戦時対応というのは何も藩の中心部だけで済まされるわけではない。
古くから娯楽に慣れ親しみ、MATSURIやENJYOと同じようにこの戦闘すら、楽しむ余裕がある藩都とは違い、農村部は随分とピリピリした雰囲気に包まれている……と普通は思うのだが、割とそうでもないらしい。
古くから娯楽に慣れ親しみ、MATSURIやENJYOと同じようにこの戦闘すら、楽しむ余裕がある藩都とは違い、農村部は随分とピリピリした雰囲気に包まれている……と普通は思うのだが、割とそうでもないらしい。
農夫は小麦の収穫について真剣に悩み、天災が来ることがないように祈っている。どうやら国防に関しては藩王及び、他の能力を信用しているらしい。
今年も雪が降ったから、春には十分な水が確保できるという噂も聞く。
この分だと、今年の小麦も期待できそうである。
今年も雪が降ったから、春には十分な水が確保できるという噂も聞く。
この分だと、今年の小麦も期待できそうである。
さて、大地からの恵みである小麦畑を黄金の海というのであれば、
このキリバン平原はさしずめ冬の女王に愛された白銀の草原か。
一面に白い雪が降り積もり、遠くで野の獣の声が響く。
春になれば地面から訓練中の兵士が埋めた骨が出てくるのであろうが
今は全て冷たい雪の下に隠されている。
このキリバン平原はさしずめ冬の女王に愛された白銀の草原か。
一面に白い雪が降り積もり、遠くで野の獣の声が響く。
春になれば地面から訓練中の兵士が埋めた骨が出てくるのであろうが
今は全て冷たい雪の下に隠されている。
朝方まで降っていた雪が少し止んだ昼下がり2人の人影がワクテカ遺跡を目指していた。
「…寒い」
「肯定。気温は零下1.2度、重装備の俺はともかく卿にはすこし厳しい環境だな」
「わかってんなら、なんとかしろよ。無茶苦茶寒ィじゃねーか!!!」
「肯定。気温は零下1.2度、重装備の俺はともかく卿にはすこし厳しい環境だな」
「わかってんなら、なんとかしろよ。無茶苦茶寒ィじゃねーか!!!」
道なき道を行くのは土場空軍の犬士兼パイロットの百瀬久太郎と、整備士兼歩兵であるILであった。
「不可能だ。卿の装備に関しての権限は俺にはない」
「お前ね、オモイヤリとかさーこう人をなに、なんていえばいいの。こうあたたかみ?
もっとたりてないのはおもしろみ?」
「否定。俺は人ではない、兵士でありこの国を守る歯車のひとつだ」
「……もういい、さっさと仕事済ませて帰りてぇ」
「不可能だ。卿の装備に関しての権限は俺にはない」
「お前ね、オモイヤリとかさーこう人をなに、なんていえばいいの。こうあたたかみ?
もっとたりてないのはおもしろみ?」
「否定。俺は人ではない、兵士でありこの国を守る歯車のひとつだ」
「……もういい、さっさと仕事済ませて帰りてぇ」
騒ぎながらワクテカへの道を急ぐ。用意された補給物資を持って無事部隊に戻るのが今回の彼らの任務であった。
今陣地があるのはワクテカ遺跡前、この平原を真っ直ぐ進むとすぐに付くはずである。
この道は一般人の出入りが制限されているとはいえ、寒い以外は比較的安全な道だ。
久太郎は歩きながら、ようやく見えてきたワクテカ遺跡を仰ぎ見る。山の上にある古代都市はいつもとかわらずうっすらと雪に覆われていた。
「石油が出た塔は、あれか」
指差せばどうやら地面から黒い何かがにじみ出たあとが遠くからでも見える。
4つの塔に囲まれた古代都市は、未だにその全てが解明されていない。本来なら今回はその調査のハズであったのだが、
オズルとシフの登場により急遽、軍事演習に変更されていた。
「また、雪が振ってきたな」
少しの間やんでいた雪が、また降り始めた。
白い雪の降り積もる大地。美しいが、それだけに厳しく気まぐれだ。
世界は誰にでも優しいが、誰にでも等しく残酷なものにもなる。
はぁ、と息を吐く。白い息が空の昇り、消えていった。
「雪のない世界に行きたい」ふとそう思う。足は冷たいし、目標とする遺跡には雪に足をとられてなかなかたどり着けそうにないからかもしれないが、
とりとめのない思考が襲ってくる。
昔きいた、星見省のえらい人の話を思い出す。強い人間は風を渡って遠い世界にもいけるという話だ。
世界がいくつあるとか、そんなことは知らない。だが、ここではないどこかに、むしろ綺麗なおねえちゃんとあったかい温泉がある場所に行きたい、と願ってみるのだった。
ふ、と久太郎がロクでもない思考に陥っていると、ILの厳しい声が聞こえた。
今陣地があるのはワクテカ遺跡前、この平原を真っ直ぐ進むとすぐに付くはずである。
この道は一般人の出入りが制限されているとはいえ、寒い以外は比較的安全な道だ。
久太郎は歩きながら、ようやく見えてきたワクテカ遺跡を仰ぎ見る。山の上にある古代都市はいつもとかわらずうっすらと雪に覆われていた。
「石油が出た塔は、あれか」
