日谷創面

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dangerousss

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日谷創面(ひや そうめん)

設定

●日谷創面(ひや そうめん)。日谷奴子の双子の弟。高校一年生。
豆腐が好きになれず、実家の豆腐屋を継ぐ気が無い。

顔も性格もイケメンだが、重度のシスコン。ただし素直になれず、本人は否定している。
また、その件で、報道部の小野寺塩素に弱みを握られている。
その上で、彼女の『リスクヘッジ』によって、わずか一万円で買収されており、
半奴隷化されているが、創面自身は自覚していない。
今回の大会参加も小野寺に指示され、いつのまにか決定していた。
(小野寺は大会関係者ではないためルールには抵触しない)。

●日常的に奴子の能力『豆腐を粗末にする奴は豆腐の角に頭ぶつけて死ね!』攻撃を受け、
その攻撃に対抗すべく魔人へと覚醒した。
敵からの攻撃に備え、戦闘時は服を脱ぎ、海パン一丁になる。体には奴子に付けられた7つの傷がある。

●日谷家の長男は代々、大手豆腐製造会社「涅槃」から送られてくる刺客・手芸者から店を守るため、
手芸者として育てられる。しかし、創面は途中で修業を放棄したため、手芸者としての技量は半人前以下。
趣味の陶芸ができると聞いて手芸部に入部したが、言葉の通じない者ばかりなため、幽霊部員状態。
動きが割と俊敏な事以外は、精神も肉体も、普通の魔人高校生。ステータスで言うと、5/3/8/3/11くらい。

ハルマゲドンに参加したことも、命を懸けた実戦経験もない。
能力内容は特に隠していないため、『触れたものをトーフ状にできるもの』として、よく知られている。

●かつて存在したとされる、手芸者神話における24人の神々の一人、
≪トーゲイ≫クランの手芸者ソウルを胸の内に宿しているが、本人は自覚していない。

【豆腐屋の三角巾】
姉に持たされている三角巾。
裏には『健康そして安い』という日谷の家訓が書かれている。
代々手芸者を輩出する日谷家の機織り機を使い、
姉が糸に対し能力を使いながら丁寧に作り上げた物。
ただし不器用なため、所々糸がほつれてしまっている。

【豆腐屋の笛】
姉に持たされている笛。壊れていて音が鳴らない。
本人はこんなもの持ちたくないのだが、
姉に渡されたものだから仕方なく持ち歩いているらしい。

「身体スキル」:【俊敏Lv.3】【イケメンLv.3】
「知的スキル」:【性格もイケメンLv.3】【シスコンLv.-2】
「固有スキル」:【アゲンスト・トーフ[魔]】 【手芸者ソウル(未覚醒)Lv.5】
「オプション」:【豆腐屋の笛Lv.1】【豆腐屋の三角巾Lv.1】

魔人能力『アゲンスト・トーフ』

●触れた物体をトーフの様に柔らかくし、形を変えたり、崩したりできる。
性質がトーフに似るため、ちょっと水っぽくなる。
対象に接触してから、粘土のような柔らかさにするまで約0.5秒、完全にトーフ状にするまで約1秒かかる。
対象と体を離してから、5~60秒の間効果が持続し、ある程度任意で調節できる。
どの程度の柔らかさにするかも、任意で調節可能。
水や空気のように流動的なものには、能力は使えない。
タイムラグがあるものの、瞬間的に殴り、電柱を拳の形にへこませる程度の攻撃力は出る。

●効果範囲は、一瞬触れただけの場合、その部分のみ柔らかくできる。
触れ続けることで効果範囲は拡大し、20秒程触れ続ければ、
普通車1台分をトーフのようにできるが、これが範囲の限界。
自分の体をトーフ化することも可能。その場合防御力もトーフ並になる。

●敵からの物理攻撃をトーフ化することもできる。ただし、上記のように若干のタイムラグがあるため、
瞬間的な攻撃には対応しきれない(せいぜいダメージ20%減程度)。
そのため、刀や銃で攻撃されれば普通に死ぬ。
また、パッシブ能力ではないため、奇襲されると対応できない。

