”2011年1月19日 PM 12:12
CIA中庭”
”司令部から警報が入った。特殊部隊は直ちに行動を取れ。これは訓練ではない。繰り返す、特殊部隊は——”
俺の隣で五月蝿い程鳴り響く警報音、赤く光るランプ
どれもが緊張感を俺に与えた。手に滲みだしてきた気色悪い汗を握り潰すように俺は自然と握り拳に変えていた。
アイツの戦いに何かを期待しているのか、それとも俺がアイツが死ぬ所をこの目で見れる為か。
後者に違いないな……
レインド、貴様の命もここで尽きるのだ……
カオス界の英雄、レインドは足下の雪に大きく足跡をつけていた。
両腕を同じ様に構え、戦闘態勢に入る。
前方からはぞろぞろとサブマシンガンやランチャーを持った兵士が集まってきた。
「ほ、おい、見ろよアレ、人一人だぜ?なんだよクロフォード司令官も大げさだなぁ!一人の為に俺達特殊部隊を呼んだってのかよ」
「ふひひひ!だけどよ、アレ捕まえて司令官のところに連れて行けば俺達も階級とか上がるんじゃねぇのかな?」
ざわめく兵士達を前に、レインドは態勢をそのまま、冷静な表情で居た。
「ざっと……数百人は居るよな……」
「いや、司令官はアイツを殺せとご命令だ、容赦なんざいらないだろうよ……俺が仕留める!」
一人の兵士がサブマシンガンからレインドに向けて螺旋状に回転する一つの弾を発射する。
弾は一気にレインドとの距離を縮めていった。
しかし
「だが、数分で片付く……かな」
彼は顔色一つ変えず、弾を二本の指で止めてみせた。
その光景を見て兵士達の半分は何があったのか分からず、弾が反れたのだと考えていた。
もう半分は……
「あ、あの野郎…銃弾を止めた……だと!?」
彼が銃弾を止めた事に気づき、一気に顔を青ざめた。
「う、うてぇぇえぇえ!とにかくうてぇぇぇぇぇ!」
野太い声が響き、前線に居る兵士はレインドに向けて弾倉の全てをレインドに向けて撃ちこむ。
無数の銃弾がレインドと距離を縮めていった。
そして外れていった銃弾が彼の周辺で砂の混じった雪を跳ばし、彼の姿を眩ませる。
終いにはロケットランチャーが十発は彼に向けて発射されていく。
奇妙な軌道を描きつつ、彼の元で弾は爆発を起こし、煙が一気に登り始めた。
……
兵士達の間で微かな笑い声があった。
しかし
煙が晴れたところでレインドの無傷の姿が見えると
兵士達の間で沈黙が走る。
するとレインドは口を尖らせた笑みを見せ
「殺さないでおいてやるから安心しろよ、慰謝料は払わないけどな」
手元に小さな気を溜めて兵士達に向ける。
「う、うわぁぁぁぁあああああああああああ!!!!!!!」
弾倉を打ち尽くした兵士は別の武器に切り換え、ランチャーはリロードを繰り返す
そして先程同様、無数の銃弾とランチャーが彼を襲う。
それと共に彼はその銃弾の方へと走り出した。
”2011年1月19日 PM 1:00 CIA司令塔”
司令塔内にある一つの扉がゆっくりと開かれた。
俺はその扉を開かれた瞬間、それだけで正直、死という狭間が見えた気がした……
「よぅ、クロ…」
返り血すら浴びていないレインドが扉が開いた所で見えた。
特殊部隊がやられたのは何十分も前のことだ。その情報を取得した時、俺は急いで全部隊を奴のもとに連動させたが……
まさか……
全員コイツ、一人にやられたというのか?
「安心しろよ、俺は誰も殺していない……お前の部下は一人として減ってないよ…怪我はしているけどな」
余裕の笑みなのか、それとも俺を侮辱するようなその表情は何とも気に食わない。
俺はおもむろに腰に装備していたデザートイーグルを取り出し、銃口をレインドに向けた瞬間に発砲した。
「お前の力じゃあの世界を征服するのは無理だ、諦めてここで大人しくしな……」
その言葉が聞こえたのは、俺の腹辺りに肘が鋭く当たった後だった。
「うごぉ…あ、がぁ……」
銃弾は壁に減り込んでいる……つまり、今俺の目の前にいるのは
「れ、レ…イ…ンドぉ……」
俺は…地球人を救えないのか……?
か、身体が……重く……
……
俺は姿勢を直し、クロから離れる。
すると奴は俺に向けて手を伸ばしながら、ゆっくりと重い身体をふかふかなカーペットの上に倒した。
「やれやれ……一服したいな……こりゃ」
俺の勝ちだな、クロ
〜完〜
最終更新:2011年07月30日 21:55