マキシマムは混乱していた。
張り切って大魔宮の警備に励んでいた――といっても侵入者などおらず暇なのだが――自称最強の彼は、光る鏡を見つけ、好奇心に任せて手を触れてしまったのだ。
すると妙な感覚に包まれ、気づけば見知らぬ人間たちに取り囲まれていたのである。
「すげー、ピカピカでツルツルじゃないか」
「でもなんか……その……バカっぽい顔だわ」
目の前の、失礼な発言の主を叩きのめそうと周囲を見回すが、手下は一人もいない。
人間の小娘一人とはいえもしかするととてつもない能力を秘めているかもしれない。たとえばHPが1から減らないとか。
どうすべきか迷った彼は、とりあえず戦力を把握すべく桃色の髪の少女に精神を集中させた。
カッと目が見開かれ、光が宿る。
「キィ~ングスキャ~ン! フフッ、我輩の能力ならばHPからスリーサイズまで――ゲェッ!?」
「な、何よ」
マキシマムはみっともなくうろたえた。
何でも見抜くはずの技なのにMPは表示されず、おまけに――
「上から順に、板、板、板だとオォォッ!?」
ぷちっ。
それを聞いたルイズの中で何かが切れた。
自然と口が動き、呪文が紡ぎだされる。
「エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド 」
体の奥底から力がわきあがる。
「ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル……」
彼女は、理解した。己の魔法の威力と性質を。
そして選んだ。目の前のバカ王を跡形もなく消し飛ばすことを。
次の瞬間、マキシマムは白光に飲み込まれた。
おしまい
最終更新:2008年07月05日 00:58