藩王(代理)閣下の憂鬱
2006年1月8日23時
根源種族の兵器と思われるシフとオズルが領内に侵攻を開始する。
これに対してわんわん帝国は戦時動員を発令。
これ以降、帝国を構成する藩国のひとつである土場国は戦争状態に突入することになる。
これに対してわんわん帝国は戦時動員を発令。
これ以降、帝国を構成する藩国のひとつである土場国は戦争状態に突入することになる。
戦時下、最初に忙しくなったのは藩国の経済部だった。
戦争準備のため帝国本国に資金10億わんわんと燃料10万トンを供出。建国時に下賜された資金を徴収された計算になる。
「金が無い……」
「無いね」
書類が大量に乗っかった事務机越しに向かい合った吏族二人は、出涸らしでそろそろ透明になってきた緑茶の入った湯飲みをずずずとすすりながら、はふぅとため息をついた。
「いきなり国家予算が6分の1になってしまった」
「そうだね」
ずずず。
「閣下は?」
「内職してる」
ここで言う閣下は藩王代理閣下である。実務に長けた藩王代理の評判は、吏族を中心に相当なものだった。
「アイドレスの設計もするんだよなあ…あの方」
「ああ、この国の柱石だよ」
ぴー、と音が鳴ってやかんが湯気を噴いた。
戦争準備のため帝国本国に資金10億わんわんと燃料10万トンを供出。建国時に下賜された資金を徴収された計算になる。
「金が無い……」
「無いね」
書類が大量に乗っかった事務机越しに向かい合った吏族二人は、出涸らしでそろそろ透明になってきた緑茶の入った湯飲みをずずずとすすりながら、はふぅとため息をついた。
「いきなり国家予算が6分の1になってしまった」
「そうだね」
ずずず。
「閣下は?」
「内職してる」
ここで言う閣下は藩王代理閣下である。実務に長けた藩王代理の評判は、吏族を中心に相当なものだった。
「アイドレスの設計もするんだよなあ…あの方」
「ああ、この国の柱石だよ」
ぴー、と音が鳴ってやかんが湯気を噴いた。
一方そのころ
アイドレス設計を行う技族部もまた、戦時体制以降とともに発行された新アイドレスの設計に追われていた。技族、つまり技術屋である。
「メカだ、メカだ! 我が夜の春がキタ!」
「うるさい」
叫んでいた技族Aが、声とともに飛んできたスパナで撃沈される。
「なにすんじゃい!?」
「うるさい」
即座に復活して再度叫んだ技族Aが、飛んできたペンチで撃墜される。
「これが叫ばずに居られるか! すみませんごめんなさい、もう叫びませんから勘弁してください」
振り上げられた工具箱一式の前にジャンピング土下座を極める技族A。命は惜しいらしい。
「で、なんでそんなにテンション高いのよ」
振り上げた工具箱をゆっくり地面に下ろしながら問いかける技族B。
「メカだから」
「……」
即答する技族A。技族B沈黙。
「人物画では得られないあの直線的な線! そして、装甲、機動力などの甘美な響き!」
「……」
「バーニア、スラスター、内蔵火器! ああ、スバラシィ、スバラシィ!」
何かが降臨したのかクネクネしだす技族A。頭抱える技族B「私、コイツと同類に見られてるのか」と転職を考える。
「で、ナニ設計してるの?」
気を取り直して聞いてみる技族B。そこまで熱弁する設計だ。技族としては興味もある。
「メカだ、メカだ! 我が夜の春がキタ!」
「うるさい」
叫んでいた技族Aが、声とともに飛んできたスパナで撃沈される。
「なにすんじゃい!?」
「うるさい」
即座に復活して再度叫んだ技族Aが、飛んできたペンチで撃墜される。
「これが叫ばずに居られるか! すみませんごめんなさい、もう叫びませんから勘弁してください」
振り上げられた工具箱一式の前にジャンピング土下座を極める技族A。命は惜しいらしい。
「で、なんでそんなにテンション高いのよ」
振り上げた工具箱をゆっくり地面に下ろしながら問いかける技族B。
「メカだから」
「……」
即答する技族A。技族B沈黙。
「人物画では得られないあの直線的な線! そして、装甲、機動力などの甘美な響き!」
