閃劇のリベリオン過去ログ Ⅹ

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キリギリス「―――――熾烈な剣戟が鳴り止まぬ【十刀剣舞祭】ッ!! 今宵も刺激的な一時を約束しましょうッ! さぁ、それでは参ります!! 第七試合ッ!! ルドゥラ vs ユキだああああああぁぁぁぁぁぁっッ!!! 選手はステージへどうぞォッ!!!

ルドゥラ「(刀を左手に、ステージへと歩いてくる)……、……(感情の揺れはなく、終始無言のまま) 」

ユキ「 ~♪ (鞘に納めている刀をくるくると弄びながらステージへ上がる) 見てたわよ、貴方の試合。思いっきりバチバチしましょう?(目を細めて笑み、舌舐めずりをする) 」

キリギリス「両者で揃いましたァ!!それでは、試合――――――――― 開 始 ィ ィ ァ !!!  」


BGM♪



ルドゥラ「……(今までの対戦車とは違い、ユキの仕草や挑発に一切の反応を示さない。ただ、じっと睨みつけるように対峙する) 」

ユキ「 ダ ッ !! (開戦の合図と同時に弾丸のように飛び出す。コンクリートを踏み鳴らす靴音が加速度的に大きなリ、ルドゥラへと真正面から接近していく) 」

ルドゥラ「(抜刀の構えも、殺気も敵意もみせず、ただ無形にてユキを睨みつける。まるでそこだけポッカリと穴が開いた虚空のような静けさで) 」

如水「ふぅ、間に合ってよかった。この大会は一剣士として是非見たかったからな。(観客席の上にて) 」

大剣使いの男「……(本大会のダークホース(エルキドラ)を撃ち破ったあの女…序列一位の勢いは止まることを知らず。…対して奴はこの剣戟にどう乗り出す…?)(客席からユキを見つめ、そこからルドゥラへと一瞥を与える) 」
槍兵「あ、あいつ確か…あのウサギ(ランドルフ)をむごたらしく殴りまくった奴だよな…?相手がいくら序列一位とはいえ、あんな奴を相手に大丈夫なのか…?(声と身を震わせながら) 」

ユキ「―――――(……? なに? 全く動きがない…前回のエルキドラと似たタイプ――いいえ、違うわね。とにかく、理解するには斬り合うのが一番手っ取り早い―――先手は頂くッッ!!) チンッ!!  ヴ ォ ン ッ ―――――(鯉口を切り、風音と共に開いていた距離を一気に詰めルドゥラの眼前へと現れる)―――― 」

アラモス卿「フェッフェッフェッ…笑止。最後に笑うのは剣を極めし最強のつわものだけよ。 」

ユキ「―――― 覚 悟 ォ ッッ ! ! !   ヴ  ォ  ンッ!!!  (目を見開き、無の空間へ突如吹き荒れる突風の如く横一文字の一閃を彼の胴へ見舞う) 」

ルドゥラ「――――ッ!!(カッと眼を見開くや鞘に納めた状態の刀でその一文字を防ぎ、ソレとほぼ同時の動きで腕を振り上げ勢いよく前に突き出す。音速突破の空手の正拳突きが勢いのまま向かってきたユキの顔面へと飛ぶ) 」

ユキ「――――――― っ (見開いた瞳が縮小していく) 」


――― ッッ ドッ ゴ オ オ ォ ン !!! (ルドゥラの正拳突きとほぼ同時に爆音が響き、ルドゥラの遥か向かい側にあるフィールドの壁の一部が崩れる)


ルドゥラ「フ ゥ ゥ ゥ ウ ウ …(一呼吸、向かいの壁の惨状を残心を以て見据える。)真正面から居合で斬りかかってきたその度胸は、認めてやろう。 」

ユキ「――――かッ……げっ―――ッほ……ッ…!!(激痛や鼻から伝う血に顔をしかめ、ルドゥラの向かいにあるフィールドの壁に叩きつけられていた。片膝をついて砂煙にむせながら血唾を吐く)…お手本のようなカウンターね…(口角をつり上げ、痛みを感じながらもくすくすと嗤う) 」

ぼうれい剣士「な、何が起こったんだ…っ!?(瞬く間に吹き飛んだユキに驚愕を露わにする) 」

セイバー「素手です!素手ですよアサシン!あれは剣士同士の斬り合い、誇りをかけた闘いとしてどうなのですかアサシン! 」

ルドゥラ「……フン。(ユキの身体の頑丈さに笑みを浮かべながら、)――――ザクッ!!(なんと、刀を鞘ごと地面に突き刺し、素手となる)―――ギュッギュッ!(両手をもみほぐすように、動かしながらゆっくりと近づいていく)……さて、どうでる序列一位。 」

佐々木小次郎「剣を手に取るは常に『必殺』の証を立てた刹那のみとする剣士もいるさ。結局のところ、勝負を決する一閃を除けばその他一切は術理の一部に含まれるであろうよセイバー(座椅子に正座し茶をすすり)あれは単に手数や旨さで切り結ぶような悦に浸る享楽者でもなかろうて。さて見ものだな、何時抜くか、如何様にして斬るか。 」

ユキ「あら、お褒めに預かり光栄だわ……最初はこれって決めてるの。"逃げも隠れもしない、私はここだ"と目に物見せるために。今回は恰好がつかなったけれどね。(コンクリートの破片や埃を払いながら立ち上がり、再び素手で向かってくるルドゥラを見据え、どこから現れたのかも知れぬ光蝶が周囲をふよふよと漂い始める)どう出るかって? 無論―――(――霜晶ノ夢『序』――『破』――)―――斬り伏せるッ!!!(体から蒼白の気を放出し、自己強化を二段階開放) フ ッ !! (瞬間移動と見紛う疾さでルドゥラの正面に現れる) 」

ルドゥラ「―――――善(よい)。(両の腕に霊力が集まり、装甲が出来上がる。)――――『ベオウルフ』 (強化されたユキに立ち向かう様に、ジークンドーに近い構えを取る) 」

如水「刀を置き、徒手空拳で相手をするだと? ……わからんな、なぜそんなことをする。奴は、何を企んでいるのだ?(うぅむ、奴の剣、読めぬ……そもそも、ルドゥラ・ヤマトの名は裏では知られるものの、どんな剣を使うかが未だ知られていない) 」

