第1話  風都から来た男

第1話  風都から来た男


東京都の実に三分の一を占める巨大な街である学園都市。その人口はゆうに二百三十万人になり、大部分の人口は学生である。
高さ五メートル、厚さ三メートルの完全な円形のコンクリートに囲まれた学園都市はさながら一つの国のようであった。
学園都市にいる学生は他の街にいる学生にはない特別な「力」を持っていた。その力とは腕力でも権力でも財力でもない。


その力とは超能力であった


全部で二十三学区に区切られた学園都市にいる学生で超能力を持っている学生は七人しかいない。その七人しかいないかと言うとそうではない。
能力はレベルというランクで分けられているのだ。レベルは0~5までで、
レベル0の者は無能力者、
レベル1の者は低能力者、
レベル2の者は異能力者、
レベル3の者は強能力者、
レベル4の者は大能力者、
レベル5の者は超能力者に分けられる。

レベル5ともなれば軍隊とも渡り合えるほど強力な力を行使できる。


ここ最近の学園都市は魔術師と呼ばれる者達と、この学園都市の超能力者達との戦いが続いていた。学園都市で行われた覇星祭の際にも
学園都市を支配下に置こうとした魔術師と、学園の生徒との間で戦闘があったばかりである。

その魔術師と超能力者との戦いの場となったこの学園都市に一人の男が足を踏み入れる。

男の名は左翔太郎。職業は探偵である。

風都から2時間かけてこの学園都市にやってきた。

「ここが学園都市か……、噂に聞いた通り凄ぇ街だな」

翔太郎は学園都市のその広大さに感心していた。科学技術では自分の住んでいる街である風都以上かもしれないと考えた。
風都以外の街で探偵の仕事をするのは始めてだ。土地勘もないし、少し苦労するだろうと思った。

「ぼやぼやしていられねえな……、早くナワリを見つけねぇと……」

翔太郎の持つ写真にはアラブ系の男性が写っていた。



二日前、翔太郎はここ最近風都で起きている十字教教会連続襲撃事件の犯人を捜してほしいと、十字教教会のシスターから依頼をうけた。一週間で六つもの十字教教会が何者かに襲撃、焼き討ちにされたのだ。捜索をしていく内に、翔太郎は自身のいきつけのアラビア料理屋の店長であるナワル・ラディが犯人だと知る。既に十五人の神父、シスターをその手にかけていたナワリは、翔太郎の見慣れた気さくな料理屋の店長とはまるで別人だった。その顔は狂気に満ちた殺人鬼そのものの顔だった。ナワリは翔太郎の追跡を振り切り、逃走してしまう。

その翌日、今度はナワリの店の店員であり、ナワリの弟であるカリールからナワリ捜索を依頼される。カリールの話によれば、ナワリは学園都市に潜伏しており、学園都市にいる十字教の神父やシスターを襲おうとしていると言うのだ。

「これ以上ナワルが殺人に手を染めるのは耐えられない。今までナワリを止められなかった自分が恥ずかしい。頼む翔太郎、ナワリを止めてくれ」

涙ながらに懇願するカリールに心を打たれた翔太郎は学園都市へと足を踏み入れるのであった……。

出入りすることの厳しい学園都市に入る為のIDをカリールが用意してくれたのだ。

「この学園都市の通行許可証まで手配してくれるなんてな……。あいつの為にナワリを一刻も早く見つけねえと」


翔太郎は足の歩みを速め、学園都市への奥へと進む。




翔太郎は第7学区内を歩いていた。学園都市でも第7学区は中学・高校といった中等教育機関を主としており、学校に通う学生や勤務教師たちの生活圏となっており、それに付随する形で生活商店などが立ち並んでいる。

翔太郎は学園都市に来てから、学園都市のその広大さに驚いていた。なにより科学技術が風都かそれ以上に進んでいるかもしれないと思っていた。

前方から学生らしき二人の女の子が歩いてくる。翔太郎はこの二人にナワリが知らないか聞いてみることにした。

「そこの君達、この男を見なかったかい?」
「いいえ、見ませんでした」
「私も」

頭に大量に花をつけている子と、もう一方の髪の長い子は首を横に振った。

頭の上がお花畑の女の子は初春飾利。柵川中学一年生で、風紀委員(ジャッジメント)である。風紀委員(ジャッジメント)とは学園都市の治安維持に努める学生選抜の集団である。腕には盾のマークがある腕章を付けており、これが風紀委員(ジャッジメント)の証だ。

