子どもの権利委員会・一般的意見18号/女性差別撤廃委員会・一般的勧告31号:有害慣行(後編)


C 有害慣行の防止

56.有害慣行との闘いにおける最初の措置のひとつは、防止を通じてとられる。両委員会とも、防止を最善の形で達成する方法は、社会的および文化的規範を変革すること、女性・女子のエンパワーメントを図ること、有害慣行の被害者、潜在的被害者および実行者と日常的に接している、あらゆるレベルの、関連するすべての専門家の能力構築を進めること、ならびに、有害慣行の原因および影響についての意識を(関係者との対話等も通じて)高めることに対し、権利を基盤とするアプローチをとることであると強調してきた。
1.権利を基盤とする社会的および文化的規範の確立
57.社会的規範は、あるコミュニティにおける特定の慣行の助長要因および社会的決定因子である。そのような慣行は、肯定的で、コミュニティのアイデンティティおよび結合を強化することもあれば、否定的で、危害につながる可能性がある場合もある。社会的規範は、コミュニティの構成員が遵守することを期待されている社会的な行動規則でもある。これにより、社会的な義務および期待に関する集合的感覚が形成されかつ維持されることにつながり、コミュニティの個々の構成員の行動が、たとえ個人的には当該慣行に賛成していない場合にも、決定づけられる。たとえば、女性性器切除が社会的規範となっている場合、親は、自分の娘に対してそれが行なわれることに同意するよう動機づけられる。他の親が同意しているのを見ており、かつ同じことをするよう周囲から期待されていると考えるためである。この規範または慣行を固定化させるのは、コミュニティのネットワークのなかにいる、すでにその処置を受けた、女性であることも多い。このような女性は、年下の女性に対し、その慣行にしたがうか、さもなければ追放され、遠ざけられまたはスティグマを付与されるおそれを犯すことになると、さらなる圧力をかける。このような周縁化には、重要な経済的および社会的支援ならびに社会的流動性の喪失が含まれることもある。逆に、社会的規範にしたがえば、包摂および賞賛によるものを含む報酬を受け取ることが期待できる。有害慣行の根底にあり、かつそれを正当化している社会的規範を変革するためには、このような期待に立ち向かい、かつその修正を図ることが必要である。
58.社会的規範は相互に関係している。すなわち、有害慣行だけを取り出して対応することはできず、当該慣行が他の文化的および社会的規範ならびに他の慣行とどのように結びついているのかについての包括的理解に基づいた、より幅広い文脈のなかで対応しなければならないということである。このことは、諸権利は不可分でありかつ相互に依存しているという認識に立った、権利を基盤とするアプローチをとることの必要性を明らかにしている。
59.立ち向かわなければならない根本的課題のひとつは、有害慣行が、被害者ならびにその家族およびコミュニティの構成員にとって有益な効果を有していると捉えられている可能性もあることである。したがって、個人の行動変容だけを目標とするいかなるアプローチにも、相当の限界がある。これに代えて、幅広い基盤に立った、ホリスティックな集団的アプローチまたはコミュニティに根差したアプローチをとる必要がある。文化的配慮のある介入策(人権を強化するとともに、このような慣行を実践しているコミュニティが、害を引き起こすことなく、また女性・子どもの人権を侵害することなく価値観および名誉を充足させまたは伝統を祝福する代替的方法を集団的に模索し、かつ合意することを可能にするようなもの)を実施することにより、有害慣行の持続可能かつ大規模な解消および集団による新たな社会的規則の採用につながる可能性がある。代替的慣行に対する集団的コミットメントを公に明らかにすることは、その長期的持続可能性を強化するのに役立ちうる。この点については、コミュニティの指導者らの積極的関与がきわめて重要である。
60.両委員会は、両条約の締約国が、有害慣行に対処し、かつ根底にある社会的規範に立ち向かいかつこれを変革するために行なわれるいかなる努力も、ホリスティックな、コミュニティに根差した、かつ権利を基盤とするアプローチ(あらゆる関係者、とくに女性・女子の積極的参加を含む)に基づくものとなることを確保するよう、勧告する。
2.女性・女子のエンパワーメント
