〇×△■

■キャラクター名:〇×△■(    )
■性別:女性
■所持品:陰陽眼

特殊能力【藍眼睛的女孩&红眼睛的女孩】

彼女が密室に近しいと認識している空間を現世から幽世に寄せていく能力。
発動自体は彼女の意志による任意だが、能力発動に際して、空間に青みがかかり、赤に寄せるようにして時間経過で段々と染まっていく。
彼女の意志によって青い瞳が裏返して赤い瞳をあらわとすることで一気に空間を異界に持ってくることもできる。ただし、これには彼女の負担も大きい。赤は危険信号。

普段彼女が見ている世界は悪鬼幽鬼魑魅魍魎が跋扈する世界であるが、別にそれ自体は大した害をなすものではない。大半の鬼は人間と見分けがつかないためである。
ただし、黄色以上の色合いで見えてくるものは常人にはとても耐えられるものではない。黄は発狂信号。

効果範囲としては特別教室一個分くらいが限度、ただし密室が破られたとしても即座に効力を失うわけではなく、外界に染められる形で本来の色合いを取り戻していく。

ちなみにここで見たものが気に入った人間は、霊感という形で影響が永続的に残すことができる。「見鬼の才」というが、これによって瞳が青く染まった人間は霊体を見るだけでなく触ること交わうことも叶う。青は(比較的)安全信号。

プロフィール

日台ハーフの道士、降霊術師の少女。
真っ赤な特注の制服を着た、真っ青な虹彩の少女。
黝い髪を背中まで伸ばして片目を隠した不思議な少女。

痩せぎすで不健康な印象、だけど人当たりは悪くはない。
片手は白手袋で隠されて、真夏でも肌を露出している部分はほとんどない。
彼女の周囲にはいつだって冷気が漂っている。

肌に触れても、そこに人の体温はもちろんない。
だけど、生きてる。生きたいと願ってる。
そんな彼女は生きたいと願うすべての人々の味方です。

そんな彼女は道士だった台湾人の母親と別れて姫代学園にやってきた。
だから今は父方の姓を名乗っています。

プロローグSS

やぁ、久しぶり。
私だよ、わたし、ワタシ、私だってば。
忘れちゃったの? 薄情者だなぁ、ま、いいよ。

私がこれからする話で思い出してくれればいいだけだからさ。
私のお友達に風水師の子がいるんだ。台湾生まれのね。

カノジョね、〇×△■っていうの。
聞こえなかった、〇×△■よ。Repeat?
はい、どうぞ……、〇×△■、〇×△■ね。
はい、よくできました。えらいえらい。

……あなた、私にほめてもらいに来たの? 違うでしょ、じゃ話を続けましょうか。
で、〇×△■ちゃん、長いから〇ちゃんでいいか。

〇ちゃんはね、生まれつき「八字(パーツ)」が極端に軽かったの。
八字ってなにかって? つまるところは信仰、迷信と言い切れるかは人次第。
たとえば、もしあなたが日本人なら姓名判断の洗礼を生まれたときに親から受けているはずよ。
この場合は四柱推命といった方がわかりやすいかな?

人の運勢が生まれた時間によって定められるってのは、わかりやすい考えかもね。
すなわち「年干、年支(年柱)」、「月干、月支(月柱)」、「日干、日支(日柱)」、「時干、時支(時柱)」を組み合わせてその人の生まれ持った運勢が軽いか重いかを占うわけ。
軽くて2.1両、重くて7.2両。一両が何グラムかは時代によって違うけれど、少なくとも21グラムよりは重いことは確かね。
魂の重さには地域差があるみたい。

生年月日はともかく生まれたときの時間帯まで調べるのは難しいし、狙って産んだり産ませたりすることは難しいと思う。とは言え人の世に過ぎた命運の持ち主を世に解き放ちたいと思うのも、親心なのかな。

かく言う私だって一般に出回っていない、逸脱した計算式のことをひとつふたつでいいのなら知っているの。
ね、あなた、なんだったら孕んでみる、それとも孕ませてみる?

