閃劇のリベリオン過去ログ Ⅵ.2

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―― 闘技場前 ――


BGM♪



フーナ「おめでとう、氷冬!これで十刀剣武祭に出場できるね!」

スカーフィ「かぅ~♪すごいよ氷冬!ものすごーく強くなって帰って来た時も驚いちゃったけど、本当に出場するなんてね…!とにかくおめでとう♪」

氷冬「二人とも…ええ、ありがとう。二人が支えてくれたから、ここまで登れたんだもの。感謝しているわ。(ふふっと微笑む)」

フーナ「そういえば、本番の大会まで四ヶ月の期間があるけど…また修行に励むの?」

氷冬「ええ、そのつもりよ。さっきの試合を通じて…まだ私には足りないものがあると気付いたから。それに…(ASや雛菊、彼らの他にも控えている剣豪たちの像を思い浮かべる)…今の実力では、まだ『世界』に辿り着けないからね。」

スカーフィ「かぅ~、氷冬はがんばり屋さんなんだね!えらいっ!(氷冬の頭をなでなで)」

フーナ「そっか…わかった。何かあったら連絡してね。こっちも連絡するから。…それと、クロリアーのことは私たちに任せておいて。氷冬には大事な大会があるんだから、できればそっちに専念してほしいからね。」

氷冬「ぅ…(撫でられてデフォ顔)助かるわ…本当は私も協力しなければいけないんだけど…ここはフーナたちに任せるわ。」

スカーフィ「うんっ、ボクたちが何とかするからねー!クロリアーを取り戻して、氷冬が優勝すれば、これ以上ハッピーなことはないよっ♪」

フーナ「しーっ!(慌ててスカーフィの口を手で塞ぐ)クロリアーのことは人前で大声で言わないのっ。」

スカーフィ「もぎゅ…!?しゅ、しゅみません…(しょんぼり)」

氷冬「ふふっ…(そんな二人のやりとりを微笑ましく見つめている)」

メタナイト「そこにいたか。(闘技場から姿を現し、三人のもとへ歩み寄る)…氷冬、十刀剣武祭への出場おめでとう。実にめでたいことだ。」

氷冬「あら、メタナイト。…ええ、ありがとう。二人の協力あってこそよ。」

スカーフィ「えっへへ…照れてなんか、ないんだよー?(てれてれ)」

メタナイト「ははは、そうか。……さて、喜んでいるところ水を差すようですまないが、君たちの耳に入れておきたいことが二つある。一つは…百刀剣武祭でも猛威を振ったあのゴルドニアファミリーが、昨夜―――― 一家全員が何者かに殺害された。」


BGM♪



氷冬「……っ…!?(あの嫌な気を放つ一家のことね…)…戦い方こそは気に入らなかったけど、相当な実力者であることは確かだった。…そんな奴らが全員ですって……(聞き返すようにメタナイトに)」

メタナイト「ああ、死因は全員…「感電死」だった。だがこれは、ゴルドニアファミリーに限った話ではない。敗退した大会出場者のほとんどが失踪したり、死体が発見される事件が相次いでいた…」

フーナ「それって、まさか政府が絡んでいるんじゃ…例のバトルロワイヤル世界大会でも似たことがあったじゃない…?」

メタナイトいや、もしも政府の者の仕業だとしても、死体や痕跡などは跡方もなく処理するはずだ。それに、犠牲者の中には政府の偵察部隊も含まれていたからな。おそらく快楽殺人者か…何らかの目的があって殺人を犯している者が、会場内に潜んでいたということだ。幸いにも観客には被害は及ばなかったようだが…」

フーナ「そう、なんだ…(観客以外の人物が標的になっている…快楽殺人者にしては違和感のある行動だね。力のある人物だけを狙う…明らかな目的があると踏んで良さそう…)」

メタナイト「ひとまず百刀剣武祭が終わったわけだが、例の殺人犯が次の十刀剣武祭でも事件を起こす可能性はある。くれぐれも気を付けたまえ…特に、氷冬。相手は、あのゴルドニアファミリーでさえも殺した、得体の知れない存在だ。」

氷冬「…肝に銘じておくわ。(鋭く目を細めて頷く)」

スカーフィ「かぅ…なんだかこわいね… …あ、そうそうメタナイト、もう一つの話は…?」

メタナイト「ああ、そうだな。これが我々にとって最も大事なことだ。……本物のクロリアーの在処が判明した。」

スカーフィ「ふぇ!?ほ、本当…!!?……ぁ…(思わず大声を出した自分を制するように自ら口元を両手で覆う)」

メタナイト「やはり睨んだ通りだった…この大会の運営陣のバックに、強大な『何か』が潜んでいる。『その者』がクロリアーを運営に提供したことが、事の発端だったということだ…」

フーナ「そうなんだ…ますますあの世界大会の面影を感じるね。クロリアーを何処で入手したのかはともかく、どうしてその剣を大会に提供したんだろう…」

メタナイト「それは…私にもよく分からない。『研究』がどうの、と…言っていたが…現状が情報不足な為、いまいち理解しづらいところではある。だが、大会優勝者にクロリアーを所持させて何かを企んでいることは概ね予想できる。先日君たちにも話したように、あの剣を手にすれば呪いによって精神を蝕まれてしまう。おそらく、そのクロリアーを制御し、剣の真の力を発揮することで…クロリアーの本当の姿を研究したいのかもしれないな。」

氷冬「何にしても、思い通りにするわけにはいかないわ。剣を取り戻さないと、惨劇は必ず生まれるのだから。」

メタナイト「その通りだ。罪剣は何としても、我々が取り戻さなければならん。…そして、その在処なのだが…十刀剣武祭の会場に指定されている、West・D・Landにある巨大闘技場だ。今は厳重に警備が施されていて中へ入ることは困難を極めるだろう。故に、会場内への潜入は、来年開催される十刀剣武祭の当日に実行する。」