61.締約国は、女性・女子が人権および自由を全面的に行使することを制約する父権的なイデオロギーおよび構造に立ち向かい、かつこれを変革する義務を負う。多くの女子・女性が経験しており、搾取、有害慣行およびその他の形態のジェンダーに基づく暴力の被害をいっそう受けやすくなる原因となっている社会的排除および貧困を克服するためには、女子・女性が、自己の権利(自分自身の生活について自律的な、十分な情報に基づく決定および選択を行なう権利を含む)を主張するために必要なスキルおよび能力を身につけることが必要である。このような文脈において、教育は、女性・女子が自己の権利を主張できるようエンパワーメントを図るための重要な手段となる。
62.女子・女性の学歴の低さと有害慣行の蔓延との間には明確な相関がある。両条約の締約国は、質の高い教育に対する普遍的な権利を確保し、かつ、女子・女性が変革の主体となれるようにする、可能性を促進するような環境づくりを図る義務を負っている(子どもの権利条約第28~29条;女性差別撤廃条約第10条)。そのためには、普遍的な、無償のかつ義務的な就学を整備するとともに、定期的な出席を確保し、中途退学を抑制し、現在存在するジェンダー格差を解消し、かつ、もっとも周縁化されている女子(遠隔地および農村部のコミュニティで生活している女子を含む)のためのアクセス支援を行なうことが必要になる。これらの義務を実施する際には、学校およびその周辺環境を安全な、女子にやさしい、かつ女子の最適な能力発揮に資するようなものにすることが考慮されるべきである。
63.初等中等教育を修了することは、児童婚および思春期の妊娠の防止ならびに乳児死亡率および妊産婦死亡率・罹病率の低下に寄与し、女性・女子が暴力からの自由に対する権利をよりよく主張するための準備を整えることにつながり、かつ、女性・女子があらゆる生活分野に効果的に参加する機会を高めることにより、女子にとって短期的および長期的利益となる。両委員会は、締約国に対し、児童が初等学校を修了することを確保し、初等教育および中等教育の双方について授業料を廃止し、中等教育(技術職業教育の機会を含む)への公平なアクセスを促進し、かつ中等教育の無償化を検討する等の手段により、中等教育における就学率および継学率を高めるための措置をとるよう一貫して奨励してきた。思春期の女子が妊娠中および妊娠終了後も学習を継続する権利は、非差別的な復学政策を通じて保障することが可能である。
64.就学していない女子にとってはノンフォーマル教育が唯一の学習の道であることが多く、そのような教育を通じて基礎教育およびライフスキルに関する教育が提供されるべきである。ノンフォーマル教育は、初等教育または中等教育を修了していない者にとって正規の学校教育に代わるものであり、ラジオ番組その他の媒体(デジタル媒体を含む)を通じて提供することもできる。
65.女性・女子は、生計維持および企業のスキルに関する訓練を通じて自己の経済的資産を構築できるようになり、また婚姻を18歳まで先延ばしにする経済的インセンティブが提供されるプログラム(奨学金、マイクロクレジット・プログラムまたは貯蓄制度など)は女性・女子にとって利益となる(女性差別撤廃条約第11条および第13条;子どもの権利条約第28条)。補完的な意識啓発プログラムは、家庭の外で働く女性の権利を伝え、かつ女性と仕事に関するタブーに立ち向かうことにとって必要不可欠である。
66.女性・女子のエンパワーメントを奨励するもうひとつの手段は、その社会的資産を構築することである。これは、女子・女性が同じ立場にある者同士、助言者、教師およびコミュニティの指導者とつながり、自己表現し、声をあげ、自らの希望および懸念を述べ、かつ自己の生活に影響を及ぼす決定に参加する安全な空間の創設を通じて、促進することができる。このことは、女子・女性が自尊感情および自己効力感、コミュニケーション、交渉および問題解決のスキルならびに自己の権利に関する意識を発達させるのに役立ちうるとともに、移住者の女子にとってはとりわけ重要なものとなりうる。伝統的に、男性があらゆるレベルで権力および影響力を有する立場に就いてきたことに鑑み、男性の関与は、子どもおよび女性がその家族、コミュニティ、市民社会および政策立案者の支持および確固たる関与を得られるようにするうえで、きわめて重要である。