……なーんてね。
私も彼女から口止めされているから、めったなことは言わないけど。
本当に危険なことを成し遂げたい人というのは危険な知識が口の端に上った時点から「やろう」と思い込めるものなの。あなたはそういう危険に踏み込める偉大な精神の持ち主だと信じているわ。

2$%&年⇔+月?≠日$N時=%分、これがなんのことかは繰り返さないよ?
はーい、だからね、くれぐれもいうけれど。彼女の母親の真似をしないでね。
という私の言葉には力なんて籠ってないの、止めようという気はないの、好き勝手にやればいいの。

ああ、そうそう。 
八字が軽いといけないのよ。
なぜかって? そうね、鬼(グエイ)に取り憑かれやすくなるから。
鬼というのは日本でいう幽霊のこと、けして虎のパンツに牛の角を生やした超人や羅刹の類じゃないよ。

話は変わるけどさ、あんな時間――年月日と時間帯に産まれたからなのかな、〇ちゃんは未熟児だった。
それも人の形をなしているかといったレベルでね、いくら現代医学が優れているからって限界はある。
お医者様がさじを投げたくなった。投げた。

それから十七年後、大きくなって、もちろん人の形も成した〇ちゃんがいた。
その理由は、これからする話をすればわかってもらえると思うよ。

それはね、七月のある日のことでした。
だから、今は七月ではありません。

それはね、姫代学園のとある空き教室のことでした。
だから、ここは教室ではありません。

見ればわかるって? そんなこと知ってるって?
そうよ、あなたは七月ではない今日のこの日に私のお部屋にお邪魔しているの。わかりきったことを言うのね。
……話を続けるわ。

夏休み前の喧噪とは無縁なことに、時間はずれの教室でもありました。
だから、行き交う生徒はまばら? いいえ、たったふたり、いいえ三人しかいなかった。
だけどそこは、むんとした不快な湿気と共に、肌を貫くような凍てついた感触が満ちていた。

ここは、見た目だけは閑静で上品な女学園だった。
それでも蝉の音はお嬢様たちにご遠慮なくと言いたげに、この時間帯はやかましいものでした。

そう、だったはず。
木陰にさえぎられ、分厚いガラスにさえぎられたから?
いいえ、そうではなくて。ただただ、不吉だった。

そこにいた、ふたりの女の子は不吉の気配の発信源だった。
ひとりは白と黒に色分けされたパンダか、いいえこれはシャチのような印象を受けるセーラー服を着ていました。
もうひとりは血を浴びたように真っ赤な制服を着ていました。

白と黒、モノトーンなだけなら完成したはずなのに、ここに一色赤を差しただけですべてが不安定で揺らぐようでした。そうです、白と黒の女の子はひどく魅力的だったのです。
ころころとほころぶ顔は同性に愛を抜きにした恋をさせてしまうほどに蠱惑的でした。

蠱惑、そう怖いほどに。
その時になってカッ、コッと音が響きました。かすかないら立ち、いいえ、焦りの現われでしょうか。
赤いパンプスが無垢の床材を叩く音です。あなたがご明察の通りです、それは赤い少女――〇ちゃんのものでした。

「鮫氷しゃち、、、、さん」
なにかを、口ごもるように〇ちゃんは言いました。
「はーい、鮫氷しゃちさんですよー」
いたって軽快にしゃちさんは受けごたえます、それでおしまい。

ありとあらゆる不吉さを飲み込むように、しゃちさんは大きな口を開けて笑ったわ。
それは頼もしいものであったのかもしれない、それは愛らしいものであったのかもしれない。
まるで海遊する海獣のシャチのように、ね。

不吉な空気、重苦しくて海中に沈みこんだような圧迫感、それから沈黙。
ありとあらゆる“よくない”雰囲気は赤い少女と白黒の少女の間でわだかまります。

だからね、もしここにもうひとり誰かがいたらアナログの時計がカチコチと、時を刻む音が聞こえたでしょう。
生憎と、その誰かさんはいたのですが、名前は9*Σさん、だったかなー?
可愛らしい名前でしょう? ここで実名を出すのもなんだけど。

本当の不吉さは○ちゃんから放たれていることは間違いないのだけれど
そうして9*Σさんは震える声でいったわ、まるで自分がそう言わないと何も始まらないかのように。
本当は泣きそうだったのにね。

「まどかさま、まどかさま、おいでください」
このフレーズを聞けばわかってくれると思うわ。
しゃちさん、〇ちゃん、9*Σさんの三人による、いわゆるこっくりさんがはじまったの。

ただし、この場合は少し違う。
こっくりさんはご存じの通り、十円玉に降ろした霊から五十音表を介したメッセージを受け取るものでしょう。

似たようなものは諸外国にもあって、こっくりさんの直接の源流になったのは欧米では近代オカルト界で流行った「ウィジャ・ボード」だというし。
大陸ではこれらと似た自動書記による降霊術の儀式として「扶鸞(フーラン)」というものもあるのよ。
まぁ、今回はそっくりそのままではないんだけどね、この場合は日本のこっくりさんとほとんど同じって考えてくれればいいの。

言い忘れていなかったと思うけど、〇ちゃんには台湾の血が入っているから。
ええそうなの、台湾のこっくりさんはね、霊を降ろす憑代がコインとは限らない。

「碗仙(ワンシェン)」、「銭仙(チェンシェン)」、「筆仙(ビーシェン)」、「髪仙(ファーシェン)」……、まだまだあるよ。
聞いて及んでの通り、動かすものがわかってきた?

