コレクター

■キャラクター名:コレクター
■性別:少女
■所持品:スクラップブック

特殊能力【フォークロアコレクション】

様々な怪談を語る事で再現する能力。
倒した怪異を怪談として取り込む事で成長する。

プロフィール

クラスの片隅にいる少女は。
いつからそこに居たのだろうか。
「アレはダレ?」と私が聞くと。
「転校生じゃない」と皆が答える。
そうだったかな。
そうだったかもしれない。
そう言えば、昨日も放課後に話をした。
不思議な話を。
まだ暑いのに冬服の紺色のセーラー服は。
前の学校の服だったのかもしれない。
長い黒髪の間から覗く大きくて黒い瞳は。
意地悪で可愛く細く笑う。
ぷっくりとした赤い唇は。
とても魅力的だった。
名前は…なんだっけ。
「コレクター」
と彼女は言った。
「今日も話をしましょう」
と彼女は言った。
「放課後にここで」
私は。
それに抗えなかった。

プロローグSS『悲鳴』


「悲鳴の話をしましょう」
と彼女は言った。

夕日が差し込む教室には私と彼女が座っている。

「悲鳴?」
「そう、悲鳴。ひめいヒメイ」

彼女は指をクルクルと回す。

「悲鳴って、悲しく鳴くって書くわ」

空中を伝う指先は感じを描いていた。

「涙を流す泣くでもなく、恐れや怒り恐怖でもない」
「悲しく鳴くの」

私はそれを黙って聞いている。

「鳴くって言葉は普通、人間には使わないわ」

確かに。

「だから、小説や漫画で。キャーとかギャーって言ってるのは悲しい鳴き声っぽくないと思わない?」
「じゃあどんなのが悲鳴なの?」

と私は聞く。

「そうね例えば」

クゥーン。

それは犬の鳴き声の真似だった。
悲しげな犬の鳴き声。

「こういう声かな」
「…子犬の声…」

それは。
どこかで聞いた様な。

クゥーン。

いつの間にか彼女は私の後ろに立っていた。
赤い唇が耳元へそっと近づいていくのがわかる。
呼吸が。
冷たい。

「犬を」
「えっ?」

ドキッとした。
心臓を掴まれるような声。

「飼ってたの?犬」

私は犬を飼っていた。
飼って。

「悲しい鳴き声ってどんな時にするのかしらね」

どういう時に。

「友達が死んだとき、家族が死んだとき、別れるとき」

クゥーン。

その鳴き声は耳に残る。

「誰かに見捨てられたとき」

ドクンと心臓が鳴った。

クゥーン。

犬が鳴いている。
悲しい声で鳴いている。

だって仕方なかった。
両親が離婚して。
あの子を連れてはいけなかったんだ。

その後、とりとめのない話をして。
私は教室を後にした。
何の話をしたのか。
誰と話したのか。

彼女は誰だったのか。
もう、わからない。

クゥーン。

何故なら。
私の耳にはずっと。

その悲鳴が聞こえている。

「くぅーん」

と私は口にした。

ああ、そうか。
私も捨てられたんだった。

空を見上げる。
暗い土の中で。
私は空を見上げる。

クゥーン。
と耳元であの子が鳴いている。
そう、犬と一緒に。
私は両親に穴に捨てられたんだ。

「悲しい鳴き声だね」

と彼女の声が聞こえた。

…もう、なにも解らない。
私の両親はいつ離婚したのか。
私はいつ捨てられたのか。

彼女に見せられたスクラップブックに。
子供を埋めて捨てた事件の記事があったような気がする。
あれは、私の事なのか。
それとも別の誰かなのか。

ただ、私が犬を捨てたのは事実で。
犬の鳴き声が私を。
この暗い穴に留めているのは。
何となく理解できた。

「ごめんね。いまからはずっと一緒だから」

くぅーん。
私は悲しい声で鳴いた。


最終更新:2022年10月05日 22:39