17 : プライスレス 2007/11/11(日) 20:54:03 ID:???
プライスレス
1/1
「ひゃああっ!?」
買い物を済ませた千雨が寮へ帰る途中、聞き覚えのある悲鳴が耳に飛び込んできた。
何事か、と千雨は周囲をきょろきょろと見渡す。
「あーん、また落ちてもうた……」
程無くして声の主を発見し、千雨はやれやれと息をついた。何の事はない、近くのゲーセンで亜子がクレーンゲームに
興じていたのだ。珍しい事に今日は亜子一人らしく、周りに亜子の親友は誰も居ない。
「……何やってんだ? 情けねえ声出して」
単純な好奇心で千雨は声を掛けてみた。相手が亜子ならばぎゃあぎゃあ騒がれる事はないだろ、と思ったからだ。
「は、長谷川さん!? あ、あはは、みっともないトコ見られてもーたなあ……」
振り返った亜子は恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべる。
「和泉が一人でゲーセンに居る、ってのは意外だな」
「んと、たまたまやねん。ちょい寄り道しよう思て入ってんけど、この子に一目惚れしてもーて……」
亜子はクレーンゲームの景品の一つを指差す。それは可愛らしい熊のぬいぐるみであった。
「はは、いかにもな代物だな……。で、いくら注ぎ込んだんだ?」
千雨がにやにや笑いながら訊くと、途端に亜子の表情が曇っていく。
「んと、もう七百円は使こてもーたんよ……」
「―――和泉、人間諦めが肝心だ」
「うーっ、しゃあないなあ……」
千雨に諭された亜子は一応返事をしたものの、未練がましい様子でぬいぐるみを見つめている。
そんな表情をされると、なんだか止めた方が申し訳無いような気がしてきた。
「けっ……。そんなに難しいものかねえ……」
財布を取り出すと、試しに千雨も挑戦する事にした。あっさり取れたらくれてやろう、と思いつつ。しかし―――
「なんだよこのアームは! 全っ然挟む力がねえだろ!!」
さくさくと失敗を繰り返し、四百円使った頃には千雨の小銭が尽きてしまった。
「畜っ生、人間様を馬鹿にしやがって!! こうなりゃ両替だ!!」
「あわわ、長谷川さんムキになったらアカンてえええっ! 諦めが肝心や無かったん!?」
「ぐっ……!」
ミイラ取りがミイラになる形となり、千雨は亜子に宥められる格好でゲーセンを後にするのであった―――
18 : プライスレス 2007/11/11(日) 20:55:09 ID:???
2/2
「ああもう! 腹の虫が治まんねえ!」
普段よりもギロリと目をつり上げながら千雨は悪態をつく。その横では亜子がしょんぼりと肩を落としていた。
「あーあ、折角かわええ子見つけたんやけどなあ……」
「…………」
ちらり、と亜子の表情を窺うと、すぐに千雨は目線を外した。自分が見たかったのは、そんな表情じゃない。
「ごめんなー、長谷川さんまで付き合わせてもうて……」
「けっ……。私が勝手にやった事だから、心配される筋合いはねえよ」
そっけなく答えながら、千雨はなんとかリベンジする方法を考えていた―――
「クレーンゲーム?」
翌日。千雨に訊かれたハルナはおうむ返しに尋ねる。
「ああ。テメーはああいうの好きそうだからな」
「ふふん、このパル様を見くびっちゃ困るね。私はビブリオンのぬいぐるみをコンプするのに一万円注ぎ込んだ女よ!」
「―――OK、訊いた私が悪かった」
やはり金を注ぎ込むしかないか、と千雨はうんざりした表情で溜息をつく。するとハルナはにやりと笑った。
「なになに長谷川、あんた好みの景品でもあるの?」
「け。そんなんじゃねえよ!」
これ以上詮索されるのは御免だ、と千雨は立ち去ろうとする。
「ふーん、なんかワケありな感じだね。じゃあさ―――」
くすりと微笑みながら、ハルナはある事を教えてあげた。
「―――よりによってまき絵かよ……」
放課後になり、再び千雨はゲーセンに足を運んでいた。ハルナが自分の代わりにクレーンゲームの得意な奴を
向かわせるように言ったので、しばらく待っていたのだが、そこに現れたのはまき絵だったのだ。
色々な意味で厄介な人物を派遣され、千雨は引き攣った笑顔を覗かせる。
19 : プライスレス 2007/11/11(日) 20:56:26 ID:???