ユキ「―――(剣を抜かずに私を倒そうってつもり? ……上等。 なら、嫌でもその剣、抜かせてあげるッ!!)―――ン゛っッ!!!(ルドゥラの腹部へ狙いを定め、踏み込みと同時に刺突を繰り出す) 」

ルドゥラ「ヌッ!(繰り出される刺突を躱しては弾く。その度にベオウルフにヒビが入っていく。鋭い刺突にとうとう耐え切れなくなった直後)ウ゛ゥラ゛ァアッ!!(上段中段の二段蹴りをユキに放つ) 」

ラーヴァ「ふむ……単純な魔法とは全く異なるようだな ジジ…(観客席側でタバコをふかし、フィールドの両者を見下ろしている) 」

佐々木小次郎「いやさ読めぬという意味合いにおいてはあの雅な一輪の花もまた同義よな。剣士が立ち会うて抜かぬというのは責められた者でもあるまいが奇怪であろうよ。そのような得体の知れぬものに、己が技一つを惜しげなく晒すとは。余程、信の置ける剣技であると見える。さて、これ如何に 」

ユキ「フッ!(上段の蹴りをダッキングで躱し、)ガギッ―――――(中段の蹴りを刀の"柄"で受ける――)(――重、たッ――)――― メ …ゴッ!!(蹴りの衝撃が伝わり、身体を支える両足がフィールドのコンクリートを引っ掻くように数十センチえぐる)ガギンッ!! シャラ―――(柄で受けた足を突っぱね、ストンと腰を低くして素早く納刀する) 飛ばしてくわよ――――――― 」


――― 柊木流 壱ノ型 ―――


ユキ「――――――ジャギィィィィィィ!!!(刃と鞘の摩擦に寄る火花を散らしながら高速抜刀し、下方から真上へと打ち上げるような、冷気を伴う斬撃を繰り出す) ヴ ォ  オ ォ ン  ッッ! ! ! ! 」


―――【裂晶】―――


ルドゥラ「―――ッ!!(ユキの剣気が一瞬にして変わったのを目の当たりにする。壱ノ型による先ほどとは違う抜刀一閃。それをベオウルフで防ぐ―――――が)バキキィイイイッ!! (ベオウルフが冷気で一瞬にして凍り付き、続く一刀と衝撃波によりいともたやすく打ち砕かれる。) 」


ズガアァアアアーーーーッ!!!(今度は先ほどとは正反対。ルドゥラが向かいの壁に叩きつけられる)


ユキ「スゥ… フゥゥゥ―――――(ピンと張り詰めるような神妙な表情を浮かべて向かいの壁に叩きつけられたルドゥラを見据え、深呼吸をする) ……お味はいかがかしら? 」

ルドゥラ「……スゥゥウ、ハァ……。(一呼吸置き、垂れ下がった髪を勢いよくかき上げる)……――――、名を、何といった?(突如漏らしたのは意外な言葉)……貴様本人の口から聞こう、名をなんという? 」


メリメリ、と会場が揺れ動く。悪魔のような闘気に吸い寄せられるかのように、ルドゥラの剣が手元に戻っていく


ユキ「(ルドゥラの意外な言葉に目を丸くするが、刀を正眼に構え佇まいを直す)―――――柊木雪。いつか、必ず最強の剣豪になる者の名よ。覚えておいて。(冗談を言っている様子は微塵もみられず、凛としたよく通る声をルドゥラに届ける)……貴方の名も聞かせて頂戴。貴方自身から聞かないと、意味がない(振動する会場に動ずることなく彼の名を問う) 」

ルドゥラ「…ルドゥラ・ヤマト。流派は、ない。(一瞬にして周りに幻影剣が現れる)……余興とばかりに思っていたが、訂正しよう。ここからは、容赦なく死を……与えてやらんとする。(幻影剣の一斉発射、だが、狙いはユキではなく、会場の壁やステージの壁。ミサイルが撃ち込まれたかのように爆発が起きるや莫大な煙がステージを覆う。その煙に覆われながら一歩また一歩と前に出て、ついには見えなくなる。―――これはまさに、剣術や武術とはかけ離れた、『殺し』の術そのものである。今までの剣士のように誇りや名誉ではなく、己の腕だけを戦場で披露する『戦法』) 」

如水「(なるほど、流派はなし、か。合点が行った。奴の剣は戦場で使われる、手段や手順にとらわれない自由な剣。使えるものは使い、捨てるものは捨てる……ある意味合理的な戦い方だな) 」

ユキ「上等。私も出し惜しみはしないわよ―――――(張り詰めていた表情がようやく崩れ、変わりに現れた表情は―――『笑み』。楽しくて愉しくてたまらないと言わんばかりの笑みをたっぷりと浮かべる) ――――――――(刀を正眼に構えたまま静止。吹く風、漂う塵の一粒までその肌に感じるまでに感覚を研ぎ澄ませる) 」


ヒュンヒュンヒュンッ!!(突如、煙の中からユキの背後目掛けて鋭い凶器と化したパイプラインの破片が2枚。次に右方からは疎らな大きさに尖ったガラス片がいくつも飛び交ってくる



ユキ「―――――   ズバン!! ザギンッ―――(振り向きざまに二閃、パイプラインの破片を斬り捨ててその場から駆け出す)―――ヒュン! ヒュンヒュンッ ヒュウッ―― ドスッ! つッ…!!(ガラス片から逃れる最中、太ももの腹にガラス片が鈍い音を立てて突き刺さる) 」

ルドゥラ「(まるでその隙を伺っていたかのように、ヌラリと現れる。それこそ、構えや乳房で見えないくらいに地面スレスレに構え、そこからユキがやったように25kgもの日本刀を抜刀一閃。下方から胸部を斬りあげるように鋭い斬撃を放つ) 」

ユキ「(気配!?どこ――――下ッ!!) ズ バァアッッ!!  (気づくも遅く、僅かに身を引いて致命傷は避けるもルドゥラの刃はユキの身体に沈み下腹部から胸部へかけて一閃を刻み込まれる) ブシャアッ…!! く…ッ…!(鮮血が噴き出し、顔をしかめる。しかし、彼女の頑強な精神力によってそのまま怯むことなく反撃に出る)―――ヴンッ ヴォオンッ!!(下方へ向け袈裟斬りを繰り出し、そのまま突きの連続攻撃を繰り出す) 」

