第十八章




戦力解析。
自分の体力は、万全の三割ほど。装備は短槍一本と宝器『グランディオーソ』。
『槍弾幕の射出』は、一回あたりの射出本数にもよるがおそらく二、三回が限界。水の性質変化・状態変化は不可。
体力面を考慮すると、短期決戦が最適。
敵戦力、二足歩行・中型の体格。装備は、ピアスに付属された宝器。
その能力は大きく分けて二つ。空気を固定し、ナイフとして『形成』。そして、それらの高速『射出』。
弱点。『形成』の工程において、対象の気体が七色に発光すること。
また、『形成』『射出』を複数の対象で行う際、処理能力が分散されるため、一つ当たりの威力が低下する。
が、時間をかけてそれらを行えば、処理のための時間が増えるので、弱点を補填できると考えられる。
現在状況。
無数のナイフが自身にむかって射出されている。
ナイフは複数だが、処理時間が長かったため、威力は一本における『形成』『射出』と同等と推測される。
戦術対策。
自身の力による中・遠距離攻撃は不可。また、距離があればあるほど時間を相手に与えてしまう。
そして時間がかかるだけ自身の不利が固まっていく。
よって導出される作戦は、近接格闘。
「―――ッ!!」
死がナイフの形をして襲いかかる。
シュシュは空気が切り裂かれる音を拾い、その密度の少ない場所へ跳ぶ。
そして、ナイフを槍で薙ぎ迎撃する。
神経系に特化した彼女ならではの技だが、さすがに不可視の刃に対して100%の保証はなかった。
が、彼女の感覚は正しかった。
ナイフに応対しながらも、シュシュは少年へと距離を詰めていく。
その間に少年は新たなナイフを作り出す。
灯った光は三つ。
シュシュは光の灯った空間に向かって三本の水の槍を射出した。
少年が驚いた表情をする。………推測だが、おそらく『形成』の過程に液体が混じってきて、ナイフができなかったのだろう。
襲いくる疲労感に耐えながら、その隙に乗じて一気に接近、その勢いのまま刺突。
が、少年はすぐに冷静さを取り戻し長めのナイフを一本『形成』した。そしてそれを手に取り、槍の穂先をわずかにずらす。
キギギィン、と金属がこすれるような音が鳴った。
少年はそこからシュシュに超接近、突きを放つ。
この距離では短槍とはいえ役に立たない。
よって、シュシュは持ち手を返し、柄でナイフを弾く。
続く少年の上段切りを柄の中央部分で受け止める。
ぐぐぐ、と両者の力が拮抗し、鍔迫り合いの格好になった。
―――やはりある程度の長さにできるとはいえ、『ナイフ』の概念を越えたものは『形成』できないようですね。
両腕に力を込めながらも、シュシュは思考を止めない。
―――とりあえずは、作戦通り………。


お互いの緊張がピークに達するまでの刹那、凶戦士は大剣を構えてレジスタンスをにらみつける。
奇襲を破られあれだけの被害を出しておきながら、心が折れていないというのは正直驚きであった。
自分は基本的に殺すことはないが、それ以上の手加減をする性質ではない。ほとんどの戦士は戦闘不能になっていたはずだ。
そのため、、レジスタンスはしばらくの間行動しないだろう、と踏んでいた。
レジスタンスのメンバーの中にいる炎の剣の少年を見据える。
その瞬間、ズキりと凶戦士の頭に鈍い痛みが走った。
何故であろう、あの少年たち――特に剣の少年を見ていると、何かが心にぶつかってくる。
それは一体、何なのか。
いや、とそこで凶戦士は頭を振り、そのことを思考から追い出す。
それと同時に、あの男と自身の弱さに対する怒りで満たされる。
自身が求めるものは、『戦い』そのもののようなあの男に勝つための強さだ。その力があればいい。
それさえあれば、大事なものが取り戻せる。
…………大事なものとは何だったのか。
何でもいいか。何でもいい。
そこまで至った瞬間、凶戦士は突撃した。