「……」
「バーニア、スラスター、内蔵火器! ああ、スバラシィ、スバラシィ!」
何かが降臨したのかクネクネしだす技族A。頭抱える技族B「私、コイツと同類に見られてるのか」と転職を考える。
「で、ナニ設計してるの?」
気を取り直して聞いてみる技族B。そこまで熱弁する設計だ。技族としては興味もある。
「トラック」
工具箱が宙を駆けた。
再び吏族
アイドレス設計部のほうから聞こえた悲鳴に、一瞬びっくりした吏族AとBは、気を取り直してさらに薄くなったお茶をずずずとすすっていた。
「なんだったんだろうな」
「さあ? 工具箱でも直撃したんじゃないか?」
吏族B、エスパーかもしれない。
「ところで、……へーかは?」
「聞くな」
顔を背ける吏族AとB。藩士は大概、藩王の「おたわむれ」で大変痛い目にあっているので、藩王の話題はあまり歓迎されない。
「見てる分には楽しいんだがな」
「ああ、遠くから、とばっちりが無い程度に観察する分には」
はぁ。 とため息をつく吏族AとB。
先にバナナのかわで藩王代理の意識を撃沈して以降、藩王はその姿を潜めている。普通の国なら国王が姿をくらますとなると、権力闘争の匂いがするのだが、この国では藩王自ら次の「しこみ」をしていると考えるのが常識だった。
「祈るか」
「ああ」
とばっちり受けませんように、と八百万ほどいるらしいこの国の神様に祈りを捧げる二人。ついでに戦争に勝てますように。と、いのる。
「で、次は落とし穴あたりか?」
「たらいかもな……」
吏族Aがどっちにしろ時期的に冷水入りは辛いよなあ、ははは、と乾いた笑いを漏らしたあたりでドアが派手に開いた。
振り向けば真っ赤な顔をして仁王立ち、怒髪点をつく勢いの藩王代理閣下。その手には大量の経理関係書類。
「お前ら、仕事しろ!」
声とともに仕事しない部下と君主への八つ当たりもあって藩王代理が思い切りドアを閉めると、ぶちっ、という何かが千切れる音がした。「あ」と、声をそろえる吏族二人。
「なんだったんだろうな」
「さあ? 工具箱でも直撃したんじゃないか?」
吏族B、エスパーかもしれない。
「ところで、……へーかは?」
「聞くな」
顔を背ける吏族AとB。藩士は大概、藩王の「おたわむれ」で大変痛い目にあっているので、藩王の話題はあまり歓迎されない。
「見てる分には楽しいんだがな」
「ああ、遠くから、とばっちりが無い程度に観察する分には」
はぁ。 とため息をつく吏族AとB。
先にバナナのかわで藩王代理の意識を撃沈して以降、藩王はその姿を潜めている。普通の国なら国王が姿をくらますとなると、権力闘争の匂いがするのだが、この国では藩王自ら次の「しこみ」をしていると考えるのが常識だった。
「祈るか」
「ああ」
とばっちり受けませんように、と八百万ほどいるらしいこの国の神様に祈りを捧げる二人。ついでに戦争に勝てますように。と、いのる。
「で、次は落とし穴あたりか?」
「たらいかもな……」
吏族Aがどっちにしろ時期的に冷水入りは辛いよなあ、ははは、と乾いた笑いを漏らしたあたりでドアが派手に開いた。
振り向けば真っ赤な顔をして仁王立ち、怒髪点をつく勢いの藩王代理閣下。その手には大量の経理関係書類。
「お前ら、仕事しろ!」
声とともに仕事しない部下と君主への八つ当たりもあって藩王代理が思い切りドアを閉めると、ぶちっ、という何かが千切れる音がした。「あ」と、声をそろえる吏族二人。
ガゴン。と、何かが落ちる盛大な音。 バリッ、と障子の破れるような音。ドボン、と水音。 一瞬遅れて、熱い冷たい。となかなか面白い悲鳴。
「ダブルか」
「ダブルだな」
声をそろえる吏族AとBは、戦時下らしく窓の外に広がる冬のよく晴れた空に浮かぶ藩王代理の笑顔に敬礼した。
「ダブルだな」
声をそろえる吏族AとBは、戦時下らしく窓の外に広がる冬のよく晴れた空に浮かぶ藩王代理の笑顔に敬礼した。
本日の被害:藩王代理、ずぶぬれ
了。
作成:楽斎
どうでもいいけど戦時下でも悲壮になりそうに無いぜ、この国w