ルドゥラ「(すぐに状態を戻し、連続突きに対し)―――ガキン、ブォン! キン、キン、ガキィ!(袈裟切りをさばき、抜き身の刀身の長さを活かし防御を行う。)ブォン! ヒュバッ!!(ロングコートを翻しながら、乱風のような斬撃と足技拳技の牽制を放ちながら、ある一種のヒット&アウェイを確立させていく) 」

ユキ「ガキンッ! キンッ ヴンッ カキャアンッ フォンッヴォンッ!  ギンッガン! キンッ ガギィインッ――――!!(息もつけないほどの高速な一進一退の剣戟を繰り広げ、甲高い金属音や地を風を斬る衝撃が会場を揺るがす) ギィィインッ――――(火花を散らし、ルドゥラの斬撃のひとつを受ける。25kgという日本刀にしては破格の重量である得物、そしてそれを片手で振るうルドゥラ自身の膂力を合わさり、刃が交錯する度に尋常では無い衝撃が全身に伝わっていく―――)―――く――ふふ―――あはっ 」

ルドゥラ「まだだ、まだ足りん……。(バックステップで後方へと飛ぶ。同時に無数の幻影剣がユキに射出されていく。どれもが高密度の霊力を有したミサイル以上の威力を持った飛剣)ズドドドドドドドドドドッ!!(流星のように、光線のように、それはいつかみたSF映画のワンシーンのように、美しくも残酷な幻想的風景を見せながら) 」

ユキ「――――(圧倒的窮地にも関わらず、彼女は非常に"生き生きとした"表情を浮かべた)――――あはは!あははははははは!!!もっとよ、もっと!!まだまだバチバチし足りないッ!!!(霜晶ノ夢――――――――――) 」


―――――【糾】―――――


ユキ「――――バリィイインッ!!!(巨大に生えた蝶翼が砕け散り、蒼白の塵となる。蒼白の塵は刀とユキ自身の身体へと吸収され淡く光を発する呪印が体中に刻み込まれていき、紫紺の瞳が蒼の輝きを宿す)―――――――――。(ルドゥラが放つ飛剣。その軌跡が魅せる幻想的な景色に僅かばかり目を奪われる)―――い――く―――わ――――よ―――――ォォォォォォオオオオッ!!!(刀が白光し、大きく振り被る) 」

ルドゥラ「……ッ!(ユキの姿が変わったのを視認。直後に刀を納刀する。呼吸を整え、適度な脱力を自身にもたらす。そして、ユキの行動をじっと見据える) 」


ユキ「   氷 翼 刃 ・ 雪 華ァ―――(振り被った刃を解き放つ)―――  晶 ッ  閃 ン゛ゥッッ!!!!(ユキを中心に、急激な冷気を伴う巨大な斬撃波が直径100mもの扇状範囲を幻影剣もろとも蹂躙し、ルドゥラへと迫る――――!!)  」

ルドゥラ「……見事、というべきか。この高み。(一掃される幻影剣を見、ついには押し寄せてくる斬撃波。)……よかろう(一言漏らし、抜刀の構え。)柊木雪……貴様には怒りではなく、敬意を評し、オレのこの技を披露しよう。……―――――ッ!!!!(瞬時に抜刀。しかし、タイミングは誰がどう見ても早すぎると言えるほどの抜き際。しかし、そこで不可解なことが起きる) 」


神速の抜刀により、刀身が空間を綺麗に斬り裂いた。斬り裂かれた空間は刹那の間その美しい斬痕を残した後、周りの空間の座標軸及び次元を複雑に歪めながら、爆発的な引力を起こす。それはユキの攻撃に比例した大きさ顕現し、鏡で光が反射し別の方向へ行くように、斬撃波の進行方向を次元の歪みや空間軸の屈曲により、そのまま屈折させ、別の方向へと飛ばしていく。……この間僅か1秒に満ちるか満たぬか。パチンと納刀するルドゥラの姿。


如水「まさか……ありえん……。……空間を素早く綺麗に切り取ることによっておこる空間断裂からの急速な空間修復。……―――『空間の戻し切り』だと!? 」

ユキ「―――――――(目の前で起きた現象に自身の目を疑い、愕然とする)―――――――…ば、ッ…… ゴクッ……… 馬鹿な………っ(『未だに信じられない』とでも言いたげに間の抜けた声を漏らし、全身に玉のような汗が浮かび、頬から喉元へと伝い流れていく) 」

如水「居合の極意は「鞘内の勝利」…刀を抜かずして勝利する、それが概念だ。だが、そんなものを実戦で出来る者などいない。……だが、奴はやった……、抜刀こそすれど、相手の攻撃を否した。まさにあれは、敵を斬らずして敵を制す、その体現ともいえる技だろうな……(ごくりと生唾を飲む) 」

ルドゥラ「強いな……、洗練された強さだ。だが、返せる強さだ。……そして(次の瞬間、ユキの後方に瞬間移動)……Die(■)!(真後ろからの神速抜刀。首、腰椎、脚を狙った殺意そのもの) 」

ユキ「さすがに…ここまでの剣士だとは想定外だったわ。或いは、零士に匹敵するほどの―――――くっ!!こ、のッ――――!(即座に振り返り、首、腰椎への斬撃を受け流しバックステップで脚への斬撃を回避)――― ズ キ ッ … … ! (霜晶ノ夢の行使による消耗で身体に激痛が走り視界がぐらりと歪む、鼻血がツゥと垂れ地面を朱で濡らす)(まずい……そろそろ決着をつけないと、身体がもたない…ッ!) 」

ルドゥラ「力……そうだ、まだ足りん。力を……もっと力をッ!(それは虚ろな言葉だった。まるで見えもしないもに憑りつかれているような、小さくも力強い願望)……貴様にとってはそれは多大な負荷が伴う強化なのだろうな。決着をつけたいのならすぐにでもつけてやろう。―――言っておくが、俺は自分自身に2つの封印をかけている。この身にかせた2つの封印、貴様にとけるか? (再び納刀し、ユキにゆっくりと歩み寄らんとする) 」

