コンコン……ガチャ


エリシア「こんばんは! まだ……起きてるかな?」
    「あっ、起きてた! えへへ、熱心なんだね」
    「それにしても君がこんなに魔法に興味があるなんてちょっと意外だったなぁ」
    「『読みたい魔法の本があるから』って私の家に来たときも驚いたけど、まさか1日中読んでるなんて思わなかったよ」

    「ううん、別に迷惑なんかじゃないよ!気にしないで!」
    「君が魔法に興味を示してくれるだけで私も嬉しいし」
    「自分の好きな事を誰かが好きになってくれるのって凄く楽しいもんね!」

    「それで、今日はどうする?」

    「えっ? どういう意味かって……気付いてなかったの?」
    「ほら、窓の外、真っ暗。もう結構遅い時間だよ?」

    「あはは、本当に読書に熱中してたんだね。時間を忘れて没頭するなんて」
    「どう?魔法は好きになってくれそうかな?」
    「って……気が早い質問だったかな。えへへ、ごめんね。君がそんなに熱中してくれてたのが嬉しくて」

    「あっ、それでこれからどうする?」
    「読書のキリが悪いなら……その、泊まっていっても良いよ?」
    「私も寝るまでの時間、ちょっとの時間だけど、君と読書がしたい気もするし」

    「えへへ、うん! それじゃ、一緒に読書しよっか!」

………
………

エリシア「それにしても、どうして急に魔法の勉強なんて始めたの?」
    「今までそんな素振りなかったような感じだったけど」

    「……教えてくれないの?秘密?」
    「どうしても? むう……そう言われると凄く気になるよ……」

    「えっ、私はどうなのかって……うーん、そうだなぁ」
    「私は物心付いたときにはもう魔法が使えてたから……必然的に、かなぁ」
    「幼いながらに魔法で人の役に立てるのが嬉しくて」
    「新しい魔法の理論を知っていくのが凄く楽しくて」
    「うん……そんな感じかな、私は」
    「えへへ、口にするとちょっとだけ照れくさいね」

    「それじゃ!君は?」
    「私も言ったんだし、次は君の番だよね!」

    「えー、どうしても教えてくれないの?」
    「うーん……ここまで教えてくれないとなんか色々変な想像しちゃうなぁ……」
    「例えばー、とても人に言えない恥ずかしい理由とか?」
    「魔法を使って、あんな事やこんな事をしようとしてたり?」

    「あはは、冗談だよ! 君がそういう事をする人じゃないって知ってるし」
    「でもそれなら何だろう……? 全然想像が付かないや」

    「え? そのうち教えてくれるの?」
    「なんか曖昧だなぁ、上手く逃げられてる感じ」
    「うーん…………」
    「それじゃ……期待してるからね?」
    「君がどんな理由で魔法を勉強してるのか、色々想像して楽しみにするね!」
    「だから、本当にいつか教えてね?」

    「うん。約束だからね!」
    「私と君の……約束」



    「ふわぁ……ちょっと眠くなってきたかな」
    「結構遅い時間になっちゃったね」

    「あはは、君も大きな欠伸だね」
    「もうそろそろ寝ようか? 魔法の勉強はまた明日って事で」
    「それじゃ、私はちょっと着替えてくるね」
    「流石にこのローブで寝るのはあれだからね」
    「……覗いちゃダメだよ?」
    「…………」
    「えへへ、なんか一回言ってみたかったんだ、このセリフ」
    「それじゃ、ちょっとだけ待っててね!」


…………
…………


エリシア「えへへ、お待たせ!」
    「なんかちょっと恥ずかしいな……男の人にパジャマ姿なんて見せた事無いし」
    「どう、かな? 変じゃないかな?」

    「……似合ってる?ほんと?」
    「えへへ、ありがと!」

    「それじゃ、君はそのベッドを使って!」
    「寒かったら言ってね? 魔法で暖を取るから」


    「えっ、私はどうするのかって?」
    「私はいいよ、椅子で寝るから大丈夫」
    「研究で図書室に泊まりこむ時とかにもやってるし、慣れっこだよ」
    「だから気にしないで良いよ!」

    「うーん……気になるの?」
    「風邪を引くって……確かに今はちょっと寒い時期だけど……」

    「え?良い方法を思いついた?」
    「二人とも寒くならないで寝る方法?」
    「……って、それってもしかして」

    「何を想像したのかって? ……それは、その……」
    「添い……寝……?」
    「二人で、その……一つのベッドで……」

    「って、本気なの!?」
    「だって、二人で一緒のベッドだなんて、そんなの……」
    「恥ずかしすぎるよ……」
    「確かに、それなら二人とも暖かく寝れるけど……」
    「うー……」

    「うん……確かにベッドなら風邪を引かないで済むね」
    「私が風邪を引いちゃったら……明日また一緒に勉強出来なくなる……ね」
    「…………」
    「うん、わかった。……君の魔法の勉強の為ならしょうがない……よね」
    「一緒に……寝よ?」