髪の長い女の子は佐天涙子。初春と同じ柵川中学一年生で初春の友人である。

「そうかい。じゃあ見かけたらこの名刺に書いてある、俺の携帯電話の番号に連絡してくれ」

翔太郎は自分の名刺を初春と佐天に渡す。
名刺には”ハードボイルド探偵 左翔太郎”と書かれている。

「「ハ……、ハードボイルド探偵……?」」

二人は翔太郎の名刺の気障ったらしさに目が点になっていた。

「それじゃ」
「え……、はい」
「ど……、どうも」

翔太郎は足早にその場を去っていった。

「ったく……、また手がかりなしか……」

翔太郎はもう二十人以上の人間にナワリの事を聞いたのだが、一向にそれらしい情報を入手することができない。

その時翔太郎の携帯から電話が鳴る。

「翔太郎、ナワルは見つかったかい?」
「いや、もう二十人以上に聞いたんだが一向に見つからねえ」

フィリップからの電話だった。

「翔太郎、カリールも学園都市に行くそうだ。僕は止めたんだけどね……、彼がどうしてもと言うから」

フィリップの話によれば、カリールは自分はただ待っているだけなのが許せず、自分も一緒にナワルを捜したいと言ってきたのだ。

「……仕方ねぇな、じゃあ待ち合わせ場所を決めるか」

翔太郎は渋々カリールの参加を許可した。

「念の為にメモリガジェットを飛ばしとくか」

翔太郎は所持していたメモリガジェットである、バットショットを飛ばす。

「やっぱこれを使うっきゃねぇよな」












”連続十字教教会襲撃事件発生! 犯人はアラブ系の男  学園都市に潜伏中の可能性あり! 見かけたら警備員(アンチスキル)に
通報を!”

上条当麻のクラス全員に渡されたプリントにそう書かれていた。

「おいおい、宗教抗争がここ日本で行われてるなんて……、おまけに学園都市内にそれを持ち込んでくれるなよ……」
物だ。

当麻は帰宅ルートから外れた空き地で、クラスメイトの土御門と共に今朝、担任である月詠子萌から渡されたナワル風都で起した十字教教会襲撃事件を伝えるプリントを見て呆れるように言う。それに覇星祭の時の魔術師との戦いからまだそう経ってない。いい加減争いの種を撒かないでほしいと頭を抱えていた。十字教と対立する宗教といえばムスリム教しかない。この二つの宗教は昔から争いがあったのだ。こういった事件は今に始まらないが、この都市にまでそういった争い事を持ち込まれるのは迷惑千万も甚だしいと当麻は思った。

「やっぱこの男……、魔術師か?」
「いや、その男は魔術師じゃないぜよ」
「え?」
「俺の読みが正しければ……、その男は恐らくガイアメモリの使用者……、”ドーパント”の可能性がある」

ガイアメモリとは風都で流通しているメモリのことである。メモリといってもパソコンに使用するメモリではない。
”人体に直接差し込み、人間を超人化させるメモリ”だ。強力なメモリではあるものの、人格を凶暴化させる
などの副作用もある危険性を孕んだメモリでもある。そのガイアメモリを使用する者を総称して”ドーパント”
と呼ぶのだ。

当麻自身も噂程度だがメモリのことを聞いたことがある。

「噂には聞いていたけど、まさかこの学園都市に来るなんて……」
「こいつにとっては十字教の信者なら誰でもお構いなしみたいだからな。ようするに誰でもいいわけだ。
もしかしたら魔術師以上に厄介な相手かもしれないし。カミやんは禁書目録の所に行ってやんな。あの子も十字教のシスターだし」

土御門の言葉に当麻ははっとしたように立ち上がる。

「そうだな……!俺は一足先に帰ってインデックスにこのことを伝えてくる!」

当麻は駆け足で自分の自宅へと急いだ。






「ちょっと~!あたしの饅頭返せぇ~!」

銀髪の髪の毛に、白い修道服を着た小柄なシスター、インデックスは第7学区内の清掃ロボットに、買った饅頭を吸い込まれ
てしまい、清掃ロボット相手に格闘していた。以前にもドーナツを清掃ロボットに吸い込まれてしまったことがある。

