拳条 朱点

■キャラクター名:拳条 朱点
■読み方:けんじょう しゅてん
■性別:男性

特殊能力『地水火風空(いつつがさね)』

朱点率いる魔人ではない5人で行う从術の基本的な陣形
地は相手の攻撃を受け止め味方を守り
水は受け流し、変幻自在に味方に繋げる
火は攻撃し、どんな状況でも味方のチャンスに変える
風はスピードを生かして味方をカバーし、敵を逃さない
空は適切な判断で指示をだす从術の要、故に最も从術の練度が高いに人間が位置する

設定

「正義になれ」

故人
拳条朱桃 の父親
ジャックダニエルやブラックニッカで晩酌するのが日課


警視庁第四方面本部捜査一課魔人犯罪対策室所属。警部
4人の部下共々非魔人でありながら魔人犯罪対策室に所属するが
珍しい5人での从術使いであり、魔人相手でも対等以上に渡り合い、成果は申し分なし
が魔人でほとんど構成されている魔人犯罪対策室での扱いはそこまでいいものではない

5人だけでの从術だけでなく、3人や4人の从術もこなし人数が足りないことで不利になることはなく
警察内でもチームワークや連携だけで言えば朱点率いる5人は無敵を誇る、いや誇っていた。
2年前の裸繰埜との死闘の末に殉職。娘の朱桃に最後の言葉を残しこのこの世を去った

黒縁メガネをかけておりパッとしない風貌
娘の朱桃に正義を教え正しい道に育ってほしいと願ってる

イカが苦手


从術(じゅうじゅつ)
「多数対一」の多数側を想定して練られた汎用戦闘技術。
「数の暴力を最大限に活用する」を理念としている。
二人組や三人組で戦うのがこの流派のスタンダード。

プロローグ

「どうしていつも晩酌はジャックダニエルかブラックニッカなんですか?」
「ケンさんなら、もっといいお酒飲めるでしょうって?」

「おいおいなんだ嫌味かい? そこまでもらってはいないよコンビニでいつでも買えるぐらいのが僕にはちょうどいいのさ
 娘は少し控えなさいって言われるけどね」

 警視庁第四方面本部捜査一課魔人犯罪対策室
 黒縁メガネの特に特徴のない男拳条朱点と部下のアフロ頭の朝火(あさひ)とコーヒーを飲んでいる木林(きばやし)
 朱点は警察手帳に挟んだ娘の朱桃の写真を見せびらかしながら雑談する

「それにしても次の仕事は一体なんなんですか? 廃施設から回収って、一体なにを回収なんでしょう?」

「それが僕にもわからないんだ、上に聞いても『見ればわかる』っての一点張りでさ」

「カーッ! なんですかソレ! それじゃあ何もわからないでしょうって!」

「まぁそう怒るなよ木林、正義になれ」

「そんなケンさん! こんな時でも『正義になれ』なんって! そりゃ正しいことかもしれないが上に言われっぱなしも」

 激高する木林に朝火が口をはさむ

「どうしたんですか木林さん? いいじゃないですか、俺たちの从術ならどんな状況でもちょちょいのチョイですよ」

「朝火! 一番若いからってそりゃ楽観視しすぎだって! ケンさん他の部署から増援はないんですかって?
 得たいの知れない場所に5人だけって、……そうだせめて徒士谷夫妻を呼んでもらえば百人力だって!」

 手をポンと叩き名案を浮かんだと木林は朱点に提案する。しかし朱点は苦い顔をして

「それは無理だな、僕も徒士谷夫妻に直接声を掛けたが生憎別件で今は怪盗を追っているみたいだ、それに他の部署も忙しいみたいだ
 っていうのは建前で非魔人の僕たちと組みたくないらしい」

「非魔人ならぬ『暇人』の第四方面って影で呼ばれてますもんね俺たち、残念ですね木林さん徒士谷真歩さんのファンなのに」

「朝火ぃ! 俺はべ別に真歩さんのファ、ファンなんかじゃ……」

 木林は声が小さくなっていく、飲んでいたコーヒーをボチャボチャこぼしながら。

「よし行くぞ、三鳥(みどり)と茶保呂(さっぽろ)を呼んでくれ」

「へーい」



× × ×



某所廃施設に地下を見つけ5人は入っていった

「それにしても長い廊下ですねぇ、見ればわかるものってどんなものなのか……」

 そう愚痴をつぶやくのは三鳥。

「おっ、なにか部屋があるぞ」

見つけた部屋に慎重に入っていく5人、そこには……

「なんだこれって……」

 広く研究所じみた部屋の中に機械やコードが室内に散乱し大きな培養ポットが一つ、その中には

「子どもか……?」

 培養ポットの中には子どもが入っていた、背丈は小学生ぐらいか色白で裸だ。

 朝火は近づきポットに文字に気づく『VIOLENCE』と

「……ヴィ? ……ヴィオェンセ? こいつの名前か?」

 朝火は英語に弱かった

「ケンさん……!!」

「あぁ間違いなくこれがそうだろう、中から出せるか?」

 朱点たちはポットのスイッチをなんとか見つけだし、子どもを中からだした
 子どもはポットの中の水でずぶ濡れで裸だった、この子どもがどういう存在なのか、この研究施設はなんなのか、
 予想以上にきな臭い状況、朱点は一刻も早く帰還しようと指示をだそうとした、その時


