【チャペル】その2「本当にあった熊むすプリティダービー逆に怖い神真都Qのイラマチオvs真実」

○結
 月夜、倒壊した夜の教会に立つ、3mを越えた裸の毛むくじゃらの、’’熊のような男’’は、筋骨隆々なその肉体とは裏腹に、険しい表情をしているもののどこか幼さ、純粋さが顔形に宿っている。(以下、熊息子、略して熊むすと称する)
 体毛は濡れている。黒毛のため判別つかないが、辺りに散らばる血肉、その入り乱れようから、返り血を浴びたことは想像に難くない。しかし、その死、度を越えている。人一人を殺すに、原型をとどめぬほど、引き裂き、ちぎり、もはやなにものにも繋がらぬように、執拗に、完全に、千々に壊されている。夥しい。
 いったい何があったのだろうか。
 血に酔い霧がかった脳に、少しずつ情景が蘇る。
 種付豚男と名乗った奇妙で奇怪な男の奇行が……。
 ……

○転
 暮れ、人熱の籠もる教会は、フロア熱狂、十数もの嬌声にあふれていた。乱交パーティと言わざるをえない……。ペニスは第二の脳と言われており、実際解剖図でその様を見てものもいるだろうが、その脳はあまりにも小さく、思考といえばいかに快楽を得るか、その程度しか考えることはできないのだが、みよ、彼の股間のそびえる神木を。あまりの威容に、それを己が膣内におさめようとは、姫代のシスタたちは思いもしない。神木は雫を零す、そのひと粒は、両手大の大きさで、白く、精虫のかたちをしている。精虫は地を這い、その先にいる女は、選ばれたのだ、栄光の法悦を賜り、そしてその穴の中へと精虫を迎え入れる。……乱交パーティではないのかもしれないが、とにかく今回の趣向はこのような催しであった。
 そこへ、影。息荒く野生に満ちた眼光で、雄雄しい体毛に、強靱な肉体。そして勃起したペニス。その益荒雄ぶり、精虫をふたつ入れた女でさえ心惹かれるものがあった。いわんやひとつをや。突然の闖入者に、神木ペニスの男、種付豚男は、射精した。濁流がごとき精子の奔流に、足首、腰、頭までが白く埋まり、壁が軋み、教会の色ガラスが割れ、いくらか穴を広げながら、女たちは流れるがまま精子とともに流されていった(女は精子にすぐ流されるという比喩表現ではない)。
 窓や戸は放たれ、すっかり精子も流れ去り、残ったのは二人の男だけだった。床には行き場を失った精虫が、飛び跳ね、尾を揺らす。それを踏み潰しながら、益荒雄は一歩ずつ、種付豚男に近づいてく。豚男は勃起するばかりで、ぽかーんと、益荒雄の姿を見ている。
 それを不愉快に思ったのか、生粋の殺戮衝動か、あるいは性器くらべっこでは負けると思ったのか、闖入者の行動は早かった。思い切りに距離を詰め、思い切りに振りかぶる。
 一撃。ジャッ、と種付豚男の顔面があるべき位置になくなり、教会の壁にめり込んだ。次に胸を、次に腹を、引き裂いていく。そしてなお巨大に張るペニス。これはいくら爪立てても折れやしない。異常だ。超自然現象だ。あまりにも固い。
 ペニスを柔らかくする方法なぞ、ひとつしかしらない。
 さいわい、経験が生きた。

「しょうがないにゃぁ・・・」 

 男同士のぶつかり合い、野生の生存権および生存圏のため、格付けのため、女のため、彼等、獣は、ナワバリバトル・ホモセックスをする。それをよく覚えている。彼は、神として送られるはずの忘れられた獣なのだから……。
 ……

○結
 彼は数十回ものメスイキを越え、種付豚男のペニスに勝利したことを思い出した。獣の悪霊、その化身、その集合体、その怨嗟の澱である彼は、とうぜんホモセックスも集積している。豚男のペニスに’’郷愁、懐かしさ’’すら覚えた。
 これが誇りだ。誇りを取り戻す!
 人一人しか殺していないのに、これほどの血が流れているのは、なんてことはない、相手のペニスが大きすぎたからだ。しかしペニスはペニス、じゃんけんと同じで、結局は穴に負ける存在よ、とろとろとかふわふわとか、そんな軟弱なもんじゃない、野生のガチガチケツ穴、掘れるもんなら掘ってみんかい! 野生の矜持……。
 そういった勝利の余韻的な気持ちに昂ってはいた彼だが、しかし勝利した今になって、初めて気づいたこともある。
 痛みだ。
 剛毛におおわれた彼の右肩から、わずかな痛みを感じている。ほんの少しの血。粘度のあるその血は、返り血ではないようだ。
 ほんの些細な傷。野生み深い彼であれば、つばつけずともすぐに塞がるだろうが、しかし、気にかかる。
 いったいいつついた傷だ……?
 いま再び、思い返してよう。めくるめくあの頃のきらめきワールドに身を委ねて……。