「いい加減返しなさい~!ぐむぐむ……!」

インデックスは清掃ロボットに噛み付いて、吸い込まれた饅頭を取り返そうとする。

「こらこら、そんなことをしても食べ物は戻ってこないぞ?」
「ん?」

インデックスは声の方向に目を向ける。目の前に、袋を携え、長身の黒スーツを着たアラブ系の男性が立っていた。年齢は27歳位だろうか。なかなか端正な顔立ちの男だ。

「饅頭の代わりにこれを食べてごらん?」

男は持っていた袋からからオムレツを差し出す。

「こ、これ食べていいの?」
「ああ、モチロンだよ」

インデックスは差し出されたオムレツを口の中に頬張る。

「お!おいし~~!も、もっとない?」

インデックスは出されたオムレツの余りの旨さに感激し、二枚目を要求する。

「ああ、あるよ。俺に付いてきたら百枚でも二百枚でも食べさせてあげるよ」
「ひゃ……くまいも!?」

インデックスは食べられる量に驚き、男に付いていくことにした。男の口元がほんの僅かに薄気味悪く笑ったことにインデックスは気づかなかった。




「俺はナワル。ナワル・ラディだ。以後お見知りおきを」

ナワルは慇懃無礼という具合にインデックスに自己紹介をする。

「オムレツを沢山食べさせてがくれるっていうから来てみれば……何でなにもないんだよ?」

インデックスはオムレツをたらふく食わせてやるというナワルの言葉に釣られてこの廃工場に来た。しかし
見渡す限り食べ物などありそうもない。

「食べ物……ね。”食べれる物”は何も食料だけじゃないことを知っていたかな?それに胃の中に食料を
送り込むだけが”食事なんて言わないんだがねぇ……」

「じゃあ胃の中に食べ物を送り込む以外の食事って何なんだよ?」

インデックスは興味深そうにナワルに質問する。

「それは……」
「ぎ!?」

ナワルはインデックスの細い首を驚異的な握力で掴みあげる

「相手の”苦痛”を喰らうことさ」

ナワルの顔は先程のおどけた時とは別人のように冷酷無比な殺人鬼のそれへと変貌していた。

「が……ぐ?、苦じい……」

ナワルは凶悪な笑みを浮かべてインデックスを自分の頭の高さまで持ち上げる。

インデックスはナワルの残忍な眼光を見て身震いした。この男の目は完全に正気ではない。人を苦しめること、傷つけること、殺すことに喜びを感じているような目だ。その目を合わせているだけでも全身から汗が流れ出してくる。


「貴様の五体をバラして十字教会本部に送りつけてやろう。十万三千冊の魔道書の記憶などあのお方は不要だとさ。抵抗するならしてみろ。俺のメモリの力で貴様の自衛手段などいかに脆いか証明してやる。おっと・・・手足の指の骨を一本づつへし折るという手もあるな・・。どの道貴様は楽に殺しはしない」

「な……んで……ごんな……こと」
「なんで?貴様等十字教の連中が我らムスリムにしてきたことを少しは思い出したらどうだ?償いという名の地獄を見せてやる」

ナワリに首を絞められつつも、辛うじて質問をしているインデックスに、ナワリはあざけ笑うように言う。

「もうやめろ!ナワル!」

怒声が廃工場内に響く。

「誰だ!?」

ナワルはインデックスから手を離す。

「げ……、げほっ!げほっ!」

インデックスはナワルによほど強く首を絞められたのか、激しく咳払いをする。

「お前は……、翔太郎じゃないか。また俺を止めに来たのか?」

翔太郎はバットショットでナワルとインデックスの姿を捉え、カリールとの待ち合わせを後回しにし、廃工場に急行したのだ。

ナワルはまたかという顔で翔太郎を見る。この前逃げたのは常連客であり、顔馴染みの翔太郎を傷つけたくなかったからだ。ナワル自身、十字教徒、及びそれに連なる者には容赦はしないが、それ以外の人間に対しては基本的に傷つけるつもりはない。