●切り離された体の一部も、1分間だけ『アゲンスト・トーフ』の効果を持つ。ただし、毛や体液は除く。

プロローグ

『そうなんだ、俺は…姉貴を…いや…えっと!』
『だ、大好きだアアアアアア!!!!』

 携帯電話から聴こえてくる自分の声。もう何度か、日谷創面はこの録音を聴かされている。
「ぎゃアアアアアアア!!あうあうあーーー!!…や、止めてくれ!呼び出すたびにそれを聴かせるのは!!あーーーあーーー聴こえない聴こえない!」
 創面は耳を抑え、恥ずかしそうに顔を真赤にする。なんてわかりやすい反応だろう。小野寺塩素は軽く差し出していた自分の携帯電話を、手提げかばんにしまう。
「念のため…ですわ。創面様、顔を合わせるごとに、気安くお話になるんですもの。嫌なことはすぐに忘れてしまう性質のようですね、あなた様は。」
 にこり、と小野寺が笑う。その目が淀んでいることに気づかなければ、本当に美人なんだけどな。と創面は思った。最もことあるごとに残念イケメンなどと呼ばれる自分に、言えたことではないが。
「すみませんすみません。わかりました。自分の立場をわきまえていなかった、俺が悪いんです。…で、今回はなんの用だ?」
 希望崎学園の校内、報道部部室近くの人気のない階段前に、いつも通り創面は呼び出された。悪名高い希望崎学園の報道部の近くに、用も無しに近づく生徒などいる筈もない。
 以前、創面と小野寺は他の魔人と共に、とあるミッションを解決するためにチームを組んだ。その時に、先程のシスコン発言をうっかりと創面がしてしまったのが運のつき。
 彼の双子の姉、日谷奴子も希望崎学園の一年生だ。中二病的なツンデレで、シスコンを必死に否定する創面にとって、姉貴大好き発言を報道部の力で広められてしまっては、もう布団から出てくることなどできないだろう。
「ふふ、ふふふふ。実は創面様に、ある大会に参加していただきたいのです………。」
 と、小野寺は一枚のチラシを差し出した。

 …その大会は『SNOW-SNOWトーナメントオブ女神オブトーナメント ~「第一回結昨日の使いやあらへんで!チキチキ秋の大トーナメント」~』というらしい。魔人同士で戦い、見事勝ち進んだ者に優勝賞金1000万がおくられる。結昨日家主催のイベントだ。
「ふーん?俺に戦いか。無理だと思うけど。その大会って、小野寺は関係してるのか?」
「さて…。表向きも裏向きも、一切ぼくには関わりの無いことです。」

