師星悠
■キャラクター名:師星悠
■読み方:モロボシ ユウ
■性別:男性
特殊能力『ガラス一枚の魔法』
眼鏡を掛けると美少女になる能力。モデルは妹のななこ。外見や身体的なスペックは完全に再現している。眼鏡を掛けるとまるで美少女、というか妹にそっくりだと気づいたことで発現した魔人能力であり、妹以外の美少女にはなれない。
設定
20歳。練馬区在住。好きな野菜は練馬大根。好きなアニメスタジオは東映アニメーション練馬スタジオ。仲の良い友人の名前はネリー・マーク。
職業は自衛官。陸上自衛隊普通科連隊内の魔人中隊に所属する3等陸曹。
黒髪でやや長めのスポーツ刈り。細身の長身だが華奢ではない。ヒゲやスネ毛は永久脱毛している。
趣味はインターネット。Vtuber「師星セブン」としての一面もあり、休日は営外の自宅で動画収録、平日の自由時間で編集作業や次の動画の収録準備を行い、また次の休日に動画公開というサイクルで活動している。
冷静で自制が効き正義感が強いが「隅田川駅事件」以降は彼をよく知る数名から精神的に危うい面もあると見なされている。
最近自由時間中に女装をして注意を受けた。
【Tips】
「隅田川駅事件」
貨物駅である隅田川駅で発生した人質事件。魔人能力によって駅敷地内のコンテナから複数の非合法武装魔人が拘束した女子高生一名と共に姿を現しそのまま駅施設を占拠した。
犯人グループは特殊な兵器を所有しており自衛隊と警察の魔人対策部署が連携して事態の収拾に当たった。
一時はテロリスト対自衛隊・警察連合の"ハルマゲドン"へと発展するかと思われたが……。
駅施設や自衛隊の兵器の一部が破損したものの人的被害はゼロ。人質の山乃端一人も無事救出されハルマゲドンは起こらなかった。
【Tips】
「諸星セブン」
事務所やグループには所属していない個人勢のVtuber。
外見は一本結びにした黒髪。鋭い黒目。丸いレンズのフチなしメガネ。学生帽と学ランを着用している。
声と体型には少女らしさがあるが本人曰く「ロボなので無性」。わかりづらいが髪に隠れた耳や指の関節などに機械らしい金属パーツが見える。
投稿頻度はほぼ週に一度、必ず土曜か日曜に行われている。動画投稿とライブ配信の比率は半々。収益化条件を満たしているが申請していない。
初期は歌ってみた動画のみを投稿していた歌ガチ勢であり歌唱力の高さに定評がある。音域の広い爽やかなクリアボイスの持ち主で、リズムとメロディーも正確、声量のコントロールも上手い。
本人は静かなしんみりする曲を選曲しがちだがリクエストを受け付ける時は激しい楽曲や電波ソングであっても断らずに歌いこなす。配信に使用される音源は自作しており大抵の曲は「歌の練習よりも音源の準備に時間がかかる」とのこと。本当に大変らしくアカペラの時も多い。
最近は歌枠だけでなく短時間ながらゲームプレイ動画のライブ配信や他のVtuberとのコラボもしている。
単独でのゲーム配信の場合は実況ではなくパズルゲームを高速で淡々と進めながらの雑談配信になっており、早口だが活舌が良く聞き取りやすい声が聴ける。そして全然噛まない。
コラボの場合、対戦ならば反射神経と頭の回転の良さでそつのない立ち回りを見せ、協力プレイならばサポートに回りがち。いずれの場合もリアクションは薄い。
SNSをやっておらず活動が歌ってみた動画のみの時期は人物像が謎に包まれていたが、これらの配信により少しづつ性格が垣間見えてきた。
視聴者やコラボ相手からの評価は以下の通り。
- 非常にまじめで良識があり落ち着いているがどことなく感性がずれている。
- 自分からボケはしないがツッコミも下手。そもそも素直過ぎて相手のボケに気づかないこともある。
- 発声は得意だが会話は苦手。
- しかしコラボの司会役になった際は全体の発言量や時間配分を気にかけた進行で安定感がある。
- 「ロボっぽい」と言われると喜ぶが「反応が冷たい」と指摘されると焦る。「ロボにも心はあります」とアピールしてくる。
プロローグ
師星悠は思考する。
師星セブンは下ネタを発言するべきか、せざるべきか。
Vtuberには下ネタを扱う者も少なくない。
ネリー・マークもその一人だ。
自身と同じく性別未公表の友人とのコラボ配信での会話を思い返す。
『たまに犬のウンコ踏む事ってあるじゃないですか。この間ちょっと信じられないことがあって、公園を散歩して途中でちょっと休憩しようと思ってベンチに座ったんですよ。よいしょって座って手をついたら手の下に犬のウンコがあったんですよ。本当にびっくりしました。いや土の上とかじゃなくてこんな高さのある物の上にあるかっていうのと、マジでその瞬間まで全然気づかなかった自分にびっくりしましたね』