3/5
「ねーねー千雨ちゃん、どの子が欲しいの?」
「……こいつだ」
まき絵のペースに乗らないように気を付けながら、千雨は亜子が欲しがっていたぬいぐるみを指差す。
「うーん……。隣の子がジャマしてるね」
神妙な表情でしばし観察していたまき絵は、やがてにこりと笑い、コインを投入する。
「んとね、ここのクレーンはコツがいるんだよ」
まき絵の説明を聞きながら千雨はじっくりとクレーンの位置を確認する。まき絵は巧みな操作でクレーンを導くと、
あっさりと隣のぬいぐるみを引き上げてしまった。出てきた景品を抱え、まき絵は嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「こんな感じ! なんならあの子も私が取ってあげよっか?」
「いや、いい……」
対して、千雨は呆気に取られていた。ここまであっさり取られると、自分はどこまで無器用なのか、と
軽い目眩を感じてしまう。しかし、まき絵のお陰で取りやすくなったのは確かだ。
「済まねえな、後は自力でなんとかする」
まき絵が見守る中、再び千雨の挑戦が始まった。まき絵のお手本で距離感は掴めたのだが、いかんせん操作の方で
千雨は苦戦している。その度にまき絵がアドバイスを送るのだが、なかなか簡単にはいかない。
「ちっ……!」
ぬいぐるみがあえなく落下したのを見届け、千雨は一度間を置くことにした。すると、まき絵が唐突に切り出してくる。
「ねーねー、千雨ちゃんもこういうの好きなの?」
「あ、いや……」
適当に誤魔化そうとして、まき絵が亜子と同室な事を思い出す。しばし黙り込んでから、千雨は観念した。
「まあ、嫌いじゃねーが、私よりもコイツを欲しがってた奴がいるんだよ」
「ふーん、じゃあ千雨ちゃんはその子にプレゼントする為に頑張ってるんだね!」
違う、と言い掛けて千雨はハッとする。
脳裏に浮かんだのは、亜子の喜ぶ顔―――
亜子の為に動いていた自分に驚きを隠せない。けれど、それは不快じゃなくて、自然と笑みが溢れてくる感覚で。
「―――ま、アンタもすぐにコイツと再会するだろーよ」
にやりと笑い、千雨は再びコインを投入した。まき絵が?マークを浮かべるのを尻目に、
千雨は懸命にクレーンを操っていく。そして―――
20 : プライスレス 2007/11/11(日) 20:57:37 ID:???
4/5
「あっ! いいカンジだよっ!」
ぬいぐるみを掴み上げたのを見てまき絵が騒ぎ出す。そして、ようやくお目当ての景品は陥落した。
「―――ははっ、手こずらせやがって……!」
ぬいぐるみを回収し、千雨はしてやったりの表情を覗かせる。
「やったね、千雨ちゃん!」
「ああ、ざまあみろってんだ。―――さんきゅ、まき絵」
一緒になってはしゃいでいるまき絵の頭を、千雨は穏やかな表情で撫でる。―――と、その時。
「あーっ、長谷川さんやったやん! ちゃーんと取れたんやね!」
いきなり声を掛けられた千雨が振り返ると、亜子がこちらへぱたぱたと駆け寄ってきたのだ。
「まあな。コイツに教わったから、あんまり金使わずに取れたぜ」
「あはは。せやったんか。まき絵は器用やもんなあ、ウチにも教えて欲しいわ~♪」
千雨が説明すると、亜子はうんうん頷きながら財布を取り出そうとする。
「お、おいちょっと待て和泉、アンタはコレが欲しいだけだろ?」
「うん。そうやけど?」
きょとんとした表情で答える亜子に、千雨はやれやれとばかりに苦笑する。そして、まき絵と軽く視線を交わすと、
「ほれ、コイツを持ってけよ」
何のためらいも無く、ぬいぐるみを亜子に手渡したのだ。
「えっ……?」
ぽかーんとしたまま亜子は硬直してしまう。その横でまき絵はポンと手を叩き、納得した様子で笑顔を弾ませた。
「いいからいいからっ♪ 亜子は遠慮しないでもらっちゃいなよ♪」
「せ、せやけど……、ええの、長谷川さん?」
亜子が申し訳無さそうに千雨を見上げると、一瞬だけ千雨はどきりとする。けれど、千雨は目線を外しながら
ぶっきらぼうに答えた。微かに頬を赤くしながら―――
21 : プライスレス 2007/11/11(日) 21:02:07 ID:???
5/5
「私は単にリベンジしたかっただけだからな。別に景品が目的じゃねーよ。だからコイツはアンタにやる」
「長谷川さん……」
亜子の表情が次第に緩んでいくのを見て、千雨は眼鏡を外し、不敵な笑みで答えた。
「―――なんなら、ちと早い誕生日プレゼント、ってコトでいいだろ?」
「―――うんっ!!」
そして、亜子は嬉しそうに頷くと、受け取ったぬいぐるみを抱きしめたのだ。
「ありがとうな、長谷川さん!」
亜子の笑顔が弾ける。それは、千雨が思い描いていたのより眩しくて―――
私はこの笑顔が見たかったんだな、と思う。千雨はくすりと笑い、まき絵と顔を見合わせた。
「やっばさ、コレばっかりは金で買えるもんじゃねーな」
「うんうんっ! こんなご褒美があるんじゃ、千雨ちゃんがムキになるのも分かるよ~♪」
「んと、何の話?」
二人がにやにやと笑い合う中で、亜子だけが小首を傾げている。
すると、千雨はきっぱりと答えた。穏やかな笑顔を湛えたままで―――
「リベンジも果たせたし、いいもん見せてもらったからな。ま、私は満足したってこった!」
そう言って、千雨は亜子の頭を優しく撫でた。瞬く間に赤くなる亜子に、まき絵はくすくす笑うばかり。
「なんかさ、不思議なんだよね~♪ あの笑顔の為ならなんでも頑張れちゃうカンジだよねっ!」
「―――だな」
まき絵の呟きに、千雨は珍しく素直に頷いた。
亜子のとびっきりの笑顔。
それはどんな報酬よりも嬉しいものだから―――
(おしまい)
33 : ハイパーどきどきタイム 2007/11/12(月) 03:46:05 ID:???
