―― 東国大総統室 ――
人の判断基準は実に曖昧だ。人間の全てに於いて言える事だが、この世に存在する何十億もの人間のそれぞれが全く持って同じ事で同じ道に進もうとするかと言えばそれは違う。
類似する物はあれど、完全一致するなど、有り得はしない。
身近な事で言えば『家庭の為に働く』という一つの事柄は多くの人間が抱える物だろう。
だがその1つのカテゴリからさらに無数に分けて『判断』される。母の為、父の為……そしてそこからまた更に……
無限回廊のように続くその基準が全く同じになるなど、まずないものであろう。
私はそういった判断をして来た上で、己を削り誰かの為に動く、という人間を尊敬し愛している
ギイイィィィィ……
リチャード「彼のような人間を……(明らかに歪んだ魂を抱えているような悪人面を開かれた扉の方へと向け、ソファの上で脚を組み、家で過ごしているような隙だらけの格好で腰掛けている) 」
ジェクサー「ゼェ………ゼェ……ゔッ!!!(大総統室の扉が開かれ、数人のSPに取り押さえられた状態で苦しそうに息を荒げ、リチャードから離れた位置のカーペットに両膝をつける)リチャード――ッ 」
リチャード「すっかり人相が変わったな……第2完成型Rウイルスはどうだ?快楽を味わえたかね?おっとすまない…その顔を見れば一目瞭然だったな、気に入っていただけたようで何よりだよ……(見下すような冷笑を浮かべ、ジェクサーの感情を揺さぶるような煽りを入れる) 」
ジェクサー「た゛ま゛れ゛!そのお粗末きわまり゛ない 悪人面にここからでも爪先で一筋タトゥー入れる事だってできんだぞ――ッ!! 」
リチャード「威勢……度胸がいいのはどうやら相変わらずのようだな。最強の
灰色の戦士、いや……無色の戦士時代からその無謀な勇気は変わらんようだな…それで、この私にひと傷居れてどうする?私の傷は国の傷だ……それでもやるというのか? 」
ジェクサー「国がどうとか人がどうとか――ヴァハッ!(紅い塊をカーペットに吐き出し、呼吸が乱れ体が上下に揺れる)そ、そんなん最早俺の思考回路には存在しねぇ…ッ!!! 」
リチャード「バッ(片手をあげ、SPにジェクサーを解放するように指示)いいだろうジェクサー………傷を入れろとは言わない、私を、お前の、好きにしろ(立ち上がらず、余裕のある座り方のまま冷気を放つような口調を放つ) 」
ジェクサー「――(SPから解放されると、弱々しく脚は震えながらも立ち上がり、ウイルスによって再生された常人より肥大した腕を上げ、リチャードの目の前までゆったりと、ゾンビのような足取りで近づく)お望み通りに―― 」
リチャード「私を仮に殺したとしても、我々の部下は貴様を追わない。貴様はこれからその醜い姿で自由に世界を歩き回れる。ウイルスが回りきるまで、人としての生を『真っ当』出来る(皮肉めいた事を淡々と述べる)代わりに貴様の想い人には、現段階の貴様と同じ目にあってもらおう 」
ジェクサー「――ッ!!(下ろす動作に入りかかったその腕を止め、人間の顔として認められなくなった右顔にすら戸惑いの表情が浮かぶ)テ、テメェ…そのハッタリで命乞いか……? 」
リチャード「この選択は一度君に与えた物だ。二度目だ。君の自由を取るか、想い人の命を取るか……ほら、利己的な人間を見て来た君ならばどちらを選ぶべきかは分かるだろう?灰色の戦士を潰した私を殺せる。仇討ちが出来るのだ。結構な事じゃないか。あの世の仲間もさぞ喜ぶだろう?たかが1人の命、君ならばどうという事なく捨てられるだろう?私の命と、共にーー 」
ジェクサー「グググ…ガッガガ…ッ!!!(喉から血を出しながら絞っているような声を出しながら、リチャードを見下したまま上げた腕が微かに揺れ、汗の代わりに血が体を沿う) 」
リチャード「……ジェクサー、正直になれ。君は、正義の味方に成り損ねた”疫病神”なんだから……想い人の1人や2人死んだところで何も変わりはしない。自由に真っ当に生きようじゃないか?(矛盾が生じた言葉を彼に優しい口調でありながら心を抉るようなトーンで見上げたまま口角を上げる) 」
ジェクサー「ギギギギギィ…ァァァ…ッ!!(左目からは純粋な涙が零れ、右目からは血の涙が左目よりも多く流れる)ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!(地底からきこえる幽鬼の声のような叫び声をあげながら、力なく腕を下げリチャードの目の前で両膝をつき顔を上げる)うっ…あぁぁぁ――ッ!! 」
リチャード「私は君に二度も自由になる選択を与えたのだが、どちらも放棄するとは変わった奴だ……ならば君をただ生かす訳にもいかない訳だ。そしてただ生きてる訳にもいかないだろ?ジェクサー・プロドマッド……さぁ、私にどうして欲しい?そしてどうされたい。どうされたいか言ってみろ……(姿勢を一切変えず、ジェクサーを見下したまま) 」
ジェクサー「テメェの為に何だってする……何だってするさ……テメェの元でどんな事だってやってやる……これまで以上に、例え俺が納得行かなくてもテメェのその面を満面の笑みにしてやる!!!だから
アンティは……アンティだけはせめて…………頼む……ッッ!!(上半身を落とし、土下座するような形でリチャードに懇願) 」
リチャード「(人の判断基準は実に曖昧だ。想い人一人の為に私のような『悪人』の言う事をに従う程にな。これがこの男でなければ、また違う反応、要望をするだろう……私が会った中で、この男の反応は随一”楽しい”ものだ……)『約束』しよう……君は私のエージェントだ。ジェクサー……今こそ、『悪人』の為に『正義』の人間に成る時……どうせ短い命だ。楽しく生きようじゃないか…想い人の為、私の為、自分の為に…… 」
ジェクサー「―――恩に、着る……リチャード……ッ!(歯を食いしばり、己の行動が望んで事だと言い聞かせるようにリチャードに感謝の言葉を贈る)恩に、きります……ッ!! 」
リチャード「(さてと…正義の名の下……)ならジェクサー、これから言うところに君は行き、指示通りに動いてくれ……まずは―― 」
――――ザァァァァァァ――――
その日、一つの村は大剣を持つゾンビのような男に壊滅させられ、その村が何故襲われたかなど、誰も知る由もなく血は広がっていった
To be continued...
最終更新:2014年10月18日 21:13