え?彼女を召喚した時の事?
勿論よく覚えてるわ。
だってねぇ、何度も何度も失敗して、やっと成功したと思ったら。
立っていたのが最上級のマントとドレス着て、王冠をつけたわたしと同じ位の女の子なのよ?
とてもじゃないけど忘れられないわ。
聞けば即位式の直前に召喚のゲートをくぐったって言うじゃない。どれだけわたしが焦ったかわかる?
なのにあの子ったら平気な顔で「帰るまでは使い魔やってもいいわよ」なんて言うんだもの。
しかも理由が「なんか面白そうだし」って。ほんと大物よね。
ただ先生や学院長とはしっかり交渉してたわ。結局表向きは某国の王族留学生って事になったの。
そうね、本当にしっかりしてたわ。
貴族嫌いの怪盗が彼女の事を守ったりする位、毅然としているのよね。
わたしの国の王女様、あ、今は女王様なんだけど、その姫様に密命を受けた時も、王族としての心構えを説いていたわ。
しかも四系統魔法全てを使いこなす力を持ってるんだもの、今だから言えるけど、それを知った時は嫉妬したわ。
でも、わたしが八つ当たりしちゃった時、彼女は言ったの。
「そこで諦めたら本当にゼロになっちゃうわよ」って。
そして魔法の使えない男の子の話をしてくれたの。
ふふ、なによ。赤くならなくてもいいじゃない。
あら、立派すぎるなんてそんな事言っていいの?
まあね、確かにそれだけじゃないわ。
良く言えば好奇心旺盛で、悪く言えばトラブルメーカーだったもの。
特に人の恋愛沙汰には必ずと言っていいほど首を突っ込んで。
一度なんか、決闘騒ぎになった位なんだから。
まあね、自分が召喚しておいてなんだけど、即位式の直前に怪しげなゲートをくぐるくらいだものね。
本人は「だってこういうの見たら、入ってみたくなるものでしょ!?」って言ってたけど。
そう言えば町で宝の地図を大量に買い込んできた時もあったわ。
ええ、勿論全部ニセモノだったわよ。宝探しに付き合わされる身にもなって欲しいと思わない?
え?うー、そ、それは確かに楽しかったけど、で、でも大変だったんだからね!
うん、確かに、主人と使い魔というより、友達として付き合ってたと思う。
わたしが裏切り者に殺されそうになった時も。
捨て駒として七万の敵の足止めを命じられた時も。
使い魔としてじゃなくて、仲間として、友達として、一緒に戦ってくれたわ。
魔法が使えなかった時も、虚無の担い手になった後も、変わることなく、ね。
後の事はもう知ってるでしょ?
ガリアのヨルムンガルドに包囲された時、わたしの『世界扉』のむこうからやってきてくれたアンタなら。
どんな攻撃も跳ね返すあの人形を、素手で薙ぎ倒しちゃうんだもの。本当に凄いわよね。
ちょっと!なんて顔してるのよ!
そりゃあ最初は驚いたけど、今アンタの事を怖がってる人なんていないわ!
そもそもあれ位の事ができなきゃ、あの子につり合いなんてしないでしょ!
大体アンタと再会した時のあの子の笑顔、見てないの?
わたしといる時にあんな顔なんて一度も見た事無かったんだから!
も、もも、もうちょっと自信持ちなさいよね!
あ、もう向こうも準備終わったみたいね。
じゃあ、招待席にもどるわ。
もう勝手にどっかに行って、わたしの親友を心配させるんじゃないわよ!
もっとも、結婚式がすんだら二度と離さないって言ってたけど。
レオナにここまで言わせるんだから、本当に果報者よね。
ちょっと、聞いてるの? ダイ。
最終更新:2008年08月30日 11:33