執事小ネタ

 魔法が使えない魔法使い、『ゼロ』のルイズが使い魔として召喚したのは一人の執事でした。

 執事はとても働き者でした。朝早く起きると召喚された時に、手に持っていた鈴を鳴らし、寮中の生徒たちを起こしに行きます。

 おかげで、寝坊をして朝食を食べ損ねる生徒はいなくなりました。

 手付かずの料理を見てコック長のマルトーさんが気分を悪くする事もありません。

 メイドのシエスタを始めとする学院の使用人達は大喜びです。

 執事の仕事は他にも様々です。使用人達に混ざって洗濯や掃除……料理を作る事だってあります。

 執事の作った料理はトリステインには無い味付けがしてありました。食べた人は皆揃って舌鼓を打ちます。

 それだけではありません。多分、それなりの年齢を得たので『あろう』執事の知識と教養は確かなものでした。

 時には元いた世界の知恵を活かし、新しい発想を思い付く事すらあります。

 学院の皆は執事と、そして召喚主のルイズを次々に褒めたたえました。

「『彼』は完璧な執事だよ!」

「ルイズがうらやましい……」

「あんな執事を召喚するとは……ふっ……もう、『ゼロ』とは呼べないな」

 ですが、『ゼロ』と呼ばれなくなった事はとても嬉しいのですが、ルイズは素直に喜べませんでした。

 その原因は自分の使い魔にありました。

 ……自分の使い魔は本当に良くやってくれている、とルイズは思います。

 執事として完璧な能力を持ち、頭も良い。

 時には鈴を剣に持ち替えて戦う事すら厭いませんでした。

 しかし、ルイズの気分は晴れません。一つだけ……。そう、たった一つだけ、使い魔には欠点があったのです――

 ――朝――

「ヒョッヒョッヒョッ。おはようございます。ルイズさま」

「…………モルグ……あんたね……。――毎朝毎朝っ!私を起こす時にその不気味な顔を近づけないでよーーー!」

「ヒョッヒョッヒョッ。この顔は生まれつきな物でして。申し訳ありませんw」

 ――そう、ルイズの呼び出した使い魔の執事は『腐った死体』だったのでした。

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最終更新:2008年07月16日 20:56
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