指差せばどうやら地面から黒い何かがにじみ出たあとが遠くからでも見える。
4つの塔に囲まれた古代都市は、未だにその全てが解明されていない。本来なら今回はその調査のハズであったのだが、
オズルとシフの登場により急遽、軍事演習に変更されていた。
「また、雪が振ってきたな」
少しの間やんでいた雪が、また降り始めた。
白い雪の降り積もる大地。美しいが、それだけに厳しく気まぐれだ。
世界は誰にでも優しいが、誰にでも等しく残酷なものにもなる。
はぁ、と息を吐く。白い息が空の昇り、消えていった。
「雪のない世界に行きたい」ふとそう思う。足は冷たいし、目標とする遺跡には雪に足をとられてなかなかたどり着けそうにないからかもしれないが、
とりとめのない思考が襲ってくる。
昔きいた、星見省のえらい人の話を思い出す。強い人間は風を渡って遠い世界にもいけるという話だ。
世界がいくつあるとか、そんなことは知らない。だが、ここではないどこかに、むしろ綺麗なおねえちゃんとあったかい温泉がある場所に行きたい、と願ってみるのだった。
ふ、と久太郎がロクでもない思考に陥っていると、ILの厳しい声が聞こえた。
「前方より奇襲。正体不明!伏せろ」
ざっと雪が舞い上がる。ILが側転して前方からの攻撃を回避、だが久太郎は思考のせいか一歩反応が遅れる。
前方から無数の弾丸が飛んできた。
ざっと雪が舞い上がる。ILが側転して前方からの攻撃を回避、だが久太郎は思考のせいか一歩反応が遅れる。
前方から無数の弾丸が飛んできた。
「へ、あっ」
後ろへ倒れることでなんとか回避しようとするが、それでも数発もらってしまう。
通常ならば即死であろうが、今回は違った。
いや、いっそ即死であるほうがよかったのかもしれない。
通常ならば即死であろうが、今回は違った。
いや、いっそ即死であるほうがよかったのかもしれない。
「冷てぇ!!!」
雪の上に尻もちをついて冷たいのに加えて当たった弾丸が体から熱を奪う。
久太郎に襲い掛かったのは白い弾丸つまり雪球であった。
雪の上に尻もちをついて冷たいのに加えて当たった弾丸が体から熱を奪う。
久太郎に襲い掛かったのは白い弾丸つまり雪球であった。
「イェア!!!ナイスコントロール!!!」
前方で攻撃を仕掛けてきた連中は大騒ぎだ。
「結局お前はまた、騙されたわけだが」
「ウマー棒だ、ウマー棒がきたぞー」
前方で攻撃を仕掛けてきた連中は大騒ぎだ。
「結局お前はまた、騙されたわけだが」
「ウマー棒だ、ウマー棒がきたぞー」
敵は、思い思いに叫びをあげ、元気に走り回っている。
正確に言うと彼らは敵ではない。久太郎たちが合流するべき味方であり、
土場空軍の華、犬士兼パイロットの面々だ。
犬士である彼らは寒さも平気というわけでもないのだが、いたずらが成功してはしゃぎまわっている。
正確に言うと彼らは敵ではない。久太郎たちが合流するべき味方であり、
土場空軍の華、犬士兼パイロットの面々だ。
犬士である彼らは寒さも平気というわけでもないのだが、いたずらが成功してはしゃぎまわっている。
「陣地デキタヨー」
ノリノリのパイロット軍団の後ろで整備士チームが手を挙げる。
今回は整備士チームとパイロットチーム合同の軍事訓練「雪合戦」である。
なお、彼らが藩都から運んできたのは優勝チームに支払われる商品のウマー棒だ。
ノリノリのパイロット軍団の後ろで整備士チームが手を挙げる。
今回は整備士チームとパイロットチーム合同の軍事訓練「雪合戦」である。
なお、彼らが藩都から運んできたのは優勝チームに支払われる商品のウマー棒だ。
「…味方相手に奇襲…」
ふつふつと怒りがこみ上げてくる。もうこの物資持って帰りたい、超帰りたい。
「整備兵ごときに負けてられないしさぁ」
ゲラゲラ笑いながら商品のウマー棒を回収するパイロットたち。
「ま、アレだ。これも通過儀礼ですようん」
「いや、靴の中に雪はいってるんですけど」
「凍傷にはキヲツケロ!」
ぱしっとやる気のない敬礼を返す。ちなみにコイツが隊長である。
「誰のせいだと思って…」
ぶつぶつ言いながら久太郎が立ち上がった、そのときだ。
「総軍配置、てー!!」
空気の読めない大声と共に背後から整備兵チームの奇襲がおこる。
ふつふつと怒りがこみ上げてくる。もうこの物資持って帰りたい、超帰りたい。
「整備兵ごときに負けてられないしさぁ」
ゲラゲラ笑いながら商品のウマー棒を回収するパイロットたち。
「ま、アレだ。これも通過儀礼ですようん」
「いや、靴の中に雪はいってるんですけど」
「凍傷にはキヲツケロ!」
ぱしっとやる気のない敬礼を返す。ちなみにコイツが隊長である。
「誰のせいだと思って…」
ぶつぶつ言いながら久太郎が立ち上がった、そのときだ。
「総軍配置、てー!!」
空気の読めない大声と共に背後から整備兵チームの奇襲がおこる。
こうして、土場藩国冬の名物「寒中訓練~どうみてもグダグダです~」が開始されるのであった。