.
男性A「やあバーナード、今日は一段と冷え込むね(上層部とは対照的にのどかな田園地帯。小太りな農夫が桑を肩に提げ道行く人々に会釈を交わしていく)やあ夫人。どうだい、畑仕事がひと段落つくと絵に勢が出るだろう
女性A「おはようバーノン。その代わりとりわけ殺風景でまぁ絵にならない景色だけどねぇ(丸々とした包容力のある体型の女性が簡易椅子に腰掛けキャンパスと向かい合いつつ白地に灰色を乗せていく)」
男性A「元からこのへんだけ風通しが良くないしな(腰に手を当てながらふと、女性のキャンパスの向こう側を見据え)辺鄙な爺さんが引っ越してきたよなぁ全く。他所から厄でも連れてこなきゃいいんだが
––––––キャンパスに書き添えられた下書きに重なる風景。そこには魚の骨が十字に折り重なったかのような見すぼらしい風車が風もないのに回転する小さな古城がポツリと佇んでいた。色彩豊かな緑で飾られた田園地帯とは相反し、その場所だけまるで墓標のように無彩色で塗り固められている
女性B「母さん、釜が焦げてるんだけど……あら、おはようバーノンのおじさん(絵を描く女性とは対照的にスラッとした体型のまだあどけなさの残る女性がエプロンをはためかせながら駆け寄り、ふとその絵に目を留める)ちょっ……いくらこの辺にいいモデルがないからってそんなもの選ばなくたっていいじゃない!そこのお爺さん買い物に来るとホントおっかないのよー?【終わるーおわるー(ダミ声)】って。絶対罰当たりなことして変なものに取り憑かれてるんだからあれ–––––––」
Act.2
Day.2
『終わりの景色』
火愚病「もうすぐでつくな・・・(国内をはしる電車に揺られ窓からその殺風景さを一望する。そしてその視線の先の古城にうっすらと目を鋭くする)・・・・ついたか。(汽車が蒸気を噴射しゆっくりと動きを止めると同時にゴトゴトと荷を下ろしながら乗客たちが降りていく)・・・依頼の場所は、あそこだな(ひょっこひょっこと人の行きかうホームを歩き、目的の場所まで進んでいく) 」
ディータ「(火愚病の進む方向の先にはその色彩のない館と、その門前でしきりに腕時計に目をやりながらたわしのようにくしゃくしゃな黒髪を鷲掴みにし頭をかく冴えない男性が)あ、きたぁ……!(糸のように細い目をわずかに見開き、首に巻いていたタオルを端のように降って火愚病へ向かって駆け寄る)やぁやぁ!遠路はるばるよくぞ……!あぁよかった本当に来るとは思いませんでした!(火愚病に嬉々として駆け寄り強引に腕を掴んでくる)お待ちしておりました!ディータ・ビルンバッハです!依頼人のっ!(ブンブンブンブン) 」
火愚病「だぁあああ?!なんこのコミカライズコミュニケーションは。流行ってんのか?!――――あ~コホンッ!!如何にもタコにも俺が反魂師だ。・・・・んで?依頼主の、ん~ディータさんでよろしかったかね? 」
ディータ「ええそう、いやー本当によく来てくださった。レゼリア国とは思えないぐらいなんっもないでしょこの辺(言葉とは裏腹に快活にまくしたてるようにしてはにかみ)長旅でお疲れになったでしょうしどうでしょ、まずはあそこのバーでお茶でも!(背後に構える見すぼらしい城を覆い隠すように火愚病の前に立ち、彼の背後にある木造の平屋をビッと指す、無意識に"目的地"を避けるかのように) 」
火愚病「そりゃいいね、俺としても長旅でコーシーの一杯でも飲まないとやってられない気分なんだ。―――詳しい話はそこでいいかな?(彼の仕草や表情、大まかな動きを観察するように。且つそれを気取られぬ様すまし顔でディータに) 」
ディータ「あ "っ (明るさま気まずそうに間抜けに口をぽっかりと開け)あははハァーン!で、でーすよねー……やっ、失礼しました。ただ遠路はるばる来ていただいたのだからまずは足を休めていただこうと……––––––– 」
パチュリー「 本当に何もないところよね~、ニッポンだとこういうの地方っていうんだってね~(火愚病について行く形で何故か行動を共にしている) 」