67.子ども時代および遅くとも前思春期は、ジェンダーに基づく態度を変革し、かつ家庭、学校およびもっと広い社会において、より肯定的な役割および行動形態をとるように女子・男子の双方を援助しかつ支援するための入口である。すなわち、思春期前および前思春期の女子にとくに影響を及ぼす有害慣行を解消するための取り組みのなかで、伝統的な女性らしさおよび男性らしさならびに性別およびジェンダーと結びついたステレオタイプ的な役割と関連する社会的規範、態度および期待に関する子どもとの議論を促進し、かつ、ジェンダーの不平等の解消および教育(とくに女子の教育)を重視することの重要性の促進を目的とする個人的および社会的変革を支持するために子どもとパートナーシップを組んで活動しなければならない。
68.有害慣行の対象とされたまたはそのおそれがある女性および思春期女子は、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに対する相当のリスクに直面する。十分な情報およびサービス(思春期の子どもにやさしいサービスを含む)がないことから生ずる、このような問題に関する意思決定を妨げる障壁にすでに遭遇している状況では、なおさらである。そのため、女性および思春期の子どもがセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスならびに関連の権利に関するならびに有害慣行の影響に関する正確な情報にアクセスでき、かつ、十分なかつ秘密が守られるサービスにアクセスできることを確保するために、特別な注意が必要となる。セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスについての科学を基盤とする情報を含む年齢にふさわしい教育は、女子・女性が十分な情報に基づく決定を行ない、かつ自己の権利を主張できるようにするためのエンパワーメントに寄与する。この目的のため、十分な知識、理解およびスキルを有する保健ケア提供者および教師は、このような情報を伝達し、有害慣行を防止し、かつ、有害慣行の被害者である女性・女子または有害慣行の対象とされるおそれがあるかもしれない女性・女子を特定しかつ援助するうえで、きわめて重要な役割を果たす。
69.両委員会は、両条約の締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 遠隔地および農村部も含めて、女子にやさしい、普遍的な、無償のかつ義務的な初等教育を提供するとともに、中等教育の義務化を検討し(同時に、妊娠した女子および思春期の母親に対して中等学校を修了するための経済的インセンティブも提供するものとする)、かつ、非差別的な復学政策を確立すること。
  • (b) 女子・女性に対し、自尊感情、自己の権利に関する意識ならびにコミュニケーション、交渉および問題解決のスキルを発達させることのできる安全なかつ可能性を促進するような環境において、教育的および経済的機会を提供すること。
  • (c) 女性および子どもの人権を含む人権、ジェンダーの平等および自己意識に関する情報を教育カリキュラムに含めるとともに、ジェンダーに基づくステレオタイプの解消および被差別の環境の醸成に貢献すること。
  • (d) 学校において、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスならびに関連の権利に関する年齢にふさわしい情報(ジェンダー関係および責任ある性行動、HIV予防、栄養ならびに暴力および有害慣行からの保護に関連するものを含む)が提供されることを確保すること。
  • (e) 通常の学校教育から中途で脱落した女子または一度も就学したことがなく非識字者である女子のためにノンフォーマル教育プログラムへのアクセスを確保するとともに、これらのプログラムの質を監視すること。
  • (f) 女性・女子のエンパワーメントを支える、可能性を促進するような環境づくりに男性・男子の関与を得ること。
3.あらゆる段階における能力開発
70.有害慣行の解消における主要な課題のひとつは、有害慣行の発生またはリスクを十分に理解し、特定しかつこれに対応することについての意識または能力が関連の専門家(第一線で働く専門家を含む)に欠けていることと関連している。能力構築に対する包括的、ホリスティックかつ効果的なアプローチをとるにあたっては、影響力のある指導者(伝統的および宗教的指導者を含む)および可能なかぎり多くの関連の専門家集団(ヘルスワーカー、教育ワーカー、ソーシャルワーカー、庇護機関および出入国管理機関、警察、裁判官およびあらゆるレベルの政治家を含む)の関与を得ることが目指されるべきである。これらの者に対しては、その者が属する集団およびもっと広いコミュニティの態度および行動形態の変革を促進する目的で、有害慣行ならびに適用される人権規範および人権基準についての正確な情報が提供されなければならない。