「はああああぁ!!」
凶戦士がカイルの方へ突貫してくる。
全員で分散し、一振りで複数がやられてしまうことを防ぐ。
とりあえず、ファルコたちにも凶戦士の力の仮説を伝えてある。
ヤツの攻撃は可能な限り、受けずに躱す。
カイルは凶戦士の大剣を、一気に横っ飛びをして避けた。
そのスキをついて、大地が飛び出しくる。
大地が戦斧を凶戦士へ振りかざした。が、凶戦士がそれを受けた瞬間、逆に大地が弾き返されてしまう。
「くっ!」
大地は転がりながらも受け身をとり、立ち上がる。
――おそらく例の能力だ。あの大剣で受け止めるだけで、発動条件が満たされるようだ。
もし、凶戦士の力が被攻撃時は有効でなかったら、先の戦いのように押し続ければよかったのだが、そうはいかないらしい。
ってことは、やっぱりシュシュと考えたアレでいくしかないか。
カイルは跳びあがって、凶戦士の頭上を取り斬りかかる。
もちろん、それは凶戦士に防がれてしまう。
それにより、カイルの身体は空中へ投げ出される――


時間は、三人の作戦会議まで遡る。
「えーとですね、『力』というのは、『質量』と『加速度』の掛け算で表される訳です」
シュシュはレジスタンスから借りてきた紙に、カイルと凶戦士が剣をぶつけている様子を模した絵を描き、お互いの剣から矢印をそれぞ
れに引く。カイルと大地はそれを見ながらふんふん、と話を聞いている。
「この矢印を作用する『力』とします。」
どうやら彼女は教えるのが好きなタイプらしく、ニコニコと笑顔を振りまいている。が、
「カイルたちの話からの推測ですが、凶戦士の宝器は『質量』を無視できると考えられます。……つまり、相手から凶戦士に作用する『力』
が無視される、ということです」
ここでシュシュは真顔になり、カイルから凶戦士に向かって伸びている矢印を消す。
「また、物体は『質量』の大きさに応じて動きづらさがありますが、『質量』が無視できる、ということはその動きづらさも無視できるのでしょう。
………わかってもらえましたか?」
シュシュは紙から顔を上げて、二人の顔を見た。
「(とりあえず、凶戦士は攻撃の威力をゼロにできて吹っ飛ばせる、ってことでいいのか?)」
「(………掛け算、って何さ?)」
二人の生徒の顔つきから、いまいち理解してもらえてないことが伝わったのだろう。
「えっと、どこが分かりにくかったですか?」
―――実際に戦うのは、この二人なのだから原理を解ってもらわないと。
そうでなければ、シュシュも思いつかない応用や不測の事態に対応できないかもしれない。
やはり、教えるのが好きなのだろう。むしろよりニコニコして再度説明をする。
演算の乗法から説明したので時間がかかったが、二人に原理をなんとか理解してもらい、話を次のステップに進めた。
「次にその対策に移ります」
すでに頭から煙を上げそうなカイルと大地を尻目にシュシュは調子良く続ける。
「推測ばかりで申し訳ないですが、凶戦士の力は宝器―――つまり、『カイル』や『カタストロフ』の質量には干渉できないと思われます」
あくまでも、今までのも推論でしかないことを彼女は詫びたが、実体験も得ずにここまでの推察するのは立派であろう。
カイルと大地はそれぞれの宝器を手にとった。
「その理由ですが、宝器の質量も無視できるならば、お二人の話で聞いた以上にお二人が吹き飛んでいてもおかしくないと思ったからです」
シュシュはカイルの剣に触れた。
「とりあえず、カイルは今から私が言うことをやってみて下さい」