 なんだか含みのある言い方だな。と創面は思った。明らかに関係している風だが、バレなければ問題ないのだろうか。
「それで、俺にこんな大会に出てどうして欲しいんだ?死んでも生き返らせてもらえるらしいし、これだったら無理に脅したりしないで、普通に頼めば出てやっても良かったのに。…いや、死ぬのは怖いけどさ。あ、もしかして、優勝賞金がまるまる欲しいとか?小野寺さんの家って金持ちだと思ってたけど…。」
 そもそも自分が出ても、一回戦目で殴られて気絶して負けるだろう。自分に戦いは向いていないが、一応、小野寺塩素はお世話になった先輩だ。困りごとがあれば、脅されなくても力になろうとは考える。
「あら、ふふふ。頼めば出てもらえたのですか?お人好しですこと。ぼくが欲しいのは優勝賞金ではありません。ただ、創面様、あなた様に勝ち上がって頂きたいのです。」
「んー?どういうことだ?」
「以前拝見させて頂きました。あなた様の『アゲンスト・トーフ』。半年前、姉君様を助けるために、覚醒した能力だそうですね。」
「ちょ…!な…!違う!」
 何故そのことが!またしても顔を赤らめながら、創面は報道部の情報力に恐れおののいた。その様子を、小野寺塩素は淀んだ目で見つめる。
「違う!あんな奴のために俺は魔人になったわけじゃねえ!俺は姉貴なんて大嫌いだ!」
「ええ、存じております。」
 表情を崩さずに、小野寺は言葉を続ける。
「それで、その『アゲンスト・トーフ』。どんな固い物も柔らかくできる能力だそうで、ぼくも実際に目にしましたが、ちんぴら(ゴミ)の体をべこりとへこませておりましたね。」
 確かにへこました。あの能力を使えば、たいていの敵の防御力を減らすことができる。
 ただし、一瞬触るだけなら効果は大したことはない。取っ組み合いにでもなれば有利だが、普通に殴りあうだけなら、攻撃力の高い魔人は能力を使わずに人間をべこりとへこませるくらいはできるだろう。
「あの能力は、まだまだ伸びる余地がある…。時価価値はそれほどではありませんが、将来価値があります。」
「ハハハ、悪かったな。時価が低くて。まあ、当たってるけど。」
 確かに、創面が能力に目覚めたのはたった半年前だ。それでも彼は、自分の能力に大した価値も、伸びる余地もあるとは思っていなかった。
 そもそも、創面の自己評価は極めて低い。由緒正しい豆腐屋の長男として生まれながらも、豆腐が嫌いで、いじめられっ子で、手芸者として家を守ることも放棄した自分。
 そのたびに、創面は姉の奴子に叱られ、守られ、慰められた。彼のシスコンは、自分の分身である姉への憧れと、こんな自分を認めてくれる姉への愛から来る、筋金入りの物だ。
「この大会で勝ち進めば、創面様の能力にも、きっと変化が訪れます。…ふふふ、死んでも生き返るんですもの。修行の場としては、最適の場所ではございませんこと?」
「はあ…。」
「それに大会には、他にも多くの魔人がやってきますわ。そこでできるだけコネクションをつくって頂ければ、小野寺証券としましても今大会に出費する価値があるというものです。」
 やっぱり関係してんじゃん!!と思ったが、口には出さなかった。『小野寺証券』だから、関係ないってことだろうか。
「それで、どうでしょうか、参加していただけますか?」
「よくわからんが、俺のためでもあり、あんたのためでもあるってことなんだよな…。」
 あの小野寺塩素と、ここまでウィン・ウィン(?)な取引ができたのは初めてだ。まあ、見た目そう見えるだけな可能性が高いが。
「なら、やらせてもらうよ。どうせ俺には拒否権なんて無いんだし。」
「ふ、ふふふふふ、ふふ。そうですか…。それはありがたい事です。」
 そう言うと、小野寺は懐に手を入れ、一枚の万札を取り出した。
「これは、ささやかな気持ちですが…。」
「……?」
 いや、そんなものいらないよ――
 創面がそう言う前に。
 小野寺は1万円札を持った手を、にこやかな笑顔の横まで持ち上げると、思い切り創面の顔をひっぱたいた。
 パシンッという小気味良い音。
 創面の顔は90度回転し、体はのけぞり、そのまま倒れこんでもおかしくないくらいの衝撃を受ける。
 それは明らかに、一枚の紙切れで起こせる衝撃ではなかった。小野寺塩素。この女、完全にお札で人間を殴るために特化した体術を身につけている。
「………!!」