71.代替的紛争解決機構または伝統的司法制度が設けられている場合、その運営に責任を負う者を対象として、人権および有害慣行に関する研修が行なわれるべきである。さらに、警察官、検察官、裁判官およびその他の法執行官は、これらの者が女性および子どもの権利について認識し、かつ被害者が置かれた脆弱な立場に敏感であることを確保するために、有害慣行の犯罪化に関する新法または現行法の実施についての研修を受ける必要がある。
72.有害慣行の蔓延が主として移住者コミュニティに限定されている締約国では、保健ケア提供者、教師ならびに保育専門家、ソーシャルワーカー、警察官、移民担当官および司法部門関係者は、有害慣行の対象とされたまたはそのおそれがある女子・女性を特定する方法ならびにそのような女子・女性を保護するためにとりうる方策およびとるべき方策についての感性強化措置および研修を受けなければならない。
73.両委員会は、両条約の締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 第一線で働くすべての関連の専門家に対し、有害慣行ならびに適用される人権規範および人権基準についての情報を提供するとともに、これらの専門家が、有害慣行の発生を防止し、特定しかつこれに対応するための十分な研修(被害者に対する悪影響を軽減し、かつ被害者が救済措置および適切なサービスにアクセスできるよう援助することも含む)を受けることを確保すること。
  • (b) 代替的紛争解決制度および伝統的司法制度に関与する者を対象として、人権に関する主要な原則、とくに子どもの最善の利益ならびに行政上および司法上の手続への子どもの参加の原則を適切に適用するための研修を行なうこと。
  • (c) 司法関係者を含むすべての法執行官を対象として、有害慣行を禁ずる新法および現行法についての研修を行なうとともに、これらの者が女性および子どもの権利についてならびに加害者の訴追および有害慣行の被害者の保護における自分の役割について認識することを確保すること。
  • (d) 移住者コミュニティとともに働く保健ケア提供者を対象として、女性性器切除の対象とされた子ども・女性が有する特有の保健ケア上のニーズに対応するための専門的な意識啓発プログラムおよび研修プログラムを実施するとともに、児童福祉サービスおよび女性の権利に焦点を当てたサービスならびに教育部門、警察部門および司法部門で働く専門家、政治家、ならびに、移住者である女子・女性とともに活動するメディア従事者に対しても専門的研修を実施すること。
4.意識啓発、公の対話および決意表明
74.両委員会は、有害慣行の根底にある社会文化的規範および態度(男性支配の権力構造、性およびジェンダーに基づく差別ならびに年齢による序列を含む)に立ち向かうために、締約国が、有害慣行を解消するための長期的戦略の一環として位置づけられる包括的な広報キャンペーンおよび意識啓発キャンペーンを行なうよう、恒常的に勧告している。
75.意識啓発のための措置には、有害慣行が引き起こす害および有害慣行が解消されるべき説得力のある理由についての、信頼できる情報源から得た正確な情報が含まれるべきである。この点に関して、マスメディアは、とくに、両条約に基づく義務にしたがい、女性および子どもが、その社会的および道徳的ウェルビーイングならびに身体的および精神的健康の促進を目的とした、有害慣行からの保護に役立つ情報および資料にアクセスできるようにすることを通じて、重要な機能を果たすことができる。
76.意識啓発キャンペーンを開始することにより、害を引き起こすことならびに女性および子どもの人権を侵害することのない代替的方法を集団的に模索すること、および、有害慣行の根底にあってそれを維持させている社会的規範は変革でき、かつ変革されるべきであるという合意に達することを目的とした、有害慣行に関する公の議論を主導する機会を提供することができる。自分たちの中核的価値観を満たすための新たな方法を見出しかつ採用するにあたってコミュニティが集団的自尊心を持てるようにすれば、害を引き起こすことまたは人権を侵害することのない新たな社会規範の遵守および維持が確保されることになろう。
