました。そうしたら油ではなく、酸化チタンに水を分解する力とともに水になじみやすくなる性質があることが分かったのです。これで建材への応用が一気に広がったほか、空気中のNOXまでとれるので公害対策にも利用されています。
【その他】
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最終更新:2013年12月01日 16:47