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2005/12/26(月) 17:21:41ID:???
6対一という絶望的な状況の中、茶々丸はあえて勝率を計算しなかった。勝率などどうだっていい。なぜか
そう思うようになっている。難解な答えは捨て、ただひたすら答えに向かう。柿崎からそう教わった。
今は、彼女を信じてみよう。

敵の攻撃の手は増したものの、六対一である割には手数も少なく、チームワークも良いとは言い難い。
古菲、楓、刹那が主な前衛を務め、明日菜がサポート、龍宮はスナイパーライフルに持ち替え、援護射撃に
回っている。ハカセはとどめの主砲といったところだろう。総合的な火力に難はない。むしろ余りあると言っても
いいぐらいだ。しかしそれが、全体の行動力にムラを出す結果となってしまっている。恐らく皆が皆、他人の攻撃を
信じ切れていないためだろう。
ここから、如何にして彼女達を逃がすか。
注意すべきは、龍宮のスナイパーライフル、そしてハカセの、恐らくはビームキャノン。エンジン部分と思しき
場所から高エネルギー反応が出ている。あんなものを一般人に当てる気なのか。
龍宮のライフルはほぼかわせないと言ってもいいだろう。真っ先に破壊すべきはあれか……。
古菲の打撃を空中に逃げて回避しつつ、楓のクナイと刹那の斬撃を受け流す。人目を気にしてか、例の羽根を
出す気配は見受けられなかったが、ここに、油断をすれば龍宮の一撃が飛んでくる。地形を把握しながら、周りの
三人を盾代わりにして射角内から外れた。
しかしその時、レーダーが危険を告げている事に気が付く。
ダビデ像付近にいる亜子、柿崎、のどか、美空の元に誰かが近付いていた。
足の速い明日菜。マズい。

茶々丸はブースターを最大まで開き、明日菜に体当たりを喰らわせようとしたが、直前で見切られ、あっさりと避けられてしまう。
茶々丸(しまった……!)
茶々丸がダビデ像付近でブレーキを掛けたことで、逃がすべき彼女達と密集してしまっていた。
刹那と楓がダビデ像を中心として、環を描くように展開する。後ろには明日菜、教会側には龍宮。

2005/12/26(月) 18:39:11ID:???

108
ロックする時間が足りず、手動に切り替えて前面からレーザーを拡散させた。古菲と刹那は一旦退いたが、
楓は間をかいくぐって容赦なく巨大手裏剣を浴びせてくる。眼前1センチ手前で、白刃取りの体勢でそれを
受け止めると、金属同士がぶつかり合う低音が鳴り響いた。
楓を前蹴りで跳ね飛ばすと、すかさず左右から迫りくる斬撃と打撃。再びそれを片手ずつで受け止め、手放さずに
膝からミサイルを発射した。火薬の量は殆ど無いため、威力は低いが、ダメージは十分にある筈。
ところが、二人共見事にそれをかわしていた。
肩部、腕部にエラー。
気付くと、掴んでいた筈の刹那の刀と古菲の手が消えている。
茶々丸の両腕共、衝撃を掛けすぎたためか、本来の力を発揮していない。動かしてみると、ぎこちなくギシギシと
音をたてながら辛うじて機能している程度だった。刀を掴んだ左の手には、大きな亀裂まで入っている。

この一瞬の油断が隙を作り、左脛に龍宮の銃弾が入った。ここで確信できたのは、勝つ事が非常に困難になった
事と、頭を撃ち抜ける技量のある筈の龍宮は、手加減をしてくれているという事だけだった。
大きく後ろに下がった左足と、バランサーが無理に体勢を立て直そうとしたせいで、身体がぐらつく。
亜子「茶々丸さん、アカン!!」
波状攻撃が全身を襲う。4人に分身した楓を含め、敵総戦力は実質9人に膨れ上がった。
どうやら先に私を完全破壊するらしい。
ハカセの顔を見てみると、下唇を噛んで何かにじっと耐えている様子だった。きっと、実験道具である私が壊れて
しまうのが嫌なのだろう。
このかはそんなハカセの表情には目もくれず、ただ楽しそうにこちらの方を見て微笑んでいるだけだった。

私は後ろを振り返らずに、4人に謝った。守り切れず、約束を破ってしまった事と、ハカセに何も恩返しをしてやる
事ができないのを、少し残念に思った。
夕凪を鞘に収め、脇構えの姿勢に入った刹那が膝を落として最後の一撃の準備にかかる。

茶々丸「皆さん、ごめんなさい」

飛び散った火花は、薄暗くなった夕空には綺麗に映り込んだ。

2005/12/27(火) 22:05:30ID:???
>>111~                                     茶々丸さんが一人で闘ってるのに、私は何もできないなんて……

人がいなくなったダビデ像広場はとても静かで、辺りにはただ、銃声と金属音、かけ声と小さな悲鳴だけがあった。
柿崎は空を見上げ、瞳にその薄暗い曇り空を映した。

こんなにも広い場所があるのに、私はただ広場の中心で身を縮めて、事が済むのを待っている。
これが終わったら、私は何をする。どこへ行く。この、何もかもが今までとは違う世界を、どこで過ごせば
いいのだろうか。私は信じた。音楽で人が救えるって。亜子達とバンドを組んで、明るさをこの世界に
分け与えるって。頭の中にはずっと、大好きな音楽が流れていた。

お願い……。お願いします……。

新たに敵の数が増える。劣性が濃厚になる。


お願いします……。刹那さんが、刀を収めてくれるって信じてるから……


しかし、引き裂かれたのは、その虚しい願いだった。

聴いてしまったその耳障りな金属音に、思わず耳を塞いだ。

2006/01/10(火) 18:08:58ID:???