77.もっとも効果的な取り組みは、インクルーシブであり、かつ、あらゆるレベルの関係者(とくに、当事者コミュニティ出身の女子・女性、ならびに、男子・男性)の関与を得て行なわれるものである。さらに、このような取り組みにおいては、地元の指導者の積極的な参加および支援(十分な資源の配分を通じたものも含む)が必要である。関係者、関連の機関、団体および社会的ネットワーク(宗教的および伝統的指導者、施術者および市民社会)との間にパートナーシップを確立し、またはすでに存在するそのようなパートナーシップを強化することは、社会の構成員間の橋渡しに役立ちうる。
78.有害慣行の解消後に生じた肯定的な経験についての情報を、地域コミュニティもしくは各地に散らばったコミュニティのなかでまたは同様の背景を有する同一地域内で有害慣行を実践している他のコミュニティ内で普及すること、および、優れた実践(他の地域で取り組まれたものを含む)の交流が検討されるべきである。これは、地方、国もしくは国際地域レベルの会議もしくはイベント、コミュニティの指導者による訪問または視聴覚手段の活用という形態をとって行なうことが考えられる。加えて、意識啓発活動は、それが地元の状況を正確に反映したものとなり、バックラッシュ的反応をもたらさず、または被害者および/もしくは有害慣行を実践しているコミュニティへのスティグマおよび/もしくは差別を助長することがないよう、注意深く計画されなければならない。
79.コミュニティを基盤とするメディアおよび主流メディアは、討論会またはトークショーの開催、ドキュメンタリーの制作および上映ならびにラジオおよびテレビ向けの教育番組の開発を政府との共同事業として進めるなどの手段を通じ、意識啓発および積極的働きかけにおける重要なパートナーとなりうる。インターネットおよびソーシャルメディアも情報および討論の機会を提供する貴重な手段となりうる一方、携帯電話は、メッセージを伝達し、かつあらゆる年齢層の人々とつながるためにますます利用されるようになっている。コミュニティを基盤とするメディアは、情報提供および対話のための有用な場となりうるものであり、ラジオ、街頭演劇、音楽、芸術、詩および人形劇などが考えられる。
80.有害慣行を禁ずる実効的な法律が存在しかつ施行されている締約国では、当該慣行を実践しているコミュニティが隠れてまたは国外で当該慣行を行なうおそれがある。有害慣行を実践しているコミュニティを受入れている締約国は、被害者または被害を受けるおそれがある者への有害な影響に関する意識啓発キャンペーンを支援すると同時に、これらのコミュニティに対する差別およびスティグマを防止することが求められる。この目的のため、このようなコミュニティの社会的統合を促進するための方策がとられるべきである。
81.両委員会は、両条約の締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 有害慣行を固定化させる行動形態の根底にある文化的および社会的態度、伝統および慣習に立ち向かい、これを変革するための包括的意識啓発プログラムを開発し、かつ採択すること。
  • (b) 意識啓発プログラムにおいて、有害慣行が女性、子ども(とくに女子)、その家族および社会一般に及ぼす悪影響についての、信頼できる情報源から得た正確な情報および明確なかつ統一されたメッセージが提供されることを確保すること。このようなプログラムは、ソーシャルメディア、インターネットならびにコミュニティのコミュニケーション手段および普及手段を含むものであるべきである。
  • (c) 被害者および/または有害慣行を実践している移住者もしくはマイノリティのコミュニティへのスティグマおよび差別が固定化されないことを確保するため、あらゆる適切な措置をとること。
  • (d) 国の諸制度を対象とする意識啓発プログラムにおいて、地方および国の政府および政府機関で働く意思決定担当者および関連するすべての計画担当職員ならびに主要な専門家が関与することを確保すること。
  • (e) 国内人権機関の関係者が、締約国内の有害慣行が人権に及ぼす影響について十分な認識および感性を持つこと、ならびに、これらの者に対し、当該有害慣行の解消を促進するための支援が与えられることを確保すること。