ユキ「ふっ…冗談。こんなに楽しい斬り合い…終わらせるには惜しいくらいよ…ッ…!(ニィと戦いに飢えた獣のように)――――封印…!?あなた、まだ自分の力に枷をかけているというの…ッ!?(正眼に構え、ジリッと地面を踏み鳴らす) 」

ルドゥラ「枷……か。俺自身は枷とも思ったことはないが……。 ――――戦いの悦はいらない、血に酔う性も必要ない。俺がただ求めるモノは、更に強大な力。今のままではまだ足りん、何もかもが足りん。力なき者は滅びゆく……、俺は滅ばん。その為には、今以上の力を求めるだけだ(まるでうわ言のように呟きながら鯉口を切る。殺気や敵意ではなく、最早暗黒に近い”虚無”をその身にまとわせている)……どうした、斬って来い。斬って、斬って、斬って……俺の力の糧となれッ! 」

ユキ「―――――(ルドゥラのうわ言を聞き、その一部に共感を覚える)……けど、虚しいわね。貴方は私を見ていない…いえ、見えていないのかしら。……貴方は、その先に何を見ているの――――(柄を握り直す)失礼、柄にもなくちょっとしんみりしちゃったわ。ここらで仕切り直しといきましょうか(―――とはいえ、この消耗…振れて数刀が限度。確実に一刀を叩き込む…!!)―――――ダッ!! はぁぁぁぁぁあああああッッ!!!(勢い良く駆け出し、再び横一文字の斬撃を繰り出す) 」

ルドゥラ「――――――。(瞬時に抜刀の構え、しかしこんどはユキと同じ左抜刀。相半身の状態でユキを待ち構え、ユキが横一文字を繰り出した直後に行動を起こした)―――ブォオン!!(一気に地面に沈み込むように構え、その勢いを利用した神速一閃。だが、狙うのは胴体ではない。狙うはユキの横一文字に使用する"腕"。ユキの腕と刀身を交差させるよう☓状にすべりこませる。そして)ブン、ズガァアア!!(その一閃を振り抜いた後に、器用に左腕を使いユキの腹目掛けて、撫で斬るような斬撃を放つ) 」

ユキ「(速ッ――――――)  ズ シュア ッ!!!(腕への神速一閃。切断は免れたが、確実に骨は断たれる深さで決まる)ヅっ――――(目を見開き、強く歯噛みし激痛に耐える。刀を左右で持ち替えて反撃に出ようとした瞬間、芸術的とも呼べる流れるようなルドゥラの腹部への斬撃を受ける)―――― ズ  ッッ バァアンッ!!! ―――――…あ゛…っ…――――かッ…(ルドゥラとすれ違い、夥しいほどの鮮血を撒き散らしながら数歩そのままよろめく) ハッ……ハッ……ル…ドゥラ……ルドゥラ………っ(虚ろな目でルドゥラを視界に入れ、緩慢な動きで接近する)……ふっ……ふふ… 」

ユキ「ふふ……は……あっははは――――(勝つ…この男を…斬って、斬って勝つ……あたしが、強い。あたしは最強の剣士になるんだ―――――)――――――(クロスレンジに入った瞬間、刀を振り上げ――――)―――――ごぷッ………… ド サ ッ (吐血し、再びルドゥラとすれ違うように地面に倒れ伏した) 」

ルドゥラ「―――ビュバッ!!(大きく血振りの動作をし、ゆっくりと納刀する。)まだだ……まだ足りん……力を、もっと力を……ッ! I need more powerrrrrrr!!!(天に向かって怒りとも悲しみとも取れない雄たけびを上げる) 」

キリギリス「き―――ききき、決ィィィィィィまったあぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!! 文字通りに会場を縦へ横へと震撼させるほどの壮絶なる戦いを制したのはァッ!! ルゥ―――ドゥラ選手だぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!  」


うおあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーッ!!!!!!!(勝者のルドゥラへと向けられた観客の大歓声が会場一帯に響き渡った)


ルドゥラ「―――ッ。(ロングコートを翻し、ステージを後にする。その間、一瞬ユキの方を見たがすぐに視線を戻した) 」



キリギリス「―――――激戦に続く激戦!息をつく遑を許さぬ【十刀剣舞祭】ッ!! さぁ、いざ参りましょう!! 第八試合ッ!! ルドゥラ vs オリヴィエだああああああぁァァァッ!!! 選手はステージへどうぞッ!! 」

ルドゥラ「……(いつものように気難しそうな顔で首を鳴らしながらステージへと上がる)次は誰だ……誰も構わん。剣も槍も、矜持も……何もかもを圧し折ってやる 」

オリヴィエ「  カツ ッ (西洋拵えの日本刀を鞘に収め、ブーツを戦場の床に打ち鳴らしステージに佇む)–––––– ス…(伏せて沈黙を守っていた顔を、瞼を上げ眼前に見据える壁<ルドゥラ>を直視した) 」


―――その壁が要塞が如く重厚で、頂が如く高く聳えることは、ユキとの舞を刮目したならば、それが剣士ならば五感で感じられる。だが決してそこに恐怖は伴わない、なぜなら――――


オリヴィエ「(–––––––この景色を眺めるため、一族の誇りも、孤独に震える己も断ち切って、海を渡ったのだから)––––––––キンッ(腰を低く落とし、納刀した刀の肢に手を添え起き、ルドゥラを、ただ1人の剣士として見据える)–––––始めましょう。いざ、尋常に…… 」

キリギリス「両者で揃いましたァ!!それでは、試合–––––––––…… 開 始 ィ ィ ァ !!! 」

ルドゥラ「(開始の合図とともに、オリヴィエに向かって歩き出す。珍しく鯉口を少し切り、いついつでも斬撃を放てるように)力を……もっと力を……ッ! 」

オリヴィエ「ト……トト……ト…トッ トン ト ン ッ  (一歩、一歩、一つ結びにした髪を揺らしてルドゥラへ向け歩み出し、徐々に踏み込みを早く、確実に取りに行く速度で飛脚し間合いを詰めに向かい) ト  ン  ッ   (ルドゥラよりもさらに向こう目掛けて飛び、互いの交差領域<クロスレンジ>へ真っ向から飛び込み、水中を掛けるように時の進が遅く錯覚する刹那に抜刀し)––––––ヒュ  オ ォ  ッ  (すれ違いざま、真一文字の居合を穿とうとする) 」

