24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/30(土) 23:12:01.08 ID:Y0eUsOfU0
未知の星系の未知の惑星の上空に滞空するヴェネター級スター・デストロイヤーの艦長は、
眼下に広がる光景を見てほくそ笑んでいた。

彼にとって今回の任務は不可解なものであった。
コアだとかアウター・リムだとか言う区別が馬鹿馬鹿しくなるほどの彼方にある惑星に赴き、
ある集団の行う捜索活動を援助せよ、というものである。

彼は十人弱のその集団が、ロイヤル・ガードと呼ばれる皇帝直属のエリート近衛兵であること
は知っている。
全身を真紅のローブとマスクに包んだ恐ろしく不気味な連中で、長い航海の間も訓練を欠か
さない。

しかし、彼らが未知の惑星で何を探そうとしているのかについては、まったく知らされていな
かった。
一隻のヴェネター級スター・デストロイヤーを任され、軍人としてはかなり高い地位にある彼
にも、ロイヤル・ガードの全貌はわからない。
だがおそらく、彼らに勝てる人間がいるとすれば、既に壊滅したジェダイの騎士たちだけで
あろう。

そして、五十人に満たないロイヤル・ガードの構成員の内十人近くも事に当たるということは、
彼らの探し物がよほど重要な物であるということである。
あるいは、よほど重要な人物か、だ。


29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/30(土) 23:18:45.83 ID:Y0eUsOfU0
一方で彼は、皇帝から下された指令以外にもう一つの任務を帯びていた。

彼にその任を依頼してきた人物の名はウィルハフ・ターキン。
こちらも掛け値なしの重要人物である。
帝国にとっても、彼にとっても。

ウィルハフは共和国から帝国へと体制が移行する中でめきめきと頭角を現してきた人物であり、
敬意を込めて『モフ・ターキン』と称号付きで呼ばれている。
就航したばかりのインペレーター級スター・デストロイヤーを拝領しただけでなく、アウター・
リムにおいて極秘裏に進められている、ある途方もない新兵器の建造を任されているらしい。

そのモフ・ターキンが、彼に仕事を依頼してきたのである。


32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/30(土) 23:21:13.72 ID:Y0eUsOfU0
ターキンによれば、新兵器の建造は人手不足という最も根本的な問題を解決できずに、なか
なか思うように進まない、とのことであった。
優秀な技師としてキャッシークのウーキーたちの徴集を目論んでいるとのことだが、その下で
雑役をこなすべきマンパワーが致命的に足りないのである。
だが、地盤固め真っ最中の新帝国の領内からは、皇帝の許可なく大規模に労働力を徴発する
わけにもいかない。

そこで、未知の星系に向かって船出する『彼ら』に話が回ってきたわけである。


38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/30(土) 23:26:48.14 ID:Y0eUsOfU0
彼にしても、ターキンが自前で調達した労働力で皇帝の評価を勝ち取ろうとしていることくらいは
わかる。
そもそも皇帝にしてからが、政治と軍事の双方の顧問たちが互いに争うことを奨励している節が
ある。

しかし彼の立場上、今モフ・ターキンに恩を売っておくのは悪い話ではなかった。
既に初期生産分のクローン兵の老化が始まっている。
彼自信も、クローン大戦末期に採用された人間の士官である。
実力者の覚えは、めでたいに越したことはない。

ターキンからの依頼は、万一未知の惑星に人間が住み着いていたら、労働力としてできるだけ
多く確保してきてほしい、というものである。
過酷なノルマをこなすため、連行された人間はまさしく奴隷のごとく使い捨てにされるのだろう。

だが、膨れ上がった野心に押しつぶされた彼の良心は全く痛まない。


47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/30(土) 23:36:39.36 ID:Y0eUsOfU0
この星の原住民は、文化レベルは低いものの相当の数がいるようで、労働力としては申し分
なさそうだ。
手始めに彼は、戦争をしている現場に艦を降下させ、双方に攻撃を加えることにした。
原住民にこちらの力を思い知らせるには、戦争中の軍隊をどちらも壊滅させてやるのが一番
だ。
完全武装の軍勢があっという間に圧し潰されたことがわかれば、原住民たちも抵抗する気を
失くすだろう。

レーザー砲による露払いに続き、艦内から次々にファイターやガンシップが発進していく。
あの程度の原始的な軍隊、すぐさま全滅させられる。
既に彼は、どれくらいの原住民を連行していくかについて考えをめぐらせていた。