 とたんに、創面の目がうつろになる。手はぶらんと力が抜け、顔は下を向いたまま上がらない。頭に巻いた三角巾が頭上に垂れる。

「ふ、ふふふ、ふふ。念のため、ですわ。創面様。大会、参加して頂けますね?」
 やさしく、諭すような口調で話しかける小野寺。だが、これは完全な命令だ。
「……。」
 下をむいたままこくりと頷く創面。
 これこそが、小野寺塩素の魔人能力『謀計リスクヘッジ』である。金で他人の心を意のままに操る、最悪の能力。
 創面がわずか1万円で買収されてしまったのは、あくまで客観的に見た金銭価値によるものだが、それには彼自身の自己評価の低さが関係していた。彼自身にもう少し自信があれば、客観的にみて、利用価値のある魔人として値段が上がっていたはずだ。1万円で魔人を奴隷化できるなら、小野寺にとってもなかなかのお買い得だろう。
「さて、創面様、意識を失われておられるようですね。心配はいりません。大会に参加する頃には元に戻ります。今のうちにあなた様の無意識に向けて、本当の『お願い』をさせて頂きますね。」
 また、こくりとうなずいた。
「ふふふふふふふふ。創面様、先程申し上げた『理由』は方便にすぎません。」
「……。」
 小野寺が語りかけるが、『謀計リスクヘッジ』の一時的なショックで自意識を失った創面には届かない。
「あなた様は日谷家の長男。そして、手芸者の末裔。あなた様の体には、あの伝説の≪陶芸≫の手芸者の魂が宿っていると…ぼくたちは調査済みです。もっとも、あなた様自身は自覚されていないようですけれど。」

 手芸者。平安時代より前から存在し、手芸を駆使し暗躍する影の魔人達。
 創面には、創面自身自覚していない手芸者の魂が憑いていた。その魂が完全に憑依した時、創面は手芸者として目覚めることになるはずだが、その方法ははっきりとはわかっていない。
 ただ何件か、戦いで一度死んだ人間が、手芸者として生まれ変わった。という報告がある。報道部しか知りえない、裏社会の情報。小野寺は、その方法を試してみようというのだ。
「この戦いで、何度も傷つき死にかけ、もしくは実際に死んで頂くことで、創面様が伝説の手芸者として生まれ変わること。それがぼくの狙いです。」
 そうすれば、あなた様の魔人としての価値は格段に跳ね上がるでしょう。と小野寺は淀んだ目で語る。
 手芸者のほとんどは、言葉が通じず、取引しようにも姿を目撃することすら困難。ならば、身近な人間を手芸者にしてしまえば良い…。
 伝説の手芸者の魂と、『アゲンスト・トーフ』の体。この駒が手に入れば、護衛だけでなく、様々な姦計に役立つはずだ。それを、わずか1万と少しで買収できるのだ。小野寺の令嬢が、手芸者の一人や二人、手駒として必要としないほうがどうかしている。

「もし、大会で負けて、手芸者として目覚められなかった場合…。もしくは、創面様が棄権されてしまった場合。ふふふ。その時は、ぼく達にも色々と試してみたいことが御座いますので、御心配なく。」
 これは、無意識に向けた脅しだ。平たく言えば、『どんな人体実験もできる準備があるぞ。』という意味の脅迫だ。これで、創面は死ぬ気で大会を勝ち進もうとするだろう。その理由もわからずに。
「では、このお金、どうぞお納めください。創面様、御期待申し上げております。」
 そう言うと小野寺は、今目の前にいる男を殴るために使った万札を、丁寧にその男に差し出した。
 創面はうつろな目のまま金を受け取る。
 すると彼は、おもむろにズボンのベルトを外し始めた。
「………?」
 さすがの小野寺も少し驚いた表情を浮かべる。
 自意識を失った創面はそのまま、かちゃかちゃとベルトを外すと、ズボンをずり下げた。彼がいつも履いている黒い海パンが顕になる。
「……創面様?」
 なんと言うことだ。彼はそのまま、もらった万札をその海パンの腰の部分に突っ込んだではないか!
 不良魔人などに襲われた際、できるだけ肌を露出することで、敵からの攻撃を『アゲンスト・トーフ』で軽減することができる。そのため、緊急時は服を脱ぎ海パン一丁になるのが、彼の戦闘・逃亡スタイルであった。
 創面はその準備として、お金などの貴重品をこそに突っ込む癖があった。自意識を失ってからも、彼はその行動を無意識におこなってしまったのだ。
「………。」
 行動を済ませた創面は、ズボンを履き直し、ベルトを締め直す。

 その様子を、小野寺は完全にゴミでも見るような目で眺めていた。