2009-02-26



AIDSとHIVの違いは何か?

AIDS(Acquired Immune Deficiency Syndrome:後天性免疫不全症候群)は病気の名前です。HIV(Human Immunodeficiency Virus:ヒト免疫不全ウイルス)はAIDSの原因ウイルスの名前です。HIVに感染したがまだ発症していない場合は、AIDSとは呼ばず、HIVキャリアと呼びます。

photo by AJC1 @Flickr

2008年のノーベル医学・生理学賞は、HIVの発見者であるリュック・モンタニエフランソワーズ・バレ=シヌシ(ともにフランス)に与えられました。最初の発見者については、発見の当時、アメリカのロバート・ギャロとの間で論争があり、フランスとアメリカの政府間交渉で双方がともに最初の発見者として一応の決着を見ました。これには、特許権の争いによって治療薬開発を遅延させないという目論見もあったようです。今回、ギャロにはノーベル賞は与えられませんでした。結局、証拠の検証によりギャロは2番手であったと、ノーベル賞委員会は結論付けたようです。

保健所で無料・匿名の検査

HIVの検査は、全国の保健所で、無料、匿名で受けることができます。私は2年前にも受けたことがあり、その時もらった検査結果(陰性でした)を免疫の授業で使いました。当時は、結果がわかるのが1週間後で、後日保健所に出向いて改めて結果を受け取りました。調べてみると、採血後1時間で結果が判明する即日検査を行う保健所もいくつかあるようです。愛知県内では一宮保健所や岡崎保健所などで実施されています。即日検査は民間医療機関で、有料でしか受けられないと思っていたのですが、検査体制が少しずつ強力になっているようです。で、仕事の休みと検査の実施日が一致したので、岡崎保健所まで即日検査を受けに行ってきました。

保健所での検査は、毎日は実施されていません。各保健所ごとに特定の曜日、特定の時間に実施されています。HIV検査・相談マップで全国の保健所だけでなく、民間医療機関も調べることができます。検査を受けようと思ったら、サイトで曜日や時間を確認してから出かけましょう。匿名検査なので、住所地とは異なるところの保健所でも無料で検査を受けられます。

岡崎保健所での検査は以下のような手順でした。待合室にある受付番号のカードを取り、クリップボードのアンケートに書き込みをして待っていると、受付番号で呼び出してくれます。個室に入り、検査手順や目的の簡単な説明を受けた後、検査受付票が交付されます。その後、別の個室で採血されます。結果は1時間後で、検査受付表の整理番号で呼び出され、個室で結果を受け取ります。

HIV抗体検査

HIV抗体検査では何を調べるのか?

上の写真は今回の検査結果です。

HIVに感染すると、免疫系がウイルスを排除するための抗体をつくり始めます。HIV抗体検査では、このHIVに特異的な抗体を検出します。抗体の検出にはある程度の抗体量が必要で、通常HIVに感染後3ヶ月たてば十分な量の抗体が存在し、検出が可能になります。

偽陽性と偽陰性

偽陽性とは、感染していないにも関わらず感染しているという結果が出ることを意味しています。同様に偽陰性とは、感染しているにも関わらず感染していないという結果が出ることです。保健所で行う抗体検査は一次スクリーニングであり、感染の可能性があるヒトを洩れなく拾うことが重要です。広く無料で実施するためにコストのかからない方法であること、偽陰性の確率が低くなることを優先し、偽陽性の確率がある程度生じることは受け入れます。保健所の担当者の話では、全検体の1%程度が偽陽性を示すということでした。抗体検査の結果が陽性の時には、RT-PCR法によりHIVのRNAを直接検出することで結果を確定させます。実際には、抗体検査で陽性の結果が出ても、確定検査の結果感染していないことが判明するヒトのほうが多いです。その数学的なカラクリについてはこちらで一部紹介したことがあります。このあたりの話については、また改めて記事を書きたいと思っています。

献血におけるチェック

ちなみに、献血された血液はHIVの混入を、最も感度の高い方法で厳重にチェックしますが、その結果が献血者に知らされることはありません。ただ廃棄処分されるだけです。これは検査目的での献血を防ぐためであり、そのような間違った目的で献血することは絶対にしないでください。

