レイアウトのDCC化

DCCが鉄道模型の走行を高度化するための仕組みである以上、レイアウトも当然DCCに対応させることになる。従来のアナログレイアウトをほとんどそのまま使うことももちろん可能ではあるが、できればせっかくのDCCメリットを生かすレイアウトに手直ししたい。

レイアウトへの給電

基本的には全線路に常時給電する。
ギャップも通常は不要で、レイアウト全体にフィーダー1ヶ所でも機能するが、レールやその接続部での抵抗は意外に大きく、電圧降下によるトラブルもあるので、中規模以上のレイアウトには適宜フィーダーを増設する。
DCCの線路電源は交流であるが、直流アナログと同様に、リバース線やデルタ線を構成するときにはショートすることになる。これを回避するのがオートリバーサと呼ばれる装置で、車両通過時のショートを感知して自動的に線路の極性を反転してくれる便利な代物。これを使わない場合は従来の直流アナログ同様、手動スイッチでの極性切替が必要となり、せっかくのDCC運転の魅力が減じられることになろう。

基本的に給電配線はアナログに比べ簡単なのだが、電源容量が格段に大きい点には注意を要する。
レイアウト全体に数編成の列車を走行させることのできる電源容量はNゲージの場合でも最低3A、HOなら5A程度は必要だが、これだけの大容量を持つ電源でを常時給電しておくということは、脱線によるショート等のトラブル時にもやはりこれだけの大電流が流れてしまう危険をともなうことになる。すなわち、半田鏝並の30W以上の電力が、ショート箇所で消費されることになり、台車や車体の溶解焼損、最悪のケースでは火災にまで至る可能性もある。
これを防ぐため、あえてギャップを切って給電制御装置(DigitraxならPM42等)を導入することで、ブロックごとの電源容量を制限し、大容量の電源を使う危険性を回避(ショート等の際に電流を分散できる)することができる。同時にこの装置には在線検知や前述のオートリバーサ等の機能もあり、規模の大きなレイアウトには必需品である。

ポイントのDCC化

アナログレイアウトでは、電動ポイントの駆動電源は走行用の線路電源とは別の専用電源を確保する必要がある。言い換えればポイントの駆動回路と線路回路はまったく別個のものであり、分けて構築する必要があった。このことから、従来のアナログレイアウトを所有している人が車両制御にDCCを導入したからといって、いきなりポイント制御も全面的にDCCに置き換える必要はないということになる。事実、大規模レイアウト所有者の多い欧米では、車両はDCC、ポイントはアナログというファンもまだまだ多い。
しかしDCCシステムにはポイント駆動用のアクセサリデコーダもあり、すでにアナログレイアウトを所有していても、できれば少しずつでもDCCに置き換えていきたい。
DCC化することにより、線路から得るDCC信号でポイントをコントロールすることができるため、レイアウトの制御盤と本体との配線が劇的に簡単になる。KATO製ユニトラック・ポイントのように消費電力が小さいポイントマシンを使っているなら、ポイント駆動の電源を線路から得ることもできる。また車両コントロール用のキャブにはポイントコントロール機能がついていることが多く、中小規模のレイアウトならわざわざ場所をとる制御盤を設置しなくても、全ポイントをコントローラ一台で制御できるようなる。

ただし、鉄道模型で一般的に使われる電磁石式のポイント駆動装置は、必要電流がかなり大きく、駆動電源を線路から得る場合には線路給電の電源容量をよく検討しなければならない(このためポイント駆動電源を別に供給する設計のデコーダも多い)。また最近一般的になりつつあるモーターを使ったスローモーションポイント用には、電磁石用とは別種のデコーダが必要となることもあり、デコーダ購入時には注意を要する。なお、KATOユニトラックやTOMIX等の国産ポイントの多くは、直流の極性によりポイントの開通方向を選択する機構になっているが、これは電磁石を2組用いる欧米式ポイントとは駆動方法が異なる。これらのポイントは一般にスローモーションポイント駆動機能を有するデコーダを使って制御することになるが、特にTOMIX製ポイントマシンは必要電流が大きく、モーターを駆動するために設計されたスローモーションポイント用デコーダでは転換できない場合が多い。このため、TOMIX製ポイントを改造し、通常の2組電磁石タイプとして使うこともある。

ポイントのDCC化にあたり、ポイントを非選択式に改造ないし設定しておけば、ポイント分岐先に別にフィーダーを設置する必要がなくなる。また、スプリングポイントは常時全線路通電のDCCには扱いやすく都合がいいが、配線には工夫を要する(フログの極性転換問題)ことがあるので注意。

車両検知とフィードバック

レイアウト上の各種情報を離れた制御盤のところでも知りたいというケースは少なくないが、DCCシステムの導入によりこれが簡単にできるようになる(フィードバックと呼ぶ)。具体的な情報の例としては、特定線路区間上の列車の有無(在線検知)、列車のセンサー通過、ポイント開通方向等が考えられるが、これらの情報は、メルクリン社のデジタルシステムで使われてきたS88バスといった専用のフィードバック・バスを使ってDCC制御機器(コマンドステーションキャブ)側に送られる。
また最近は、双方向通信等による高度な情報交換機能も得られるようになった。従来の単なる「車両の有無、または通過」だけの検知だけでなく、その車両のアドレスや種別まで検出できるような機能(トランスポンディングRailComLISSY等)も徐々に普及が進み、高度な自動運転やパソコン制御ができるようになっている。
なお、車両検知機能についての詳細は別項

レイアウト上のアクセサリへ給電

DCCでは線路は電源として使われるため、これをレイアウト上のライト等アクセサリやギミックに使うこともほとんど問題ない。もちろん消費電力には細心の注意を払う必要があるが、時間とともに点灯していく建物照明、回転する水車や風車等が簡単に実現できるのは、常に一定電圧が線路から得られるDCCのメリットのひとつと言える。(ライト・コントロールについては別項参照)
なお、HOやNでは一般的にはDCC電源=12Vとされているが、実際にはもう少し高い電圧で給電されている(14V程度)ことが多いことには注意を要する。DCCの最大電圧は22Vなので、整流等には耐圧25V前後のものを使うことが望ましく、またLED等に印加する電圧を一定にするため定電流素子を使う等して、過電圧によるアクセサリの破損を防ぐ必要がある。



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最終更新:2007年09月20日 16:06