ルドゥラ「――――ッ!(オリヴィエの水のようにしなやかで軽い踏み込みに、若干反応が遅れる。それはほんの一瞬彼女の姿が"消えた"と錯覚してしまうほどに)ガ キ ィ ッ! (だが、速さで来るならこちらも速さで応戦。指で鯉口を切りつつ、左手で鞘を握り持ち上げ、鞘を引くと同時に本身を抜き放つ)―――グォォオン!!(鋼鉄は異様な剣気の叫びをあげオリヴィエに飛来する) 」

オリヴィエ「 ツ”……ァァッ!! (助走と加速の助け合って圧を増した一閃、だがそれもルドゥラが穿つ剣の咆哮に競り負け、衝撃は雷のように全身に巡る) ギィンッッ!!(だがこれを刃の角度を曲げることで刃の上を滑らせ、衝撃を受け流しながら居合を振り抜き、互いに背を向け駆け抜ける)ザザッ ギュ オッゥッ(そして振り抜いた際の勢いを殺さず、追撃を許すまいと牽制するように駒が如く回転斬りをしつつ距離を離す) 」

ルドゥラ「ほぉ、美味いッ!(口角を緩め、オリヴィエと同じように回転しながらその回転切りをガードするや)ぬんッ!(左手の鞘を勢いのままオリヴィエに投擲する。鉄拵えのそれはプロペラ回転を繰り出しながら距離を離すオリヴィエに迫ってくる) 」

オリヴィエ「ザシャァァ……キィ ン (追撃を免れ壁際まで後退し反撃に出ようと振り向き側刃を水平に構え直そうとするが)ッ–––––––!!(瞬間、既に衝突する皮一枚まで迫っていた鞘に目を奪われ瞳が凝集する)  パァ ン ちィ…ッ!(投擲した鞘が刀を握る左手を捕らえ、刀は中空2m程へ投げ出され円を描くように回転し、地上に残されたオリヴィエに隙が生じる) 」

ルドゥラ「キ ィ イ イ イ ッ!(奇声の様な雄たけびを上げながら、右八相の構えでオリヴィエに疾走する。最早倒れているのではないかともいえるほどに体勢を低くした疾走は、地面を抉りながら狂気を孕んで"死"を運んでくる) 」

オリヴィエ「(やはりこの男は全く”読めない”……! 武士や侍、剣士や戦士、そんな”型”に嵌るような男ではない……けれど–––––) ガ ッ (ルドゥラの”死”が到達するまでの0.01秒、彼女は咄嗟に残った右手を腰の鞘に添え、握りつぶさんばかりに握りしめ) 破 ァッ!!(”気”を練りこみ桜炎を纏う一振りのヤイバが如く輝くそれを、低姿勢で向かってくるルドゥラの顎をめがけ三日月の軌跡を描き振り上げる)(–––––それは、ここに集った全てに言えることだ。ここに集う全てが一振りの斬撃に等しい剣豪!!) 」

ルドゥラ「――ッ!?(オリヴィエの三日月が迫る。無理矢理に顔を反らし躱すが)ズジャァアーーーッ!!(左の肩が切っ先で抉れる。だがそれに負けじと右八相からの右袈裟をオリヴィエに繰り出す) 」

ルドゥラ「(この小娘の驚くべきは肉体的な速さもそうだが、実際はその咄嗟の判断だ。窮地においてもそのギリギリまで状況を見極め活路を見出す。……なるほど、根っからの武芸者肌の女だな) 」

オリヴィエ「ズァオ ォ  オ (差し迫る右袈裟、下がるべき道は壁に閉ざされ回避する術はない、命中は必須、首筋に迫ったこれをオリヴィエは) る ゥ ァッ !!!! (振り上げた鞘を、”背車刀”の要領で腕を”「”型に折り込み、鞘を左肩と垂直に立て、さやの先端に左手を添え両の手で抑え、右袈裟にぶつけ防御を試みるが)ギギギギギャリ ズシャァァ!!(勢いを押し殺しきれず鞘は左肩に切れ込みを入れ赤が吹き出る) 」

オリヴィエ「 ヒュォ   パシッ(だがその刹那の攻防の合間、先に弾かれたオリヴィエの刀が彼女の元に降り立ち) パ シ ッ  ヒュ  ォ  (左手から鞘を手放し、素早く刀を掴み取って小振りな横薙ぎで牽制しつつ、ステージの端から端へ瞬間的にスライド移動する) 」

ルドゥラ「フゥ……フゥ……(肩から噴き出る血を忌々しく叩くように抑えながら、オリヴィエの動向を視認。)すばしっこい奴め……(空間に現れる無数の幻影剣。切っ先は動き回るオリヴィエを正確にとらえつつ)シュバババババッ!(艦隊からのミサイル攻撃のように飛び交う。ルドゥラも放ちながらオリヴィエを追いかけんと疾走する) 」

オリヴィエ「スー…… (先にルドゥラが刻みつけた一筋の傷から絶えず赤が滴り落ち、床に小さな血だまりを作り出す。肩で呼吸をし、空を埋めつくさんばかりに飛び交う幻影剣、焼け付く一閃の痛み、その一つ一つから目を反らさず) ┣¨ウ ン (大気に風穴を開けるように、円形状のステージの外壁をなぞるようにして駆け出し、ステージを瞬く間に半周し、跡には幻影剣が突き刺さる) 」

オリヴィエ「(食らい付け、目の前にある細い道筋へ。しがみつけ、確かにそこにある生へ……!)┣¨ッッッ(丁度半周しきったところで踏みとどまり、ルドゥラへ直進するよう軌道修正し、矢が如く駆け出す。その際に生じるラグを見逃さず幻影剣は降り注いだ)ギィンッ!! ガ ォンッ!! ギャリィン…ガカァッ!!(それを右への払い、ブロー気味の凪ぎで二本は弾き、一本は頬を抉り、目の前に迫った一本を)ヒュオ…ッ(跳躍して交わし、水平に滑空しルドゥラへ迫る) 」

