緋月の夜叉姫 ログ5

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ユキ「巫山戯ている――――わけではなさそうね。(刀を鞘に納め、冷や汗で頬に張り付いた髪を指で梳く)だけど全てを鵜呑みにすることも出来ないわ。"一代目"とはどういうこと?あたしもお国を守る剣になったことがあるけど、国の頭―――将軍を騙るなんて不敬にも程があるんじゃない?問答無用で切り捨てられても文句言えないわよ(ま、あたしには出来そうにないけど…) 」

将軍「―――――で、あろうな。事実童の教科書、資料館、美術館、果ては絵巻……いや漫画、えとせとらえとせとら、現在の将軍は何者も今の儂が『一代目』などとは謳っておらんて。今の儂が、公衆の面前で今のセリフを述べようものなら晒し首で済めば温情と言うものよ(口元をほころばせ首元で手を真一文字に引くジェスチャーをすると両手を振っておどけて見せ)だが事実は所詮紙面上の童歌、真理とは認識の内にあるもの。儂の真理は、儂こそが『一代目将軍』にしてこの大和を築き民草を美座に招きし大和その者であるからに、仕方があるまい?他に名乗るべき名も持ち合わせてはおらぬのでなぁ……いやはや困ったなぁ 」

ユキ「う~ん…困ったなぁはこっちのセリフなのだけれど…(ポクポクポクと木魚の音が脳内で繰り返され、)…ま、わかったわ!とりあえずそういう事にしておいてあげる。さっきあたしの剣も褒めてくれたしね~♪ 一先ず言うことを信じてあげるわ、将軍様。何よりアナタ(将軍を指差し、)とアナタ(琉妃を指差し、)からは面白そうなニオイがプンプンするのよねー!(たはーっと額に手を当てて笑顔になる) 」

将軍「だっしょー! ほれ鬼娘、お前もちこうよれ。麗しの姫君に賛辞を賜ったのだ、儂と同じプリクラに写る栄誉を許す(開口一番、元のチンピラの顔が原型をなくすほどの陽気な笑みで応え口橋を指で引く)いやまぁ……なんと言うか。儂のこの肩書きにはそれ相応に訳はあってのことなのだがな?まぁ、積もる話は場所をかえてだn――――――― 」

琉妃「      オ      ン      ッ      (将軍へ今にも喉を口潰さんと飛びかかる直前の獣を彷彿とさせる眼光を向け八重歯が覗く歯を、火花が散らんとする圧を以ってきしませた)――――ペッッ 手前と同列とあっちゃ美酒も泥水よ…… (毒づいてこそ板が、将軍とユキを交互に見やると『これ幸い』と言いたげに一転して微笑を浮かべ)んまぁ、『面白そう』ってのには同意さね。おい柊の!その食わせ物から”寝返る”にしても”うちの側”に付くんじゃぁねぇよ(そう言い残すと手をひらりと振り、登場した際の掛け軸ではなく襖を乱暴に蹴破りその場を後にする) 」

将軍「うむ、あやつ不敬。不敬と書いてしけいと読む世にならんかなぁ―――――さて、お前の働きはなかなかに優雅、血風もまた花吹雪と言わせんばかり者であったがいささか騒々しいものであった。祝祭の折に百人斬り等披露するともなればあれらの阿鼻叫喚が実に耳に悪い、原点6だ。以後気をつけるようにな(キュッと口を軽く結びユキの額へ指さすと、自身も含め惨憺たる有様にも関わらず、それを『せいぜい三日程度掃除していない部屋』程度に、屍を蹴り転がして道を開けるなどして鼻歌を陽気に口すさんだ)――――お陰で、今頃民草が奉行所へ駆け込んでいるだろうよ。儂も体裁上『罪人となれば』はお前を野放しにできん。というわけでだ… 」

将軍「――――――うちくる?バレなきゃ無問題ってどの国の主も口揃えてそう言うし( に っ こ り ) 」

ユキ「ふふっ、ぜひあなたとは"個人的に"会いたいわ。またね~♪(愛嬌のある表情でひらひらと琉妃に手を振る) はーいはい、この辺りでは控えるようにするわ。骨のあるヤツも残念ながら居なかったし(口を尖らせて肩を竦める)―――んで、あたしはそろそろ逃げ――――え!あ、いくいく!(窓に足をかけたところ、将軍の言葉に『これ幸い』と言わんばかりに食いつく)バレなきゃ良いのよバレなきゃ!ウチのも言ってた気がするわ、あはは! 」