「あら先客だいたのね、どうしましょう」「姉さんが遊びすぎたからでしょう」


 どこからともなく現れた声の聞き、5人は戦闘態勢に入る5人从術の基本の型『地水火風空(いつつがさね)』

「誰だあんたら」

「随分野蛮ね、その子に用事があるのだけれど」「よければ渡してくれないかしら?」

 目の前にいる女性は一人だが声が二つする。虹色の髪と瞳、異様な蝶の羽が目に行くが不思議と妖艶な魅力が5人を襲う
 このような場所でなければ5人は見とれていただろう。

「それはできないな、こちらも状況が呑み込めないもので……できれば僕たちはこれで帰らせてもらいたいのだが」

「姉さんこれは困りました」「そうね、だったら『ね』」

 そういうと蝶の女性の体から何かが飛び出してきた。

 「な、なんだあれ……」

 出てきたのは肉塊、それも2メートルはある人型をした動く肉塊だ
 よくみれば獣の肉なのか、毛がついていたり人ではない骨もちらほら見えるが人骨も見える、人ができることとは思えない
 不快でおぞましさの権化のようなキメラ

「来るぞぉ!」

 朱点の合図を皮切りに、肉塊はものすごい勢いで殴りかかってきた

「どっせい!」

 茶保呂が殴りかかる前に突撃、肉塊はバランスを崩した
 すかさずに三鳥と木林が腕をとり、拘束する。
 朱点と朝火が肉塊に対して掌底を繰り出した
 普通に見れば二人だけの掌底に見えるだろう、だがこれは从術による完璧な両タイミングで打たれた掌底と腕を持った二人による位置調整
 突撃した茶保呂による人体把握により、掌底の威力は何倍にも膨れ上がり結果、肉塊の頭(と思われる部分)は破裂した。

 この間わずか2秒である。非魔人でありながらここまでできるのは完璧に習熟した从術のなせる技なのだ。

「この5人の十の手で突破できないものはない!」


「驚いたわ、こもあっさりなんて」「侮りすぎていたわね」

「おい! 子どもを連れて逃げるぞ!」

 朱点が叫び、朝火が子どもを抱えて出口に向かうが、出口にはびっしりと肉塊の壁ができていた。

「逃がさなぁい」「もっと遊びましょう」「姉さん悪い癖ですよ」「いいじゃない『ね』」

「この悪趣味がぁぁ!」

 心から声を出す木林

「突破できないものはないのでしょう?」「さぁどうしましょう?」

 从術は対(魔)人用の武術、見るからに分厚い肉塊の壁を前に突破難しい
 前には肉壁、後ろにはイカレタ蝶女、ならばできるのは一つ

「朝日と木林は肉壁を壊していけその間、肉人間の相手は僕と三鳥と茶保呂でする三人でもあれ位なら倒せる、みんな気張れ正念場だぞ!」

 朱点は指示を出す、こうなれば道を作るまでの持久戦だ、幸い蝶女の攻撃はこの悪趣味な肉塊での戦闘、あれレベルの相手ならば三人でも倒せる、そう思ったが

「じゃあこれはどう?」

 並べられた肉塊が99人

「な……」

 広い研究室の中に所せましと肉塊が並んだ蝶女は笑みを浮かべ5人を眺めた
 相手が1人だけならばまだしも99人、こうなれば話も変わる、絶望的だ
 朱点たちの十手だけでは

「さすがにこれだと手が……『手が足りない』……」

 从術は元々1対多を想定した武術だ、数の利をとれないこの現状では……

「ち、ちくしょう……」

 子どもを抱えた朝火が食いしばりながら嘆いた。
 すると声に反応したのか子どもの目がが開いた

「……うぇ?」

「うわ! 目が開いた!」

 朝火は驚いたが、子どもも同じだったようで

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 と叫ぶと子どもは朝火の手から離れ次の瞬間、体は黒く染まり大きく巨大になっていく
 逃げようとしているか3メートルぐらいまで大きくなり岩のような拳を肉壁に放った

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 肉壁は弾けた、飛び散った肉は廊下に飛び散り5メートルの厚さはあっただろう肉の壁を一撃で貫通させた