  • (f) 対策の準備および実施にあらゆる関係者(地元の指導者、施術者、草の根団体および宗教的コミュニティを含む)の関与を得ることにより、有害慣行を防止し、かつその解消を促進するための公の議論を主導すること。当該活動においては、あるコミュニティの文化的原則のうち人権に一致する積極的原則が肯定されるべきであり、かつ、同様の背景を有する、かつて有害慣行を実践していたコミュニティがその解消に成功した経験についての情報が含められるべきである。
  • (g) 意識啓発プログラムの実施を支え、かつ公の議論を促進する目的で主流メディアとの効果的パートナーシップを構築しまたは強化するとともに、個人のプライバシーを尊重する自主規制機構の創設および遵守を奨励すること。

D 保護措置および応答性の高いサービス

82.有害慣行の被害者である女性および子どもは、医学面、心理面および法律面のサービスを含む支援サービスを直ちに必要とする。ここで取り上げている有害慣行のなかには極度の身体的暴力をともなうものがあり、重度の損傷の治療または死亡の予防のために医学的介入が必要になる場合もあることに鑑み、緊急医療サービスはもっとも緊急性および明白な必要性が高いといえるかもしれない。女性性器切除その他の有害慣行の被害者には、短期的および長期的な身体的影響に対応するための治療または外科的介入も必要な場合がある。女性性器切除を受けた女性または女子の妊娠および出産の管理に関する教育が、助産師、医師および専門的技能を有するその他の分娩介助者の養成訓練および現職者研修に含まれなければならない。
83.国の保護システム、またはそれが設けられていない場合には伝統的諸制度は、子どもにやさしく、かつジェンダーに配慮したものとなることを要求され、かつ、暴力を受ける危険性が高い女性・女子(女性性器切除、強制婚またはいわゆる名誉の名の下に行なわれる犯罪の対象とされないよう逃亡した女子を含む)に対してあらゆる必要な保護サービスを提供するために必要な十分な資源を提供されるべきである。全国的に利用可能でありかつ周知された、番号を覚えやすい、フリーダイヤルの、かつ24時間対応のヘルプラインの設置を検討することが求められる。被害者のために、有害慣行の被害者のためにとくに設けられた一時保護シェルター、または暴力被害者のためのシェルター内で提供される専門的サービスを含む、適切な安全確保措置が利用可能とされなければならない。有害慣行の加害者が被害者の配偶者、家族構成員または被害者のコミュニティの構成員であることも多いことから、保護サービス機関は、被害者の安全が脅かされると考えるに足る理由があるときは、被害者が直接住んでいる地域の外に被害者を移すよう努めるべきである。監督を受けない面会は、とくにいわゆる名誉が問題になっていると考えられる可能性がある場合、回避されなければならない。被害者の即時的および長期的な心理的トラウマ(これには心的外傷後ストレス障害、不安症および抑うつ症が含まれることもある)を治療するための心理的支援も利用可能とされなければならない。
84.ある慣行の対象とされたまたはそれを拒否した女性・女子が家族またはコミュニティを離れて避難してきている場合、帰還するという当該女性・女子の決定に対しては、国の十分な保護システムによる支援が提供されなければならない。自由な、かつ十分な情報に基づくこのような決定を行なうにあたって女性・女子を援助する際には、当該女性・女子の最善の利益の原則に基づいて安全な帰還および再統合を確保する(再被害を回避することも含む)ための機構が必要となる。このような状況にあっては、被害者が短期的にかつ長期的に保護され、かつ自己の権利を享有することを確保するための緊密なフォローアップおよび監視が必要である。
85.有害慣行の結果として生じた権利侵害について公正な対応を求める被害者は、スティグマ、再被害のおそれ、いやがらせおよび報復の可能性に直面することが多い。したがって、女子・女性の権利が法的手続全体を通じて保護されることを確保するための措置(女性差別撤廃条約第2条(c)ならびに第15条(2)および(3))、および、意見を聴かれる権利(子どもの権利条約第12条)の一環として子どもが裁判手続に実効的に参加できることを確保するための措置がとられなければならない。
86.多くの移住者は経済的および法的に不安定な地位に置かれており、そのため、有害慣行を含むあらゆる形態の暴力をいっそう受けやすくなっている。移住者である女性および子どもは、十分なサービスに市民と平等の立場でアクセスできないことが多い。