「よせ……、お前とは戦いたくはない。これは俺自身の聖戦(ジハード)だ」
「戦いたくないだと?十五人もの人間を殺した奴の台詞とは思えねえな!」

翔太郎は二日前、ナワリがまだ少女と言っていい年齢の十字教のシスターを殺す所を目撃している。あの時のナワリの目は完全に狂人のそれだった。今更お前とは戦いたくないなどという言葉に翔太郎は怒りを露にする。

「君は早くこの場から逃げろ!」

翔太郎は蹲っているインデックスにこの場から逃げるように警告する。

「……う、うん」

インデックスは翔太郎の言葉に従い、おぼつかない足取りで、ナワルの傍から離れ、廃工場を出る。
ナワルはインデックスを捕まえるでもなく、黙ってインデックスが立ち去るのを眺めていた。

「どうした?あの子を殺すんじゃないのか?」
「十字教の信者など山ほどいる。別にあの小娘でなければいけないなどということはない。どうしても戦うというのであらば望み通り相手になってやる!」

ナワルは啖呵を切り、ガイアメモリを取り出す。

『ジャッカル!』

そのメモリを自分の右腕に嵌めていた黒い皮の手袋を外し、手に刻まれた生体コネクタにメモリを差し込む。


ナワルの身体は変貌を遂げ、漆黒の身体となり、顔はエジプト神話のアヌビス神に酷似していた。

「いくぜ、フィリップ!」
「わかったよ翔太郎」

翔太郎、フィリップもメモリを取り出す。

『サイクロン!』
『ジョーカー!』

翔太郎、フィリップは自分の腰に巻いてあるWドライバーにメモリを差し込む。

『サイクロン・ジョーカー!』

右半身は緑色、左半身は黒色の装甲を纏った仮面ライダーWに変身する。

「いくよ、翔太郎」
「おう!」






第7学区内の常盤大中学の制服を着た女学生が勢いよく自動販売機を蹴り上げて、出てきたジュースを飲み干す。

その女学生こそ学園都市でも七人しかいないレベル5の能力者である御坂美琴であった。美琴の能力は電撃使いである。美琴が操る電撃が強力無比であることから美琴は「常盤台の超電磁砲(レールガン)」という異名を持っていた


「あ~、このジュースにはゲコ太グッズが入ってなかった」

美琴の通う常盤台中学はいわゆるお嬢様学校であるのだが、当の美琴本人はお世辞にも言動はお嬢様とは言い難く、竹を割ったような性格であった。しかしその性格故か生徒間での人気は高いようである。しかし美琴も年頃の女の子、ファンシーグッズに目がないなどの少女らしさも垣間見せる。

「全く……、お姉さまったらまたそのようなはしたない真似を……」

美琴の行動を呆れながら見ているのは美琴の後輩で、風紀委員(ジャッジメント)である白井黒子であった。


「誰か~!そのひったくりを捕まえて~!!」
「あら?」
「え?何?」

黒子と美琴は声の方向に目をやると、スキルアウトらしい不良が女子学生のカバンをひったくり、逃げている様子が飛び込んできた。

「よし!私に任せ……、ん?」

美琴が電撃で、不良の足を止めようとすると、不良の前にスカーフを被った少女が立ち塞がる。

「あぁん!?何だテメェ!」

年齢は美琴、黒子と大差はなさそうな少女はアラブ系の顔立ちで、髪の毛を隠す形でスカーフを被っていた。褐色の肌がにあう美しい少女だ。

「あの人に返してあげなさい。でないと痛い目見るわよ」

少女は不良に臆することなく静かに言う。その言葉は静かながらもどこか凄みがあった。

「うぅ……、どけぇ!!」

不良はポケットからバタフライナイフを取り出し、少女に切りかかる。

「は!」

少女は不良のナイフを持っていた手を捻り上げ、小手捻りの要領で、不良を地面に叩きつける。

「言ったでしょ……、痛い目見るって」

「す……、凄い」

少女の活躍を見ていた美琴はその余りの華麗さと早業に呆然と見とれていた。

「これこれ、ジャスミン、手荒なことはやめなさい」

ジャスミンを注意する年老いた声が聞こえた。

声の主は、アラブ系で、ムスリム教でも高位に位置する導師の服を着た、杖を持ち、髭を蓄えた壮年の男性でった。

「お養父さま……」

ジャスミンは導師服の男に駆け寄る。

「全く……、あんな危ない行為をして……。私に任せておけばあの男も痛い目にあわずに済んだものを」
「お養父さま、お困りの人がいたら救い出すのが私達ムスリム教の信じる教えでは?」

