バサッ!!
赤いマントを覆っていた人の正体は、なんと……
チルノフのあこがれの存在だった『
レッド』であった。
「やはりお前だったか、レッド!」共に観戦していた者たちもかなり驚いていた。
チルノフはというと、勿論歓喜していた。それもその筈、まさかこんな処で師匠に出会うことになるとは…
更に念願の夢であった師匠レッドを超える事を、成し遂げることができたからだ。
しかしレッドは、これから何処かへ行くようなセリフを言った。
チルノフは初め…旅にでも出かけるのかと思ったが、違った。
レッドは「望みを果たした。これで安心していけるんだ…。」と言う。
その発言で誰もが絶句した。
そう、レッドは………
もう既に、死んでいたのだ。
辺りが悲しみに包まれた。
「 あぁ・・・・・俺の体は疾うに尽きた。ここにいるのは・・・未練を抱いた魂。自分を超えるほどのものが、自分に挑んでくる・・・そしてそいつが俺を超越する・・・。それが俺の・・・望みだった。 」
レッドは嬉しそうな顔で言った。
あまりの絶望に、周りの声など全く耳に入らなくなってしまったチルノフ。
そんなとき、レッドはチルノフに相棒を置いて行くといい、彼女にあの
ピカチュウを譲ったのだ。
チルノフはピカチュウを抱きしめた。
「こいつには・・・寂しい思いをさせてしまう。だが・・・きみのようなトレーナーがいれば、きっと・・・・・」
レッドの体が段々と薄くなっていく。
だがチルノフは泣かず、彼の手を握った。
「レ、レッド先輩…!…私、レッド先輩のためにも…頑張ります!!」
そしてレッドは「 ・・・・・おやすみ ぼくのピカチュウ・・・・・」と、呟いてこの世から消えてしまった…。
絶望のあまり泣くことができないチルノフ。しかし周りは皆おいおいと泣いていた。
泣くことのできないチルノフはただピカチュウを抱きしめた。
ピカチュウは抱きしめられ、彼女の悲しみを痛い程理解した。
「 …私のパートナーになってくれるか?」
チルノフはピカチュウに問う。ピカチュウはそれに黙って頷いた。
全てが終わったと思いきや、チャンピオンの奥の間から誰かがやってきた。
感動物の後は敵が出てくるのがお決まりだとは分かっていたが、こればかりは感動してしまう…。
「…マサラタウンのレッド・・・彼は誰よりも人とポケモンの共存を望んでいた。ボクに取って、彼はこの世の神様ともいえる存在だ…。」
奥の間から出てきたのは……Nだった。そう、彼はすでにレッドを倒して新チャンピオンとなっていたのだった。
Nの突然の出現にチルノフは我に返った。
それは、英雄Nとの決着だった。
Nは一部始終をずっと奥の間から見ていたのだった。そしてこう言った…
「彼のような人間がいれば、この世界の人とポケモンは仲良く渡り合えたはずだ。…けど現実はそう甘くはないね。彼がたった今亡くなった以上、もうこの世界も終わったようなものだ。 」
その言葉に怒り心頭に発したチルノフは、Nを睨みつける。
だがNは何事にも動じない。ただチルノフを見つめていた。
伝説のポケモン同士での決着を望むN。すると彼は突然片手をあげた。
「…地より出でよ!プラズマ団の城!このポケモンリーグを囲め!! 」
突如、ポケモンリーグ周辺で大きな揺れが発生した。
しかしこれは地震ではない。なんと、リーグの真下の地面から巨大な城が出現したのだ。
巨大な城はポケモンリーグを囲み、更にたくさんの黒い橋がリーグに突き刺さった。
Nは、あの巨大な城で全てを終わらせようと宣言した。
これが、本当に最後の戦い…
運命を賭けたラストバトルが今、始まろうとしていた…!
最終更新:2011年01月06日 21:43