フーナ「わかった。じゃあ、それまで外部で情報収集しないとだね。」

メタナイト「幸いにも、我々以外に、我々と同じ志で罪剣奪還を試みている同志たちがいるようだ。近々彼らともコンタクトを取り、人数を増やして奪還計画に臨もう。」

氷冬「……(表情が徐々に陰っていく)」

スカーフィ「かぅー!なんだかやる気出てきたよー!!……?どうしたの、氷冬…?なんだか、元気ないよ…?」

氷冬「…?ぁ…ううん、気にしないで。……はじめは、自分の実力を確かめる為に大会に臨んだ…でも、その裏で剣や刀が絡んだ様々な事件が巻き起こっていて、少し、気が動転していて…(額に手を添えて)」

メタナイト「……剣士として、分からなくもない。人は大いなる力を求める。その力で個々の野望を成し遂げようと目論む者もいよう。力を得るために他人を傷つけ、欺き、いつしかそれが繰り返され…混沌とした惨劇が生まれる。だがそれは、誰も止める者がいなかったからだ。」

氷冬「……?」

メタナイト「大いなる力に振り回される人々に、暴力ではなく他人を守るために力を振うこと…それを説く者がいなかったということだ。何故なら人の心は脆い。自らが傷つき崩れることを恐れるあまり、ただその混沌の中で、事が鎮まるのを待ち望んでいた…しかし、待つだけでは何も変えられない。誰かが行動に移さなければ、何も変えられない。…君たちは行動力がある、だからこそ…『英雄』と呼ばれるだけの資質がある。」

メタナイト「氷冬、今は…この混沌とした現実に翻弄されることもあるだろう。だが、迷うな!お前が進むべき道はたった一つだ。その為に仲間がいるのではないか。」

氷冬「……!(メタナイトの言葉に、フーナとスカーフィ、二人の顔を見つめる)」

フーナ「…大丈夫だよ。私は氷冬を信じてる…だから、氷冬も私たちを信じて。」

スカーフィ「今まで三人一緒に乗り越えてきたんだもん、大丈夫♪ボクたちがついてるよ!」

氷冬「…フーナ…スカーフィ… ……そうね、私ったら…何を考えているんだろう…(かけがえのない存在のありがたみを思い知り、込み上げてくる感情を抑え込む様に苦笑する)」

メタナイト「…それでいい。君は頂点へ行くのだろう?ならば振り向く暇はないだろう。…あとのことは、我々に任せろ。」

氷冬「ありがとう、みんな……―――――――」



――― そうだ、 はじめは…自分の生きている証が知りたくて、刀を手にした。―――


――― でも、大切な友達と出逢って…もう一つの生き方を知った。 ―――


――― 私は、この刀で、大切なものを守りたい。 ―――


――― その為に強く、今よりも強く、もっと強くなろうと決めたんだ。 ―――


氷冬「――― 私、もっと強くなるよ。 ―――」




――― とある丘 ―――


ヒ ュ ォ ォ … ッ … (冷たい秋風が吹きつける殺風景な丘の上… そこに、ひとつの墓があった)


氷冬「ザ…(冷たく吹き付ける風をその胸で受け止めながら、その墓の前に現れる)……久しぶりだね、『銀閣』。元気にしていたかしら。」


BGM♪



氷冬「…「鈍」、取り返してきたよ。(鞘に納まったままの斬刀「鈍」を墓の傍に添える)…うん、やっぱりその刀は貴方にお似合いね。(ふふっとほくそ笑む)…今でも思い出すよ、貴方と出逢った時のこと…刃を交えた時のこと…そして、互いの意思をかけた決闘の日のことを…」

氷冬「貴方の傍にはいつだって、その刀がいたよね…それが、「貴方の守りたかったもの」だから… そんな貴方の生き様がかっこよかったから、私も…何かを守るために刀を振うことにしたわ。……?……!(ふとその時、墓の傍に突き刺さっていたもう一本の刀を見つける。それは、鈍と共に供養した自分のかつての愛刀「冬空」だった…)」

氷冬「……そうか…(何かに気づいた様に納得し、静かにその冬空の柄を手に取った。突き刺さった刀を抜き取り、鞘に収まったままのその刀を両手に横たわらせて見つめる)……スチャ…(鞘から刀を抜き出す。中から姿を現したのは、半分の刀身を失った冬空… 傷だらけ、罅だらけのその刀を見つめて、静かに胸に添える)」

氷冬「…そうだよね…「鈍」が貴方のもとにあるように…「冬空」も私のもとにあるべきなんだ…(冷たい刀身をその肌身で感じ取り、静かに納刀する)…ごめん、銀閣。そういうことだから…やっぱり、この「冬空」は、私が持つよ。思えばこの刀が…私が初めて手にした刀だったから。(赤子を胸に抱く母親の様な温かい眼差しで、冬空を見つめる)」

氷冬「ありがとう…また、貴方から一つ、大切な事を教えてもらった気がするわ。……もう行くよ。行かなくちゃいけないところがあるんだ。この刀たちと一緒に…友達と一緒に…―――――― 大切なものを守りに。(「冬空」を手に、冷たい風に髪を靡かせながらその場を後にする)」

黒着物の剣豪「――――――― ああ、行って来い。 ―――――――(去りゆく彼女を見送る様に、墓の上に腰かけた亡霊が微笑みかけた―――――)」

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最終更新:2017年07月31日 12:05