将軍「うむうむ、良きかな良きかな!なにせお前を『呼び込んだ』手前――――― 粉微塵に消しとばしては寝覚めが悪いからのぅ(陽気な笑みそのままに、ある種の『死へ慣れたひとでなし』のそれが発する冷淡な一言を添え)―――まぁ!その折も含めて『火車』……ああいや、りむじん?で語らんとするか。なにせこの靴もう限界、マジ死直前だし。そうと決まれば善は急げじゃついてまいれー(くいくいと手招きしユキが辿った道をなぞるようにして正面口へ向かう。彼の言葉の通り、既に一台の、なんの変哲も無いリムジンが待ち構えていた) 」

ユキ「うふふ!その時は腕の一本くらいは土産に欲しいわね~(事の成り行きに身を任せて腹をくくったか、将軍の言に臆すことなく歯に衣着せぬ言葉を返す)(『呼び込んだ』―――…呼び込まれた、あたしが?自分が思う通り望んだままに動いてたつもりだけど…いつのまに誘導されてたのやら……ま、つよそうなやつが居ればすーぐ釣られちゃうのは確かだけどね)(自らの安易さに苦笑し、将軍の言葉に耳を傾ける)え、なにこれなっが!りむじんねぇ…運転しづらそうじゃない?まぁいいわ、早く乗りましょ。話する前に死なれちゃ困るわよそれ(将軍の手招きに応じ、促されるがままにリムジンに乗り込む) 」

将軍→晋平「―――――   ドッッ  (ユキがリムジンへ乗り込むのを見送り、それがスイッチであったかのように白目を剥いてリムジンの横に捨てられた備品のように転がる。既に心肺停止から数分経過していた) 」

将軍「―――――いやまぁ儂は『天馬』の馬車がマイカーなのだがこれ、道路交通法に接触するようで老中共がうるさいのだよ。しかしそこは将軍、当世に相応しくも其方の言う通り運転しづらいことこの上ないものに慎ましくも収まるのである(既にリムジンには晋平とは似ても似つかない、銀縁の眼鏡をかけオーダーメイドの高級スーツに身を包んだ『ただの若い整った顔立ちのサラリーマン』のような風貌、しかして将軍の声色のそれである男が乗り込んで座していた)――――いくらかマシな靴であろう? まこと相済まぬがこれも『儂では無い』故に改めて自己紹介という様式美は割愛させてもらうがな 」

ユキ「ん――(将軍の意識が宿っていた晋平が倒れたのを窓越しに見る。『何処に―――』と頭を振ろうとした時に同じくリムジンのシートに座っていた男が『将軍』としての言を発し把握する)――へぇ…なるほどね。そのうち本人の御尊顔を拝見したいわね―――いえ、そもそもあるのかしら?(『まさかね』と付け足してくす、と笑う)―――でもいいわね、この手厚く持て成してもらっている感じ!一体あたしに何をさせようって言うのかしら?(腰深くシートに持たれて足を組み、これから何かが起きそうな『予感』に口元を悦に歪める) 」

将軍「―――――― ハッハッハ……さてな?あったとして、それはつまるとここうであれ、ああであれと夢想する臣民の心に宿る将軍の像を壊す。晒すわけにはいくまいよ(といい、眼前の丸テーブルに添え置いた焼きマシュマロを口に含む)――――ふむ、そうさな。儂の伴侶……とでも言えばさぞ巷は賑わうであろうて。いや冗談だ、うむ、将軍ジョークはこの辺りにしておこう。―――――一つ、お前には老中にすら語っておらぬ儂の権能、その一端を教えてしんぜよう(トントンと自身の瞼を指で軽くノックし)――――『千里眼』。儂にはある程度の未来を見通す力がある。つい此間、老中に『儂は永く無い』と告げたがつまりそう言うことだ―――― 」

将軍「(ここにきて初めて、ユキへ一種の憤りの色が見える、腹の底から放り出したドスの効いた声色で囁いた)――――近い未来、儂は打たれる。今、お前の前にいる儂ではなく、将軍そのものが消えると言うことだ。 儂が死ぬとはつまり、この大和が形を成さぬ。それを理解した上で、何者かが儂を打つと言うのだ 」

ユキ「あははは!随分持ち上げてくれるじゃない?悪い気はしないけどね(片目を閉じてふふんと笑ってみせる)……ま、そろそろ本題ってやつ?話を聞くわ。(組んだ足を直し、将軍の言葉に耳を傾ける)(『千里眼』…話には聞いたことがあるけど、それを持っている人物に会うのは初めてね。で、未来を覗いた―――結果―――)……まあ、大事ね。まさに国がひっくり返る大事件。―――それで?(『一国家の危機』さえもまるで他人事のように聞き、口元に笑みさえ湛えながら続きの言葉を促す) 」

