早石 修

【生年月日】

1920年1月8日

【出身地】

アメリカ・カリフォルニア州

【肩書】

京都大学 名誉教授
大阪バイオサイエンス研究所 理事長

【学歴】

1942年 大阪帝国大学 医学部 医学科 卒業 

【予想授賞理由】

酸素添加酵素(オキシゲナーゼ)の発見と研究により。

【受賞歴】

1964年 朝日賞
1967年 日本学士院賞
1972年 文化功労者
1972年 文化勲章受章
1986年 ウルフ賞
1993年 勲一等瑞宝章

【著書】


【主要業績】


【研究内容】

外国の雑誌に、ある物質の水溶液に土を混ぜると、その物質を栄養源にして成長するバクテリアが増えてくるという実験が出ていた。これをトリプトファンでやってみよう。そう思いついて、爆撃で焼け野原となった微研の裏で、10ヶ所くらいから採取した土を試験管に入れ、貴重なトリプトファンを耳かきの先程度入れて水を加えてみた。翌朝見ると、土は沈殿し、上は透明な水で何の変化もない。ところが3日目には、上澄みが白く濁っており、バクテリアが生えていた。トリプトファンを分解して栄養源にして生きる特別なバクテリアだ。
古武先生は何十年も哺乳動物で研究されてきたのだが、それとこのバクテリアとではどこが違うのかということを比べてみた。その結果、トリプトファンの分解は、人間もネズミもこのバクテリアでも、あるところまでは同じだが、その先が違うことがわかった。バクテリアの場合は、芳香族が脂肪族に変わるというところまで分解されるのである。そこに働いている酵素を取り出して、その性質を調べると、今までどの生物でも知られていない、まったく新しいものだった。ピロカテカーゼと名づけた。
普通、トリプトファンなどの栄養物が生物の体内で酸化される時には水素がとれるのだが、この反応では酸素が加わると私は考えた。しかし、生物での酸化は、酸素が加わるのではなく、水素がとれるというのが、ノーベル賞をとった大学者ウィーラント以来の定説だった(脱水素学説)。それにお前みたいな何も知らん新米が反対しても駄目だ、と先輩や同僚に諭され、論文には、非常に遠慮深く脱水素ではないようだという程度にして発表した。酸素が付くなどと言ったら恐らく雑誌には載せてもらえなかっただろう。
確かにいくつかの状況証拠はあったが、確定的ではなかった。サイエンスは動かない証拠を実験で示すことが基本である。いつかは証明してやろうと思った。

睡眠は医学の中のブラックホールで、人生の3分の1を寝て過ごしているにもかかわらず、何もわかっていない。睡眠とはなにか、睡眠と覚醒の調節はどのようにして行われているか、眠れなくて困る、あるいは眠りすぎる病気など、わからないことだらけだ。生化学や分子生物学、分子遺伝学など、新しい学問を使い、チームを組んで睡眠の問題を総合的に解決しようと思ったのである。
京大在任中から私は、酸素添加の働きで生合成されるプロスタグランジン(PG)という局所ホルモンの中で、とくにプロスタグランジンD2の合成活性が脳において高いことを明らかにした時、何かがあることがわかっていた。PGE2とPGD2は逆の構造になっているので、PGD2は体温を下げるだろうと予想し、ラットの脳の視床下部に注入した。案の定、体温は下がったが、驚いたことに、ラットが眠り始めた。PGD2の睡眠促進作用は偶然の発見だった。
ラットが眠っている時は脳脊髄液中のPGD2の量が高く、目覚めている時は低いこともわかり、自然な状態で睡眠を司っている内在的な睡眠物質であることもわかってきた。
PGD2はどこで作られるのか?この睡眠物質を作る合成酵素を探したところ、意外なことに、脳を包むくも膜で作られ、脳内を満たしている脳脊髄液の中にあって、生理的意義の不明な謎のタンパク質とされていたβトレースと同じものだということもわかった。
PGD2は脳のどの部分に働いているか?応えは前脳基底部の表面の非常に狭い部分に働き、アデノシンに引き継がれて脳の内部に伝達され、睡眠中枢を刺激し覚醒中枢を抑制するというシナリオを突き止めた。「眠る脳」(脳みそ)と「眠らせる脳」(脳を包む膜)があることがわかったのである。

【本人HP】


【その他】


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最終更新:2013年12月30日 19:38