ハイパーどきどきタイム
1/2
「……どう?」
裕奈が尋ねると、まき絵はおそるおそる湯船に手を入れてみた。そして……、
「うう~、ぬるぬるしてる~!」
まき絵は慌てて手を引っ込め、大急ぎで入浴剤を洗い流した。様子を眺めていた裕奈は申し訳無さそうな顔をする。
「やっぱりダメかあ……。この入浴剤、すっごく美肌効果があるんだけどなー」
少し淋しげな表情で、裕奈は手にしていた入浴剤を眺めていた。例によって通販で購入したものだが、
ややぬめりがあるのが難点である。実際にまき絵には耐えられない代物であった。
まき絵もしょんぼりした様子で濡れた手をタオルで拭き取っている。
「ごめんね、ゆーな。今日はみんなと大浴場の方に行くよ」
「うん……。仕方ないよね……」
まき絵が浴室から出ていくと、裕奈はそのまま湯船に入り、大きく溜息をついた。
「あーあ、まき絵にもこの入浴剤のスベスベ感を味わって欲しかったんだけどなあ……」
まき絵にも喜んでもらえるような入浴剤はないものか。しばし裕奈はそんな事を考えていた―――
それからしばらくして。裕奈は再びまき絵に声を掛けた。
「今度は全くぬるぬるしないブツを用意したからねっ! 今日はあたしと一緒にお風呂入ろ♪」
「うんっ! いいよ~♪」
ぬるぬるしない、と聞いて、まき絵は二つ返事で了承する。そのまま二人は裕奈の部屋に向かった。
「はれっ? なんにも入ってないよ?」
衣服を脱いで浴室に突撃したまき絵は、無色透明な湯船を見て小首を傾げる。すると裕奈はにやりと笑い、
「今からコレを入れるの♪」
隠し持っていた小瓶を取り出すと、ある液体を数滴だけ湯船に混ぜたのだ。
「わあっ……!」
途端に浴室にはラベンダーの香りが広がり、まき絵はうっとりした様子で声を上げる。
「ふふっ、ほんの少しのアロマオイルならさ、ぬるぬる嫌いのまき絵でも大丈夫でしょ?」
「うんうんっ!」
裕奈の問いに、まき絵は嬉しそうに頷いた。
34 : ハイパーどきどきタイム 2007/11/12(月) 03:47:14 ID:???
2/2
「あははっ♪ すっごく気持ちいいね~♪」
軽くシャワーを浴びてから湯船に浸ったまき絵は、すっかりご機嫌な様子で感想を告げる。
「そりゃよかった。この前の入浴剤は空振りだったからね……」
対して、裕奈は何故か緊張した表情で答える。
「こーゆーのだったら大歓迎だよっ♪ ありがと、ゆーな!」
「う、うん……」
「んー、ゆーな顔赤いよ? もうのぼせちゃったの?」
「違うっての……」
くらくらしそうな状態で裕奈はぼそりと呟いた。まき絵の肩越しに……。
まき絵を喜ばせたい一心で裕奈は声を掛けたのだが、さすがにこの事態は予想外だったらしい。
「わざわざ狭い浴槽に二人で入らなくても……!」
「あははっ、気にしなーい気にしない!」
そう、まき絵は無理矢理裕奈と一緒に湯船に入っているのだ。裕奈が足を広げた所にすっぽり入る形で、
まき絵はお気楽極楽といった表情で寛いでいた。お陰で裕奈の方は身動きが取れない状態である。
すぐに触れられる所に、まき絵の白い肌がある。思わず抱きしめたくなるのを、裕奈は懸命に堪えていた―――
(ううっ、嬉しいけどこれはちょっと辛いかも……!)
今、何かの拍子にまき絵に触られたらまずい。裕奈は必死で高鳴る胸を抑えていた。
対照的に、まき絵は呑気な事を切り出してくる。
「ふふっ、ホントにいい香りだよね~♪ またお風呂に誘ってね、ゆーな♪」
「あはは……。りょーかい……」
振り返ってにっこり微笑んだまき絵に、裕奈はつい反射的に頷いてしまった。そして、苦笑する。
「ま、いっか―――!」
しばらくはどきどきタイムに悩まされる事になった裕奈は、やや開き直った様子で呟いた。
好きな人と一緒にお風呂に入るのは、それはそれは幸せなことなのだから―――
(おしまい)
39 : マロン名無しさん 2007/11/12(月) 14:16:03 ID:???
美砂「お誕生日おめでとう綾○はや○君♪」
楓「美佐殿、拙者は某貧乏執事とは違うでござるよ。確かに声は似ているでござるが…」
釘宮「知っているか?『楓』の由来は『カエルの手』から来ているんだぞ!」
楓「中の人の名前つながりのネタとは……中々面白い事をするござるな。」
美砂「ほんとよね~」
「「「ハッハッハッハッハッハッハ」」」
楓「え……マジ?」
40 : 楓 バースディプレゼント 2007/11/12(月) 18:59:59 ID:???