彼はもちろん知らない。
この宙域に派遣されたスター・デストロイヤーは全部で四隻あり、他の三隻は脱落してハイ
パー・スペースの狭間を漂流していることを。
彼の艦がここまで辿り着けたのは単に運が良かったおかげなのであり、皇帝やターキンに
とっては、彼もまた使い捨ての駒に過ぎないということを。

そして、モフ・ターキンが拝領したインペレーター級スター・デストロイヤーには、同時期に竣工
した姉妹艦があり、その持ち主となるはずだった人物がこの惑星にいることを……。


51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/30(土) 23:40:18.52 ID:Y0eUsOfU0
「べ、ベイダー! なな、何よ……何なのよ、あれ!?」
スター・デストロイヤーの威容を目の当たりにしながら、ルイズは辛うじて声を絞り出した。

二人を乗せたハリアーはぐんぐん戦場から遠ざかっている。
振り返れば、突如現れた超巨大戦艦から無数の機影が吐き出され、アルビオン艦隊に襲い
かかろうとしているところだった。
まばゆい光と共に、次々と戦列艦が撃沈されていく。

「ねえ、ベイダー!」
その恐るべき光景に、ルイズは金切り声を上げて身を乗り出した。

座席越しに見れば、ベイダー卿はほとんど操縦桿に手を触れることもなく、計器類にかがみ
込むようにして、なにやらゴソゴソやっていた。
その様子があまりに真剣そのものであったため邪魔をするのがためらわれ、ルイズはいつしか
その背を見守る形になっていた。


52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/30(土) 23:42:56.99 ID:Y0eUsOfU0
どれくらいそうしていただろうか、ベイダーは小さく頷くと、再び操縦桿を握り直し、機首を反転
させた。

「ベイダー?」
ルイズは恐る恐る声をかける。
ベイダー卿は振り返らずに応えた。

「ルイズ、これから僕が言うことをよく聞くんだ」


61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/30(土) 23:46:36.18 ID:Y0eUsOfU0
混乱を極める戦場で、トリステイン軍の指揮を取るアンリエッタは恐怖に震えていた。

謎の竜がアルビオン軍の旗艦に大打撃を与えた時、トリステイン軍はにわかに訪れた勝利の
予感に沸き立った。
だが、それもほんのひと時のことだった。
続いて空から降り注いだ閃光に巨艦が撃沈され、無数の飛行物体が残存の敵艦隊に攻撃を
加え始めるや、敵の上陸軍だけではなく味方まで完全に浮き足立った。
それほどまでに圧倒的な光景だったのである。

「殿下、退き時かも知れませんぞ」
マザリーニが声を失っていたアンリエッタに耳打ちした。
アンリエッタは強張った表情で頷き、退却の指示を出そうとした。

しかし、それは遅すぎた判断だった。
アルビオン艦隊の全艦を瞬く間に爆散させた謎の勢力が、次なる目標を地上に展開する両軍
に定めた。


63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/30(土) 23:52:47.98 ID:Y0eUsOfU0
戦場に舞い戻るハリアーのコクピットの中で、ベイダー卿は言葉を継いだ。
「僕はおそらく、何かの間違いでこの星に召喚されたのだろう。本来きみを守るべき使い魔が
他にいるはずだ」
そう言って、ベイダー卿は左手のグローブを脱いだ。
それまで光っていた甲のルーンが、途端に輝きを失う。

「僕の予想では、僕がこの世界から消え失せればそのルーンも消える。それを確認したら、
改めて『サモン・サーヴァント』の儀式を行うといい」
ハリアーが加速したため、再び座席に身を収めたルイズは、その言葉に驚愕し、かすれた声を
上げた。
「な、何言ってるのよ、ベイダー!」
だが、ベイダー卿はしばらくグローブをいじってから、それをルイズの方に投げてよこした。
ずしりと重いそのグローブを、ルイズが両手で辛うじて受け止める。

それを確認するでもなく、ベイダー卿は繰り返した。
「きみを守るべき者が、きっと他にいる」

ルイズは思わず片耳に指を突っ込んだ。
上昇と下降を繰り返してきたせいで、気圧の変化で耳がおかしくなったのかと思った。
ベイダーの声が、まるで二人の人間が同時に喋っているかのように、ダブって聴こえていた。

一つは今までどおりのくぐもった合成音。
――そしていま一つは、若者のものらしい爽やかな美声だった。


72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/30(土) 23:57:49.55 ID:Y0eUsOfU0
ベイダーが背もたれ越しに振り返る。
ルイズは息を呑み、今度は目をこする。