何やら二人で些細な言い争いを始めている。

「あ……、あの……!ありがとうございました!」

不良にカバンをひったくられた女学生はジャスミンに礼を言う。

「いえ、いいのよ。貴方も怪我はなかった?」

ジャスミンは物腰柔らかな口調で女学生を気遣う。
女学生は礼を言うと、二人に見送られながら帰って行く。

「おお、そこの娘さん達」

導師服の男が美琴と黒子の方に近づいてくる。

「君達は常盤台中学の学生さんかね?」

温和な表情を浮かべて導師服の男が話しかけてくる。

「え、ええ……」

「実はわしの養女であるこのジャスミンが常盤台中学に留学生として入ることになったのでな。君達に挨拶しておこうかと思っての」

「え?この人が常盤台に?」

美琴は目の前で華麗な活躍をしたこの娘が常盤台に入学することを聞き、少々戸惑った様子だった。

「ジャスミンよ。よろしくね」

ジャスミンはそう言うと、美琴と、黒子に握手する。

「この方は私の養父で、タハール導師様です」

「タ、タハール導師!?」

ジャスミンの言葉を聞き、黒子は仰天した。タハール導師といえば、サウジアラビアの大富豪にして、世界でも五本の指に入る程の
資産家なのだ。

「タハール導師様、せっかくですからわたくし達ががこのジャスミンさんに第7学区内の案内をして差し上げますわ」

黒子は目の前の世界有数の大富豪に気に入られたいようだ。

「おぉ、それは助かる。ジャスミンや、この娘さん達と上手くやるのだよ?」
「ええ、お養父さま」

美琴と黒子はその時ジャスミンとタハール導師が口元で薄く笑ったことに気づいていなかった。





廃工場では激闘が続いていた。

ジャッカル・ドーパントに変身したナワルの戦闘力は高く、Wに変身した翔太郎とフィリップを苦しめていた。

「翔太郎、奴の動きは素早い。サイクロン・トリガーで行こう」
「よし!」

『サイクロン!』
『トリガー!』

射撃戦士、サイクロン・トリガーに変身し、ナワルに連続射撃を浴びせる。
サイクロン・トリガーとはトリガーマグナムに風属性の力を込めての速射戦を得意とする。トリガーメモリの出力が高いため、サイクロンメモリが押され気味でバランスは良くなく、弾の威力が低めで精密射撃にも適してないが、
連射と風による拡散効果で、より広い範囲の狙撃が可能な形態だ。

「ちぃ!調子に乗るな!」

銃撃を浴び続けたらやばいと感じたナワルは、優れた動体視力で、サイクロン・トリガーの射撃を華麗に避ける。

「は、早い!」
「こういう早い奴ってのは捕まえるのが一番だ!」

『ルナ!』
『メタル!』

ルナ・メタルに変身し、ルナの力で軟化したメタルシャフトを鞭のようにして、ナワルを縛り付ける。
ルナ・メタルとはルナの幻想の力をメタルシャフトに込め、シャフト本体をムチのようにしなやかかつ自在に操り、敵を拘束したり、投げ飛ばしたりなどのトリッキーかつ豪快な技を使うことが可能な形態だ。

