2003年 11月11日。
あの日から、かれこれ10年が経過しました。
あなたと一緒に失踪を遂げた翡翠色の石碑の、碑文研究が終わりました。
幸いにも、石碑の写真は何枚も、様々な距離と方向から撮られていたため、解析には支障をきたしませんでした。
あなたがいなくなってから、研究速度は停滞し、かつての1/10にも満たない程度となりました。
けれども、あなたのおかげで、大部分は翻訳済みだったので、こうして今は翻訳が終了しました。
世間一般に公開されるものではありませんが、私はこうして何らかの形で、あなたへの感謝の気持ちを残しておきたいと思いました。
もし、もしあなたが生きているのであれば、かつての職員カードを使用してください。
今もずっと、この施設にはあなたの情報が登録されています。
クリアランスも、最上位のままです。
あなたを超える、異世界の技術の研究者は未だに私は知りません。
だからどうか、帰ってきてください。
私は頑張りました、どうか褒めてください。
あなたが死んだと世間は言いますが、私は絶対に認めません。
だからこうして碑文を解きました。
どうか。
いつか、帰ってきてください。
【我は隠者、我は愚者。】
【我は語る、世界の危機を。】
【之を見し者、我が願いをどうか聞き届けたまえ。】
【何れ来る、異空の偽神達。】
【彼の者達は、世界を壊す災厄の根源。】
【逃れる術は在らじ、然して絶望する事なかれ。】
【此の碑文、世界に数多埋めたり。】
【此の碑文、偽神を絶つ星の刃の贋作なれど、確かなる人類の牙。】
【練磨せよ、決意せよ、人の心こそが彼の者達の手繰る権能を穿つ剣。】
【之は可能性の証明、不可能性の顕現、あらゆる必定を拒む法の剣。】
【力を執れ、吠え立てよ、狂いし神など必要なきに。】
この碑文研究の成果を、我が恩師、ワイスカード・クァスタリアへ捧ぐ。
碑文研究最高責任者代理 アカシ・シュウジロウ
最終更新:2024年04月11日 03:27