# DTLS (Datagram Transport Layer Security) プロトコル詳細解説

## 概要
DTLSは、UDPなどの信頼性のないデータグラムプロトコル上でTLSと同等のセキュリティを提供するプロトコルです。2006年にRFC 4347として標準化され、現在はRFC 6347(DTLS 1.2)とRFC 9147(DTLS 1.3)が最新版として定義されています。

## TLSとの主な違い
1. パケットロス対策
  - メッセージの再送メカニズムを実装
  - タイムアウト処理の導入
  - メッセージシーケンス番号の追加

2. リプレイ攻撃対策
  - シーケンス番号による重複パケットの検出
  - スライディングウィンドウによる受信パケット管理

3. メッセージフラグメンテーション
  - 大きなメッセージを適切なサイズに分割
  - 再構築メカニズムの実装

## セキュリティ機能

### 1. ハンドシェイクプロセス
```
Client Server
ClientHello ------>
                      <------     HelloVerifyRequest
ClientHello ------>
                                         ServerHello
                                        Certificate*
                                  ServerKeyExchange*
                                 CertificateRequest*
                      <------      ServerHelloDone
Certificate* ------>
ClientKeyExchange
CertificateVerify*
[ChangeCipherSpec]
Finished ------>
                                  [ChangeCipherSpec]
                      <------             Finished
```

### 2. 提供される保護機能
  • 機密性: AES-GCM、ChaCha20-Poly1305などの暗号化
  • 完全性: HMAC、AEAD
  • 認証: 証明書ベース、PSK
  • 前方秘匿性: (EC)DHE、X25519

## 一般的なユースケース
1. WebRTC
  - ブラウザ間のP2P通信
  - ビデオ/音声ストリーミング

2. IoTデバイス
  - センサーデータの送信
  - リアルタイム制御通信

3. オンラインゲーム
  - リアルタイムゲームデータ
  - UDP based通信の保護

## セキュリティ上の考慮事項
1. 設定推奨事項
  - 最新のDTLS 1.3の使用を推奨
  - 強力な暗号スイートの選択
  - 適切な証明書管理

2. 既知の脆弱性対策
  - リプレイ攻撃対策の確認
  - DoS攻撃対策の実装
  - Cookie検証の適切な実装

3. パフォーマンス最適化
  - MTU サイズの適切な設定
  - タイムアウト値の調整
  - 再送パラメータの最適化
最終更新:2024年10月16日 21:40