黒の核晶の番人召喚小ネタ

 何が、起こったんだ?
 オレは確か老人の放った光の矢に消し飛ばされたはずじゃ……。
 目の前には先ほどまでとは全く異なった光景が広がっていた。極寒の地ではなく陽光降り注ぐ穏やかな草原に、オレと、オレを呼び出したらしい人間達が立っている。
 冷静になれと自分に言い聞かせて、オレは今までの人生を振り返った。
 オレは昔、魔物の群れを率いて暴れ回っていた。そこらの魔族を絆の力――数の力とも言う――でなぎ倒し、そりゃもう好き放題にやっていた。
 そんなオレを完膚なきまでに叩きのめし部下になるよう誘ってくださったのが、偉大なる主――大魔王バーン様だった。
 魔界の神とも言うべき強さに心酔したオレは迷わず忠誠を誓い、誇りを持って仕えてきた。

 ある時オレは数匹の魔物と一緒に呼び出され、危険な任務について告げられた。
 極寒の地に落とす予定のピラァ。そこに搭載された黒の核晶凍結を防ぐための番人になれというのだ。
 成功はすなわち死を意味する。
 他の魔物達が尻込みする中、オレはためらいなく進み出て告げた。
「オレが……やります!」
 オレはバーン様のためなら死ねる。誇張でも何でもない本心だった。
 大魔王様の壮大な野望の礎となれるなら本望だ。
 ミストバーン様は感心したようにオレを見つめてくださった。
 そして、バーン様は満足そうに笑い、オレの志を嬉しく思うとおっしゃってくださった。
 あの老人によって邪魔されたことは残念だが、今頃地上は消滅して魔界に太陽の光が降り注いでいるはずだ。
 大魔王様はそれをご覧になってお喜びになっているだろう。
 我が生涯に一片の悔いなし。

 意識を現実の光景に戻すとピンクの髪の少女がオレに向かって「強そう!」「凄いわ!」などと騒いでいる。
 周りの奴らもこちらに害を加える様子は無く、魔物の存在を当然のものとして受け止めているようだ。
 奇妙な連中だ。
 好奇心が湧いたため情報を得ようと目の前の少女に話を聞いてみた。
 いわく、ここは魔界でも天界でもない全く別の世界。
 帰る手段は無いと知らされバーン様のために働くことができないのが残念に思われたが、最大の使命は果たしたため心残りは無い。
 召喚や儀式についての説明を聞きながらオレは思い切って第二の人生を歩むのもいいかもしれないと思うようになっていた。
 ただ、使い魔として忠誠を誓う前にオレを呼んだ少女が第二の人生を賭けるに値するか確かめる必要があった。
 果たして資格があるかどうか――とくと見せてもらおう。
「え、ちょっと、その“仲間になりたくなさそうな目”はいったい――」
「お前の正義をオレに説きたくば、言葉ではなく力で語れッ!」
 そう叫んだオレは渾身の力で炎を叩きつけた。

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最終更新:2008年09月27日 15:08
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