ことはなく、互いに押し合い、つばぜり合いになった。
―――剣を振るのと同じ方向に推進力が働くように炎をピンポイントで発生させてください。
カイルは当初また訳の解らんことを、と思っていた。
疾風の狙撃者の持つ銃が、爆発の一方向に限定して弾を撃ち出すように。
カイルは、火炎の発生・爆破を凶戦士から受ける力に対する一方向に限定することで、強引に剣を押し付けているのだ。
凶戦士の腕を蹴り、距離をとって着地する。そして、再び斬りかかる。
実際のところ、自身の宝器に火炎爆破を一方向のみに操作できる力があるなど、カイルは知らなかった。
シュシュもできるかもしれない、と思っていただけで、本当に可能かどうかは怪しかったらしい。
カイルもシュシュがやれ、というのならできるそうかなという程度であった。
が、果たしてカイルはすることができたのである。
カイルの剣と凶戦士の大剣がぶつかり合った。
この瞬間、カイルの質量は無視されている。しかし、剣はその限りではない。そこで、火炎爆破で加速度を創っているのだ。
ギギギ、と金属が擦れるイヤな音がする。
―――その瞬間、バァンと乾いた音が響いた。
凶戦士は咄嗟に危険を察知し、強引にカイルを力で退けて回避する。
ゲイルによる疾風の如き狙撃が行われた。
バァンバァンバァン!!
銃声が連続する。だが、凶戦士は銃弾を避けながらゲイルへと接近した。
どうやら最初の一発目が右の脇腹をかすっただけであったらしい。
ゲイルがチッと舌打ちをすると同時に、凶刃が彼へと襲い掛かった。
しかし、それはギャザーの盾に集約されてしまう。
ぐう、と苦しそうに呻きながらもギャザーは凶刃を受け止める。
そして、間髪いれずにファルコが隼の俊敏さでもって鋭く間合いを詰めた。
隼の剣と凶気の剣が交叉する。ファルコの瞳にはもう戦うことへの躊躇いはなかった。
「……隊長、覚えていませんか。あなたと共に戦った仲間を、あなたが守ってきた者たちを」
「何を言っているのだ、お前は?」
かつての隊長と副隊長が言葉を交わした。
その瞬間、マスターオブソードが背後から斬りかかる。
感づいた凶戦士は、強引にファルコを押し返し、剣の極限値とすれ違いざまに切り結ぶ。
二人の左の肩当が壊れた。
凶戦士が大剣を振り切ったそのタイミングを見計らって、大地が畳みかける。
が、ファルコに劣らないアジリティを持つ凶戦士は剣を返して、それを受け止めた。
当然、大地はカウンターで跳ね返される、質量無視によって。


「うおおおおおおお!!」
大地が吹き飛ばされたのを見て、カイルは凶戦士に飛びかかった。
剣を上から全力で振り下ろす。
奇襲でもなんでもないため、当然凶戦士も大剣を打ち返してくる。
が、もう吹き飛ばされることはない。
カイルは剣で斬りかかり続ける。
ガン!ガン!ガン!
カイルの剣から炎が迸り、金属の衝突する音が響いた。
カイルは相手の右側から突っ込んだ。凶戦士の大剣が待ち構える。
―――ここだ、ここでやる!
大剣が振り降ろされ始めた瞬間、カイルは火炎爆破で凶戦士の左側まで一気に加速して跳ぶ。
「!?」
そして、その勢いのまま凶戦士の左側から急襲した。
「ッァ!!」
凶戦士は緊急回避するが、間に合わず左腕に裂傷を負った。
が、その直後ゲイルが狙撃する。カイルに気を取られ、躱しきれない凶戦士を銃弾が襲った。
「今だっ!」
ファルコはこれを好機と見て、全員に飛びかかるよう指示した。
致命傷は避けているが、それなりのダメージを与えたはずだ。
「………………」
凶戦士の傷から血が流れ落ちる―――。