妊婦に対する検査

現在では、妊婦は必ずHIVの検査を行うことになっています。もし陽性だとわかれば、帝王切開することで子供への二次感染を防ぐことができます。また、母乳ではなく人工ミルクで育てることでも二次感染を防ぐことが出来ます。

AIDS患者が増え続ける日本

現在では、HIV感染=死ではありません。AIDS発症前に感染が判明し、AZTなどの抗ウイルス薬をきちんと飲み続ければ、という条件付きではありますが。カクテル療法とも呼ばれる多剤併用療法ではHIVを何種類もの薬で一気に叩き、ウイルス量を減らすことで病状の進行を遅らせます。HIVは突然変異を起こしやすく、薬を少しずつ使用すると、その度に薬剤耐性を身につけてしまい、薬が効かなくなってしまうからです。カクテル療法によりAIDSはコントロール可能な病気になりました。しかし現在までのところ、HIVを根絶する薬は開発されていません。でもその開発もそんなに遠い未来ではないようです。

日本は、先進国の中では唯一といっていいくらいの感染者が増加している国です。AIDSがもはや死を避けられない病気ではないこと、十分に平均寿命を生きられる病気であることからすれば、今すべきことは検査を受けて、感染がわかればすぐに治療を始めることです。私は授業で生徒に、このようなAIDSの現状を話しています。

AIDSの原因はHIVじゃない!


ほとんどの先進国で新規の感染者数が減少する一方で、アジア・アフリカ諸国ではAIDS患者が増え続けています。特にサハラ砂漠以南のアフリカ諸国では、AIDSが国家の機能を奪いつつあります。これは貧しさが直接の原因ではありますが、それ以外の理由もあるようです。

南アフリカ共和国の前大統領タボ・ムベキは、HIV否定論者です。HIV否定論とは、AIDSの原因はHIVではないという主張です。そのため抗ウイルス薬が十分に使用できず、南アフリカのAIDS患者は激増しました。2008年の調査では、成人5人に1人がHIV感染者であり、毎日1000人以上がAIDSで死亡し、少なくとも片親がAIDSで死亡した子供は全国に140万人という散々な結果です。HIV否定論は明らかにニセ科学のひとつです。ウイルスが国家を滅ぼしつつあるのです。ニセ科学が国家を滅亡に追いやっているのです。

HIV否定論については、Kumicitさんが以前からブログ『忘却からの帰還』で継続的に取り上げておられます。興味のある方はこちらをぜひお読みください。




参考サイト


関連項目



  • HIV検査3ヵ月で確実っていうますが、過去に半年や1年後にわかった事例考えると人間の身体はわからないと思うのですが1年後受ける事もありですか?お願いします。 -- たい (2009-05-12 09:48:35)
  • たいさん、こんにちは。
    コメントありがとうございます。

    感染直後から3ヶ月の間は抗体量が少ないので検出できませんが、
    それ以降なら検出できるはずです。
    つまり感染1年後でも十分検出できるはずです。
    心配なら保健所に相談をおススメします。
    -- yu-kubo (2009-05-12 22:32:37)
  • お返事ありがとうございます。保健所に問い合わせしましたら3か月で
    確実と判定しているとの事でした。実は別でクリニックの先生に聞いた事が過去にあったんですが
    その方は1年くらいしてからが確実って言いますし正直いろんな意見があるみたいで混乱してしまい
    ます。自分で決めるしかないですかね?(泣)ちなみに3か月後では一度受け陰性でした。もしかして
    陽性に転じるのではないかと思い書き込みさせていただきました。稀なケースなどあると聞きますし、
    でも検査を受ける怖さもあるしで悩んでいます。 -- たい (2009-05-13 16:22:17)
  • たいさん
    検査を受けたときのメリットとデメリット、
    検査を受けなかったときのメリットとデメリットを比較すれば、
    どちらにするべきかはご自身で判断できると思いますよ。
    -- yu-kubo (2009-05-13 20:39:02)
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