世界設定 王都ルエン編


「次に帰る時にはもっと強く……大切な人を何からも護れる盾になってみせますから」

己の剣に信念を込めて彼女は王城を後にする。
凛とした姿に揺らぎは無い。
彼女は目的の為に決意を固める。
今後も大切な人を危険や謀略から守るために。
“未来の王女”を護りきる強い盾になるために。



アルスター大陸の中心都市として謳われるのが「王都ルエン」である。
古来より王制を敷き、王の名の下に組織される王都兵士団は個々の実力もさる事ながら、統率力が非常に高い。
大都市故に数自体も当然に多く、名声も絶えないことからルエン以外の都市からの志願兵も多く所属している。
その圧倒的戦力故に、一つの組織として王都兵士団を世界最強に挙げて異論を唱える者はまずいないだろう。

ルエンはその兵力を活かし、「アルスター軍事同盟」を掲げ、大陸全土の相互安全保障を保とうとしている。
今やアルスター大陸の主要都市・村・町の9割以上がこの同盟への加入を果たしている。
各都市の援軍要請や警護に積極的に兵力を送り出すルエンは、名実ともにアルスター大陸のリーダーと言って間違いない。


古くは王の安全を守るために武力を強化してきたルエン。
元々の土台が無い故に兵士たちが学んだのは、武器があればとりあえずは始められる剣術や槍術、弓術の類であった。

今では主要な戦術として数えられる「魔法」がルエンに根付いたのは歴史の上では極めて最近の事。
ルエン以外の国からの志願兵が現れ始めた頃に、魔法都市デュミナスから流れて来た兵が持ち込んできたのが始まりとされる。
その後、魔法の強力さを認めた当時の王により「魔法図書館」が建設されたのがルエンの魔法史の源流である。
これによりルエンは戦うだけの戦力でなく、背後で研究を行う賢者や魔法使いといった知識的戦力を手に入れることになる。

そしてルエンの魔法が円熟期に入ることになるのは更に最近のこと。

魔法の土台の無いルエンに魔法の考えを広めた初代魔法図書館司書長「ルーナス・エルブ」
光属性魔法に長け治療術を普及させた「サンドラ・アステール」
多くの著作により全属性の魔法理論を大きく進化させた、現司書長の「エリシア・ヴィエント」

これらルエン魔法史に名を残す天才の活躍により、今ではルエンの魔法体系はデュミナスすらも一目置く存在になっている。



人々の暮らしは多種多様である。
先に挙げた他都市からの志願兵の流入により、その家族もルエンに移り住む事が珍しくないため様々な文化が入り乱れている。
その為、生業とする職業は勿論、生活スタイルも多岐に分かれる。
夜行的な活動を主とする住人もいる為、ルエンは夜でも割かし活気に溢れている。

それを配慮してか、活気溢れる王城通りを主に施設を置き、居住区は夜間の閑静さを保つ為に基本的には居住しかない町並みになっている。


多様な民族が集うルエンの町。
当然ながらその姓のパターンも各都市・村の法則性に準拠している。

ルエン人の姓は大きく分けて2つのパターン。そして1つの例外がある。


1つ目は「騎士団の歴史」に由来した姓である。
ルエンが建立された古来の時代は、他所からの志願兵にはルエンの兵士団式の姓が与えられた。
兵団同士の結束力を高める考えから、今のように出生地の姓を自由に名乗ることが許されなかったのである。
そこで用いられたのが、剣や槍、武器や防具、兵団内での役割等から造語された姓である。
志願兵の士気やルエンへの愛国心を高める為に、名誉的な性を取られる事が多かった。

現兵士長の「セシル・シュヴァリエ」が大きな具体例である。
シュヴァリエには古代ルエンでいう“騎士”の意が込められている。

家柄や遺伝子の関係もあってか偶然なのか、現代では基本的にこのパターンの姓を名乗る者は武に達者な例が多いらしい。



そしてもう1つが「原住していたルエン人」に由来する姓である。
他所の志願兵と対照的に、当然ながら生粋のルエン人は生まれたままの姓をそのまま名乗っていた。

ルエンは南には海、西に行けば森、東には平原に山、と兎角自然に溢れる地形である。
故に古代のルエンでは溢れる自然に対する敬意の念もあってか、自然に由来した姓が主であった。

勇者として名高い「カイン・ラズワード」に、先述した「エリシア・ヴィエント」が例である。
ラズワードは“空” ヴィエントは“風”を意味するとされている。



最後の1つの例外であるが、これは王制都市としては当然の区別なのだが「王族の姓」である。
建立から脈々と続く王族の血筋には民間人とは違う姓が充てられている。

例は姫君の「テレス・ルエン」
王族は姓として都市の名を冠した“ルエン”を名乗っている。
姓だけで王族を誇示する為に初代の王が名乗ったのが始まりである、

尤も、近代の世代の王には「ルエン」の姓を誇示しようだなんて考えは更々無いようだが。
そもそも、自由姓が認められた今では、低い確率ではあるが別の都市の別の由来から来た「ルエン」という姓が被ったりもするらしい。

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最終更新:2016年10月10日 04:30