「ぐぅ!」

メタルシャフトに巻きつかれたナワルはありったけの力で足掻く。

「大人しくしろナワル!」

翔太郎はメタルシャフトに縛られたナワルを自分の手前まで引き寄せる。

「生憎だが、まだ俺は捕まるわけにはいかん!」

ナワルは口から光弾を発射し、Wに当てる。

「うわぁ!」

Wはナワルの光弾を受けて後ろに吹っ飛ぶ。

メタルシャフトの拘束が緩んだのを見計らい、ナワルは脱出し、廃工場の外に飛び出す。

「翔太郎!ナワルが逃げる!」
「待て!」

しかしナワルは素早く、廃工場の外に出たが、もうナワルの姿はなかった。

「ちきしょう……、また逃げられたぜ」

翔太郎は二度もナワルを取り逃がしたことを悔しがる。

「仕方ねぇ、フィリップ、俺はカリールとの待ち合わせの場所に行く」
「わかった」

翔太郎は変身を解除し、カリールとの待ち合わせの場所に向かった。





「しかし宗教対立かぁ……、まさか十字教系以外の宗教もこの街に入り込むとはね」

当麻は自分のマンションのエレベーターで教会襲撃のプリントを眺めていた。

「そんな争い事をこれ以上増やしてたまるかよ……!」

当麻は不毛な争いを一刻も早く終わらせようと考える。

「ただいまー、今帰ったぞインデックス」

当麻は部屋は電気を付けておらず、インデックスはまだ帰っていないのかと思った。

「と……、とうまぁ……」

自分の部屋から消え入りそうな声で当麻に話しかけてくる声……、間違いないインデックスだ。

「どこにいる?インデックス!?」

これはただ事ではなと思った、当麻は急いで自分の部屋に入る。

インデックスが布団の毛布を被って、床に蹲っていた。

「どうした?インデックス?」

「とうま……」

インデックスの目は涙が滲んでいた。ナワリに首を絞められた恐怖が忘れられないのだ。

「ど、どうしたんだ?インデックス!?」

「今日……、襲われたんだよ……、ムスリムに……」





「ここが学園都市か……、風都に似てどこかきな臭い街だ」

学園都市に入ってきた赤い革ジャンの男は風都警察署超常犯罪捜査課課長の照井竜だ。
照井もまた、ナワリを追ってこの学園都市に入ってきた。

「今回は真倉を署に置いておいて正解だったな……」

この学園都市は風都以上に危険な街だということを予感していた。それを踏まえ、今回は一人で乗り込んだのだ。

「左の奴も来ているという情報があったが……、俺は俺のやり方でやるか。ここは風都じゃないしな」

以前、翔太郎と誤解から戦った際にも風都のルールに従うということで和解した。しかしこの学園都市になれば話は
別だ。ここで思い切り自分流の捜査ができるのだ。


「まずはこの学区から調べるか」

照井は学園都市の第7地区へと足を運んだ。





「貴方、風都署の刑事さん?」

「そうだ。お前達は?」

「風紀委員(ジャッジメント)ですの」

照井が第7地区で調査を進めていると、照井の前に立ち塞がった二人の女学生がいた。

常盤台の超電磁砲(レールガン)御坂美琴と、風紀委員(ジャッジメント)の白井黒子だ。

「照井竜、貴方を連続十字教会殺人の犯人として拘束します!」

「何……?」

照井はわけがわからなかった。自分が教会襲撃の犯人を追う為に学園都市に入ることを許可されたのだ。
捜査をしているのに風紀委員(ジャッジメント)に捜査妨害をされ、あまつさえ犯人扱いとは。

「一体どういうつもりだ?」
「私達は目の前にいる犯人を捕まえるだけ……、その事がなにか?貴方、自分が何をしたか胸に手を当てて考えて
下さらないかしら?貴方がわざわざわたくし達に捕まりきた理由をお聞かせ願いませんか?」

照井はここまで学生にコケにされるとは思わなかった。ここは力づくでわからせるしかない。その時、美琴の電撃が照井の足元を走った。

「で、電撃!?」
「そ、あたしは常盤台の超電磁砲(レールガン)って呼ばれててね。素直に捕まったほうが身のためだよ?それからあんた、なんで教会を
襲ったわけ?」

「俺に……」
「はい?」
「俺に……質問を……するな!」


照井の怒りは頂点に達し、アクセルメモリを取り出す

『アクセル!』

照井はアクセルドライバーにアクセルメモリを差し込む。

「変……身!」

『アクセル!』

スロットルを捻り上げ、真紅の装甲を纏った仮面ライダーアクセルに変身する。


「さぁ、振り切るぜ」

「こいつ……、変身した!?」
「お姉さま、この方相手に手加減はいらないようですわね」

「来てみろ学生。風都の警察を怒らせたらどうなるか思い知らせてやる」






次回 ムスリムの矜持

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最終更新:2010年03月04日 01:07
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