––––––\消えちまえ悪魔憑き!/\ご飯がまずなるわ/ ガララララ ピ シャン (ディータが丁度向かおうとしていた平屋から罵声を背に受けながら初老の痩せこけた男が暗がりから姿を表す。奇麗な身なりとは裏腹に、その顔の痩せこけ方は浮浪者を思わせる)
火愚病「ん~(人差し指を顎に当て考えるような仕草)・・・好奇心で聞きたいんだが、依頼の話を避けようとはしてはいないか?いや、間違いなら遠慮なく言ってください。人間だれしも間違いはありますからねぇ?8 」
火愚病「ほんっと、アンタマイペースだな・・・。いや、こっちは仕事だしあんたはタダの付き添いだからその関連性はもっともな話だが・・・・(パチュリーをみて)―――――むっ!?(老人にむかって目をかっと見開き凝視。その老人の徒ならぬ雰囲気に顔の筋肉が強張る) 」
ディータ「あはは、まぁほんっとお金もなければ花もないって感じで。少なくともノーレッジ卿のように麗しいお方はようなお方はいませんねぇ(苦笑しながら田舎者特有の美人に対するチラ見) ッ ヴ ェ ェ !? (その男の姿を見るや否や素っ頓狂な悲鳴を上げ、慌てて口を両手で覆う)と、父さ––––なんで? 今日"も"外に出ないって言ってたくせに……!(天邪鬼め…ッ!!) ススス…(火愚病の横顔にそれとなく口元を近づけこわばった表情で老人を注視しながら囁く) ”父さん"です。似てないでしょ?まぁ見ての通りですよ、 "アレ"がお呼びしたわけだとしたら、やっぱり"お見せしづらい"気持ちはあるでしょう? 」
老人「 ギョ ル ン (細縁の丸メガネという水槽に収まった魚の眼球のように、深い堀にはめ込まれた眼球が回転し、ディータを始め、火愚病、パチュリーと順に凝視していく)……ディ"ータ"(嗽をしながら発するようなしわがれた声で彼に呼びかけ)"何もするな"と……"足掻くな"と再三言って聞かせただろう 」
火愚病「あ~・・・そういう事だったのか。(男の風貌、そしてディータの話を聞き悟ったように表情を弛緩させ)・・・さて、もうこうなった以上仕事は速やかに遂行せにゃならんでしょうな。・・・やるなら屋敷の中の方が都合がいいでしょう。中には入れてもらえませんかい? 」
パチュリー「 あまりの暇さに適当についてきた。あたしは旅行気分あんたは仕事。はい、イーブン(謎理論を掲げて軽くニヘラ笑う) で、出たー隣に好きな子がいると集中できなくて授業中なんどもチラ見する思春期ムーブに近い田舎動作だぁぁ(無表情でいろいろぶっぱなす) 」
火愚病「(何もするな?足掻くな?・・・なんだ、何を言っているこの男は。まるで自らの終末を諦めるかのように。・・・・調べてみる必要は大いにありだな) 」
来々谷「 …と、いうわけでついてきた。(いつの間にか火愚病の傍に) 」
ディータ「や、やー!ほら……っ!こんなど田舎だと見知った顔しかいないでしょ!物珍しさっていうかあるじゃないですかソウイウノーwwwww(最初は勢いに任せぶっ放しに対しせり会おうとしたが)すみません、ごめんなさい、出会いがないど田舎なんですほんっとさーせんした(ZUUUN…) は、はひ……(不仲なのか老人に対して強く歯噛みしながらメソラシしつつ了承し) ま、まぁほら父さん!わざわざ言われもない噂を帳消しに来てくれたんだから、何より久々のお客さんなんだしさ!(親子とは思えないような余所余所しい営業マンのような口ぶりで腕を広げ)あ、紹介します。父のフォルクマールです。父さん、こちらは反魂師の–––– 」
フォルクマール「–––––悪霊山の火愚病(ディータの発言を遮るように細縁の眼鏡を岩のような指でカチャリと鳴らして)
紅魔館の魔女、動かない大図書館
パチュリー・ノーレッジ。それに……クルガヤ、というのか(淡々としわがれた声でその場に集った人物の素性、名を、活字を読み上げるかのように囁き鼻を鳴らす)まぁいい。倅が迷惑をかけた、茶と宿ぐらいは出してやろう 」