不気味な黒いマスクがぼうっと透け、その下に金髪の青年の顔を見たような気がしたからだ。

よく整いつつもどこか野生的な雰囲気を漂わせる、美しいといってもいい風貌だった。


79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/01(日) 00:04:36.67 ID:7/hOjcfQ0
「操縦の仕方はそこの剣に聞くといい」
一瞬ぽーっと見とれていたルイズは、その言葉で我に帰った。

「え、ベイダー?」
「おい、相棒?」
ルイズとデルフリンガーが、素っ頓狂な声を上げた。

ベイダーは続けた。
「ルイズ、僕がいなくとも、きみはきっとこの星に名を残すような素晴らしいメイジになる。フォー
スがそう告げている。それから……、タバサやシエスタたちにもよろしく頼む」
それからベイダー卿は自動操縦に切り替え、速度を落としてキャノピーを開いた。

「ちょ、ちょっとベイダー、どこに行く気よ!」
吹き込む風に髪をなぶられながら、ルイズが叫ぶ。胸の中で嫌な予感が頭をもたげ、半分
涙声になっていた。

タイミングを計りつつ、ベイダー卿はルイズの方に顔を向けた。
また、あの青年の顔が浮かんでいた。


83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/01(日) 00:06:57.34 ID:7/hOjcfQ0
「ルイズ、きみには僕の本当の名前を教えておこう。僕はアナキン。ジェダイの騎士、アナキン・
スカイウォーカーだ」
そう言ってから、アナキンはコクピットの縁に手をかけて乗り越え、硬直したルイズの眼前で、
虚空に身を躍らせた。

「ベイダー!」
阿鼻叫喚の様相を呈する戦場に、ルイズの悲鳴が響き渡った。


94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/01(日) 00:12:44.83 ID:7/hOjcfQ0
自由落下しながら体勢を整えるベイダー卿は、パドメと再会したコルサントの夜を思い出して
いた。
あの夜もこうやって、高速で飛翔するスピーダーに飛び移ったものである。

目標のVウィングがぐんぐん近づいてくる。ガンシップによる地上攻撃をサポートするために、
速度を落として警戒飛行を続けている。

恐怖はない。
フォースの導きに身を委ねるだけだ。

両者が交錯する刹那、ベイダー卿は手を一杯に伸ばし、その機体の後部に取り付くことに
成功した。
瞬間的に腕が抜けそうな痛みが走ったが、フォースの助けを借りてどうにか堪える。

突然の衝撃に、Vウィングのパイロットは狼狽したようだ。
速度を上げ、機体を揺すって振り落とそうとするクローン兵だったが、ベイダー卿の機械の手は
万力のようにそのボディを掴み、決して放さない。

パイロットは速度を落とし、キャノピーを開いて身を乗り出した。
その手にはブラスターが握られている。

ベイダー卿は片手を離してライトセイバーを抜いた。


104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/01(日) 00:19:43.46 ID:7/hOjcfQ0
「ジェ、ジェダイ……!?」
ライトセイバーを目にして戸惑いながらも、パイロットがブラスターを連射する。
ベイダー卿はその弾を光刃で弾き返した。

偏向された光弾の内、一発目は若干狙いを逸れ、ファイターのコクピット内に飛び込んで
小さな爆発を起こした。
二発目は狙いたがわず撃った本人の胸に突き刺さり、クローン兵は悲鳴を残して地上に
落下していった。


107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/01(日) 00:23:31.52 ID:7/hOjcfQ0
ベイダー卿は操縦士を失いながらもオート・パイロットで飛ぶVウィングの胴体を伝い、コクピット
に転がり込んだ。
どうにか操縦席に体を収め、パネルに手を伸ばす。

が――

「何てことだ……」
肝心要の通信機が、ブラスターの弾で破壊されていた。
これではスター・デストロイヤーに呼びかけて、攻撃中止を命令することができない。

ならばこのファイターで直接母艦に向かうか――そう思案しつつ自動操縦を切るベイダー卿の
視界の隅で、ガンシップが次なる目標をラ・ロシェールの街とトリステイン軍に定めるのが見て
取れた。


113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/01(日) 00:28:01.34 ID:7/hOjcfQ0
一瞬逡巡する。
このまま母艦に戻れば、攻撃を中止させることができるだろう。

だが、おそらくそれでは間に合わない――ベイダー卿の脳裡に、たった二度会っただけの
アンリエッタの面影がくっきりと浮かび上がった。


「ネヴァー……!」
上昇させかけた機体をロールさせ、機首を反転させる。

全銀河に鳴り響いたスカイウォーカーの名を、再び轟かせるべき時が来たのだ。
最終更新:2007年07月01日 02:45