87.両委員会は、両条約の締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 保護サービス機関に対し、有害慣行の被害者である子ども・女性または被害者となるおそれが高い子ども・女性に対し、防止および保護のためのあらゆる必要なサービスを提供する権限および十分な資源が与えられることを確保すること。
  • (b) 有害慣行が行なわれる可能性が高い場合または実際に行なわれた場合に被害者が通報を行なえるようにし、かつ、必要なサービスへの付託および有害慣行に関する正確な情報提供を行なうための、訓練を受けたカウンセラーによるフリーダイヤルかつ24時間対応のホットラインを設置すること。
  • (c) 保護における司法職員(裁判官を含む)、弁護士、検察官およびあらゆる関係者の役割、差別を禁ずる法律、および、両条約に一致する、かつジェンダーおよび年齢に配慮した方法による法律の適用に関する能力構築プログラムを開発しかつ実施すること。
  • (d) 法的手続に参加する子どもが、その権利および安全を保護し、かつ手続によって生じる可能性がある悪影響を限定するための、子どもに配慮した適切なサービスにアクセスできることを確保すること。保護措置には、被害者が陳述を求められる回数を制限すること、および、被害者が加害者(たち)と対面しないでもいいようにすることなどが含まれうる。その他の措置としては、訴訟後見人を任命すること(とくに加害者が親または法廷後見人である場合)、および、被害を受けた子どもが、手続に関する、子どもに配慮した十分な情報にアクセスでき、かつ何が期待されているかについて十分に理解することを確保することなどが考えられる。
  • (e) 移住者である女性および子どもが、法律上の地位にかかわりなく、サービスに平等にアクセスできることを確保すること。

VIII.一般的勧告/一般的意見の普及および活用ならびに報告

88.締約国は、この合同一般的勧告/一般的意見を、議会、政府および司法機関に対し、全国的におよび地方レベルでも広く普及するべきである。また、子どもおよび女性、ならびに、子どものためにおよび子どもとともに働く者を含むすべての専門家および関係者(たとえば裁判官、弁護士、警察官その他の法執行官、教師、後見人、ソーシャルワーカー、公立・私立の福祉施設およびシェルターの職員ならびに保健ケア提供者)に対して、また市民社会一般に対して、この文書を周知させることも求められる。この文書は関連の言語に翻訳されるべきであり、また子どもにやさしい/適切な翻案文および障害のある人がアクセスできる形式も利用可能とされるべきである。実施のための最善の方法に関する優れた実践を共有するため、会議、セミナー、ワークショップその他のイベントを開催することが求められる。関連するあらゆる専門家および専門職員の養成訓練および現職者研修にも正式に編入されるべきであり、またすべての国内人権機関、女性団体およびその他の人権非政府組織に対して提供されるべきである。
89.締約国は、両条約に基づく自国の報告書に、有害慣行を固定化させる態度、慣習および社会規範の性質および程度、ならびに、この合同一般的勧告/一般的意見を指針としてとった措置およびその効果に関する情報を記載するべきである。

IX.条約の批准または加入および留保

90.締約国は、次の文書を批准するよう奨励される。
  • (a) 女性差別撤廃条約の選択議定書。
  • (b) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書。
  • (c) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書。
  • (d) 通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書。
91.締約国は、女性差別撤廃条約第2条、第5条および第16条またはそのいずれかの項ならびに子どもの権利条約第19条および第24条(3)に留保を付しているときは、当該留保について再検討し、かつ修正または撤回を行なうべきである。女性差別撤廃委員会は、これらの条項への留保は原則として両条約の趣旨および目的と両立せず、したがって女性差別撤廃条約第28条(2)に基づいて許容されないと考える。


  • 更新履歴:ページ作成(2015年2月6日)。