「ふん。この程度の敵とはな」
刀を仕舞い、魔神の残骸を見下ろす退魔士の長、“久瀬”
相手にしていたのが所詮、五階級魔神
レッサーデーモンなのだから当然の結果と言えよう。
五階級魔神に分類される物は範囲が広く、上位ともなれば油断も出来ないのだが今回は下位だ。
「五階級魔神でも下位の部類……こんなものでしょ?」
余裕の表情を浮かべながら戦いの感想を述べる“
みずか”
彼女も久瀬が率いる久瀬派の退魔士として久瀬と共に行動をしている。
彼女たちの背後には同じく残骸となった魔神たちの姿。
久瀬派というだけあってその退魔の威力には目を見張るものがある。
「さて、今日の所はここまでにしておこう。みずか、他の者に連絡を……」
そこまで言った所で久瀬は場の雰囲気が一変した事に気付く。
今までのような五階級魔神では引き起こせない程の力を感じる……。
元凶は四階級……否、三階級魔神レベルもあり得るだろうか。
とにかく強大な力が大地の一面を支配し、飲み込み始めていた。
「まさか! こんな所にここまで強大な魔神が居るとでも言うの!?」
雰囲気の強さを悟り、冷静さを失うみずか。
確かに久瀬もこの事態は想定の範囲を大きく超える力が満ちているのを感じとっていた。
ふと、頭上から剣を持った人型の生物が三匹、不気味な唸り声を上げながら降りてきた。
「新手の魔物と言った所か……面白い」
雑魚ばかりとの対戦に飽き飽きしていた久瀬は、口元を緩めると鞘から刀を抜き、戦闘態勢に入る。
殺傷意欲に駆られている魔物三匹など、冷静に対処すれば楽勝な仕事の筈だ。
「この魔物自体にはそれほどの力が無いみたいね。私の水の魔法で片づけてやるわ!」
未知なる力の出所が不明で完全に冷静とは行かないが、みずかも強気に戦闘の態勢に入る。
この辺りの姿勢も流石は久瀬派の一員と言った所だろうか。
魔物の一匹が久瀬に剣を振り翳して襲いかかる。
が、久瀬は動じることなくその剣を掻い潜ると魔物の腹部を一閃した。
瞬時に崩れ落ちる魔物をやはり久瀬は表情一つ変えずに見下ろす。
残りの二匹の魔物を見据えながら久瀬は面倒な何かの始まりを感じていた。
最終更新:2009年12月08日 18:16