○承
 数日前の昼、渋谷駅前、遠路はるばる北海道の忘れ去られたど田舎からやってきて、復讐の獣・イオマンテがまず最初に感じたのは、なぜみんなマスクをつけているのだろうという純粋な疑問である。優れた狩人も、獣も、だれもマスクなどつけない。マスクなど、忌まわしき呪い師のものである。
 知らぬ間に、大和人は邪神に支配されてしまったのではないか、という疑問を覚えた。人に忘れられた怒りを持つにも関わらず、人が、いつの間にか人をやめているのではないか、という恐怖。
 まず、道ゆく人に聞いてみた。

「ちょっとお尋ねしたいんですが」
「うわああああああノーマスク! ノーマスク! 殺す気ィ!?」

「あのーお時間よろしいですか」
「ぎゃぴゃゃあああコロナ! スペイン風邪! 赤痢にエイズゥ!!」

 突撃インタビューの末、復讐の獣は気付いた。
 ——復讐はするが、しかし、されるべき相手にしなければ、彼の気は治らない。

 マスクをつけるような人間もどきに復讐しても意味がない。

 日本を、正す。

 憂国の獣・イオマンテの誕生である。
 しかし別にみんながみんなマスクを付けているわけではないので、たま〜にいる、マスクをつけていない奴を殺しまくった。
 ノーマスクマンを100ほど殺した時、憂国の獣・イオマンテはついに国家権力、警察に見つかった。

 警察は彼を…………表彰した。

 流行病感染拡大せしめんとする亡国蒙昧集団を誅した功によって、認められたのだ。
 ジャスティス。
 正義がここにあるとでもいうのだろうか。
 ……反ワクに義はないのか。人権はないのか。
 殺人ウィルスにおもねってワクチンやマスクをつかい、生活を歪め、体から腐敗臭を漂わせる方が間違っているんではないのか。

 涙……。
 しかし憂国の獣は特にそんなことは考えていない。そも擬人化しているとはいえ獣なのだから当然未接種である。
 婦人警官が小声でささやいた。

「こんにちわイオマンテさん」
「何か用かな?」
「ワクチンは打ちましたか?」
「打ってない」

 そもそもワクチンが何かもよくわかってないので当然である。
 関係者方々はうろたえ、なにやら意見を一致させて、おずおずと彼に提案した。

「ワクチン2回接種、しましょうか? とてもいいものですよ」 
「4回くれ」

 イオマンテは倍を要求した。深い理由はなく、ただそれが特別なものであり、なんらかの便宜を図ってくれそうだから、言ってみただけだ。イオマンテは数を数えられる。指の数程度は。

「2つで十分ですよ」

 イオマンテは指折り、最も大きな要求をした。

「いや、9回で良い」

 推ワク連中はこの暴虐な振る舞いを見て、無礼だとなじったり、あるいは図体がでかいからそれくらい必要だと言ったりしたが、しかし、ワクチン接種は日を空けてするべきものであり、一度に複数、それも9回となると……。

「彼を呼ぶしかありませんな」

 もちろん勘のいい読者諸兄はお気づきだろう。
 八岐ワクチン——神聖ヤマト民族が繋いできた、二重螺旋構造という名の天然免疫を……。

 手に注射器、股間に八つのペニスを持つものは、ざらにいない。ワクチンがなぜワクワク・チンチンと呼ばれているのか、しかと理解しているだろうか。

 イオマンテはワクチン未接種であり、
 ワクチンを複数回打つのが模範的日本国民であり、
 一度に九本も挿入してナカにダすテクは、
 技術大国日本の誇る種付豚男の専売特許だ。

「チクっとしますからね 怖くないよ
 痛くして欲しいのかな マゾオスが」

 イオマンテの体内に文明の力がインサートされていく。科学的経験……。
 するとどんどん体が熱くなる。なぜ? 未知の経験に戸惑っていると、豚男はいやらしい笑みを浮かべた。

「お、お前、何をした!」
「クックッ、まだそんな口聞けるか」

 豚男がイオマンテの乳首をピンと弾くと、たまらず、イオマンテは射精した。感度3000倍!
 何か良くない予感がし、イオマンテは少しでも距離を取ろうとするが、体はうまく動かない。そよぐ風、自らの息遣いさえ愛撫となるほど、敏感に反応してしまう。こんなんでは身じろぎひとつ致命的だ。やはりワクチンは悪!

