森林のなか。少し開けた場所を見つけ、一行が休憩していたときのこと。
探索中、魔物はおろか魔獣1匹すら出ず、おどろくほど穏やかな時間を過ごしていた。
あまりの穏やかさに、パーティー内には、なかばピクニックのような雰囲気が漂っている。
軽い昼食を済ませ、片付けも終わるころ。
どこか気だるいような雰囲気が漂い出したなか、ぽつりとテンが言った。
「
ヒリュウとキオってさ、背、すごーく高いよね」
「そうですね~、ヒトよりはやや大きいかと」
「俺も獣人族の中じゃ、大きい種だしな」
うんうん、とテンは相槌を打つ。
「ぼ、僕だって負けてないぞ」
「あーうんうんそうだね」
コータの発言を軽く流して、テンはヒリュウとキオを交互に見比べる。
ほんの少し考えた後、小首を傾げ口を開いた。
「……どっちが高いのかなぁ」
「測ればいいだけじ……」
ツッコミを入れかけたシュウの顔めがけて、即座にふきんが飛ぶ。
「はいはい、いい子は黙っていようねー。
知りたいなー、俺。ものすっごく知りたい。
いいなぁいいなぁ、のぼってみたいなー」
──テンの一言で、ヒリュウとキオの間に緊張が走った。
「ヒリュウさんのがもしかしたら、すこしおおきいかもしれないですね~」
「ああ、だろうな。俺の方がデカい」
「えええ、そうかなあ? ていうかえっと、どっちだろう……」
うーん、と考え込むテン。
「故郷の森では自分が一番大きかったみたいですけどね」
「ほう。俺も、同じ種族の中では一番だったがな」
ヒリュウとキオは、見た目は穏やかに、かつ確実に互いを牽制しはじめる。
……と、そこに支度をすっかり終えたマコトの声がとどいた。
「おい、準備終わったか。そろそろ行くぞ」
見れば、周囲はすっかり準備を整えている様子だ。
急いで準備を整えつつ、テンは続ける。
「ねえねえ、やっぱり見ただけじゃわかんないや!
……ふたりに、のぼってみてもいい?」
「それは肩車…とういうことですか?」
「そういうことだな」
「順番にならいいでしょ? ヒリュウ」
「……テンがそう言うなら」
「いい? やったー!」
テンはすっかり旅支度を終えた姿で、飛び跳ねた。
そして木漏れ日のなか、ふたたびパーティーは移動をはじめる。
ふとテンたちを目にして、コーサカがのんびりと笑う。
「あれ。テンくん肩車かあ。いいなあ」
「コ、コーサカ。疲れたら僕がおぶっても」
「そこの老け顔はほっとけおっぱい。
ところでジン。目的地まであとどれくらいだっけ?」
「……語尾にさりげなく変な言葉をつけるな。そして昼メシのときにも説明しただろう」
マミヤの発言にため息をつき、ジンは地図を指し示す。
「いま、俺たちがいるのは大体このあたりだ。
南西に進み、山を迂回する」
「だから、あと半日くらいで町に着くんだよねー!?」
カジュの言葉を肯定するように、レーヴはうんうんとうなずいた。
「……で、テンを半日、交互に背負い続けるつもりなのか、奴らは」
苦笑まじりにシャムが言う。
「そういえば身長の話、すっかり消えましたね……」
「身長? そういえば俺とレーヴ、この3年間で20センチ近くのびたんー!」
「ぼ、ぼくだってまだまだ成長期なんだからな!」
……賑やかな会話を繰り広げながら、パーティーの行軍は続く。
ザ・策士(最終目的:ひまつぶし兼あるきたくない)テンを書きたかった話w
パーティーの配列とか、気にしないでください…!
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最終更新:2010年12月09日 01:29