楓 バースディプレゼント
お誕生日。拙者、この世に生を受けて幾星霜
いつ頃からある風習かはわからぬが、贈り物というのはいつも心を躍らせてくれる物でござる
ハルナ 「楓さん、コレ貰ってよ!!お誕生日プレゼント!!」
少しばかり無駄な方向の元気が溢れんばかりのハルナ殿、その手には一冊の冊子が握られていた
楓 「おおっ!これはかたじけないでござる」
拙者に渡されたのは一冊の本、表紙を見ると・・・
”友情の果てに・・・”
楓 「??この表紙の少年はネギ坊主とコタローではないか?」
うっとりとお互いを見つめ合う表紙のネギ坊主とコタロー、少し気になったので頁をめくってみると・・・
言うに及ばず、語るに及ばず。所謂アーッ!!とかウホッ!!とかなのでござる
しかし頁をめくるに従って、ハルナ殿の絵には一つ気になることがあるでござった
ハルナ 「もう、楓さんったら・・・こんなところで読みふけるなんて、好きものね」
楓 「いや、ちょっと気になることがあるでござってな」
ハルナ 「何?なになに?」
楓 「ネギ坊主の○○はもう少し大きく、コタローの尻にはこのあたりにホクロと●●されたの跡があるでござる」
ハルナ 「・・・やるわね。私でもそこまでの情報は知ってなかったわ」
楓 「ネギ坊主はよくドラム缶風呂に入れてやってるでござるし、コタローは修行の名の下にいろいろと、でござる」
ハルナ 「ある意味役得ね。まあ今度勉強がてらに一緒に体験させてね。じっくりと」
楓 「あまり無茶はいかんでござるよ?」
ハルナ 「次の新刊楽しみにしてね。大丈夫、お誕生日じゃなくてもプレゼントしてあげるから」
贈り物とは嬉しい物でござるなぁ・・・
完
43 : 千雨 鑑定機 2007/11/13(火) 22:59:57 ID:???
千雨 鑑定機
1/3
発明家というのは時にとんでもない物を作る
それは場合によっては歴史に残ったり、時代を劇的に変化させたりする物であったりする
そしてある物は歴史の、そして世界の闇へと消えてゆく
不幸な被害者と共に・・・
千雨 「なんだこりゃ?」
ある日、突然それは寮の一角に現れた。大きな、まるで冷蔵庫のようなドアのある物体だった
制作者の超が言うには一種のリサイクルマシーンだという
超 「この中に物を入れればお値段を鑑定して貰えるネ。そしてそのまま不要ならお金にしてあげるヨ?」
制作者はクラスでそんなことを言った
円 「なんで100円なのよ!!このシルバーアクセ、5、000円もしたんだよ!!」
美砂 「あはは、やっぱり偽物だったか」
桜子 「ハズレ、だね。あんな怪しい露店で買うからだよ」
その鑑定機はすぐにクラスの人気者となった。皆、あらゆる物を放り込んでその鑑定額を競い合ったのである
しかしそれもすぐに収まる。そう、委員長の存在があったからだ
あやか 「あら?このティーカップはこんなお値段だったかしら?」
なんというかそれは圧巻だった。何せクラスメートの入れるそれとは桁が4つは違うのであるから
千鶴 「あのティーセットでお家が買えるわね」
夏美 「ち、ちづ姉。お部屋に戻るのが怖くなっちゃったよ」
皆、一位を競い合うことに飽きてしまったのだ。どうあがいてたって勝てないのだから
44 : 千雨 鑑定機 2007/11/13(火) 23:01:00 ID:???
2/3
千雨 「なあ、ザジ。夕飯を賭けて勝負しねえか?」
ザジ (・・・コクン)
千雨 「なら一発勝負。恨みっこ無しな」
私にもいくつか宝物と呼べる物があった。あまり高い物とは思えないがそれでもザジに勝つ自信があった
ザジと遊ぶつもりでそんなことを言ったんだ
そう、遊びのつもりだったのに・・・
千雨 「じゃあ私からな。私は・・・これだ!!」
私の宝物は自作のコスプレ衣装だった。実はこれ、それなりにいい生地を使っている
現在の人気から考えればネットでそれなりに良い値段がついてもおかしくないのだが
オネダンハ・・・89,000円
千雨 「おほっ!結構な値段がついたな!理由は何々?」
”現在人気のキャラクターがポイント。女子中学生ネットアイドルちうの脱ぎたてというのも良いですね”
なるほどな・・・って一時期あったブルセラかよ!!
千雨 「り、理由はともかくなかなかの金額だ。これで私のおごりは決まったかな?」
しかしザジのほうをみたが、ザジは不敵に笑っている、勝つ自信ありといったところか
千雨 「・・・いいだろう。じゃあお前の番だ。やってみろ」
私がそう言うと、ザジはそっと鑑定機の扉を開けた
そして・・・よく見るとザジはなにも持っていなかった。あれ?コイツ一体・・・
45 : 千雨 鑑定機 2007/11/13(火) 23:02:04 ID:???
3/3
次の瞬間、ザジは私の手を握ると思いっ切り引っ張った
そして勢いで私は鑑定機の中に放り込まれる。不意を突かれ私は抵抗することが出来なかった
千雨 「なっ!!テメエ一体何しやがる!!」
私は急いで振り向くが、扉は無情にも閉まってゆく。そして閉じゆく扉の隙間からザジの顔が見えた
ニヤリ、と笑ったザジが見えた
私が今どこにいるのかわからない
確かあの鑑定機は”不要ならお金になる”という機能があった
そして私は暗い中にいる。たぶん何処かに運ばれたのかもしれない。不要な物として
ザジ、それはあんまりだ。私は要らなかったのか
それとも操作を間違えただけなのか?