カイルの叫ぶ声が遠ざかる。
大地は空中を舞いながらほくそ笑んでいた。自分は今、質量無視により吹き飛ばされている。
ファルコやギャザーには発動しなかったのに、だ。カイルに対しては働いている様子があった。
つまり、かつての仲間たるレジスタンスには質量無視が使えないのだ。
ファルコの言葉に凶戦士が嘘を返したとは思わないが、自分たちとレジスタンスの間にヤツが境界線を引いているのは間違いない。
無意識にかつての仲間に手心を加えているのか、それとも同じ宝器を使う自分たちに対して無自覚に力を使っているのか。
そのどちらにしろ、戦術的にはこちらに有利である。
また、前者であるならば、かつての心を取り戻させることは難しくても、現在のような暴走状態は止められるかもしれない。
――それにしても、えらい飛ばされてしまったさ。
凶戦士への攻撃はあえてのものだったが、ここまで吹き飛ばされるとは考えていなかった。
――これって上手く着地できるんさ?
背後を振り返ると、林になっていた。
っうお!?
ガサガサガサ!!
枝と葉に引っ掛かりながら、速度が緩やかに落ちていく。
林――彼は知る由もないが、この林は先ほどまで戦っていた岩場とシュシュがいる草原の間に繁茂している木々である――により彼は落下の衝撃を免れた。
やがて大地は太い枝の上で停止する。
「(……助かったんさ)」
大地は下の安全を確認して、地面へ飛び降りた。
が、その瞬間、激しい痛みが身体中を駆け巡る。
凶戦士の質量無視によるカウンターを二度も受けたのだ。
ドワーフである彼が筋力に恵まれているとはいえ、当然の代償である。
激痛に顔を歪ませながらも大地は歩を進めようとした瞬間、上からバチバチという音が彼の耳に飛び込んだ。
大地が見上げると、大きな空間の穴が紫電を纏いながら存在していた。
――な……?ひょっとしてXYZが出てくるんさ!?
自分では到底相手をしきれない数のものが蠢いている感覚がして、背筋が寒くなった。
――どうする、どうすればいいんさ!?


不可視のナイフの一閃を紙一重で避ける。
そして、間髪入れずに槍で突く。
が、少年は槍をナイフでそらすと、距離をとった。
シュシュは接近しようとするが、感覚に一瞬ノイズが走る。
頭上にそれを感じ、思わずそちらに視線を向けた。
そこには穴とでもいうべきものが空いていた。
そして、シュシュが気付いたことに気付いた少年は嬉しそうに口を開く。
「どうせ他の二人は凶戦士とかいうヤツに手一杯だろ?」
少年はニタリと口端を引き上げた。
「あんなヤツほっときゃいいのになぁ」
………こいつは本当に嫌なヤツだ。この少年と話しているとまた頭に血が昇りそうになる。
それをなんとか抑えて思考を働かせる。
この状況をどうするか。こいつから逃げるのは不可能。
ゲートの方へ行くには、少年を倒すしかない………か。
「っ!!」
シュシュは少年に向かってダッシュする。そこから突きを繰り出す。
突撃からの刺突。やはりこれが、槍の最大威力の技であろう。
「はっ!」
が、少年は槍を躱して、急接近する。
今度は突き出されたナイフをシュシュが避け、槍で攻める。


「ぬうううううん!!」
凶戦士は右腕だけで大剣を振り回し、向かいくる兵士を薙ぎ払う。
カイルやファルコ、マスターオブソードは切り返すことができた。また、後衛であるゲイルなどは大丈夫であった。
が、前線にいたギャザーや他の兵士はまともに攻撃をくらってしまった。
そのまま凶戦士はカイルの方へ突撃してくる。
「ッ!?」
切り返しのために急ブレーキをかけたカイルの足は現在停止している。つまり、カイルは一撃を剣で受けるしかない。
「ぬん!!」
「おお!!」
ガギン、と金属音が響くと同時に、カイルは自身の腕が軋むのを感じる。
元々、自身が扱える力以上のものを炎で発生させているのだ。その負荷はかなり大きい。
先ほどのように自分から仕掛けるなら、ある程度加減がきくため、それはまだマシだ。
しかし、受け身ともなるとそれができず、結果カイルの腕は大きな反作用を受けることとなってしまう。
さらに悪いことに力負けして、後退させられる。
顔を苦しげに歪ませるカイルに凶戦士は追撃をかけた。
「くっ!」
受けるのは得策ではない判断したカイルは、バックステップを踏みながらなんとか回避する。
―――マズい、ファルコたちと引き離される!?
当然、カイルが孤立するのを防ぐため、ファルコたちは距離を詰めようとする。