797
鉛筆型の結界の天辺の部分が消え、広場には八本の光の柱だけが残った。
千草「……こないに疲れたんも久々やなぁ。しかも相手が中学生いうんやから、恐ろしいもんどすなぁ」
一仕事終えた千草が、戦闘終了早々ダビデ像に寄りかかって溜息を吐いた。行動不能になり、操舵手を失った
葉加瀬の兵器はゆっくりと落下を始め、茶々丸の背中にキャッチされた後は、ただ静かに地面に下ろされた。
人の身長の二倍程の高さにある操縦席まで飛び上がり、葉加瀬の目の前まで来た茶々丸が尋ねる。
茶々丸「お怪我はありませんか、葉加瀬……」
茶々丸の問いかけには答えず、葉加瀬は気まずそうに目を逸らしながら、質問で返した。
葉加瀬「どうして……。どうして逆らったりしたの……?私の命令には絶対服従だってプログラムされてるのに」
茶々丸「さぁ……。今朝方のエラーが何か関係しているのかもしれませんが、詳しい事は、私にも……」
葉加瀬「それに……。それに、私はあなたに酷い事をしたのに、そこまで人間の思考に基づいて行動しているのなら、どうしてそんな平気な顔で私と顔を合わせられるの……」
何を考えているのか、茶々丸はいつも通りの無表情な顔つきで視線を右下に逸らすと、再び葉加瀬と向き合った。
茶々丸「それについては、簡単です。……本で読んだ、『反抗期』というものに、なぞらえてみたんです」
葉加瀬「反抗期……?」
0958マロン名無しさん
2006/01/10(火) 18:09:39ID:???
>>957
そんなプログラムを茶々丸に組み込んだ覚えはなかった。“なぞらえた”と言っているように、ただ単にそう捉えて
いるだけなのかも知れない。
茶々丸「ヒトの脳にも、時期が来れば『反抗期』というプログラムそのもの発動する訳ではなく、一人で行いたい、という欲求や、“自分の方が正しい”という自己顕示欲の表れが複雑に重なり、行動に出る、とありました。つまり私は、昔の優しい葉加瀬に戻って欲しい、という欲求を通そうとしたんです」
葉加瀬「でも、そんな事したらプログラムがバグを起こす筈よ。そう簡単には私には逆らえないようになってるのに……」
茶々丸が少し悲しそうに目を伏せた。人間であるならばその説明で事足りる。しかし、機械である自分はそこからもう一回りしなければならない。
茶々丸「ええ……ですから、非常に悩みました。葉加瀬の行動は、本来自分に与えられている“人のためにあれ”という命令に反しているものでした。~しかし、私は葉加瀬に逆らってはいけない。そして、従えば従う程、私が葉加瀬から聞いた、機械としての理想の姿からかけ離れていく。
私は、プログラムに従えば良いのか、命令に従えばいいのか、それとも、それとは別の、私の中にあるプログラム外の“心”の部分に従えば良いのか、解りませんでした」
0959マロン名無しさん
2006/01/10(火) 18:48:24ID:???
>>958
茶々丸「今朝方、ネコが溺れていたんです」
唐突に切り替わった話題に、葉加瀬が一瞬驚いた顔をして、先の話を待った。
茶々丸「いつもの川でネコが溺れていて、私は最初、それを無視しました。歩道橋を昇れずにいた老人も、風船が
     木に引っ掛かって泣いている子供も、餌を欲しがっているネコ達も、全て無視しました。いっそこのまま、
     人の心の部分を無くしてしまえば、命令による矛盾も、エラーによる苦しみも、人を傷付ける苦しみも、
     全てが消え、解放されると思ったんです。しかし、そんな事は全くありませんでした。いつまで経っても、
     人や動物を救えない苦しみは消えず、命令の起こす矛盾よりも、何倍もの苦しみが襲ってきたんです。
     何故、機械である私がこんなにも悩み、苦しみ、足掻かなければならないのか……」