教えてくれ、ザジ・・・
そしてザジ、もし私が戻ることが出来たならどうしても教えて欲しいことがある
私は”いくら”だったんだ?
完
47 : マロン名無しさん 2007/11/14(水) 08:22:23 ID:???
楓「おや? あれは五月殿とサッチャンでござるな」
五月 あ、長瀬さん。
サッチャン ぶ?
楓「何をしているでござるか?」
五月 葉っぱを集めていたんです。
楓「ほう…かなり集まっているでござるなぁ」
五月 この子が頑張ってくれましたから
サッチャン ぶぃ~♪
五月 そうだ。焼き芋でも作りましょうか
楓「風流でござるなぁ」
五月 …あ、あの
ふーか「良き香りじゃのう」
ふみか「旨そうじゃのう」
楓「…いやー、賑やかになってしまったでござるなぁ」
五月 お、お芋は一杯ありますから…
数分後
ふみか「クハァァァ! 甘いのぅ! 美味いのぉ!」
刹那「おいしいねぇこのちゃん」
このか「お芋美味しいねぇせっちゃん」
五月 あ、焦って食べちゃ駄目ですよ
サッチャン ぶぃっ、ぶぶぅっ
楓「…善也善也」
ふーか「…フンッ!」
カッ!
その日、ふーかの放った鳴滝ビッグバンによって麻帆良は跡形もなく無くなった。
そしてその後数百年間旧麻帆良の地には草木一本生えなかったという。
51 : 彼女の歩む道 -1- 2007/11/14(水) 20:04:00 ID:???
薄明るい月明かりが差し込む部屋の中で、ゆっくりと起き上がる一つの影―――
「お目覚めですか」
上半身をベッドの上に起こした明日菜に、彼女は寝たまま問いかける。
もうとっくに起きていたようだ。
『どうせなら起こしてくれれば良かったのに』
明日菜は心の中で悪態を尽く。
「う…うーん。部屋に戻らなきゃ」
もそもそと服を着始める明日菜に、彼女は冷めた視線を送る。
「一晩くらい泊まって行っても別に私は困りませんけど」
「…そうね。また今度、考えておくわ」
いつも変わらない会話。まるで儀式のように毎回繰り返す問答に、彼女は退屈していないのだろうか、と明日菜はいつも不思議に思っていた。
「それじゃ、またね」
「ええ、また」
これもいつも通り。彼女はいつも追わない。自分も縋らない。捕らえず捕らわれずの二人の関係を明日菜は気に入っていた。そう、このままずっとこんな関係が続くと思っていた・・・。
52 : 彼女の歩む道 -2- 2007/11/14(水) 20:07:35 ID:???
>>51
「アスナさ~ん 今日も一段と魅力的ですわ!授業なんてほったらかしてこのまま襲ってしまいたい気分ですわ!!」
「あ~はいはい。冗談はほどほどにしておいてね。あんただけならいいけど、こっちも噂の中心になって困ってるんだから!」
「何をおっしゃっているんですの?いつだって私たちは世界の中心ですわ。私たちの仲は誰にも裂けませんのよ」
校舎へ入ると共に、彼女の熱いまなざしが明日菜に纏わりつく。人から好かれるのは嫌いではない。
しかし、それが元で誰かに噂されるのはイヤだった。明日菜の気持ちを知ってか知らずか・・・それとも困る明日菜を楽しんでいるのか、
熱いラブコールは止まることを知らない。半ば諦め顔で教室へと向かう明日菜。廊下で行き交う人たちの視線がなんとも痛い。
『あ~あ、面倒な奴に取り憑かれたもんだわ』
やれやれとため息をつきながら教室へ入ろうとしたその瞬間、ぐいっと腕を引っ張られ、廊下へと引き戻された。
「・・・えっ・・・!?」
気付いた時には腰に手を回され、抱きかかえられながら口付けされていた。
「ちょっっっと!!な・・・なにすんのよっ!」
「朝のおはようのキスですわ」
思いっきり払いのけられたというのに全く堪えていない様子でさらっと言い放つ。
それ以上赤くなれないほど顔を赤くした明日菜が金切り声で文句を言うがまったく相手にはされない。むしろ噛み合わない会話が、
いつものお決まりとばかりに人だかりができ始めた。
53 : 彼女の歩む道 -3- 2007/11/14(水) 20:09:22 ID:???