将軍「言わずともがなであろう? お前は見目麗しき女である以前に一剣士であれば(先端に焼きマシュマロを串刺しにした楊枝をユキへ向け上下させ、口端を吊り上げる)―――――何者かとは口走ったが大和は余すとこなく儂そのもの、既に大方の目星はついておる。その者、名を『夜叉姫』と言う。『白鬼』といふ亜人種は小耳に挟んだことはあろう?マイテイ人に及ばぬが戦闘民族としてそれなりに名を馳せた者共よ。あれらの血筋、その源流に辺り、真に鬼たる者。まさに『真祖』それが今になって、人の世を、大和を滑る儂の首を狙うておる―――――これの首を取って参れ。剥製漬にし厠にでも飾るとしよう 」

ユキ「無論ね(『一剣士であれば』の言に納得したように眉を上げる)『白鬼』…ええ、聞いたことはあるくらいかしら。実際にこの目で見たことはないけれど―――(鬼…か…面白そう。ついでに将軍様に恩を売っておけるのなら、こんな美味しい話は悩むまでもないわね―――)ええ、承知したわ。その『夜叉姫』とやらの首、柊木ユキの名に懸けて取ってきてあげる。(協力を宣言し、丸テーブルの上に置かれた焼きマシュマロをぽいっと口の中に放り込む) 」

将軍「―――――うむ。快いその返答、既に大義である。頼りにしておるぞ。儂は鬼とは相性が火と油。儂の死をほのめかせば、我先にと後の玉座を狙わんとする者共ばかり。内部の者を扱えん以上お前のような、外界の猛者が頼りでな。ともすれば、儂の延命を面白がらない手合いが『国士無双』を差し向けるであろう。ああ、お前に取ってはこれが褒美か?いやさ冗談、報酬は『言い値』でたまわすとも――――――――(くつくつと笑みを転がしながら車窓の外を眺め) 」

将軍「リムジンは儂が用意した料亭へ向かっておる。娯楽、温泉、遊郭、賭博、を備え、お前の部屋はぷらいべぇとを保証された菊の間としてある。まずは血の匂いを落とせ、そしてゆるりと愉しむことだ。この大和一のもてなしを、そしてこれからの―――――― 地に咲く煉獄をの……(既に満足気、ユキ自身をえらく気に入ったかのように満足げな笑みを向けると、晋平同様、糸が切れた人形のように首を垂らし車窓にほおをつけて動かなくなった) 」










————AM 04:45 大和近海————



————そして夜は明ける。水平線上に館の屋根飾りが視認できる。この近海で和洋折衷の館と言えば『大和外務省』の建物ぐらいだろう。その商船は順調に大和へ荷を積んで航海にピリオドを打とうとしていた

少女「————ゲホッ!! ケホッ! コフッ!!(船上、甲板で潮風にコートと着物を掛け合わせたような服装の少女が襟袖をはためかせ、口元に手を添え咳き込む)———潮風って思ったより肺に悪い……教訓としておきましょう

船員「おーう大事ないかお嬢ちゃん。ほれ、船長から差し入れ(水色と白のストライプのインナー岩のような筋肉を鎧が如く纏う大柄な男、絵に描いたような水兵が片腕に米俵を担ぎすれ違い様に少女へ湯気の登る紙コップを差し出す)

少女「———あ、あぁ〜!申し訳ない!気を遣わせてしまいましたよね、無理言って乗せていただいたのに……っ(汗マークを浮かべしまりのない苦笑いを浮かべ紙コップを両手で手に取り)どうもありがとうございます……ケホッケホッ(軽く咳き込みながら紙コップを口に含みホッと一息ついた)

船員「気にすんない、むしろ無茶言ったのは船長の方よ。『女が乗ってない船は女神に見捨てられた未来の難破船じゃき!』ってっとにあの人験担ぎして効かないんだからよ……ったく。ま、そいうわけだからどうか健康体・五体満足で丘へ着いておくんな!幸運の女神様よっ(少女の頭を軽く覆えそうな手のひらで肩を叩き歯を覗かせて微笑み、手をひらりと降ってその場を後にする)」