火愚病「驚いた、仕事に勤しむ者と遊びほうける者の関係がイーブンだったとは。こりゃ社会全体がブーイングの嵐だわこりゃ(汗 ん、毎度おおきに。世話んなりますぜ?・・・・。(家族関係は劣悪に等しい、そんな中で俺が最後の頼み・・・てか?) 」
来々谷「 (目をやや細める)……そうだが。(雄々しい面構え) 」
フォルクマール「 ザ グ ッ (土を踏み荒らすように乱雑に散らかしながら、今にも倒れそうな枯れ木のようにふらつきつつ火愚病達とすれ違う形で館へと進んで行く)ついてきなさい。また邪なものを呼ばれても困る、あんた達が最初で最後だ、倅にはそれで納得してもらう……。 」
パチュリー「 これはこれは、あたしって結構有名人なのねぇ(おおっと自分で拍手)私は見物客、本題はこの人ら……まぁお茶ぐらいはもらおうかしら 」
ディータ「(あ、あれー……俺名前とか教えたっけ…ない、よなー…?)スッ(歩いていくフォルクマールの背を見据えながら火愚病達に耳打ち)気をつけてくださいね、2年前からずっとああなんですよ……まるでそう、夢遊病者のように何をするかわからない 」
来々谷「 ほう…それは忝い。(フォルクマールに) 」
火愚病「おうおう荒っぽいこと・・・(ポツリとつぶやき)・・・・二年前から?ふ~ん・・・意思疎通があそこまではっきりと出来るあたり認知症患者・・・おっと失礼、・・・あー、精神系の病にかかっているようでもない。(フォルクマールの後を歩きながら)彼は二年前ああなる前はどんな人物で?何かきっかけとなる様な出来事はありませんでしたかい? 」
パチュリー「 ま、年相応って感じ?いまんとこ嫌いじゃないわ。あたしが心配なのはお茶菓子が羊羹とかその辺じゃないかってところね……名前透視能力でも持ってる~?まぁ書物ってところが怪しいわね~…… 」
ディータ「どーだか(パチュリーの有名人発言に対し肩をすくめ)あの男は"わかる"らしいんですよ、知ってるとかそういう知識じゃなくて。頭がクルクルパーなのか何なのやら(呆れ気味に小首を傾げる) あー……どうか気を悪くしないでくださいね。父を嫌いになっても俺は嫌いにならないでくださいお願いしますオネガイシマス(ゴマをするようにして愛想笑いを浮かべながらクルガヤに) –––––(黙って首を横に振り)さぁ……もうわかるでしょうけど殆ど口ききませんからね。ていうか俺普段は畑に近い離れに寝泊まりしてるんでなんともー…… 」
来々谷「 ……気にするな。私にとっては、正直なところ、どうでもいい。(ゴマスリしてくるディータに) 」
ービルンバッハ邸 2F・書斎ー ♪
フォルクマール「––––––羊羹はな、教え子の好物だったがあれは私にも理解できん(この寒気にも関わらず小窓は開け放され、陽光に照らされた書斎にて、パチュリーの発言を聞いていたのかいないのか、先よりも落ち着いた口調でそう呟きながら人数分のガトーショコラと紅茶を几帳面に丸テーブルの上に添えおいていく)生憎紅茶しかない、口に合わなかったなら外にまきなさい。無駄がない 」
火愚病「なるほど・・・つまり、方法はこうだ。―――"直接聞け"っていう法則(ルール)だ 」
–––––書斎には比較的状態のいい書籍が本棚に収まっておりよく目を凝らせば巻数などは揃えられている。特別散らかっている様子もなないが、彼が使っているのであろう書物机の隣には丸めた新聞が藁のように積み上がっていた–––––
パチュリー「 やった!ありがとう、くぅー!長旅の疲れを癒してくれるわぁ~!(かぐややディータの雰囲気と裏腹にお茶菓子を楽しそうに堪能) 」
ディータ「ははははひぃひひ……都会の女性ってこわ……(ZUuuuuuN) できるなら俺が聞き出したいとこなんですけどね……父は俺"だけ"には何も話さないんで(火愚病のすぐそばでがっくりと項垂れ、その際に自分の分の茶菓子がないことに気づく)––––ま、そうだろうなとは思いましたよ。 じゃあ俺、バーノンさんとこ手伝ってきますからね 」
