小宅麗智奈SS(第一回戦)

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dangerousss

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第一回戦第六試合 小宅麗智奈

名前 魔人能力
小宅麗智奈 リアライズフォトグラフ
真野風火水土 イデアの金貨
性懲りも無く蘇りし矢塚一夜 インスタント・テング・ポータル・ジツ

採用する幕間SS
なし

試合内容

希望崎学園写真部副部長小宅麗智奈は女神の力によって転送され、一回戦の戦場となる降り立っていた。

「焼そばはいかがメカ!!」
「一つもらうメカ!!」
周囲からはお祭りを楽しむアキカン達の声が聞こえる。
「ここが戦場…」
事前には聞いていたが、本当にただの夏祭りの会場だ。
参戦を決めた段階ではもっと戦場めいた場所で戦うものと思っていたのだが。
(如何なる戦場でも平常心を持って戦えということかしら)
あり得る話だ。そのためにふしぎではない

そして周囲を警戒しつつその場で祭りの情景を写真を撮り始める麗智奈。
何も祭りの熱気に浮かされているわけではない。
彼女の『リアライズフォトグラフ』は写真に写ったものを具現化する能力である。
であるなら、使える写真は多ければ多いほどよい。
そう考え、祭りの撮影をさらに継続していると
「戦場で写真を撮るとは余裕なのだな」
背後から男の声が聞こえた。

麗智奈が声がした方に振り向くと一人の男が立っていた。
「それともそれが君の魔人能力と関係あるのかな?」
銀縁眼鏡をかけた細身の男、懐のホルスターを除けば一見強そうには見えない。
だが、その身のこなしを見る人が見れば見ればかなりの修羅場をくぐり抜けた実力者であることが分かるだろう。
確か名前は――

「真野風火水土だったかしら」
「君のように美しいお嬢さんに覚えてもらっているとは光栄だ」
「さっきの質問だけど教えるとでも思う?」
「私が君の立場でも教えないね」
「当然よね。じゃあ、始めましょうか。あなたもそのつもりで来たんでしょ」
臨戦態勢に入る麗智奈。
「まあ、待ちたまえ。君に一つ提案がある」
「何よ?」
わざわざ声をかけてきたのは不自然だったとはいえ、てっきり、真野は自分と戦闘をしに来たものと思っていたのだが。
「私と組まないか」
「どういうつもりなの。この試合で生き残れるのは一人だけでしょ」
「正確にいえば休戦の提案だ。この試合のもう一人の参戦者である矢塚一夜を倒すまでの」
「君は天兆五輪菊門御前試合は知っているかね」
江戸時代に時の副将軍圀光行われたという武芸者を集めた試合のはずだ。
麗智奈も名前は聞いたことがある。
「それがどうかしたの」
「それにまつわる文献の中にあの矢塚一夜という男の名前が残されている」
「!?」
天兆五輪菊門御前試合に名前が残されているということは、矢塚一夜はその時代から生きているということであり
さらにいえば彼は天兆五輪菊門御前試合に参加し生き残るに足る実力を持った武芸者であるということだ。
「私も学者としてのツテで知ったことなのだがな。
天兆五輪菊門御前試合の生き残りである以上強大な能力を持っている可能性が高い。」
「つまり、その矢塚一夜を倒すために私と組みたい・・・そういうことかしら」
「そういうことだ」
「・・・そもそも私が彼より強いという可能性は考えないの?」
そもそも今回の大会には各地から腕自慢たちが集まっている。
たとえ無名であっても強力な力を持った魔人がいることは別に不思議なことではない。
そうした
「君のような貧乳の女性に殺されるのなら私も本望だよ」
と本気とも冗談ともつかないこと言う真野。
「・・・気にしてるのに」
と自分の胸をみつめる麗智奈。
「私としては誉めたつもりなのだがな」
真野風火水土は真野一族の魔人である。彼らにとって貧乳という言葉は何にも勝る賛辞の言葉とされている。
逆に巨乳好きなどは唾棄すべき存在とされ発覚次第一族から追放されムラハチとなる。
だが、一般的な価値観を持つ麗智奈にそれが通用しないのは仕方のないことだろう。
「まあいいわ。協力してあげる」
麗智奈をけしかけて漁夫の利を狙っているのかもしれないが、矢塚一夜もどうせ戦わなければならない相手だ。
それに麗智奈としてもこの試合が中継されている以上できれば自分の手の内は見せたくない。