そしてこの場合は「鏡仙(ジンシェン)」、しゃちさんたちは鏡に何者かを降ろすことに決めた。
何者か? 何者だって! 何者だっていいの、9*Σが納得さえすれば。

「お尋ねしますが、あなたはまどかさまですか?」
まどかさま、この学園で最も有名な怪談のひとつ。
「血の踊り場事件」、踊り場、転落、鏡、死、少女、そして蓮柄まどか。

断片的な連想だった、不吉な願望を知ってしまった。
チェーンメールで送られてきた「まどかさまをやりなさい」。
なにかが起こってほしいと9*Σは願ってしまった。
チェーンメールは言いました「でなければ*にます」。

そう、誰もが死にたがっているのよ、私のように、あなたのように!
首吊り縄の代わりに電子の鎖。だから〇ちゃんしゃちさん、私はここにいるの。
青くとろみがかかったような、重く粘った空気の中で、鏡が踊っていた。
きっと、踊り場とはここなのかな?

「まどかさままどかさま、明日の天気はなんですか?」
「まどかさままどかさま、わたしの好きな食べ物は何ですか?」
「まどかさままどかさま、わたしの誕生日は何ですか?」
「まどかさままどかさま……」

青く澄んだ死んだ海の色、黒く澄み切った真珠のような瞳、そしてただの人の泣きそうな波紋が広がって、まわるまわる、ぐるぐる回る。時に迷いながら、時には突っ切って、答えを返す問い返す。
鏡のかけらか、切れ端か。それは踊り場の鏡の成れの果てだといった、彼女は言った。
鮫氷しゃちが持ってきたの、これはいいもののだよって、満面の笑顔で。

幾十の質問を重ねていく。
けれども、質問をするのは9寺Σさんばかりなり。
しゃちさんはにこにこと笑ってた、〇ちゃんは真剣な顔で見つめてた。
黒々とした愛らしい瞳は、変わらないからこそ恐ろしくって……。
一方で青々とした無機質な瞳は、意志のない鏡と似ていて、恐ろしいと感じることもできないかもしれなかった。




意志ってなんだろ、ねぇ9寺Σ、あなたに自分の意志なんてあるの?
鮫氷しゃちに送られて、煽られて、乗せられて、こうして死に向かっているあなたに自分の意志なんてあるの?

「まどかさままどかさま、私はいくつで結婚しますか?」
「まどかさままどかさま、私に子どもはいくつできますか?」
「まどかさままどかさま、私はいくつで死にますか?」
「まどかさままどかさま……」

瞳は回る、指先は惑う。鮫氷しゃちは笑っていた。
夜のとばりは降りて、空気は青く染まって、それでも肌にねばつく重苦しさは変わらない。
熱を帯びてくる、血が上ってくる、だけど背筋には冷たい金属の棒が添わされたようだった。
鏡に映った、三様の目、二対の瞳とひとつの瞳、合わせていつつ。

9唖Σが自縄自縛で自分の運命を決しようとしているのに、ふたりは動かなかった。
〇ちゃんは、それが彼女が望むならと意を決したように。
しゃちさんは、それが彼女が望むならと小悪魔のように適当に。

スタンスが違うでしょう。
でも、結局は放任なの、無責任なの。
こんな決定的な場に居合わせたのにね? もっと親身になっていれば何も知らないひとりの女の子を救えたかもしれないのにねえ。
だからね、罪の重さは星ちゃん、あの子の方が上なの。
あの子がわからない、何がわからないかって。星×△■、あの子のことが私にはわからない。

蒼く澄んだ瞳、真っ赤な制服、正反対のようでいて、だからこそけして混じらうことない。
足して二で割って紫ってことはありえないの。
本人は鬼が混じりに混じって、人だなんて言えないのにねえ。

「まどかさままどかさま――」
それでも〇×紅■は決然として、言った。
これで終わらせてしまいたいと言うように、だけどね、それって浅くて愚かな考えなの。

明治のはじまりに外国から伝来したこっくりさんが、エンジェル様やキューピッド様と名を変えて昭和の女の子の手の中にいた。
誰もがやったことはなくても、きっと誰かの秘密として名前を変えてだけどきっとやり方は変わりはしないの。