火愚病「あぁあ~どうもどうも、ね、どうも。俺ガトーショコラ好きなんよ。・・・・フォルクマールさん、アンタもどうです?折角若い美男美女が揃ってんだ、おしゃべりすんのもわるかぁねぇぜ? 」
来々谷「 ん~…ガトーショコラは濃厚、紅茶は実に香ばしく……ご老人、実に申し分ない。 」
火愚病「あんた"だけ"には・・・・か。 」
フォルクマール「(ディータが部屋を出ていくとどことなく安堵したように目を伏せ)一階の戸棚だ、そこに娘が置いていったものがある。持っていくといい(パチュリーには一瞥もやらず自身は書斎の前にあるオフィスチェアに腰を下ろし背もたれに体重を預け) ふん、お前さんのとこの死骸の中ではどれが造形美として秀でているか……とかか?(鼻で笑いながらしわがれた手を膝に添え置き貧乏ゆすりを始める)まぁ、死骸は物を言わん。生きた人間よりかは可愛いものだ 」
フォルクマール「(来々谷に対しただ首を縦に振り)結構。学生の割には味というものに覚えがあるようだな(ディータがいた時のような突き放すような態度は取らず口角をわずかに上げ) 」
火愚病「生きた人間よりかは可愛い・・・、死人に口なし、死骸は余計なことを言わんからね。―――アンタは、どうなんだ?(ティーカップに注がれている紅茶を、ゆっくりと宙で傾けながら)随分と息子さんを避けてるようだなぁ。集落の皆にまで迷惑をかけてまで、息子に嫌われ・・・一人でいようとするさまは・・・・まるで死人だな。・・・と、俺は印象を受けたんだが、いかがかな? 」
パチュリー「 随分と険悪みたいね。愚問だろうけれど息子さん?お孫さん?と喧嘩でもしたのかしら(しっかりものはもらっている) 」
来々谷「 フッ……お褒めに与り、恐縮だ。(大人びた言動) 」
フォルクマール「………(火愚病、パチュリーの発言に対し、返答こそないが眉間に深い皺を刻み、嫌悪するわけでもなく彼とまっすぐ向き合い言葉一つ一つを受け止めている)我が子と共に行く"死人"など、最早親ではあるまい(丸眼鏡を卓上にそっと置き) バスッ(乾いた音を立てクルがやの前に茶葉入りの袋を3束放り)紅茶など普段は喉を通らない(使えと言いたげに首をクイとひねる) 」
来々谷「 (袋を覗き)…! このような物…しかもこれほど………よろしいのか。 」
火愚病「だろうね。(コトリとカップをテーブルに置き、フォルクマールに歩み寄る)だがね、そんな息子さんが・・・・俺を呼んだ理由はわかりますかい?アンタの一挙一動に常に苛立ちを隠せないあの人がオレを呼んだ理由がッ。 」
パチュリー「 なるほどねぇ……(こっからの対話は彼に任せるか。こういうの聞くのケッコー好きだしね~) 」
フォルクマール「構わん、無用の長物だ。客はあんた達で最後だと言ったろう(伏見がちに首を横に振り) "孝行者の優しい良い子"と、並の親はあれをそう呼ぶだろう。だがな、私は人の親にはなれん(ぎょろりと魚のような眼球を火愚病へ向け)何より–––––もう遅い。"全てにおいて" 」
火愚病「そこだ・・・俺はそこが分からない。ここに入る前にアンタは足掻くなだ何もするなだと・・・息子さんや俺は知っていることと、あんた自身が知りえることが・・・あと一歩ってところでかみ合わない。話してほしい・・・・アンタの知るすべてを 」
来々谷「 …〝さいご〟……か。(そっと目を閉じ、その言葉を内心に刻む) ………忝い。(袋を引き取る) 」
フォルクマール「人はいともたやすく傷つく(クルガヤが袋に触れた刹那、ポツリと囁き)大事に、砂で描いた絵をそよ風から守るように大事にしてやらなければ悲しみばかりが残る(疲弊しきった、しわがれた声で) ……"死"、いや…"終わり"という一文字について、君達はまず最初に何を連想する(トンと指で自身の眉間を指し)私のような老ぼれか(自虐的に微笑し) 」
火愚病「死、終わり・・・・そうか。アンタは・・・それに何らかの理由で直面していると?(負のワードと老人の自虐的な笑みに対しふぅっとため息交じりに目を伏せ)だから・・・・俺に諦めろってぇのかい?紅茶とガトーショコラで勘弁してくれってか?(再び眼を開きフォルクマールを真っ直ぐ見据える) 」