少女「あはは……疫病神にならないといいんですケドね〜(花弁の浮かびそうな朗らかな笑みで答え一礼し、手を振り返して船員を見送った)——————————。(荷を詰めた木箱に立てかけてある市内袋を背負い、手すりに手のひらを置いて遠くに見えるサンレスガーデンを見据え、その風景を懐かしみ目を細めた)



┣¨ォォ…………………———————————ン


大太鼓、それも音ではなく振動で聴覚が錯覚を引き起こすような衝撃の伴うそれが唸りを上げるような轟音が響き、船体が僅かに傾く


少女「ほわっつ———!?(咄嗟の揺れにバランスを崩し手すりにもたれかかるようにして身体を支え、積み上げられたそれが崩れることで頭上に迫っていた荷箱を、頭を捻ることで回避。)ドボォン(海へ泡をあげて沈みゆくそれの始終を見収めると目をパチクリし)えっ……なに、鯨?鯨かなんかです?

船員「『瑠璃<バイドゥーリャ>』だァ———ッ!!(先程通りかかった船員が往復してくるや否や声を張り上げ、程なくして警笛が鳴り船内のそこら中で人が慌ただしく駆け出したことが伺えるほどに騒々しくなる)————あ”っ!いた!おい嬢ちゃん早く来い!瑠璃に目をつけられちまった!

少女「———『瑠璃』……『海賊』ですか。まだこの海域に? てっきり宗方殿が討伐せしめたものかと(対し緊張感のない様子で目を丸くして小首を傾げ)

船員「事情は知らねぇよ!ただあの旗は見間違えようがねぇ、とにかくボートまで突っ走れ!ここに残ってたら命が幾つあっても——————

少女「んーじゃあ仕方ないですね。下手に抵抗しても命があれですし、捕まっちゃいますか

船員「————————————え”っ?



———数分後———


————デッキの中央。マストを中心にして船長を含む大勢の乗組員が集められ、それぞれが腕を縛られ膝を付いている。それを囲むようにして、白装束の男達が打刀を向け一歩も動けまいと威圧していた

瑠璃構成員A「頭、梁の姿がどこにも見当たりませんが……(純白の和装の構成員がデッキの上を慌ただしく駆ける)

瑠璃構成員B「————大方タイプの男でも見つけちまったんだろ。うちの船長だぞ?そのうちひょっこり事後になって出てくるわィ(腕を組み構成員の報告を聞くと肩を竦め首を横に振った。いつものことだと言いたげに)————それより、これで全員か、乗組員。『夜叉姫』の姿がないようだが

瑠璃構成員A「艦内は現在もくまなく捜索していますがまだ……救難ボートが使われた形跡もありませんのでまだ脱出はしていないものかと

瑠璃構成員B「………。(肩をすくめると『行け』と言わんばかりに腕を上げて構成員Aに合図を送り、彼と肩透かしにすれ違うと、一箇所にまとめられた船員達へ大股で、一歩一歩に威圧感を持たせるように足音を鳴らして歩み寄る)—————船長だな、確認するぞ。そこの”金髪の小娘”以外に、”黒髪”の少女がいなかったか。丁度大学生ぐらいのだ

キャプテンデニール「—————船の上じゃお迎えした女は女神だ。居たとして、腹を掻っ捌いても頭をかち割っても教えてやる義理はねぇ(威圧に物ともせず、身の自由があったならば首を噛みちぎらんばかりの猛犬のような眼光を讃えて構成員Bを睨み返す)

瑠璃構成員B「————“海賊”と言い、海の男というのは強情でいけないな。船長が知らないなら仕方ない、どうせ他も知らないんだろう。   ———————おい、全員捨てr……

少女「—————出席簿確認したらいいんじゃないです?(両腕を背に縛られ、他の船員と同じくデッキの中央に座らされ朗らかな笑みで問いかける)前情報もなしに攻め込んできた訳じゃないんでしょう

瑠璃構成員B「————あ”あ”?(酷く濁った声を上げ、開口一番ブルドックのような頰を小刻みに揺らしつつ歯噛みし、少女へ顔をずいと近づける)そらぁ名案だ。んじゃぁ実行委員長になってくれるかい優等生さんよ。何するにしても最優先にしてやるぜ、おっ死ぬのも一番最初だ

少女「————おお、まるで男子校ですね。いや男子校行ったことないんですケド(それに対し花びらの浮かぶような朗らかな笑みのままに答え)挙手できないところ大変恐縮なのですが先生? こちらの船、お眼鏡にかなうものはございましたかね(周りの船員が『頼むから黙ってくれ』と言わんばかりの視線を向けるが意に介さず)