    「って、今の台詞凄い恥ずかしいね……」
    「なんか顔が凄く熱くなってきた気がするよ……」

    「そ、それじゃ。私が……先にベッドに入るから」
    「君が先に寝ているところに入ってくなんて、恥ずかしくて出来そうにないし」
    「だから、君が入ってきて。……それなら多分大丈夫だから」
    「……灯り、消すね?」



エリシア「よいしょ……ん……」
    「入ったよ」
    「うん、いつでも……大丈夫だから」


    「うわぁ……本当に同じベッドに入っちゃった……」
    「……確かにベッドだと暖かいね」
    「私は恥ずかしくて、もう暑いくらいなんだけど」

    「それじゃ寝る……ね?」

    「うん、おやすみなさい」

(寝息)
……
……

エリシア「……まだ起きてる?」
    「…………」
    「もしもーし……」
    「エリシアですよー……」

    「……本当に寝ちゃった、のかぁ」
    「うーん、ドキドキしちゃって眠れない……」
    「横になっちゃえば眠気に負けると思ったんだけど、全然だよ……」
    「それに引き換え……ぐっすり寝てるなぁ」
    「私が一人でソワソワしたり緊張したりしてるだけ、なのかな」

    「なんかちょっと悔しいかも……」
    「私が一人で盛り上がって、舞い上がってるみたいで」
    「これじゃ、まるで一方通行みたい」

    「……一方通行」
    「私は……君のこと……どう思ってるんだろう」
    「今まで恋なんてした事無いから……よく分からないなぁ」
    「でも、一緒にいて凄く楽しいし……凄く嬉しいし」
    「魔法の事ばっかりの、こんな変な魔法使いと一緒にいてくれるのが……幸せ」
    「それに、こうやって一緒にいると……一緒に寝てるのが嬉しい」
    「ドキドキして仕方がないのに……凄く心がポカポカする」
    「うう……なんか意識したら顔が熱くなってきたかも……」


    「それにしても……」
    「本当によく寝てるなぁ」
    「こんなに近くで顔を見るの、初めてかも」
    「普段、こんなに近づくなんて絶対に無いもんね」
    「髪、サラサラしてる。 唇も瑞々しくて……」
    「そっか……添い寝……しちゃってるんだよね、私」
    「うー、意識したらまたドキドキしてきちゃった……」
    「温もりも、私に伝わってくる……」

    「どうして私を添い寝に誘ってくれたんだろう?」
    「私が風邪を引かないように心配してくれたから……」
    「それとも、もっと別の理由がある……のかな」

    「もっと近づけば、分かるかな?」
    「もっと、君の温もりを感じれば……君の気持ちも伝わってくるかな?」
    「どうせ寝てるし……良いよね」

ゴソゴソ

    「近づいちゃった……」
    「肩と肩が触れちゃいそうな距離……これ、やばいかも……」
    「温もりが強くなって……寝息が凄く近くに感じる……」

    「って、きゃっ!?」
    「起きたの!?」
    「もぞもぞしてたから……ごめんね、起こしちゃったかな」
    「えっ、なんで近づいてるのって」
    「それは……ええと……」
    「ちょっと……寒かったから」
    「うん、そう!ちょっと寒かったの!」

    「顔が赤いって……それはその、暖かくなったから、だよ」
    「うん。君の温もりで、暖めてもらったから」

    「それじゃ、また……離れるね」
    「もう十分暖かくなったから、朝まで大丈夫だと思うし」

    「えっ!?」
    「どうして、手を握るの?」
    「……このまま?」
    「このまま離れない……で?」
    「それは……ええと……」
    「……君が……まだ寒いって言うなら……」
    「君が寒いなら、今度は私の温もりを分けてあげる」


    「…………」
    「そっか、まだ寒いんだね」
    「それじゃしょうがないね……君が風邪を引かないように……朝までこのままで」

    「えへへ、暖かいね」
    「魔法で暖を取るより、ずっと優しい暖かさ……」
    「君はどう? 暖かい?」
    「私の温もり……伝わってる?」

    「まだ?」
    「もっと近く……ってもう十分近い気がするんだけど……」
    「だって……こうやって肩が触れ合ってて……手だって繋いじゃってるし」
    「それでも……まだ寒いの?」
    「…………」

    「そっ…か、寒いんだね」
    「じゃあ……しょうがないよね」
    「少しだけ……少しだけなら、うん。近づいても良いよ?」

    「私からは無理だよ……恥ずかしくて死んじゃうから……」
    「だから、君から……」
    「私は大丈夫だから。君の事を待ってるから」
    「だから……君から……来て?」

…………

    「うわぁ……こんなに近く……」
    「これ……もうほとんどくっついてる状態だよね……」
    「私と君の顔がこんなに近く……」
    「息と息が絡み合っちゃうような……凄い近く……」

    「…………」
    「…………」

    「何か……言ってくれないと困るよ」
    「こんなに近くで君の顔を見たのは初めてで……」
    「ううん、こんなに君に近づいたのが初めてだから……」
    「緊張して……そわそわしちゃってるから」