来々谷「 ………承知した。(フォルクマールの言葉ひとつひとつをしっかり受け止める) ………〝生〟あるものには、分け隔てなく〝死〟というものが必ず訪れる。生命(いのち)の始まりには、必ずしも終わりは訪れるものだ……誰が、という話ではない。(フォルクマールに) 」
フォルクマール「客をもてなすのはあくまで"礼儀"だ。倅の非礼を詫びると言ったろう(湯気が昇る紅茶、まだ手をつけていないガトーショコラに視線を落とし)諦めろとは言わない……そもそも––––選択肢などないのだ。【終わる】のだよ、人間は、生物は、星は、宇宙は、世界は……形あるものは全て【終わらせる】ことができる。我々が望もうが望むまいが、それができるものが"そうする"と決めたなら、必ずそうなる(心のうちに内包してきた言葉だったからなのか、あたかも口癖を復唱するかのように淡々と言ってのけ、皿のように見開いた眼球で視線同士がぶつかり合う) 」
パチュリー「 ”魂”かしら。肉体は違えど魂は転生するもの。お爺さんを連想するときはそうね、パーゴルフやっている人見るときぐらいだからそんな卑下しなくていいのよ 」
火愚病「(こりゃあ、口で言ってもダメだな。心の底まで完全に"何か"に浸食されつくしている。自らの人生観、幸福、哲学、美徳、倫理すべてを放棄するまでに・・・・)・・・悪いな、アンタにとっては、苦しくも辛いことなんだろう。仕事とはいえ赤の他人の俺が口を挟むのは間違いだな・・・(そう言って踵を返し一歩、二歩、三歩とトボトボと歩く・・・・フリをして油断させ、反魂術を発動)『魂読み』ッ!!(ズギャアアアアッ!!) 」
––––––––––プツン(テープレコーダーを焼き切るような、そんな歯切れの悪いホワイトノイズが木霊した)
フォルクマール「そう、"魂"だ。(あたかも火愚病の魂読みを確信していたかのように、その男は"その風景"の中でただそれを受け入れるかのように座していた)魂は転生を繰り返し、その度に我々は生きるために必要な本能以外の情報を全てをかなぐり捨てる。だからこそ、子どもは明日を夢見て歩き出せる 」
火愚病が魂読みによって映し出す結果とは、それは大きくかけ離れていた。フォルクマール自身が持つ固有の能力なのか、それとも彼自身が脳裏に焼き付けた光景があまりにも鮮明なのか、書斎は影も形もなく消え去り、砂嵐が地平のどこまでも続く生気のない荒野が映し出されていた
火愚病「な、なんだこれは・・・・ッ!?魂読みでこんな光景を見たのは初めてだ・・・・。なんだ、この老人はッ!!一体・・・・ここまで至るまで一体何を見たんだッ?! 」
来々谷「 そして……その自ら捨てたものを、子は引き継いでいくのか。 」
フォルクマール「私が見たものではない。だがこの風景を見ろ。終わりの景色を(吹き荒れる砂嵐に対し岩のように動じず首をクイと捻り両腕を広げ)あの日、あの場所で。"彼"は私の前に現れこの老ぼれの眼にこれを焼き付けた、私が見たものではない、誰が見たものではない–––––(クツクツと笑いが腹の底からこみ上げてくる、それは恐れのあまり全身が痙攣するそれと似ている) 」
火愚病「彼・・・・?彼だど?・・・なんだ、彼って・・・まるで、これは・・・くっ!!(術を中断、息を忙しなく荒げながら少し距離をとる) 」
フォルクマール「(術を解除し荒げる火愚病、自分を含むその他一切を【死にゆく虫】を見るかのような目で見つめ)––––私は先ほど君達の名を読み上げた(トンと指を眉間にあてノックするかのように繰り返し叩く)人間は脳の10%しか使えていない。私は……15%だ。人間は本来、何にだってなれる(トントンと執拗にノックを繰り返し) 私 の 教 え 子 だ 。彼は誰しもの"ここ"に巣食う暗闇の扉をこうやって叩き、そして–––– 」
『 彼 の 中 に 怪 物 が 生 ま れ た 』
.
最終更新:2018年06月14日 23:51