>>52
「相変わらずあっついねぇー、朝からまーよくやるッス」
「そっ・・・そんなんじゃないわよっ!この万年エロいんちょが私にっ・・・」
「まぁ、私の愛情表現を『エロ』の二文字などで片付けてしまうなんて、まだまだアスナさんに私の愛は伝わっていないようですわ」
コトの続きを始めかけた相変わらずのあやかと、その巻き添えになる明日菜を横目に、美空は教室へ入った。
外の喧騒が嘘のように、教室には穏やかな朝の空気が流れている。
『あれ?』
いつもとは何かが違うような違和感を感じ、美空はぐるりと教室を見回す。
廊下(そと)の出来事に興味を持たないクラスメイトたちがそれぞれに思い思いのことをしていた。
一人廊下を見つめる少女を除いて・・・。
「廊下が気になるッスカ?」
「・・・・・・・」
「お・・・おはよー」
「・・・おはようございます」
『声掛けるんじゃなかった・・・』
すぐに後悔した。黙って向けられた瞳は鋭く、まるで心臓を射抜かれたかのように、一瞬息が止まった。なんとか挨拶を交わしたものの、
二人の間には冷たい空気が渦巻いている。
「あの二人はいつも熱いッスねー」
世間話をする程の間柄でもなかったが、この重い空気の中では何か言わなければならない・・・そんな気持ちで発したものの、
それが最悪な選択だとは美空はこの時思ってもいなかった。
「・・・興味ありませんから」
視線の先は明らかにあの二人に向かっていたはずなのに、シラを切る相手に美空の直感が働いてしまった。
「明日にゃん盗られて残念ッスね」
頭で考えるよりも先に口からこぼれ出たその言葉に、相手の血管が切れる音が聞こえた気がした。
「・・・・な・・・なんでもないっす・・・・!!」
美空は叫びながら教室の外へと逃げ出し、とうとう午前中は教室に戻ってはこなかった。
54 : 彼女の歩む道 -4- 2007/11/14(水) 20:10:23 ID:???
>>53
明らかに冷静さを失った様子の少女は、脇に立てかけた木刀を持ち中庭へと向かった。
噴出した汗が飛び散るのも構わず、ただただ闇雲に木刀を振り回し空気を引き裂く。
「剣に迷いが出ているな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうせお嬢様のことだろ?違うか?」
「お前には関係ない」
ひゅんと一際大きく振り切った刃先を真名へ向け、睨み付ける。
「おーこわ。お嬢様のこととなると、お前は周りが見えなくなるな」
黙って見つめたままの少女とは裏腹に、真名は茶化した瞳で見返す。
「お嬢様のことではない」
ぶっきらぼうに呟くと、再び無言で素振りを始めた。
想定外の返答に面食らった様子の真名だったが、何やら楽しげに再び始まった素振りを見続けていた。
「そういえば・・・今朝仕事から戻ったら見慣れぬ長い髪の毛が部屋に落ちていたが・・・?あの赤毛はお前のものか?」
大きく竹刀が跳ね上がり、少女の動作が止まった。
「・・・・・・部屋に・・・戻ったのか?」
首だけを回し見た視線の先には、彼女の強張った表情に反して不敵な笑みを浮かべる真名の姿があった。
「いくら私でも仕事の後くらいはシャワーを浴びたいからな」
つーっと汗が頬を伝い落ち、息をするのさえ躊躇うような静寂が訪れた。
「お前がお嬢様以外に興味を持つのはいいことだ。余計な詮索はしないでおこう。だが秘密を守り抜きたいのならもう少し周りに気を遣え」
ひらひらと手を振りながらその場を後にする真名の後姿に、下唇をぎゅっと噛み締める。
「秘密にしたくてしているわけではない」
ポツリと呟いたその言葉は到底真名に届く筈も無く、むしろ自分に言い聞かせているかのようだった。
ふと、見上げた頭上の空はさっきまでの明るい日差しを隠し、重く厚い雲が一面を覆っていた。
自分の心情を映し出したかのような空に小さくため息をつき、ぎゅっと竹刀を握り締めた。あんなに吹き出ていた汗もひき、
身体はすっかり冷え切ってしまった。大きく身震いをすると少女は足早に教室へと向かう。
それを見届けるかのように重さに耐え切れなくなった厚い雲の合間から、無数の水滴が地上へと落下した。
「雨・・・か・・・」
誰も居ない中庭に、静かに雨が降り注ぐ
ゆっくりと―――そして残酷なまでに冷たく―――
55 : 彼女の歩む道 -5- 2007/11/14(水) 20:11:38 ID:???
>>54
「はぁあー・・・」
大きなため息とともに、小さくベッドが軋んだ。一人用のベッドに二人で寝るのはさすがにちょっとキツイらしい。
悲鳴にも似たその音に美砂はベッドを明け渡す。
「どうしたのよ、大っきなため息ついちゃって」
無造作に散らばった服をかき集め、下着だけ身に着ける。どうせまた脱ぐことになるのはわかっていたが、
彼女がいつも気まぐれだけで自分の部屋にやってきているわけではないことをわかっていた・・・・・・
話を聞くにはせめて寒くない格好でいたい。そんな間にも、火照った身体に冷え込んだ部屋の空気が容赦なく突き刺さる。
美砂は皺くちゃになったシャツを羽織ると背中をベッドに預け、膝を抱えた。
「最近いんちょがしつこくてさ、疲れてんのよー」
重そうに開いた口からうんざりしたような声が漏れた。
うつ伏せに寝転びベッドを占領しているお姫様は、機嫌が悪そうに美砂を見つめた。
「でもいいんちょと仲イイじゃん?」
「うぅ・・・別に嫌いなわけじゃないもん。ただ・・・恋愛対象にならないだけよ」
言葉に詰まった彼女は気まずそうに視線を逸らした。
「そういえば、桜咲さんは?いいんちょが纏わりついてることどう思ってるの?」
「べーっつにー そういう嫉妬とかする人じゃないし、私が束縛されるの嫌なのわかってるもの。だから付き合えるんだけどね」
興味なさそうに彼女は自分の髪の毛をいじり始める。
『なんだ、今日はストレス発散なのか』
もっと深刻な悩みかと身構えていた美砂だったが、それほど大きくもない悩みに拍子抜けして思わず笑いがこみ上げた。
「まーあんたの好きにしなさいな。私はたまにこうやって会うだけでなかなか楽しいしさ」
彼女のロングの赤毛をそっと掬い、軽く口付ける。鼻をくすぐるシャンプーの香りが今の美砂には心地よかった。
「うーん、美砂と付き合えばよかったかな」
「止してちょうだい、私はあんたなんかゴメンだわ」
「フフ、私もよ」
軋むベッドの音も気にせず、美砂はぬくもりの残る布団の中へと潜り込んだ。
56 : 彼女の歩む道 -6- 2007/11/14(水) 20:12:52 ID:???