    「顔が赤いって……当たり前だよ」
    「ずっと図書館で研究してて、こんな経験……今までに無いんだもん」
    「それに……相手が君だし……」
    「胸がドキドキして……体がフワフワしちゃって……全然落ち着かないよ」
    「って、触って確かめるのは駄目だって!」
    「自慢出来る体じゃないし」
    「それに……そんな事されたら……私、本当にドキドキして可笑しくなっちゃうから……」


    「笑わないでよ……本当に切実なんだから……」
    「そういう君はどうなの?」
    「君はドキドキ……しない?」
    「……ホントに?」
    「ホントに君も、ドキドキしてるの?」

    「だって、なんか君は余裕そうに見えるんだもん」

    「強がってるだけ?……そうなの?」
    「うぅ……君は凄いんだね。……私なんてドキドキをこれっぽっちも隠せてないのに」

    「……証拠?」
    「君がドキドキしてる証拠……私に教えてくれるの?」
    「えっと……うん、教えて欲しい……かな?」
    「君がドキドキしてるなら……その……私も嬉しいし」


    「って、きゃっ!?」
    「えっ!? えっ!? どうしたの!?」

    「その……急に……抱きしめるなんて……」
    「これでドキドキが伝わるって……確かにそうかもしれないけど……」



    「ううん……嫌じゃないよ」
    「ちょっとビックリしただけ……うん、嫌じゃない」
    「だから、このままで……大丈夫」
    「ううん……このままが……良いな」

    「えへへ……なんかこうしてると不思議な感じ」
    「緊張してドキドキして仕方がないのに、同時に凄く落ち着くの」
    「凄く優しい暖かさで……凄く居心地が良くて」
    「だから……うん」
    「暫くこのまま……離さないで欲しいな」

    「私のドキドキが激しすぎて」
    「肝心の君のドキドキが聞こえないから」
    「落ち着いてきたら、きっと君のドキドキも感じられると思うから」
    「だから、もう少しだけこのまま……」


    「ホントに暖かい……」
    「こういうの……知らなかったな」
    「ずっと一人だったから……」
    「子供の頃からずっと一人で……誰かと添い寝をした事なんて無かったから」
    「いつも一人で寝てたから」
    「だから……君の温もりが凄く暖かくて嬉しい」
    「君の温もりを……ずっと味わっていたい」
    「これは……私がずっと欲しかった温もりだから……」


    「ねえ、もっと君の温もり……欲しいな」
    「もっともっと、君の温もりに包まれたい」
    「良いかな……?」

    「えへへ、ありがと!」
    「それじゃ……えいっ!」

ギュッ

    「えへへ、私からも抱き付いちゃった」
    「これでもっと君とくっ付けるね」
    「もっと君の温もりが感じられる」

    「あっ……くっ付いたら……君のドキドキが伝わってくる」
    「すごい……早いね」
    「それに……凄く激しい」
    「そっか、君も本当にドキドキしてたんだ……なんだか嬉しいな」
    「ドキ……ドキ……君の気持ちが伝わってくるみたい」
    「君の音が伝わってくるって事は……私の音も君に伝わってるのかな」

    「そっか……伝わってるんだね。良かった」
    「私のドキドキが……私の気持ちの全部」
    「言葉じゃ君に伝えられない、私の気持ち」
    「……君の事が好きっていう……私の本心」


    「君は……全部じゃないの?」
    「言葉で私に伝えたい事があるって……うん、聞かせて欲しいな」

    「…………君が魔法を始めた理由……?」
    「私に憧れて……私の事が好きだからって……」
    「それで……魔法を始めたの?」

    「そっか……えへへ、そうだったんだ」
    「すごく嬉しい」
    「じゃあもしかして……私を添い寝に誘うときとかも凄くドキドキしてたのかな?」


    「あっ……どうしたの?急に頭を撫でるなんて」
    「もしかして……恥ずかしくなって耐えられなくなっちゃった?」

    「えへへ、分かるよそれくらい。こんなに君の近くにいるんだもん」
    「君のドキドキが、さっきより早く、大きく伝わってくるんだもん」

    「そっか……君も最初から緊張してたんだね」
    「それでも頑張ってくれてたんだ……嬉しいな」
    「えへへ、またドキッとしたね。なんか面白いかも」


    「ふわぁ……」
    「なんだか……君に撫でられてたら眠くなってきちゃったかも……」
    「君の体温……君のドキドキ……全部が気持ちいい……」
    「今日はなんだか……凄く良い夢が見れるかも」

    「君の全部が伝わってきて……私の全部も伝えられて……」
    「ドキドキしてるのに、幸せで……眠くなってきちゃった」

    「だから今はずっとこのまま、一緒に眠りたいな……」
    「うん……このまま」
    「離さないでね……?」
    「朝までずっとこのままで、君と一緒に寝たいから……」
    「離さないでくれるなら……そうだなぁ」
    「私が先に寝ちゃったら……ちょっとだけなら……」
    「あまり触っても楽しい体じゃないけど……私が眠ってる間なら……良いよ」

    「えへへ……また……ドキッとしたね……」
    「うん……だから……このまま朝まで……ギュッとしたままで」

    「ありがとう……」
    「それじゃ……おやすみなさい……」

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最終更新:2016年02月10日 02:29