ルドゥラ「(あれを全てやり過ごし、自ら道を切り開いたか……)――――スッ(刀を正眼に構えオリヴィエを待ち構える。不動にして無我。ただ敵の参るところに刀を振ればそれだけで術理は叶う。ゆえに不要な念は無用)――――――。(殺気も敵意も消え、ただ純粋に漂う風のようにオリヴィエを待ち構えている) 」

オリヴィエ「––––––【絶刀・飛鳥ノ型】(ここに来て初めて、言葉を発する。それは冷ややかで、彼女自身が一振りの刃であるように) 【其ノ一式】 (ルドゥラへ間合いを詰める0.数秒の間、彼女の周りには無数の桜が浮いては塵を繰り返し、華の色彩のオーラを纏い、平突きの構えを取る) 」


――――― 【渡月桜華】―――――


オリヴィエ「   キュ   オ (ルドゥラとの交差領域に至っていないも関わらず、届かない突きを放とうとする) 」

ルドゥラ「(――――手抜かりか? 愚かな、散れぇい!)(カッと眼を見開き正眼からの唐竹割。美しくも正しい直線を描きながらオリヴィエの頭蓋目掛け放つ) 」

オリヴィエ「つ……ッ––––––––(頭蓋めがけ放たれる凶暴な一撃、決して小さくない恐怖が彼女を人の未使用と迫るが、彼女はそれごと貫かんとばかりに、届かない突きを、真っ直ぐ腕を伸ばして放ち)  ザシッ…(それが頭部に皮一枚触れた刹那、彼女の姿が消失した) 」


パリィンッッ!!  (ガラスが砕けるような絶叫が響く。空間が複数の層になって砕け、斬撃を放ったルドゥラとすれ違うように一筋の斬撃が一筋の閃光となって駆け抜ける。そこには一切の酸素すらない虚無が生じ、それが収縮すると同時に)


オリヴィエ「 ト ン ッ(オリヴィエが既に、次の突きの構えを取って、ルドゥラの背を向けるステージの端から駆け出そうと……再び、この『次元跳躍』を伴う突きを穿とうとしていた) 」

佐々木小次郎「–––––– ほう。とどのつまり『空間ごと突き穿つ』と言ったところか。そこに虚を作り、距離、間合い、全てを消し飛ばし、無の間を駆け抜ける一閃を作り出す。私も『人の身のみで織りなす魔法』などと宣われる術技を編み出したものだが……はっはっは(最も、さような大道芸一つで打ち果たせる手合いではなかろうが……) 」

ルドゥラ「ぬ!?(次元跳躍。その物理的速さを超越したであろう彼女の所作に驚愕。だが、次に来る攻撃にすぐさま反応するかのように転じ、体捌きで向きを反転させると同時に向かってくるオリヴィエに横一閃)」 」

オリヴィエ「(–––––ルドゥラ・ヤマト。天をも穿つ居合を潜り抜け、夏の陽光すらも閉さんばかりの凍てつく閃撃を超え、尚も歩みを止めず)–––––さすが、いい反応ですね。けれど”眼”で、”五感”で追う内はまだまだ……ッ!!(理解を求めず、ただ孤独に歩む求道者。私とて、理解できるとは言い難い、けれど……) 」


ギィィィン ッ  !!(互いに一閃を振るって駆け抜る。その際もオリヴィエは次元を超え、にも関わらずルドゥラの一撃は彼女の腹部を掠め赤が噴き出していた)


(その純粋な力に、私は敬意を表する。そして今ならわかる、私はこの男に勝ちたい……!冥府で極めた魔剣(卍解)を、虚空すら超える居合を、あなたと渡り合った最強の一振りを、その全てを”観た”私の、全力でッ!!)


オリヴィエ「ギュオ ッ   ズァァア!! (振り向き樣、一切の躊躇なく再び次元跳躍を伴う突きを穿つ、それも今度は––––––彼女自身が光そのもであるかのように、桜色の閃光が尾を引いて曲線を描くようにして順応無人にステージ全体をか巡り、次元跳躍に注ぐ次元跳躍で、四方八方から僅かなタイムラグで連続して突きをルドゥラ一点めがけ放っていく) 」


ルドゥラ「……ッ!(この速さ! いや、最早速さなどという言葉では生温い)……見事ッ!(ぐっと歯を食いしばり衝撃に備える。いくつもの閃光が集結するようにルドゥラを貫いていく。鮮血をまきながらも不動のまま仁王立ちをつづける) 」

オリヴィエ「(–––––まだだ、まだだろうルドゥラ・ヤマト!あなたの死地はここではないだろう!!)オオォォォォォォォオォオォォォオオォォッ!!!(自らが駆け抜けた残光が絡み合い、それすらも自ら目視できるような状況、彼女は真っ向からルドゥラへ直進し–––––)–––––征くぞルドゥラ・ヤマト!!我が絶剣の一ッ!その身に刻むがいいッ!!!!(ステージ端から彼めがけての刺突を伴う駆け出し、その際に弾かれた空間は衝撃波となって会場全体に広がり、雷が如き一閃が彼へ飛来した) 」

ルドゥラ「(オリヴィエの渾身の刺突。避ける術なく真正面からその腹部に受け、衝撃でステージの端へと叩きつけられる。凄まじい轟音と共に砂埃が舞う)――――(ゆらりとその中から立ち上がり、血塗られたまま向けるは)――――ニ ィ ィ ィ ィ ィ イ (それはなんとも不気味な笑み。今までの戦いでは見せなかったであろう貌である) 」

オリヴィエ「–––––ビッ(刀にこびりつく血潮を軽く払い、その一部始終、砕いても尚存在するような壁を目の前ににして彼女は)––––– フ (恐怖と歓喜を迎えるようにして、冷や汗を首筋に滴らせ微笑する)(確かに入った。確実に、屠るつもりでいた……けれどこの男……事実上、最大の壁たる存在かもしれない、ともすれば……)チャキッ (鍔鳴りを冷たい沈黙に響かせ、刃を水平に構える。再び、いつでも次元跳躍が行えるように) 」


