,
————ある場所に、百という数の羊がいたとする————
「筋肉痛になるから
疲れるから
腹が減るから
足が痛くなるから
泣きたくなるから
めんどくせぇ、もう歩きたくもねぇ
起こされたくもねぇ
悪い、俺もう生きるのやめるわ。めんどくせぇからさ」
————ある場所から、一匹の羊が迷い出たとする————
「多くの愛と触れ合いました
愛とは欲望と同義なのだと学んだから、きっともう誰のものにもならないと誓いました
ああ、けれど……どうして覚えているのでしょうね。子供の頃、憧れたあの人のお嫁さんになりたいだなんてのたまったこと
ねぇ、あなたはきっと愛してあげて。あなたを、あなたを愛した誰かを。誰よりも……何よりも……
それが、身体の熱なんかじゃなくて、心の温もりだったと証明するために」
————あなたは————
「私はいつも台無しにしてしまう
多くを望んで、多くを奪い合い、分け与えるべきものを噛み砕いてダメにしてしまう
もし、少しでも感謝できたなら、満足できたなら、お腹をすかせた夜を何度も迎えなくてよかったのかなぁ
わかんないやぁ、だってお腹空いたんだもん……これじゃ、何も考えられないや……」
————九十九匹の羊を置き去りにして————
『おうじさまへ
突然ですが、私は死ぬことになりました
難しいことはわかりません、だからそういうことなんだって受け入れるしかありません
私の国では、奴隷は難しい事を考えるのは許されないからです
あなたは、この国で難しい事を考えていい立場にいます
あなたは、この国でわからないことがあったら調べたり、学んだり、悩んだりしていい、どうしたっていいんです
それでもあなたは、私を愛してくれました
難しいことはわからないから、私を愛する事を選びました
そんなあなたが、私は嫌いでした
ずっとずっと嫌いでした
これからもずっと、あなたのことが嫌いです』
———— たった一匹の羊のために ————
「聞こえない、何も聞こえないわ。ああ、静かね……こんなにも優しいものだったのね
やっと眠れるのね……私。生きてきた中で、これ以上に幸せな瞬間はないわ
ありがとう おやすみなさい」
———— それを探しに向かうだろうか ————
「————もしあの時、この手を差し出したなら
その言葉だけが俺の鼓動だった
だからこれは———————————」
———— 例えそれが…… ————
「一を救うために九十九を殺す 人として当然の罪業だ」
———— 何者も救わない背徳だとしても ————
『Code Genom.認証不可 例外コマンドを承認 プロトコルタイプ『Wrath』認証 擬似演算コード 解錠<アンンロック> 』
『————————生体抹消プログラム限定起動 オペレーションイレイズ マーキュリーを起動します』
【 未来世界線逆演算観測式 因果確定率A+ 】
「これは、Perfect.Aが導き出した最悪の回答。外界からの侵略者でもない、内界の災厄でもない。紛れもなく、我々人類が弾き出した計測数値。この世界の終末を確定させる悪魔の数式。いわば、人災の具現です」
「彼はそれを確定させてしまった。もはや何者も無関係ではいられない。何者からも阻害された陸の失楽園で、無差別核戦争が行われるのを!あなた達は肯定しようとしている!沈黙という、最も卑劣な言葉を以ってしてッ!」
——————神に見放されし失楽園『火の国』 そこに善は芽生えず、同時に悪も栄えない。誰もがそう認識していた
「—————ようこそ、”英雄”。お噂は予々、かくいう私も『クロフォード』の一見以来、あなた方に救われた多くの一人です。 手紙でお伝えした通り、この火の国に善の概念は存在せず、つまるとこ悪を肯定する光もない。ただその場しのぎで互いの血肉を食らう獣へ逆行した荒くれ者共が、奪い、殺し、乾きから眼を反らす。さながら世界政府からも見捨てられた掃き溜め、世界のトラッシュボックスだ」
「それでも、ここに生まれ貧しくとも、険しくとも悪逆にまみれた都市から離れ山々で質素に暮らす方々はいた。そう、”いた”のです。現在は我々が