その刹那。

凶戦士とファルコたちの間に稲妻が落ちる。
一瞬の閃光のあと、そこから現れたのは無数の謎の魔物であった。
だが、凶戦士は魔物の登場には目もくれず一心にカイルに攻撃する。
カイルはそれを避けるのだが、ファルコたちとの間に謎の魔物が割り込んできたせいで、躱しながらあちらに方向転換することができない。
「ッ!」
ファルコたちの方へ目を向けた直後、それがスキとなり大剣がカイルを襲う。
―――火炎爆破が……間に合わない!
剣で受け止めた瞬間にカイルの体が吹き飛ばされる。


まずい、分断された。
ファルコはそう思いながら、剣を構える。
目の前に対峙するのは”謎の魔物”。人型だがその腕はコウモリのような翼と鉤爪になっていて、
足にも鋭い爪が生えている。また、体表面は黒い皮で覆われていて、その顔面の中央には赤い線がY字状に走っている。
飛行能力がそこまで高くないのか、地面スレスレを浮かんでいる。
その数は無数。対して、こちらは自分と、マスターオブソード、ゲイルのみ。
ギャザーやその他の兵士たちは先ほどの凶戦士の攻撃で気絶してしまっている。少し経てば、回復するかもしれないが、それまではこの三人で耐えねばならない。
――その直後。
魔物が動き出した。滑るような速さでこちらに接近する。
ゲイルがそれを見て、自分とマスターオブソードの後ろに移動した。
そして、自分たちがゲイルを守るように前へ出る。
このくらいの連携は何度となく繰り返し流れなので、合図すら必要ない。
ファルコは他の魔物に注意しながら、襲いくる1体の個体に斬りかかった。


「グルルル………」
狼が喉を鳴らす。
大地はゲートから稲妻と共に現れた魔物と対峙していた。
カイルたちの方へは、無数の稲妻が落ちたように見えたが、こちらは目の前の魔物――長い鉤爪を持つ二足歩行の狼だけであった。
―――助かった、何体も相手するのは正直無理だったさ。とりあえず、コイツをさっさと倒してあっちに合流し
「グオォ!」
鋭い爪と牙が襲い掛かってくる。
―――疾いんさ……!?
大地は爪に切り裂かれるすんでのところで受け止めた。
「グガァァァ!!」
首に狼の牙が迫る。
頭をのけ反らせてなんとか避け、力で強引に押し返した。
が、狼はすぐに体勢を整えて跳びかかってくる。
それに対し、大地は斧を構えた。しかし、その直後に狼は跳ね上がって大地の頭上を通り越す。
そして、大地の後ろから噛みつこうとする。
「ッ!」
大地は体を反転させるが、相手が速すぎた。噛みつかれるのだけはなんとか避けるが、爪を躱しきれず横腹を切り裂かれる。
衝撃で大地は後ろに倒れ、尻もちをついた。そのスキを見逃す狼ではなく、獲物を狩るチャンスと見て喉元に食らいつこうとしてくる。
なんとか、迫りくる牙と爪を凌ぐものの、状況はかなりまずかった。敵のスピードに自分がついていけてないのだ。
―――クソ……、やばいんさ……!


お互いの獲物を押し付け合いながら、シュシュは作戦の第二段階に移すことにした。
これは、接近戦で倒せなかった場合もの。不可視とはいえ、ナイフと槍で拮抗させられていることから、純粋に接近戦での勝利はないと考えたからであった。
己の感覚器官を働かせる。
緊張状態だからか、いつもより鮮明に感じられる気がした。
敵の内臓や筋肉が動く音。これが何を意味するのか。
それは、目の前の少年がある程度自分と同じ体の構造をしている、ということだ。
口の奥には食道が、更に奥には胃腸が存在する。
それならば、やはりあの作戦が使える………。

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最終更新:2013年12月31日 23:53