ルドゥラの纏う黒い鎧にヒビが入りボロボロと崩れ落ちていく。その裏側にはびっしりと白い文字が描かれていた。それもかなり古い年代の文字だ。なにかの呪文にすら見える。


ルドゥラ「…… 」

ルドゥラ「……よもやこの段階でこの姿をさらすことになるとはな。(鎧が完全に砕け地面に舞い落ちる、そして)――――褒めてやろう小娘。その例として、俺の辿り着いた境地にして封印指定……今こそ破らせてもらう!(そういうや蒼いコートをバッと脱ぎ捨てる。コートの裏側にも魔力で編まれた文字がびっしりと薄っすらと描かれていた。) 」


鎧とコートの裏にあった呪文、それは自らの力を極限まで抑え込む封印の呪文に他ならない。封印が解かれた今、現実となって起こったもの。 ―――空が軋み、大地が唸り、揺れ、大嵐と化した剣気が闘技場の周りの家や木々、車、橋、高層建築物。それら全てを巻き込みながら天高くあふれ出てくる。その猛威はまさに"龍"。 ……彼の背中に、血濡れながらも堂々とした形相の青竜が描かれていた。


ルドゥラ「さて、封印していた分どれだけ力を蓄えられたか……。(鞘を霊力で引き戻し、ゆっくり納刀。いつもの無行に戻る)だが、足りん。……まだ足りんッ! 力を、もっと力をッ!! 」

オリヴィエ「(––––––それは、まさに彼とだけ共有できる一つの世界。その他一切が滅び、投げ出されたかのような虚無感の真ん中に取り残される感覚。天変地異の領域まで至った彼、いや一つの災厄を前に少女は––––) ザッ  ええ、より強く、より鋭く……究極の閃撃を。参りましょう、我らが試合舞台へ(息を飲み、剣を構える。それ以外に、彼女は恐怖を表す術すら知らないのだから) 」


剣気は地上の全てを押しのけんばかりにあふれ出て、尚且つ天をも揺るがさんばかりの咆哮を見せる。無形の剣気は"破壊"を象り、力への渇望を世界に刻み付けていく。


ルドゥラ「次元跳躍……練り上げしその武、大したものだ。……来い、俺の"力"を見事超えて見せろ!(しかし尚も力への意志は止まることはない。境地に至るもそれを断固として拒絶する。更なる高みへ! と) 」

オリヴィエ「(冴え渡る剣気、深海に包まれたようなこの戦場の風景。立ちはだかるのは1人の剣豪、少女は独り、彼と向かい合いながらにしてそこよりもさらに手前を見据えていた)––––––(きっと、あなたの眼に映るのは私の技でもない、私の技でもない。それはきっと、私と同じ敵に違いない)––––––キィンッ(剣を鞘に収め、”居合”の形を取り、腹の底から気合を吐き出すように答える) 応!オリヴィエ・リンドヴルム、推して参るッ!!(地を蹴り、大気を裂き、ルドゥラ・ヤマトという存在に見出した”己”という壁に、彼女は脇目も振らず、一歩の踏み込みで血を削るように滑空し飛び込んだ) 」

ルドゥラ「フ ゥ ゥ ウ ウ ウ ……(深呼吸。脳内に意識が集中し、視野がはっきりととれる。彼が象るのは斬撃への型ではない)―――ヌ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!(雄叫びと共に踏み出す震脚。無論の事それは大地を揺るがすが……)――――ボゴォッ! ガガガガガガッ(隆起した地面と共に、時間と空間といった次元に存在する要素に大幅な"亀裂"と"揺らぎ"が生じていく。海神ポセイドンの怒りが海に嵐を巻き起こすように、山の神の怒りが雪崩と噴火を起こさせるように。次元跳躍において、それは裸足で熱した針のムシロを駆け抜けさせるのと同義であろう次元変革をもたらした) 」

オリヴィエ「–––––––––ギュォォォ(次元を駆け抜けることは叶わない、かといって空間に生じた歪みを物理的に貫通することも困難を極める。これを踏まえオリヴィエは納刀していた刀を抜きはなち)–––––(元よりこの剣は人を斬るために有らず、開けぬ夜に、止まぬ雨に、立ちふさがる全てを断たんがための己が架け橋!いざ、押し通れ!!万象の理を切り開いてでもッ!!)【絶刀・羅生門ノ型】(一歩、空間の層の壁を前に踏み止まり、”左足”で大きく前へ踏み出し) 」

オヴィエ「万花……–––––登楼ッ!!!!(上体を大きく右へ傾け、腹部をねじるようにして縦一文字に軌跡を入れ、居合を抜き放つ)   ギュ   オ   (目の前の次元には、次元ごと消失させた際に生じる小さな球体状の”虚無”が生じ、それすらも、真っ二つに両断され)  キ  ィィィ  ィ   ン   (空間の消失と同時にオリヴィエはそれを埋め合わせるように吸い寄せられ、ルドゥラとオリヴィエの間に、互いの剣が届くであろう間合いが生じた) 」

ルドゥラ「(空間の戻し切り……と似て非なる、か。その覚悟やよしッ!!)ギギギギギギッ!(天と地とを脅かしていた膨大な剣気がルドゥラという一点に集結、そして)――――Dieッ!!(抜き際の一閃、刹那、周囲は無音と化し、剣の煌めきのみが空間を支配する。そして)―――――――ッ!!!(形容しがたい轟音と共に剣気をまとった神速抜刀がオリヴィエに向かう) 」

オリヴィエ「ッ––––––  (防げない、交わすこともできない……ならッ!)  ギュ   オッ!!(単純な打ち合いにおいて、ルドゥラの剣には威力、速度共に及ばない。それを踏まえて防御も回避も不可能と断じたオリヴィエはそれが”来る”と察知すると一歩前へ、さらに踏み出し)ン ア ァ ァ !! (ルドゥラの居合の要である、右手へ向かって片腕の袈裟斬りを振りかぶって)ギッ…… ゾ  プッ  (生半可に引けば確実に胴体を両断されていたところを、前へ強引に突っ込み間合いをずらすことによって腹部への深い切れ込みのみに抑え、赤絵の具の塊を零すように溢れる流血を無視しルドゥラへ切り込む)あ"あぁぁァァッ!!!! 」

ルドゥラ「小娘がぁああああッ!!!(無茶をしてまで、自分の命のギリギリのラインまで突っ込んでくるオリヴィエにこれまでの対戦者以上の何かを感じ、思わず激昂)ヌァアアアアッ!!(体を強引に捻り左手に持つ鞘を鈍器代わりにオリヴィエに渾身の力で振り抜こうとする) 」