瑠璃構成員B「知らねぇよ。上が取ってこいっつったらそれを取ってくる。盗んだ積荷が俺らのおまんまになる訳じゃねぇんだ。以上、質問終わり(ぺっと唾を吐き捨て腰を上げ) キ シ ン ッ (ごく自然に、業務的に抜刀。そこに感情は一切介在せず)んじゃ廊下へ立っとれ。黄泉道だがよ

少女「あ〜〜いやそれなんですけど閻魔先生に『お前にはまだ地獄は早い、むしろ人の世が遥かに地獄よもうちょっと責め苦を味わって来なさい』ってお叱りを受けちゃったことがありまして—————— パサッ (何の気なしに笑みのまま腰を上げ立ち上がり『両手』をひらひらと振って首を僅かに傾げた。彼女の背後には『切断された』縄の残骸が落ちる)

瑠璃構成員B「!?(————縄……抜け……ッ!?こいつ何者……)チィッ!! 全員、袋叩きだッ!加減はいらねぇ誰かもわからねぇ面にしてやれッ!!(腹の底から怒声を飛ばし居合を穿とうとするも束の間、手は虚を掴み、手応えがないことに気づいてふと腰を見やると)————————ゾワッッ(———瞬く間に血の気が引いた。なぜなら)

少女「(————何故なら、目の前にいるそれは少女のしていい眼ではなかった。無心、虚無にして殺意さえも捨て置いたそれを攻勢に転じる際に得たならば最早相対した時に、彼女は読んで字のごとくひとでなしに見えた)    ガ    ッ     (—————無言、呼吸一つなく、情け無用に居合の抜き打ちの要領で拳を構成員Bの鼻頭に捻じ込んで潰し)   チンッ   ザァップッッッ(構成員Bが帯刀した打刀を抜き取ると同時に彼の両手首へ軽い凪で深を刻み込む、これを秒針が微動だにせぬうちにこなした)

瑠璃構成員B「——————————!!!!!! アギィィッッ!!イ”……う”ァ” ギァ” ア”ア”……ッ!!!!(鼻を潰され怯み、何が起きたのか認識する暇もなく赤を垂れ流す噴水が如き手を見やると、秒刻みで迫る死を確信し怒号と恐怖の入り乱れた手負いのハゲタカのような悲鳴絵をあげ甲板にのたうちまわる)

少女「——————鈍ですがまぁ良しとしましょう。ないならないで鞘、それもなくば素手でゴリ押すのが気合い一本の戦場ですし。まあやったことないんですケドそういうの(『ここですよ』と微笑みかけ顔の位置まで上げて手に”盗”った刀を水平に構え) ベキィ ッ (後方に控える他構成員へ向かって踏み込むと同時に、のたうち回る構成員Bの肋を踏み砕く)   ト ン ッ  (上体、下半身共にラグのない自然かつ軽い、一陣の風のように軽やかな動きで構成員の軍隊へ真っ向から飛び込む)


    キ    ィ      ン     ッ (抜刀。それと同時に一陣の疾風が駆け抜けたかのように、土煙が彼女を中心に舞った)


—————————————ドッ   カランッ カシャッ   ドッ ドゴッ   バタンッ   (三秒半程の沈黙。少女へ向かって槍を振り上げたまま石像のように硬直していた白鬼達の内一人が、膝を付いて崩れるのを皮切りに次々と構成員達が地に伏す。だがそこに流血は一滴もない)


キャプテンデニール「—————。——————(とっくに死を覚悟していたのか既に恐怖はなかった。だが、少なくとも自身の『生存』の可能性は頭になかったのか目前で起きる明確な現象を認識できず、しばらく口をくるみ割り人形のように上下させていた)—————何をした。あんた……何者だ……(率直な疑問、命を拾った喜びよりも口をついて出たのはそれにつきた)

少女「——————チンッ(刃が僅かに見える程度に抜いていた刀を納刀、借り物故かそれをデッキへ放り捨てる。等の彼女は一歩も動かず微動だにしていないように”見える”が、既に彼女の周りには糸が切れたようにして動かない構成員が崩れており、他の船員には全く異変はなかった)————文字どおり一人余すとこなく斬って捨てました。簡単でしょう?(再び手の埃を払うような仕草。腰に手を当て『ふふん』と鼻を鳴らし得意げに微笑んでみせる)朝飯前ですよ!なにせ—————





オリヴィエ「———————なにせ『ひとでなし』ですからねっ










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最終更新:2019年02月22日 02:03