二人の意思が一致したその時、突如銃声が鳴り響き銃弾が真野の頬をかすめた。
当然発砲の主はもう一人の参戦者である矢塚一夜である。
それを受けて周囲の遮蔽物の裏に隠れる真野と麗智奈。
だが、その判断は甘いと言わざるを得なかった。
なぜなら、一夜の持つ西門九五式回転式逆鱗拳銃専用の弾丸である.357逆鱗弾はその遮蔽物を貫通し、その背後にいた真野の左肩を撃ち貫いていたからだ。
「ぐっ・・・」
左肩の痛みをこらえ、拳銃を握り、一夜に撃ち返す真野。
だが、その弾丸は一夜に届くことはなかった。
そして麗智奈はその情景から一夜の位置を見定めようとする。
そうこうしているうちに一夜の放った銃弾の一つが屋台の横に積み上げられたボトルクレートを貫通し、その裏にあった調理用ガスボンベに直撃した。
ガスボンベはそのまま爆発し、屋台を火に包む。
そうして爆発・炎上した屋台の火の粉はさらに広がり、隣の屋台にも誘爆していく。

「メカー!!」
炎と流れ弾から逃げまとう祭り会場はアキカン達の阿鼻叫喚の声に包まれる。
(このままだと私もあぶないわね…)
いくら反射神経が合ってもさすがにガス爆発に巻き込まれたら死ぬ。
そうでも無くても周囲が炎上する中で戦うのはこちらが不利だ。
一度どこかへ退避すべきだろう。
そう判断した麗智奈はフライトユニットで上空に退避することにした。

上空にあがった麗智奈はそのまま地上にいるはずの一夜を探すが見つからない。
既に逃走してしまったのだろうか。
(いくらなんでも消えるのが早すぎる気はするけど)
しかし、相手は強力な力を持った魔人であると思われる。
それぐらいできても不思議ではない。

(それにしても酷い光景ね)
先ほどの銃撃戦の余波で楽しいお祭りの会場が地獄と化してしまった。
そして、こんなときにシャッターを切ってしまうのは報道カメラマンとしての性質なのだろうか。

そういえば真野はどうしたのだろうか。
本来は敵なのだから心配する義理はないのだが、さりとてああいう約束をした以上無視する気にもなれない。
それに一夜がどこにいるのか分からない以上、真野の方を当たるのも一つの手だろう。
「もうすぐ時間が来るし、一度降りてみるしかないわね」
フライトユニットの連続稼働時間は約10分間であり、それを超えると冷却時間が必要とされる。
ゆえにどちらにせよ一度降りるしかないのだ。
そうして降りた道を見ると神社の方に血が続いている。先ほど負傷した真野の血だろうか。
「これをたどってみましょうか」
麗智奈は神社に向かうことにした。

たどってきた血は神社の本殿に続いていた。
「やっぱりここにいるみたいね」
一夜の方もここにいるのだろうか。
わからない以上警戒するべきだろう。真野にしても本来は敵なのだ。
二人が組んでいて罠にはめられたという可能性も否定はできない。
そして麗智奈は神社の本殿に入り込む。
その中には、一夜と胸から血を流し倒れている真野の姿があった。