「あなたはなぜ死んだのですか?」
だけど、やってはいけない禁忌はきっと別にある、ここにあった。
この種の、装いを変えたこっくりさんは「狐狗狸」の当て字で解されるように動物の霊が呼ばれるわけではない。
「鬼」よ、怨霊よ、怨み抱えた人の霊よ。そんなモノにこんな質問をぶつけると、こうなる。

ぱぁん

わかりやすい擬音と共に、ガラスは弾けた、鏡は砕けた。
皮を破いて、肉を裂いて血がこぼれた、そのはずだった。

これを予期したように、星ちゃんが紙の上に覆いかぶさったから、透明な切っ先が向かう先は彼女に他ならなかった。
キラキラとしたガラスの粒子は、確かに突き刺さった。
彼女の身体に流れていたものは血ではなかった、それだけのことだった。

赤く、ぼんやりとした霧が漏れた。
きっと液体に換算した量にすればほんの数滴でしょう。
鮫氷しゃちは自分の血に怯まなかった、だって彼女の名が冠するところは鮫であっても本質はシャチであり、そしてシャチは鮫のように自分の血に酔うナイーブな生き物ではないから。

すっ、と、逃げた。だからしゃちは逃げちゃった。
するりとしなやかに、こっくりさんを終わらせずに鏡から指を離しちゃいけないなんてルール、知ってるくせに。
「だって、これで終わりだもんねぇ」

バイバイと愛らしく手を振って、引き戸も締めずにテテと走る、それで終わりだった。
きっと、次の楽しめる相手を探しに行くのでしょう。

星×紅■は知らなかったの。
自分にまともな血が流れていないなんてれrがgなnがgちtにn
それに知らず知らずのうちに、ここを異界に寄せてしまったんでしょうね、赤ければ危険とは限らないの。
だって、青信号でも車は突っ込んでくるのよ、残念でした。身から出た錆ね。

そうして、ひとりが去ってふたりが残った空き教室には、気がふれた女の子が残っていたわ。
だってね、何もない方向に指さす先にはやっぱりないのに「はじめまして!」「はじめまして!」「はじめまして!」って挨拶をしているんだから。

黄色を越えて金茶に染まって煌々と輝く瞳はきっと誰が見ても正気ではないとわかってしまう。
代わる代わるぐるぐると視線を回すの。この世ではないものの、一部が眼球に入ってしまったの、当然よ。
そしてね、野々寺Σさん、彼女の不安に、恐怖に死の予感に答えてくれる専門家さんはいっぱいいるんだとわかったんだもの、まどかさまひとりに頼らなくたっていい。そういうことなの。

きっと、彼女は生きていくんでしょうね。
たったひとり自分だけが生きていることに気づけずに、おんなじ死者のお友達に囲まれながら、と思いながら……。

はぁい、以上です。どこにでもあるお話でした。
ご傾聴ありがとうございました。

野々寺さんについて、しゃちさんは興味はないそうだし私も必然興味は持たないわ。
ご興味が許せばご自身でお調べになられて? うふふ。

つまりはそういうこと、〇×△■、え、聞こえない?
星名紅子さん、聞こえた? はい、ほ・し・な・べ・に・こ、どうやら中途半端に私の言葉にノイズがかかるのは……、まぁいいか。

星名紅子あるいは星ちゃん、生まれたと同時に「鬼」と併せられたの。
遭わせて逢わせて併せて合わせたの、そしてああなった。
だから片手は骨だし、もうひとつの目はふた目と見れない形になっているはずよ。

なんで生きてるんでしょうね? なんで自分が死んでいないって思いこめるんでしょうね?
私に言わせれば、魅力的なあまい飴玉に集られた無数の蟻に運ばれているようなものなのに。
もちろん飴玉は星ちゃんの魂魄のことであって、蟻は無数の魑魅魍魎、「鬼」の喩えに他ならないのだけど。

え、なんで私が星ちゃんにこうも辛辣なのかって。
だって、星ちゃん、しゃちさんの邪魔をしたいみたい。
なんでもこのままだともっと多くの犠牲が出るからって、今は辛うじて死んでないけど、次はどうなるかわからないから、私がどうにかしないといけないって拳を固めてた。

だからよ、私はしゃちさんのお友達なんだから、彼女の願いは叶えなければならない。
邪魔はさせない、だってお友達ってのはお友達にしてくれた人のお願いは絶対聞かないといけないものなんだから。

だから、最後に聞きますね。
ねぇ、なんで生きてるの? 理由あるの? そんなの理由あるの?
ないなら、なんで死んでないの? 私のとこにきたのにさ。


最終更新:2022年10月05日 22:37