C.C機関に委託し保護しています。 御察しの通り、このような現状では国家など維持できようはずがない、であれば軍隊はろくに機能していない。しかし彼らは山に身をひそめることすら許されず迫害された。なぜか?なぜ————」
「————— なぜ、最新鋭の装備を携えた他国席……いいや、『無国籍』の軍隊がこの地を我が物顔で闊歩するようになったのか?」
—————人命保持機関C.Cより派遣されし大学教授が”英雄”へ告げた、ノーマッド<無国籍軍>の存在
「—————この地に法も、秩序もありません。法・秩序は間接的、且つ継続的利益を前提に整備される人間の本能的欲求を満たすべく理詰めで形骸化されたシステムですが、欲望=行動に直結するこの国家に、それらの概念は不要なのです」
「それでも、私は人の善性の可能性を見出します。元々、平和とは人為的に築かれた奇跡。この一歩が、遥か遠くの未来に実現する平和へ続くなら、私は誰かにバトンを託すまで、足が擦り切れても歩みを止めるべきではないのです」
—————絶望の地平に一輪の花を添える少女
「—————あの輸送ヘリは……?世界政府のエンブレムが確かに見えたけれど……」
「現在、正式に軍に支給される装備じゃないわ。けれどああして、実戦投入され何故か、無国籍の軍隊がこれを保有し、世界政府がそれに干渉すらしない……絶対何かあるのよ」
「約束と違う……! マーキュリーを稼動可能段階まで修復すれば僕をファミリエへ返してくれる筈じゃなかったのかッ!」
「——————『カウル』は生きていた……命があるならば、家族たる私は救わねばなるまい」
「付け上がるな小童。私とて家族<ファミリエ>だ。フェラーリを用意しろ!連れて帰る、犬っころ共を皆殺しにしてからだッ!!」
「こんな暴力が対話だなんて冗談でしょ!?どんな教育を受けてきのあなたはッ!!」
———————もう一人の“家族”を求め、悪魔の姫君は少女と道連れに旅立ち戦鎚を振るう
「—————核兵器……クロフォードの放ったそれとはまた違う、いいや何もかもが異なる!人類が数千という時を経ても到達し得ないはずのそれが、この地で寝息を立てている……!」
「馬を用意しろ『 』! フェリシア・ユーグリウッドが前線へ出るッ!」
「救いだよ!人類は誰もがそうできたのに、その力も鍵もその手に有しておきながら放棄した!だから、だから今の今更になって私が弾くのだよ。この引き金をッ!!」
——————ただ存続のために、人を守るはずの法が人を殺す。血の通わない、銃のように
「—————『 』さん、この兵士……いや、死骸の”纏っていた”これは……」
「————————————————『Rウィルス』……亜種、いや新型の『Rウィルス』」
———————全ての罪深い生命へ問う
「——————もし、99と1どちらかをお前の手で殺し、その正しさを立証しなければならないと迫られたとして。お前はその手で人を殺 すだろうか? 例えそれが、昨日まで掛け替えのない命と尊んでいたものだとしても」
「直視しろ、これが人間という獣の本質だ。誰もが己を信じ、力強く前に進み歴史を築いてきた。その上に今ある全ては形を成している。そこへ至るまでに多くの屍が横たわると知らずに進むだろう。君達が、これから何千、何万という君達を殺すんだろうな。だからこれは—————」
「そんな……どうしてあなたがここに……!」
「—————慈悲だよ。これから何者も生まれない、何者もこの世界に生まれず生命という”大罪の刻印”を残さない為の唯一の救いだ」
——— Chaos Walker Act.2 【罪業の刻印】 ———
「私は生きています。この灰色の三旗、その残滓を胸に刻みつけて。だから、あなたはあなたの為に生きてください。あの人に……そう伝えてください」
「――――――――――― 縁があればまた会いましょう……[[レインド]]……」
———Coming soon———
.
最終更新:2019年03月02日 21:28