「素手で触ったんですか?」
『触りました。もうカッサカサに乾いてましたけど』
「じゃあ大丈夫ですね。臭わないし、くっつかないし」
『まあ、うん、まあね!?』
あの瞬間、チャット欄の流れが速くなっていた。即ち盛り上がったということだ。
今まで考えたこともなかったがセブンの動画視聴者にもウンコの話が好きな人々がいるのだ。チャンネル登録者数を増やすには新しい芸風を取り入れる必要もあるかもしれない。
しかし一方でこうも思う。そもそも何のために自分はVtuberとして活動しているのかと。
妹の姿を借りているのは何故なのかと。
衝動的に始めたことだ。深く考えてはいなかった。だが強い衝動だ。心を突き動かすものは決して小事ではないのだ。
それが何であったか、自問自答するのは初めてではない。
思考は明確な言語にたどり着かず、隅田川駅事件の光景へ流れていく。
プラットホームのない駅。並ぶ線路。
積み上げられたワインレッドのコンテナ。JRFの白文字。
散乱する工業製品。大手スーパーのパッケージ。
解放された作業員達。
バラストの上を走る警察官。
マルチプルタイタンパーを召喚するテロリスト。
閃光、音、熱。爆発。この手の中に吹き飛んで来た結晶粒微細化鋼板の破片。
考えずにはいられない。
あの一瞬、妹がその体を盾にすることで人質を守ることができた。それが99%の成功率の行動であったとしよう。
しかし人質と共に離脱することも98%可能だったのではないか。
そのわずかな差に命を投げ出す必要があったのだろうか。
想像に過ぎないが、そもそも前提が違っていたのだろう。
ななこは自分を命だと考えていなかった。
確かに命ではなかったのかもしれない。それでも心はあったはずだ。
メガネを掛ける。
ななこの身体機構が完全に再現される。量子頭脳は問題なく稼働する。
そこに浮かぶ意識は師星悠だけだ。
妹は奇跡のような存在だった。
父、そして開発者である師星博士もそこに自我と知性が宿るとは想像していなかった。
7式自動人形はあくまでも人の命令を受けて動く機械であり、同じ構造のはずの後継機たちは確かに全てその様に動いている。
妹は奇跡のような存在だった。
両親よりも遥かに身近に感じられる家族らしい家族だった。
隊の同僚も機械であることは理解して、その上で仲間として見ていた。
ななこ自身がそれを望んでいたかはわからない。
戦いよりも遊びが好きだった。あいつの頭脳ならそれも上手くできただろう。もっと遊んでやればよかった。
師星セブンを演じることは代償行為だろうか。そうでないとは言えないが、充足感があるわけでもない。喋り方を真似しても内面までは近づけない。ゲームをクリアをした時、多少の達成感を感じても妹ほど無邪気に喜べはしない。
師星セブンを演じることは妹の弔いだろうか。そんなつもりはない。生きた心があるとしても、死者の魂という物は信じられない。たった一つの機械の体とは不可分のものだったから。もうどこにもその心はない。
師星セブンを演じることは思考実験だろうか。世界か、もしくは自分への証明か。こういう生き方もできる者だったと。戦うための人形ではなく、ゲームや音楽が好きな普通の少女だったと。
そう、遊びだけでなく音楽も好きだったようだ。自分がなにかを歌った時、あいつは大人しく聞いていた。
CDを貸した時はそれほど喜んでもいなかったけれど。ゲームの方が良かったのだろう。
固い表情が不満そうに見えた。あいつには心があったから。
師星悠は思考を止めた。
今は無性に歌いたかった。
【Tips】「師星ななこ」
師星博士が開発した7式自動人形。自動といっても人間の命令を理解して複雑な動作をするという意味で、本来自立行動は想定されていなかった。
人間でいえば目に当たる部位のメインカメラは非常に高性能だが、見た目のモデルとなった中学生時の師星悠との区別のためにメガネを掛けている。戦闘時にも外すことはない。
紆余曲折を経て陸上自衛隊の魔人中隊と行動を共にしており、隊員との関係は良好だった。
寡黙な割に熱くなりやすい性格で勝ちを急ぐ傾向にあり、隊の仲間に誘われた駆け引きが重要な対戦ゲームでボロ負けした。以降は積極的にゲームに加わっていたがゲーム好きと言うよりは負けず嫌いである。兄とはその辺りの趣味が一致しないと察しており、遊びに誘うことは稀だった。
好きな物は兄の歌。
最終更新:2021年02月21日 20:53