中払桃
■キャラクター名:中払桃(なかばらい・もも)
■性別:女性
■所持品:眼鏡
特殊能力【『で、それがどうしたの?』】
理不尽だと感じたルールの強要を無効化する能力。
殺し合いをしなければ死ぬ。質問に回答すれば何かを失う等のルールが適応されたとしても、そのルールを無効化する。
前者は殺し合いをする必要はないし、後者も何かを失ったり、何かが起こることはない。
何らかの条件を見つけ出さなければ無敵だとしても、無視してダメージを与えることすらできる。
能力者自身が直接関係しない事項には適応されない。
一方的に被害者を殺す怪談の怪異への怒りから目覚めた能力。
プロフィール
姫代学園の風紀委員。中等部2年。
二つ結びのおさげをシュシュでまとめた黒髪の美少女。赤縁の眼鏡をかけている。
膝丈スカートの制服。
Bカップ。くまさんパンツ。処女
風紀委員会の心霊・怪奇現象担当。
自分は一方的に人間を害せると思っている怪異・幽霊などを拳で蹂躙するのが趣味。
「怪奇現象であるということは風紀を守らせない理由にはならないわ」
プロローグSS
『学校の怪談:マントの怪人』
夜の姫代学園。
二人の生徒が教室棟の最奥部の教室を目指して廊下を進んでいた。
手には暗闇を照らす懐中電灯が握られている。
静まり返った校内はとても不気味だった。
夜の学校は全く人気がない。
誰かが来るとすれば見回りの先生か風紀委員ぐらいだろう。
「や……やっぱりやめようよ」
おかっぱの生徒が怯えながら、友人である洋美に言った。
「何?怖くなっちゃったの?明子は怖がりだなあ」
「だ、だって、もう何人も行方不明になってるっていう噂だよ」
姫代学園を彩る七不思議の噂。それを検証しようというのが今回の彼女の提案だ。
3番目のトイレにいるというトイレの花子さん。誰もいないグラウンドを走りまわる銅像。
誰もいないはずなのに音楽を奏でる音楽室のピアノ。生徒を異世界に連れ去る存在しないはずの教室etc.etc.
その中には生徒に害を加えるものも当然のように存在している。
さらには八番目の七不思議があるとか、七不思議の七不思議があるとか。
数が増えすぎて、そもそもいくつの七不思議があるのかすらよくわからない。
その中でも今一番話題のものというとまどかさんの噂だろうか。
『まどか』と名乗る不審なアカウントから届く怪しいチェーンメール。
都市伝説によくある内容だが、かつて姫代で起きた血の踊り場事件を絡めたことで爆発的に広がったようだ。
噂を持ってきた友人曰く、もう何人かの女生徒が消え去っているのだとか。
「大したことないって。よくある誇張っしょ。大丈夫大丈夫。先生に見つかったら一緒に謝ってあげるって」
笑いながら洋美は廊下をまっすぐに進んでいく。
「ま、待ってよ、洋美ちゃん」
明子は置いていかれないように彼女についていく。
しばらくして二人は、ある教室の前にたどり着いた。
「こ、ここだよね。今回の目的地」
「そうそう。姫代七不思議の一つ、マントの怪人が現れる魔の教室」
話はこうだ。
夕方の学校、ある生徒がこの教室にいるとどこからともなく声が聞こえてきた。
「赤いマント、青いマントどちらが欲しい」。
赤いマントと答えると、赤いマントの怪人が鎌で全身を切り裂き、血塗れになり死ぬ。
青いマントと答えると、青いマントの怪人に首を絞められ真っ青になる死ぬ。
都市伝説の赤い紙、青い紙から派生したと思われるよくある話だ。
被害者が死んでいるにもかかわらず、どうやって話が伝わってきたのか不明だし、信憑性が薄いように思われる。
「じゃあ、入ろうか」
「う、うん」
まず最初に洋美が教室の中に足を踏み入れた。
そして、明子がすぐ後に続こうとする。
すると、どこからか水滴が落ちる音が聞こえた。
「……ひっ」
明子が飛び上って、悲鳴を上げる。
見れば手洗い場がそこにはあった。
ぽつりぽつりと断続的に音が続いている。
「お、脅かさないでよ」
きっと、きちんと誰かが閉め忘れたのだろう。
明子は蛇口の栓を閉める。
「洋美ちゃんのところにいかないと」
洋美が入った教室に向かおうとする。