「危ないところやった。あそこでああ来るとは思ってなかったからなー。せやけど、生き残ったのは俺なわけや」
そう言った一夜は麗智奈に気付くとそちらの方に顔を向ける。
「お前もここへ来たんか。まあええここで決着付けようか」
その言葉とともに西門九五式回転式逆鱗拳銃を麗智奈に向ける一夜。
そして引き金を引く一夜。放たれた銃弾が麗智奈に向かう。
だが、麗智奈は銃弾を軌道をすべて見きり、すでに射線から外れていた。
「遅いのよ」
「ちっ」
拳銃に篭められた弾が切れたのか、舌打ちをして逃走する一夜。
「待ちなさい」
麗智奈は逃走した一夜を追うが簡単には距離が縮まらない。
フライトユニットを使えば追いつけるが相手の能力が分からない以上必要以上の使用は避けたい。
そうして曲がり角にたどりついたとき、矢塚一夜の姿は消えていた。

(逃げられた?)
いやそんなはずがない。確かにこちら側に曲がったし、ここは行き止まりになっている。逃げられるはずがない。
麗智奈が目のまで起きた現象を疑問に思っているとき
西門九五式回転式逆鱗拳銃を構えた一夜が反対側から現れた。
「な!?」
いつの間にか背後を取られていた。
(どこかで道を見逃した…いいえ、違うわね)
つまりこれこそが矢塚一夜の能力。
真野の話から時間操作能力であると考えていたため気づくのが遅れてしまった。
そして再び鳴り響く銃声。
銃弾が麗智奈に迫る。
「だから遅いっていってるでしょ」
そういって回避しようとした麗智奈が振り返ると背後にいつの間にか赤色のポータルが、そして右側に青色のポータルがいつの間にか出現していた。
そのまま、青色のポータルに残った弾丸を撃ち込む一夜。
そうして撃ちこまれた弾丸は麗智奈の背後の赤いポータルから出現し麗智奈に迫っていた。
(両方から!?)
つまり、先ほどの瞬間移動もこの能力を使って行っていたということなのだろう。
(まだ回避は可能なレベル…けど)
いくつまで出せるのかわからない。拳銃に弾を装填する必要があるとはいえ、全方位から攻撃されるとじり貧になりかねない。
現状大量に出さないあたりこれが限界なのかもしれないが
(なら、強引に行く!!)
フライトユニットを再稼働させ、カメラを構えつつ全速力で上空を突っ切る。完全には避けきれなかったがまだどうにかなるレベルだ。
スピードを上げすぎたため一夜から離れてしまったが仕方がない。
再び態勢を立て直し、地上に降り立つ。
そして一夜も再び装填し直した逆鱗弾を手に麗智奈を追撃する。
また放たれる弾丸。
麗智奈は拳銃ぐらいならよけきれる。とはいえ、このままではきりがない。

このまま泥仕合か。
二人が、そう思った時、いつの間にか一夜は周囲をアキカンにかこまれていた。
「こいつが屋台で大暴れしてたやつメカ」
「メカー!」
銃撃によって祭りに大きな被害を与えたことでアキカン達の怒りを買ってしまったのだ。
そしてアキカン達は一夜に襲いかかったのである。
「やめろアキカンども。俺の邪魔をするんやない」
蹴り飛ばそうとするが数が多すぎる。
一体は弱くとも数が多いとうざいしどうにもならない。これが俗に言う無限モヒカンの法則である。
「ま・・・まずい、ここから離れんと」
ポータルを出し逃走を図ろうとするがアキカン達が邪魔になり、逃げきれない。
その間に麗智奈は一夜に接近する。
「くっ、くそぉぉぉぉ!」
苦し紛れにククリを振りおろす一夜。
「遅いわよ」
だが麗智奈はそれを華麗に回避し一夜の腹に拳をたたきこまれる。
「ぐぼぁ」
怯んだ一夜の頭部にさらなる追撃の蹴りを叩き込む麗智奈。
その勢いで吹っ飛んだ一夜は神社の壁に叩きつけられ意識を失った。
「やったメカ。お祭りを妨害する悪は滅んだメカ」
「勝利メカ」
実のところ大会の参加者である以上麗智奈も原因であるのだが、そんなことを知る由もないアキカン達は素直によろこんでいる。
「これで一回戦終了か・・・」
疲労のせいか闘いの緊張が解けたのかそのまま座り込んだ麗智奈は空を見上げる。
夜空には麗智奈の勝利を祝福するように花火が打ち上げられていた。


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