【生年月日】
1939年5月7日
【出身地】
大阪府富田林市
【肩書】
元・大阪大学 総長
大阪大学 名誉教授
等
【学歴】
1964年 大阪大学 医学部 卒業
1969年 大阪大学大学院 医学研究科 内科系専攻 博士課程 修了(医学博士号取得)
【予想授賞理由】
インターロイキン6などのたんぱく質の構造の解明により。
【受賞歴】
1986年 ベルツ賞
1988年 朝日賞
1990年 文化功労者
1992年 恩賜賞・日本学士院賞
1998年 文化勲章
2003年 コッホ賞
2011年 日本国際賞
等
【著書】
【主要業績】
- Komori, T. and Kishimoto, T. et al. (1997). Targeted disruption of Cbfa1 results in a complete lack of bone formation owing to maturational arrest of osteoblast, Cell. 89 (5): 755-764..
- Nagasawa, T. and Kishimoto, T. et al. (1996). Defects of B-cell lymphopoiesis and bone-marrow myelopoiesis in mice lacking the CXC chemokine PBSF/SDF-1, Nature. 382 (6592): 635-638..
- Kishimoto, T. (1989). The biology of interleukin-6, Blood. 74 (1): 1-10..
- Kawano, M. and Kishimoto, T. et al. (1988). Autocrine generation and requirement of BSF-2/IL-6 for human multiple myelomas, Nature. 332 (6159): 83-85..
- Hirano, T. and Kishimoto, T. et al. (1986). Complementary DNA for a novel human interleukin (BSF-2) that induces B lymphocytes to produce immunoglobulin, Nature. 324 (6092): 73-76..
【研究内容】
生体には本来、外部からの異物の侵入に対して自分の体を防御する免疫機能が備わっている。その免疫機能が自分の臓器を攻撃してしまう病気を自己免疫疾患という。関節リウマチは自己免疫疾患の代表的なもので、40~50代で主に手足の関節の痛みから始まり、何年もかけて軟骨や骨の破壊が進み、関節機能が低下して日常生活動作に支障を来すようになる。日本には70万人以上の関節リウマチの患者がいる。
原因はなお不明で、20世紀に入っても長らく、消炎鎮痛薬やステロイドなど、痛みやはれを和らげる対症療法しかなかった。1970年以降、新たに免疫系に働きかける抗リウマチ治療薬が登場して、一定の効果を上げるようになった。20世紀の終わりからは、さらに劇的な変化がもたらされている。骨を破壊する細胞(破骨細胞)の働きを促す情報伝達をしているタンパク質(サイトカイン)をターゲットにした分子標的治療薬が、相次いで開発されたのだ。
最初に世に出た関節リウマチの分子標的治療薬は、腫瘍壊死因子の1つ、TNF-αの動きを阻害するものだった。大阪大学の岸本忠三らが、インターロイキン6(IL-6)という、異なるサイトカインを発見、中外製薬がこれを受けて開発を進め、2005年にIL-6の働きを阻害する「アクテムラ」(トシリズマブ)が発売された。
これらは、遺伝子工学技術を駆使して、生物が産生するタンパク質を利用してつくり出される生物学的製剤であるため、高価な薬となる。しかし、関節炎を和らげる効果が大秋だけでなく、高い確率で関節破壊の進行を阻止し、最終的に薬が不要になる人さえいる。骨の修復までが可能であるとさえいわれるようになった。
分子標的治療薬の中で、免疫機能において抗体が抗原を認識する特異性を利用した薬剤を「抗体医薬」という。アクテムラは、日本初の抗体医薬第1号として、先鞭を付けることにもなった。現代は、遺伝子解析技術の進歩で多くの抗原分子が解明されており、がんや感染症、免疫疾患の治療に抗体医薬の開発が進められている。
T細胞がB細胞に抗体を作らせる際、T細胞が少なくとも2つのタンパク質を放出していることがわかり、このうちの1つに絞って遺伝子の解明を急ぎました。インターフェロンの遺伝子を世界で初めて捉えた谷口維紹教授(現東京大学教授)に遺伝子を扱う技術を教えてもらい、助教授の平野俊夫さん(現教授、医学部長)を中心に、助手の菊谷仁さん(現教授、微生物学研究所長)、大学院生の田賀哲也君(現熊本大学教授)らが必死で頑張りました。でも、なかなかうまくいかないんです。
ここで先行したのが、分子生物学を熟知していた本庶さんです。2つの因子のうち1つの遺伝子をあっさり単離したという情報を聞いた時は呆然としましたよ。僕らが追っている遺伝子が、彼の見つけたものと同じか似たようなものだったら研究の新味はありません。半年遅れでなんとか遺伝子にたどり着きましたが、論文が掲載されるまでは不安でしたね。ところが、1986年の8月、本庶さんとわれわれの論文が同時にネイチャーに掲載されたんです。本庶さんは、現在ではインターロイキン4 (IL-4)とインターロイキン5 (IL-5)と呼ばれるタンパク質の遺伝子を、一方われわれは、インターロイキン6 (IL-6)という別のタンパク質の遺伝子をつきとめており、それぞれが一番乗りだったのです。その夏の研究室旅行では、ビールを掛け合って喜びました。
インターロイキンは、白血球(Leucocyte)の細胞間(inter-)ではたらく分子であり、そのうち正体がはっきりわかったものに順に番号がつけられていました。本庶さんも僕たちも免疫を制御する遺伝子を解明したとして、注目されたわけです。
ところが、IL-6のはたらきを調べていくうちに、この分子は免疫以外にも生体のさまざまな反応に関係する重要なはたらきをもっていることがわかってきました。例えば、ミエローマというリンパ球のがんを引き起こす「ミエローマ増殖因子」の正体はIL-6。感染症などに反応して肝細胞に急性期タンパク質をつくらせる命令因子もIL-6。関節炎など免疫による炎症反応の引き金になるのもIL-6という具合です。こうなると、6番目という名前に似合わず、インターロイキンの中で1番注目される分子となり、世界中からIL-6の遺伝子や論文についての問い合わせが殺到しました
【その他】
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最終更新:2013年12月28日 21:52