>>55
残された廊下で、明日菜は一人佇んでいた。
さっきから美空の言葉が頭の中でぐるぐる回っている。
「寒い・・・」
廊下に響く小さな声がみるみるうちに壁の中へと吸い込まれていった。
置き去りにされたような孤独の中、明日菜は身を包む寒さに一人震えていた。
このまま部屋には帰りたくなかった。自分を包み込む、ぬくもりが欲しい・・・
頭に思い浮かぶ顔は、白く端正な横顔 ・・・ 月に照らされた、蒼白い ―――
静寂を断ち切るその音に、はっと我に返る。孤独の中を彷徨っていた自分を元の世界に引き戻してくれたのは、
メールの着信音だった。
[今日も龍宮はいません。11時までは起きています。お好きにどうぞ。]
簡素な文面に自分への彼女なりの気遣いが見え思わず顔が綻ぶ。
と同時に美空の言葉が否応なしに圧し掛かってくる。
『・・・まさかね・・・・・・』
疑念はあったが、今は本心を確かめる時ではない、それよりも・・・・・・
彼女の部屋へ足を向ける。自然とその足は速まっていた。
見慣れたドアの前で立ち止まる。ノックの数秒後に開いたドアの奥に、彼女は少しだけ驚いた様子で佇んでいた。
「二日も続けてゴメン」
明日菜の言葉に、ゆっくりと綻ぶ口元。いつものクールな彼女からは想像もつかないような甘く優しい声で囁いた。
「別に構いませんよ」
部屋の中に吸い込まれるように入ると、扉は小さな音を立てて閉まった。
57 : 彼女の歩む道 -7.1- 2007/11/14(水) 20:16:57 ID:???
>>56
廊下に佇むその金髪の目立つ後姿に、顔を見ずともすぐに誰だか気が付いた。
いつもと様子の違う彼女に、声をかけようとした口を慌てて噤んだ。
視線の先にいたのは刹那の部屋へ招き入れられる明日菜の姿だった。
彼女の想い人、明日菜―――
その明日菜がこんな遅くに刹那の部屋を訪れて・・・明日菜を出迎える刹那の姿に・・・二度驚いた。
自分も今まで見た覚えがないような刹那の笑顔に一瞬にして気付いてしまった。
見てはいけないものを見た気がして呆然とその場に立ち尽くした。
「古菲さん・・・見られてしまいましたか」
「いいんちょ・・・」
振り返った彼女に、いつもの自信溢れる表情はない。
寂しそうに微笑む眼差しに、涙が零れるのを抑えられなかった。堰を切ったように感情が溢れ出し、ポロポロと涙が流れ落ちた。
「まぁ、困りましたわ」
ポケットから取り出したハンカチで涙を拭われながら、導かれるようにロビーへと向かった。
頬を撫でる小さな布が彼女のように優しく、そして柔らかかった。
58 : 彼女の歩む道 -7.2- 2007/11/14(水) 20:18:58 ID:???
>>57
「落ち着きましたか?」
ようやく涙も止まった頃、改めてみた彼女の顔はいつもの笑顔に戻っていた。
辛い・・・はずなのに・・・自分を気遣ってか辛い表情は見せずにいる。
「いいんちょは・・・ツラクないアル?」
自分の問いかけに困ったような笑顔を見せ、彼女は口を開く。
「アスナさんは私のモノではないですから、仕方ないですわ。辛いかどうかと聞かれれば・・・それは辛いですけれど・・・」
なんてバカなこと聞いたのだろう・・・自分の愚かさに悔い、そして彼女の笑顔に胸を締め付けられた。
目の前にいる相手に心配をかけないように、負担をかけないように。彼女は精一杯の笑顔を自分へ向けていてくれる。
今も、辛い気持ちを抑え自分の為に・・・
「そんな顔しないで下さいな」
きっとどうしようもないくらい見っとも無い顔している。必死で涙を堪える自分は無様な顔をしているだろう。
オロオロする彼女にぎゅっと抱きつき、涙を零した。
「いいんちょが泣かない代わりに、ワタシが泣くアル」
「古菲さん・・・ありがとう、ございます・・・」
泣いていたのかもしれない。消え入りそうな声が頭の上から聞こえてきた。
でも今まで必死で耐えていた彼女の泣き顔を見たくはなかった。
自分を抱き締める腕の温かさの中で、この気丈な彼女を守ってあげたい、そんな気持ちが沸き起こるのを
止めることは出来なかった。
59 : 彼女の歩む道 -8- 2007/11/14(水) 20:20:14 ID:???
