???召喚小ネタ

「やり直しを要求します」
 ルイズは断固たる口調で宣言した。
 彼女は先ほど使い魔を召喚することに成功したばかりであるが、表情は喜びには程遠かった。
 立っている青年の瞼は閉ざされ、白銀の髪や整った造作とも相まってどこか神秘的な雰囲気を湛えている。
 鍛え抜かれた体は素晴らしい膂力と敏捷性を備えているであろうことを容易に想像させる。
 高位の神官か貴族――否、王と言われても納得しそうな姿だが、ルイズはすぐさま元の場所に送り返したい気分でいっぱいだった。
 その理由は――
「駄目です。早く契約なさい」
 きっぱり断ったコルベールの目は某魔影参謀より冷たい。普段の温厚さからは想像もできないほどの空気が迸っている。
「だって、全裸ですよ?」
 目を閉じた青年は生まれた姿のまま立っている。
 お嬢様育ちのルイズでなくともさすがに全裸は許容範囲外だった。
 しかしコルベールは『炎蛇』の二つ名にふさわしい眼光で言い切った。
「他の使い魔も服を着ていないではないですか。やりなさい」
 散々爆発を起こした後であり、もうルイズに精神力はほとんど残されていない。ここで意地を張って留年にされようものなら死んでも死にきれない。
 彼女は仕方なく背伸びをして接吻した。
(いやあああぁぁぁぁ!)
 声にならぬ心の叫びがハルケギニアの青空に吸い込まれていった。


 その頃大魔宮では大魔王が訝しげな顔で周囲を窺い、苦々しげに呟いた。
「ミストバーン、お前に預けていた余の肉体が返却されていないが」
 その言葉を聞いた影が目を丸くし、うろたえる。
「そ、そんな!? バーン様……ッ!」
 勇者は好機を見逃すはずもなく剣を構え、突進した。
「さよなら……大魔王バーン!」
 こうして、大魔王は真の姿を取り戻すことなく敗北したのだった……。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年07月31日 15:08
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。