オリヴィエ「–––––– 私は。  ガ  ァ   ンッ (袈裟斬りが到達するよりも早く、鈍器よりも鋭く重厚な鞘が頭部に直撃すると踏み、振り上げた腕をルドゥラ自身から鞘を握る腕へ変更し、腕を振り下ろし、殴りつけるようにして柄頭と鞘をぶつけ合って鍔競合いになる)イヅキさんと切り結んで目覚め、ギコ侍さんと戦い思い至り、あなたと向かい合って確信した(ギリギリギリ)最たる力を有する敵は、最強の敵は、吠え哮り、求めるまでもなくそこにいた……!この世に生を受けて、ずっとそこにいたんだッ!! ギギ…ギギギ……ッ 」

ルドゥラ「――――ッ!?(オリヴィエの見事ともとれる神速的な判断に目を見開く。この少女は剣以前に必要なものを多く持ち合わせている。今この瞬間そう確信したのだ)……ほう、して、その最強の敵に……お前はなにを望む? (ギリギリギリギリギリッ!!)何者をも斬り裂く最強の力か? 何人をも寄せ付けぬ無敵の力か? ―――貴様は剣の何に道を聞くというのか! 」

オリヴィエ「––––––私がッ!!(一歩、防御も必殺も捨て前へ身を乗り出し小さな獅子は吠え猛る)私が!己であり続ける事、生涯立ち向かうであろう最強の敵、オリヴィエ・リンドヴルムであり続けることだッッッッ!!ただ抱かれるだけに幸福を覚える1人の女でもない、ただ一族に繁栄をもたらす武士でもない!!己であり続け、己と戦い続けるために私は––––– (これまで、彼女の代名詞であった可憐さをかなぐり捨てるように彼女は–––––) 」

オリヴィエ「  前  へ  進   む  ッ  !! (全身をこれ一振りの刀のように頭を振り上げ、ルドゥラの頭部へ頭突きを繰り出そうとした) 」

ルドゥラ「……―――――(オリヴィエの叫び、その姿に今の自分、かつての自分を重ねた。それは、まぎれもなく……)―――― や っ て 見 せ ろ ォ !!(同じく頭突き。龍のような厳つい形相でオリヴィエとカチ合わせる) 」


――――― ルドゥラ・ヤマトと相対した刹那、彼女の脳裏に最初に浮かんだ二文字は『勝利』であった。それはきっと、己の慢心ではない、きっと己を打ち負かすであろう、己よりも遥かに強い剣豪であろうルドゥラ・ヤマトへ送る賛辞であった。


だが同時に、それを受け入れる自分に対して明確な疑問だけが残った。その疑問は鏡のように鮮明に己の心を映し出していた。


『もう傷つかなくていい、もう無理をしなくていい。野に咲く花でいいではないか、護られるか弱くも美しい何者かでいいではないか』


それは政略結婚の割には、ひどく情熱的な男だったことは覚えている。誠実で、生真面目で……けれど、そんな彼が煩わしくて仕方がなかった。ただ ――――


オリヴィエ「おおオオォォォォオォォオォォォォォ オ オ––––––––– ッッッッ!!!! 」


私が男に生まれたとしても関係ない、ただそこにそのように生まれたからそうあれと、己のあり方を定義されるのが許せなかった、曲げられなかった、だから憧れた。憧れたんだ、一本の刀のように真っ直ぐな、あなた達に――――


オリヴィエ「(川の奔流を眺めるかのように、彼女の頭上で空が、雲が凄まじい勢いで駆け抜けていくのが見える。そこには真紅の花びらが舞っていた) 」


――――― それが強さなのか栄光なのか、動機付けはどうあれ、『理想の己』であり続けようとするあなた達を、心の底から理解したかった。そして打ち勝ちたかった、己に、貴族の娘でしかないか弱いだけの自分に。


オリヴィエ「    ト ッ    ガ  ッ!!   ドッ   ゴッ……   ズシャァァ(ルドゥラとの巣付きの打ち合い、彼女は刀を握りしめたままその衝撃に争うも地に溝を刻みつけながらも吹き飛び、視界を流血で赤く染めながら吹き飛ばされ、ステージの端に叩きつけられていた)  」

ルドゥラ「―――――……。(衝撃により額からは煙のような闘気が。そしてなにより、オリヴィエと同じように噴き出るおびただしい血流。ステージの端に叩きつけられたオリヴィエを一瞥するや、まるで演武のように、賛辞を贈るように大仰な血振りの後、――――……納刀)……見事ッ。 」

キリギリス「き、きき……決まったァ!! 見事、初出場でありながらにしてこの舞台に躍り出、誉ある決勝への道筋を切り開いたのは!!!! ル–––––––– 」

オリヴィエ「     ガッ   ッ    (その勝ち名乗りを遮るように刃を地に突き立て、湧き上がりそうな会場を熱気を断ち)–––––待"っ……て………くだ、さい……(最早意志だけが彼女を突き動かしているかのように、刀を杖にして身を起こす。そして満ち足りた清々しさと、至らなかった己への悔恨の入り混じった、濡れた瞳と笑みを湛えてルドゥラを真っ直ぐに見据え)これだけは、譲れません、譲るわけにはいきません。 送らねばならないの……です……。 ––––––– "勝負有り。" 勝者、【ルドゥラ・ヤマト】 」


―――― この先、もしかしたらあなたは誰かに打ち果たされるかもしれない。けれども、この場において剣を交えた私は知っている……その歩みは孤独で、どんなに答えを問いかけても、それは己に帰るだけの小玉との対話かもしれない。けれど––––––あなたの魂は、決して敗北しない。決して……決して………。


ルドゥラ「……――――フンッ。(コートを手に取り、肩にかける)最後の最後まで律儀な小娘だ。……賜ろう。(相変わらずの仏頂面、しかしてオリヴィエのその言葉を胸に刻まんと、軽く会釈をした) 」


そして男は踵を返す。たった一つの称賛とただ一人の理解を得て。……天下無双も最強も必要ない。ただ力があるという事。ただ強くなるという事。それのみを証として建てステージを後にする、名を――――『ルドゥラ・ヤマト』。

続き

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最終更新:2018年02月23日 20:51