孤月の魔人

数百年前、俺は生まれた。魔界の創造主にして魔界の神である女によって無から作り出された。
 ----モルドレッド・ハンスマン、それが俺の名前。
俺は魔界神から、魔界から、多くのことを学んだ。基本的な学術、魔術、戦闘術、ありとあらゆる知識をただひたすらに頭に入れていった。
そんなある日だ・・・魔界が何者かによる襲撃を受け危機に瀕していた。いわるゆピンチと言うやつだ。そこで私は襲撃に応戦した。
魔界神によって創造されたこの魔人の力、ためすにはもってこいの相手だった。俺は必死で戦ったよ?

その結果、ものの数分で敵を跡形もなくしてやったがね。

俺は勝った・・・魔界を守ったんだ!

そう思って後ろを・・・仲間の方を振り返るとそこには、俺を恐怖の対象として、化け物として見て、怯え、蔑み、恐れおののく仲間たちの姿があった。

何故だ?なんでそんな顔をする?敵は殲滅したぞ?もう怯えなくていいんだ・・・・なんでだ?何故そんな目で俺を見る?やめろ・・・
そんな目で俺を見るな・・・俺は魔界のために戦ったんだ!皆を守るために・・!・・だからやめろ!!

その日から・・・誰も俺と話してくれる人はいなくなった・・・いっしょに飯を食ってくれる人・・・いっしょに笑いあう人も・・・消えた。
まるで蝋燭の灯がフッと消え辺りが暗闇になるかのように・・・俺の周りには暗闇(こどく)しかなくなっていた。
誰も彼も俺を異物としてみる・・・誰も彼も俺を怖がる・・・誰も彼も・・・・俺を受け入れない・・・。
絶望の中、俺は魔界神にとある広場に呼び出された・・・そして俺に言い渡されたのは。

『アナタは危険すぎます、アナタはいずれ魔界を・・・いえ、世界にまで災いをもたらすでしょう。よって・・アナタを封印します。』

封印?なんだそれ?災い?・・俺はそんなことしない!おれはいつだって魔界のことを・・・・アンタの事を思ってる!
なのに・・・なんだ?ちょっとパワーが強かっただけで・・・・・。

『ごめんなさい・・・・。これは決定なの・・・。命をとらないのはせめてもの慈悲よ。』

謝るな・・・謝るんじゃねぇよ!!こんなことになるんだったら・・こんな目に合うんだったら・・・・

俺は一体何のために生まれたんだ!!!!!?

そう叫んだ瞬間、足元に大きな魔法陣が浮かぶ、これは・・・・・封印術式?
やめろ・・・・やめてくれ!何だってする、なんでもいうコトを聞く!だから・・・だからやめてくれ・・・・頼む・・・・
そんなことをするんだったら・・・・むしろ殺してくれ!!あの時襲撃してきた奴等共と同じように・・俺をグチャグチャに殺してくれ!!

『ごめんなさい・・・・・』

そういって俺に憐れむような目を向け・・・術式を発動させる。俺はどんどん魔法陣に沈んでいった。
なんでだ・・?なんでこんなことに・・・・・?俺は・・・・俺はいらないのか?ならなんで俺を作った?
何で無の中で俺をそっとしておいてくれなかった?・・・・・。殺せよ・・・・、封印なんて・・・・そんな生き地獄・・。

そうして俺は・・・・封印された空間で数百年過ごした。
何もない・・・誰もいない・・・声も届かない・・・ひとりぼっちだった・・・。
ただひとつあるのは、『自分に居場所などない』という結論だった。
その時からだ・・・・俺が、世界の破壊を決意したのは・・・。
俺のような異物は世界は決して受け入れない・・・・いつだって迫害される・・・・存在するだけで悪にされる・・・・。
こんな世界・・・・。
こんな世界ぃいいい!!!
俺は力を振り絞り、あらゆる術式を試した。きっと出口はある。きっと外につながっている場所はある、と。

それをまたもや数百年、そうしてやっと、俺は外に出ることに成功した。

目の前に広がるのは大都市として発展する魔界の姿だった。数百年ぶりの娑婆の空気、俺は感動した。
奇跡の生還をはたしたのだ!!
するとその時、

少女「・・・・・おじさん、誰?」

どこからか声がする、どこからだ?右か?左か?上か?

少女「下よ、ねぇおじさん・・・おじさんはだれなの?」

あぁ、下か。小せぇなオイ・・・。

少女「あ!わかった!おじさん大悪魔でしょ!!?そうでしょ!?やった大成功♪」

少女はピョンピョンと跳ね大喜びする。よくわからないので声をかけてみた。

モルドレッド「おい、なにが成功なんだ?」

少女「え?おじさん私の悪魔召喚術式で出てきたんでしょ?」

モルドレッド「・・・・・・・・。」

少女「ほらこれこれ!私が書いたんだよ!?すごいでしょ!?」

そういって少女は俺に地面に書いた魔法陣を見せる。

モルドレッド「・・・・お前、この術式いろいろ間違ってるぞ?」

少女「Σ(°д°lll)ガーン」

モルドレッド「はっはっはっは、残念ながら大悪魔じゃあないな。大悪魔ではないが俺の方が強くてかっこいい。っていうか、その魔法陣じゃ蛙も呼べないぞ?はっはっはっはっはwww」

少女「(´;ω;`)ブワッ」

モルドレッド「っておい、泣くなよ(汗)」
こんな他愛もない会話をなぜか数分に渡りしていた。そして、俺はあることに気づいた。
この娘、俺のことを怖がっていない・・・。見たところ魔法を使うようだ。だとすれば、俺のパワーに勘づくはずだ。なのに・・・。