すると、周囲に響き渡るような大きな女性の悲鳴が聞こえた。
「ひ、洋美ちゃん…!?」
慌てて教室に向かう明子。
そこには、血まみれになって倒れた洋美と赤いマントの怪人が立っていた。
赤いマントの怪人がこちらに振り向くと明子に問う。
「赤いマント、青いマントどちらが欲しい」
悲鳴を上げて尻もちをつく明子。
彼女は恐怖のあまり失禁した。地面に染みが広がる。
「赤いマント、青いマントどちらが欲しい」
赤いマントの怪人が再び問う。
明子は絶望した。
話の通りならどちらも選んでも殺される。
洋美も犠牲になったのだろう。
絶体絶命のピンチ。
やはり先生に隠れてこんなことしたのは間違っていたのだ。
だが、今更後悔しても遅い。
彼女が諦めかけて、怪人に回答しようとしたその時―――
「遅かったみたいね」
明子の後ろから声が聞こえた。
振り向くと、いつの間にか少女が一人立っていた。
艶やかな真っ黒な髪をシュシュでまとめた二つ結びのおさげ。赤縁の眼鏡をかけている。
きっちりとスカートを膝丈までで揃えた姫代学園の制服。
腕には彼女の所属を象徴するように風紀委員会と書かれた腕章がつけられている。
「これに懲りたら風紀はちゃんと守りなさい。今回は助けてあげるから」
凛とした佇まいの風紀委員の少女は明子の方を一瞥した後、赤マントの怪人を睨みつける。
「赤いマント、青いマントどちらが欲しい」
怪人が新たに現れた少女に問いかけた。
「じゃあ、赤いマントをもらおうかしら」
「赤いマントだな」
答えた風紀委員の少女に赤いマントの怪人が襲い掛った。
怪人は無慈悲に少女に鎌を振り下ろす。
少女は拳で鎌を払い飛ばした。
「何!?」
赤マントの怪人の鎌は質問に回答した者に対し絶対的な切断効果をもたらす。
防御されるわけがない。
「今度はこっちの番ね」
驚愕する怪人に少女が拳を振るう。
「グワーッ!」
怪人がのけぞる。
「ば、ばかな、何だお前、俺を攻撃できるわけが」
「それがどうしたの?」
少女―中払桃の能力はルールを無効化する。
赤いマントの怪人にも攻撃を無効化する何らかのルールが存在したのだろうが彼女の前では無意味であった。
「ばかな」
逃げなくては。
赤いマントの怪人が好きなのはあくまで一方的な蹂躙である。
自分に対等な敵、あるいは自分を蹂躙できる敵など。
「逃がすわけがないでしょう」
桃が回し蹴りを放った。彼女の美しい脚が大きな弧線を描いて怪人の頭に直撃する。
くまがプリントされた下着が顕わになるが気にかけることもない。
「ぐわああああああああ!!」
教室の中の机と椅子を巻き込みながら、怪人が吹き飛んだ。
桃は怪人をさらに追撃する。
蹴り「ぐえええええ」更に蹴り「あばっ」殴る「ぐえっ」さらに殴る。「やめ……」
突き。蹴り。殴打。蹴り。殴打。蹴り。鉤突き。
それは一方的な蹂躙であった。
終わらない攻撃に怪人はいつしか恐怖した。
桃の攻撃を受け続けた怪人は消滅した。
怪異界の真実の御伽噺。
夜の姫代で悪事かますと風紀委員が&ruby(く){来襲}る!!!
彼女の存在を知らぬ怪人が滅びるのは必然であった。
「ふう」
怪人を滅ぼした桃が息を吐く。
そして、明子の方に歩き出すと彼女に手を差し出した。
「大丈夫?ってそんなわけがないわね」
桃は明子を助け起こすと血塗れになって倒れる洋美の方を見た。
手遅れなのは誰が見ても明らかだった。
「ひ……ひぐっ……洋美………ちゃん」
明子は命が助かって、安心したのか泣きだした。
「彼女も助けられたらよかったのだけど」
夜に抜け出し校舎を徘徊するのは風紀的にはよくないことだが、死ぬほどの事でもない。
だから洋美を助けられなかったのは後悔している。
最初から手が届かなかったのだとしても。
その後、桃は明子を寮に送り、その日の出来事を報告書にまとめた。
怪談が嫌いだった。
死んだというだけで悪霊になって、一方的に人間を害する存在になれる。
そんな話に納得がいかなかった。
彼らの生前に戦えば、負けるわけがないと思えるのに。
だから彼女は魔人に、風紀委員になったのだ。
最終更新:2022年10月05日 22:38