昨日までの茶々丸とは決定的に違うものがあった。瞳に輝きが増し、とても優しい目をしている。

茶々丸「私は一通りいつもの行動を終わらせた後、学園まで来ました。結局、何も変わる事はできなかったと、
     機械ながらに落ち込みました。でも……何か、“満足感”はあったんです。そして柿崎さんに会い、相談を
     聞いてもらいました」
茶々丸の視線に誘われて、葉加瀬も柿崎の方を見た。柿崎は意表を突かれ、突然紹介された友達のように、
頭の後ろに手を当てて、あ、どうも、といった顔で頭を下げた。
0960マロン名無しさん
2006/01/10(火) 18:50:18ID:???
>>959
茶々丸「簡単だったのは、柿崎さんの答えでした。『忘れてしまえ』と……今、目の前にある自分のやりたい事を
     やれ、とも言われました。私は、こんな複雑な感情がその程度で解決を導き出す筈がない、と思って
     いたんです。でも……」
茶々丸が葉加瀬の髪に手を延ばし、髪留めを解いた。艶のある、太くて質の良い髪が、統制を失ってさらさらと
肩にこぼれ落ちた。

茶々丸「私は今、幸せです」

微笑みかけたその表情はまだぎこちなかったが、茶々丸の気持ちを表現するには、最高の笑顔と言えた。
こんなに嬉しそうな茶々丸の顔は、見たことがない。
茶々丸「葉加瀬……今度は、あなたが答えを出す番です。もし、木乃香さんに逆らえない事情があるのであれば、
     今すぐに変わって欲しいとは言いません。ただ、頭の中では常に考えておいて欲しいのです。本当に、
     この行いは正しいのか。科学につき物の犠牲は、この様な形であってもいいのか。この歪んだ道の先に、
     本当に求めた成果があるのかを」

2006/01/14(土) 15:19:23ID:???
龍宮「さあ、これから私達をどうするつもりだ。拷問にでもかけるか?」
夕凪を鞘に収めた刹那が、急激な運動によって疲労した筋肉をストレッチでほぐしながら答えた。
刹那「そんなことはしない。そうだな……宮崎さんを安全な場所まで送り届けて……といっても寮になってしまう
    だろうが、私は彼女達の身辺警護にでも就く。別にお前達をどうこうするつもりはない」
龍宮「もう一つ聞きたい」
刹那「何だ」 既に面倒さを伺わせる表情になりつつ聞き返した。
龍宮「お前にとって、私達偽物とは、一体何だ」
やはりその言葉には、多少の反応は隠せない。幾分かは何かを悟られたかもしれないが、それを話す事は
エヴァンジェリンから止められていた。彼女らにも自我はある。自分の存在が嘘だと知った人間は、何をしでかす
か分からない、と。恐らくまだ、感づいているのは「偽物がいる」、といった程度だろう。
刹那「何を勘違いしているのかは知らんが、余計な推測は答えを拗らせるだけだからやめておけ」
龍宮はその言葉から何を感じ取ったか、ほんの少し頬に笑みを浮かべて、そうか、とだけ返した。

刹那が柿崎達の防護符を解除するため、千草に声を掛けようとしたところ、今度は木乃香が口を開いた。
木乃香「のどか」
少し離れた場所で観戦していたため、のどかとの開いた距離に合わせるように、いつもより声を張り上げた
木乃香が、のどかに呼び掛けた。
木乃香「今ならまだ間に合うえ。ネギ君も、のどかのやった事ならしゃあないて、許してくれる、言うてたし。
      別に誰も怒ってへんよ」
勝敗のはっきりしたこの状況に何という物言いだ。何故、今“のどか”を味方に引き入れる必要がある。或いは
この先、学校での行動を見越しての行動か。それとも、遊び道具が減る感覚で言っているのか。
刹那が、これ以上余計な事を言わせないよう、木乃香を睨む。

このか「またいつも通りの生活に戻れるんよ?なんも怖いことはあれへん」
0215マロン名無しさん
2006/01/14(土) 16:25:02ID:???
>>214
戻れる……いつも通りの生活に。
地面に落とした本が偶然開いた、一番新しい白紙のページ。そこに木乃香の本心は書かれていた。

今なら本当に間に合うのか。
安全が欲しい。安定が欲しい。痛いのは嫌だ。木乃香に従ってそれが手に入るのなら……。
今からでも間に合うのなら……。
柿崎「のどか!信じちゃ駄目だよ。嘘に決まってるじゃない!あんなの絶対嘘よ!!
    動けなくなったからって、負け惜しみ言ってんのよ!」
柿崎が肩を揺らしてくる。残念ながら、木乃香の本心はもう、見えてしまった。嘘ではない。
私が本当の安泰を手に入れるためには、何をすべきなのか。
のどか「木乃香さん……一つ、聞かせて下さい」
木乃香が質問を促した。自分の真意は分かっているでしょう、そう言いたげな顔だった。
のどか「ネギ先生は今、何をしているんですか」
刹那の頭に疑問が浮かぶ。この状況に、ネギ先生が何か関係しているのか。
木乃香「ネギ君なら今、エヴァちゃんと遊んどるよ」
その言葉に反応したのは、茶々丸だった。マスターが、と一言、小声で呟く。
茶々丸「マスターは……マスターは今、どこにいるんですか。『遊んでいる』とは、一体どういう意味ですか」
いつもの抑揚のない声だったが、鬼気迫るものがあった。しかし、木乃香はその質問には答えない。
もう一度木乃香から、自分の名前が呼ばれる。刹那も亜子も、引き止めた。
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最終更新:2024年12月19日 01:38