モルドレッド「なぁ・・・・お前、おれが怖くないのか?」

少女「?なんで?おじさん面白いし。」
とニッコリと俺に笑みかけた。なんとも無垢な微笑みだった。
俺はそっと少女を撫でる。金色の髪がそれに合わせて綺麗に揺れる

モルドレッド「俺はおじさんじゃない、モルドレッドだ。モルドレッド・ハンスマン。わかったか?」

少女「・・・うん!でも言いにくいからおじさんでいいでしょ?」

仕方ねぇなこのガキは・・・・。

少女「私はアリス。アリス・マーガトロイド!よろしくね♪」

モルドレッド「アリス・マーガ・・・覚えにくい名前だな。」

アリス「そ、それくらい覚えてよ!」

モルドレッド「はっはは、悪い悪い」

この少女は俺を怖がらなかった・・・なんとなくだが、うれしかった。
アリス「ねぇ、おじさん。明日もまたここであえるかな?」

モルドレッド「あん?あ、あぁ、別にいいが?」

アリス「ありがとう!あ、私そろそろ帰るね?お母様が心配しちゃう。」
そういって彼女は去っていった。
急な展開で俺自身戸惑っていた。だが・・・・悪くない。
ま、明日もあってやるか。
摩天楼のその先にある空を眺める・・・。

特に帰る当てのない俺はずっとそこで朝までスタンバってました・・・・。
モルドレッド「・・あー・・・」
魔界の空を見上げる。本日晴天、雲一つなし・・・暑い。
久々の外の暑さに少しクラリとめまいがした。あの封印空間の中では温度や湿度などと言った概念がない。
数百年ぶりのこの暑さで体がびっくりしているのがわかった。

しばらく待っているとワンピースを着た金髪の少女が息を切らしながらトテトテと走ってきた。

アリス「ごめーん、待ったぁ~?」

どこの待ち合わせカップルの台詞だそれは・・・。

モルドレッド「昨日の夜からずっとスタンバってました。」

アリス「Σ(°д°し)え!?おじさん、おうちは?」

モルドレッド「・・・・ははは、おじさんにはな、帰る場所がねぇんだ。」

そういって俺はアリスの頭をポンポンと軽く叩くようになでる。

アリス「・・・・さみしくないの?」

モルドレッド「・・・・あぁ、さみしいなぁ。でも仕方ないんだ。」

アリス「・・・・・。ねえ?おじさん、昨日から何も食べてないんじゃない?」

昨日からどころか何百年も食ってねぇですよ・・・・まぁ話こじれちまうから言わねぇが。

アリス「ねぇカフェいこう!あそこのホットケーキと紅茶おいしいんだよ!いこう!早く早く!」
そういってアリスは強引に俺の手を引っ張りとかる喫茶店へ連れ出した。
その喫茶店は俺が封印される前何度も利用したところだった。まだあったんだあのカフェ・・。
懐かしい気持ちを胸にアリスと手を繋ぎながら喫茶店へ入っていく。

店主「いらっしゃい」

アリス「ホットケーキと紅茶、二人分ねー♪」

そういって慣れたようにちょこんと席へ座る。
俺はしばらく店内の雰囲気や内装を見ていた。数百年前と比べると少し洒落た内装で少し広くなっている。
カフェのマスターも知らない顔だ・・・まぁ数百年前だからかな・・・・。
アリスの正面の席に座り、ホットケーキと紅茶が来るのを待つ。
しばらく双方じっと黙っていたが、アリスが手に持っていた本をバッと広げる。
どうやら魔法の本のようだ。

モルドレッド「お前勉強熱心だな・・・。」

アリス「まぁね・・・。私ね、夢があるの・・・あの・・・その・・・・笑わない?」

夢?そういうのもあるのか。
あぁ、笑わないよ。言ってみな?

アリス「・・・・じ・・・自律人形、自分の意志で動く人形が作りたいの」

モルドレッド「自律人形?へぇ~・・・。」

アリス「・・・・?笑わないの?」

いや、笑うなっつったじゃん。
第一、俺にはそういうはよくわかんねぇし・・・でも、なにか目指すもんがあるのならいいんじゃねぇのか?

アリス「・・・みんな、笑うんだ。作れっこないって・・・。でも、私作りたいの・・・。だからいっぱい魔法覚えて・・・それで・・・」

モルドレッド「わかったわかった。そんな悲しい顔スンナ。・・・俺はいいと思うよ。面白そうじゃないか?」

アリス「ホント?ホントにそう思う?」

モルドレッド「あぁ、ほんとだ。」

目の前の少女はパッと明るい表情になりニコッと微笑んだ。
俺はその顔を微笑んでみていた。コイツの笑顔には何故か安心感が湧く。






アリス「ねぇ・・・おじさんは魔法使えるの?」

ホットケーキと紅茶を堪能しているとき、突然アリスは話を持ち出す。
魔法?余裕。

アリス「ホント!ねぇ・・・よければさ・・・教えてくれない?」

        • 何を?

アリス「魔法よ。昨日言ってたじゃない!大悪魔よりも強くてかっこいいって!だから・・・お願い。」

あぁ・・・言ったっけ?
そううるんだ目で見るんじゃあないよ。断れないないか。まぁ断るわけない
昨日であったばっかの俺にホットケーキと紅茶を御馳走してくれたんだ。

モルドレッド「まぁ・・・いいが。俺もやることないし・・・・。」

アリス「●ートみたいなこと言うね。」

モルドレッド「やめろ」

※続きはまた

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最終更新:2024年04月11日 01:15