>>58
ドアをノックする小さな音に浅い眠りから目が覚めた。
ちらっと時計を目にしてから玄関へ向かう。
『なんかあったかな?』
開いたドアの先には予想通りの人物が立っていた。
「おー 二日続けて来るなんて珍しいじゃん」
軽口を叩いて部屋に招き入れる。
お互い気心知れた仲、予定もなしに訪れるなんていつものことだった。
「やっぱりあんたの部屋が一番落ち着くわ」
来て早々ベッドに寝転ぶお姫様は、何も変わらない普段通りの彼女である。
「なーに言ってんのー アスナには桜咲さんがいるじゃない。彼女を大事にしなさいよ」
「なんで今日はそんなに冷たいのよー ねぇ、美砂ぁ」
別に居つかれることが迷惑なわけじゃない。二日続けて来たって一向に構わない。
ただ、たまに会うからこそ彼女との時間が自分にとって楽しい時間になっていることに変わりない。
それは彼女だって同じな筈・・・。
「こーら 私にもアスナにも本命がいるってこと忘れないでよね」
「・・・・・・・・・・・・」
これもまたいつも通りの反応。本音をつかれれば黙り込むのは彼女の癖だ。
プイと拗ねてふて寝のフリしちゃって、普段の教室の彼女とは大違い。だからこそこのギャップを見るのが楽しくて仕方ない。
「もぉしょうがないわねー」
ベッドの上で縮こまるお姫様を、後ろからそっと抱き締めた。
今日も抗議するかのようにベッドは小さく軋んだ。
60 : 彼女の歩む道 -9- 2007/11/14(水) 20:21:38 ID:???
>>59
「・・・・・・アスナ!!」
突然かけられた声に彼女は小さく身じろいだ。
二人きりだったはずの部屋の中に立っていたのはクラスメイトの古菲だった。
「見損なったアル」
ベッドの上の二人に対し怒りを露わにしてこちらを睨み付けている。
寝転んだまま冷めた瞳で古菲を見つめる。
「・・・・・あんたに邪魔されて不機嫌な上に、それはどういう意味かしら」
「いいんちょがどんな気持ちでいるか知ってるアルか?ひどいアル!」
大声で喚き散らす古菲にうんざりした様子で起き上がる。乱れた着衣から制服のリボンが滑り落ちた。
何をしていたのか明らかにわかる状況だと言うのに彼女は一向に悪びれる様子も、事実を隠蔽する様子もない。
起こした上体をダルそうに左手で支え、右手で頭を掻き毟っている。
ここまで機嫌の悪い彼女を見るのは久々かもしれない。
「人の部屋に勝手に入り込んで情事まで邪魔されて、挙句の果てに説教?あんたにそんな権限があるわけ?」
「それは・・・・・・」
もっとも過ぎる彼女の発言に、古菲は反論できずに唇をかみ締める。
俯いて今にも泣き出しそうだ。
61 : 彼女の歩む道 -10- 2007/11/14(水) 20:22:38 ID:???
>>60
「古菲さん、ありがとうございます。でもいいんですのよ。柿崎さん、アスナさん 勝手に上がりこんでお邪魔してしまって
申し訳有りませんでした」
「いいんちょ・・・」
古菲の後ろからやってきて、あやかは深々と頭を下げた。そんなあやかを心配そうに古菲は見つめている。
長い間下げていた頭をふと持ち上げ、あやかは古菲に視線を移した。
「これは私たちの問題なのです。第三者である貴方が口を出す問題ではありませんわ。
心配してもらえるだけで、私は嬉しいです。方法は間違っていたとしてもこうやって貴方がアスナさんたちに
抗議してくれたことも感謝しますわ」
あやかの言葉に古菲はしょんぼりした様子でうな垂れる。それはまるで親に怒られた子供の姿のようだった。
「いんちょ、あんたまさか・・・」
「桜咲さんのことも柿崎さんのことも全部知っていました。それでも私は貴方が好きで・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
沈黙に支配された狭い部屋の中、四人もの人がいるというのに誰一人言葉を発しようとしなかった。
誰か一人でも話せばこの空間自体が壊れてしまいそうな、そんな空気の中でそれぞれの思いを巡らせていた。
「今日は帰りますわ。行きましょう 古菲さん」
あやかにそっと肩を抱かれて部屋を出て行く古菲。最後にチラリと振り返り、あやかは二人に小さく頭を下げた。
扉の閉まる音と共に、彼女のため息が零れ落ちた。
シンと静まり返る部屋の中で、彼女は呆然と虚ろな瞳を漂わせていた。
62 : 彼女の歩む道 -11- 2007/11/14(水) 20:23:44 ID:???
>>61
「ごめん、今日は帰るわ」
突然ベッドから飛び降りると彼女は身支度もそこそこに玄関へと向かう。
「アスナ・・・無理してない?」
「へーき」
とってつけたような返答だったかそれ以上のものも期待出来そうにない。
玄関先でほんの少し引き止めて彼女が自分でやりそうにもない着衣の乱れを整える。
「つらくなったらいつでもおいで」
「・・・うん アリガト」
彼女の最後の言葉はドアの閉まる音とともに掻き消された。
後ろで大きな音を立ててドアが閉まった。
もうここに戻ってくることもないだろう。
冷たい廊下を歩く・・・歩く・・・ただ一人で ――――
最終更新:2009年01月25日 02:18