 術なく豚男に攻められ、キン玉カラカラ、性のかぎりを果たし尽くした。
 意識を、イオマンテが手放す寸前、豚男は勝ち誇ったように言った。

「媚薬じゃなくて単なる副反応だぞ
 生来の淫乱 定点観測」

 罠。
 ワクチンと見せかけ媚薬
 と見せかけワクチン……。
 誇りを踏みにじるような、悪意。人の狡猾さ。
 薄れゆく意識の中で、イオマンテは、故郷の冬を思い出していた。人間に獣を思い出させてやると誓ったあの日、そして、まだ純粋な獣だったあの日を
……。
 ……

○起
 冬の早朝、カムイミンタラ、イオマンテは川へ鮭狩りに行きました。すると川上から、どんぶらこ、どんぶらこと、大きなペニスが流れてきました。

「こりゃ大きなペニスだわい」

 イオマンテはペニスにかぶりつきました。すると、ペニスは、個にして全・全にして個、それ単体で自律するスタンダロンではなく、所詮は人の付属物、川中から全裸の男が飛び出してきた!
 エンカウント(戦闘用BGM)
 先制攻撃で、イオマンテの喉奥に強く腰を打ち付ける! 効果抜群だ! 打ち付ける! 効果抜群だ! 打ち付ける! 効果ばつ牛ンだ!
 あまりに抵抗なくペニスを受け入れるものだから、これじゃあイオマンテじゃなくて、イラマチオだよ〜〜とほほ・・・。
 ペニスの主こと種付豚男も、呆れ返る。

「なんたるまったりとした奥ゆかしさ
 にわかには信じられん 陰謀か?
 陰茎か? もうディープスロートか
 ディープステートか分かんねえよ
 口中にDSぞ!」

 喉奥射精。イオマンテは許容量限界、つまり、目の前が真っ暗になった。

 目が覚めると、まるで全てが夢であるかのように、ペニスもかたちもない。しかし、今の出来事が夢でなかった証拠に、イオマンテの体が人化している。獣はフェラなんかしない。もちろんイラマチオとなればなおさらである。
 イオマンテは茫然としていたが、すわ、たちあがり、決意した。
 必ずや邪智暴虐のペニスを見つけ出し、これを滅ぼすと。
 イオマンテは激怒した。
 ……

○エピローグ
 朝、倒壊した教会、朝の礼拝に集う少女たちが、教会のあった場所に生える一本の、天地を貫く槍のような塔のような、立派起立するものを見上げていた。それは無機質で角張り、そしてなにか、はりつけられている。
 よく観察してみると、黒い塊で、ぴくりとも動かない。磔ではなく、貫いているのかもしれない。それは人のようにも、熊のようにも見え、主・イエスキリストがごとくにも見えるが、しかし教会の跡地がそう錯覚させただけだろう。

 少女たちは、どうしようかねとまごついていた。そのうち聖歌隊も集まり、そして誰も、この惨状を知らないものだから、次にどうするべきか見出せずにいた。
 神の使いだろうか、あるいは神罰に討たれたのか、そのような話をするうちに、用務員のおじさんが現れた。
 これ幸い全部押し付けようと、金髪ツリ目のお嬢様が一歩前に出た。

「おい豚ぁ! さっさと片付けろよボケ」
「言い過ぎだよォ」
「ふんっ! 下等生物の家畜ですわ」
「だめだよォ だって……」

 諌める少女は耳が四つある。猫のごとき獣耳。尻尾。手は股に添えられ、オナオナオナオナオナ、擦る手が止まらない。

「ケモ娘になればもう差別されなくて済むんだよ?」
「な、なにを言うんですわ? お?」

 弱気な少女が、ツリ目の少女を攻める。攻め攻め攻め攻め、レズレズレズレズ……。

 百合の間に挟まらない用務員のおじさんは、獣でも人でも、神でもなくなったものを見上げながら、静かに思う。

 ワクチン、ディープスロート、獣、人化、忘却を恐れ、北海道から姫代までやってきた獣、南極物語、忠犬ハチ公……。

 本当の死は皆に忘れられたとき——。
 イオマンテは、忘れられたことに、怒っていたのではないのだろう。
 もちろん、死を拒んでいるわけでもない。
 ただ——
 ただ単純に、
 覚えてくれる人がいれば、友達がいれば。
 それがセックス・フレンドでも、まあ……。

 用務員のおじさんは、きっと憶えているだろう。
 北海道からはるばるやってきたバター熊のことを。
 きっと憶えている。
 噛む力の強ささえ。
 きっと憶えている。
 ペニスは第二の脳なのだから……。
 ……



今日の登場人物:乱交少女、レズ少女、イオマンテ、種付豚男種付豚男(死)、種付豚男(医師)、種付豚男(どんぶらこ)
今日の性癖:過去改変、ケモ、イラマチオ、薬を打ったと見せかけプラシーボかと見せかけやっぱ打ってるやつ


最終更新:2022年10月30日 21:50