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『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』は
ハワード・フィリップス・ラヴクラフト(以下H.P.L.)が
1927年に著わした
怪奇小説の一つである。作者の死後、
1941年に「
ウィアード・テールズ」 Weird Tales 誌に掲載された。
原題は The Case of Charles Dexter Ward 。項目名をタイトルとする
創元推理文庫版の訳本(旧:
ラヴクラフト傑作集2、現:
ラヴクラフト全集2)が以前から刊行され、「チャールズ・デクスター・ウォード事件」として
青心社からも訳が刊行されている。
国書刊行会の「
定本ラヴクラフト全集4」では「狂人狂騒曲」の題が付けられており、
藤原編集室によると、この題は世界恐怖小説全集(
東京創元社)の第6巻に予定されていた平井呈一の訳「狂人狂想曲—チャールズ・デクスターの病症—」へのオマージュであるとのことである。
本作で言及されているおおまかな内容は次の通り:
ロードアイランド州プロビデンスの精神病院から入院中の患者が謎の失踪を遂げた。その患者の来歴が説明され、次いで患者の病状に疑問を抱き、異常な行動の原因を追う
ウィレット医師の奇怪な探検が物語られる。
短編を主としたH.P.L.作品としては分量が多く、長篇に近い。
クトゥルフ神話体系の中に位置付けられる作で、他の作品の内容、登場人物、怪物ないし神、魔道書への言及がなされる。一方、
コリン・ウィルソンが指摘するように、H.P.L.の後期作品は人間精神の限界としての恐怖を大いなる存在に対照させて描く手法を取っているが、本作の段階ではボレルスの引用に見られるように、錬金術、生贄や呪文による召還儀式等のゴシック的雰囲気がなお濃厚である。
メディアミックス
怪談呪いの霊魂
『
怪談呪いの霊魂』(原題 : The Haunted Palace)のタイトルで
映画化された。The Haunted Palaceは
ポーの有名な詩の題名だが、内容はポーとほとんど関係なくH.P.L.の小説を元にしている。ただし舞台が
アーカム村とされたり、主人公
ウォードが妻帯者で、妻も探検行に参加したりする等原作とはかなりの相違点がある(主人公の妻が活躍するというのは、極めて非H.P.L.的である)。
1963年、
AIP(アメリカン・インターナショナル・ピクチャーズ)作品
監督:
ロジャー・コーマン
キャスト:
ヴィンセント・プライス - 主人公
デブラ・バジェット - ウォードの妻
フランク・マクスウェル - ウィレット医師
他
DVD : 『怪談呪いの霊魂』 エスピーオー OPSD-S112
ヘルハザード・禁断の黙示録
『
ヘルハザード・禁断の黙示録』(原題:The Resurrected)のタイトルで、再度映画化されている。設定は現代に置き換えられているが、『怪談呪いの霊魂』に比べると、こちらの方がより原作に忠実である。DVD未発売(2006年現在)。
1991年製作、
アメリカ作品(
日本公開
1992年)
監督:
ダン・オバノン
キャスト:
クリス・サランドン
ジョン・テリー
ジェーン・シベット
他
最終更新:2007年04月26日 02:17