 その姿はまるで怪物

「わぁすごい予想以上ね」「聞いたときは嘘だと思ったけど来て正解ね」

 一撃に力が抜けたのか、黒い怪物の体は元の子どもに戻った、気絶しているのかピクリとも動かない

「なんなんだこの子どもは」

 朝火は子どもに近づく

「……た」
「ん?」

 子どもが何か言っている

「おなかすいた」
「……………………」

「はいスキあり」
 肉塊の一人が子どもに向かって鋭利な触手を伸ばす、そんなこともできたのか
 とっさに朝火は庇おうとするが……

「そんな、木林さん……」

 触手に体を貫かれたのは木林だった、おなかに穴が開いている。

「へっ油断しすぎだって……5人の中じゃやっぱお前が半人前だなって明日火師匠にドヤされっぞ……」
「くそ! 早く手当を!」
 前に出ようとする朝火を血をボタボタと流しながら木林は止める
「まぁ半人前でも俺たち5人で10人でも100人前にもなれたんだ、楽しかった……ぜって!」

 木林は朝火を蹴飛ばした、蹴とばした先は肉壁の向こう側

「な! なんでだよ! 木林さん!」

「ケンさん、これでいいよなって!」

「あぁ、すまないな木林、茶保呂!」

 茶保呂は壁の向こう側に子どもを投げた、それを朝火は受け取る

「な、なんだよ! どういう事だよケンさん!!!」

 壁の向こうで朝火が叫ぶ

「朝火! その子どもを連れて逃げろ!!」

「!?!? できるわけなだろみんなを置いてなんて、俺も警察だ! 最後まで戦うかく……」

 朝火の訴えを朱点はさえぎる

「正義になれ!!! 朝火!!!」
「僕たち5人がやられたらその子どもはどうなる、見ただろうその子ども力! 逃げるんだ! こうなると隠していた上も怪しい
 とにかく逃げるんだ、早く!! 肉壁も修復し始めている急げ!!」

「ぐ、ぐぅぅ」
 朝火は動かない、いやまだ動けないでいる、葛藤の中だ。

「あら盛り上がって」「混ぜてもらえないかしら?」

 肉塊が朝火に向かっていくが、4人で迎えうつ、拳が体が血で真っ赤に染まろうとも。

「早く行け! 朝火お前が一番若いんだから! 一番生きなくちゃいけないんだよ!!」
 と茶保呂、力持ちで気前のいい性格だ朝火は何度も奢ってもらったこともあり、仕事での悩みを一番聞いてくれた先輩だ。

「安心しろ! こいつらぶっ倒したら! すぐに追いつく! それまでソイツを任したぞ!!」
 と三鳥、小柄童顔でよく中学生と間違えられてて、それをからかうのが面白い先輩だった

「朝火帰ったらよ俺の活躍を真歩さんに存分に話してくれよって! あと俺の姉さんにも! 
 またあとで会おうぜブラザー!」
 と木林、新人だった頃から世話になってきた、失敗してもフォローしてくれるし一番頼ってきた先輩なんだ。

「走れ! 朝火! 正義になれ! 今一番“正しい”ことをするんだ!」
 拳条朱点、警察で俺を从術に誘ってくれ才能を見出してくれた、その正義の姿勢に朝火が一番憧れた人。

「あら死ぬ気なのかしら?」
 と蝶女

「いやまさか、一人いないように見えるがずっと5人さ、从術の神髄この5人からなる十手から! そちらこそ逃げられると思わないことだ!」
「さぁ警察だ! お縄についてもらおうか!!」
 戦いが始まった。

「ぐぅ……うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
 朝火は逃げ出した。そして肉壁も閉じた。



× × ×



あれから18分後

「あら逃げられましたね」「なかなか楽しめましたわ」

 研究室に広がっているのはおびただしい肉と血、赤くないところがないほどの惨状。

 そこに茶保呂、三鳥、木林の姿は見当たらなかった。

「ふーっ! ふーっ!」

「すごいわねまだ息があるわ」「本当に人体って神秘で素敵ね」

 肉塊に捕まり蝶女と対峙しているのは朱点、しかしその下半身はどこにもない。

「お、お前たちの目的は一体……なにものなんだ……」

 息も絶え絶えに朱点は言う

「なにものって言われてもねぇそんな化け物みたいに……」「“裸繰埜”って言えばわかるのかしら」

「ら、らくりの……?」

 そうつぶやくと朱点の上着から警察手帳が開き娘の写真が出てきた。

「はっ」

 覗き込む裸繰埜

「あらこの写真……ねぇ姉さん」「そうね私も一目で気に入ったわ」
「そうね逃げられたし、この子に会ってみましょうか」「私も賛成だわ」

「なに! そうはさせないぞ! 僕の家族だけはぁ!」

「もちろんあなたにも来てもらうわ」
「なっ!!」

 朱点の体がどんどんと蝶女、裸繰埜に肉塊に飲み込まれていく
「はぁ~い、いらっしゃ~い」「この制服だとここから近いわね、もう下校時刻かしら」

 朱点の視界がどんどんと赤く染まっていく。こんな時でも朱点は娘、朱桃のことを考えていた。

(朱桃、父さんはもうダメみたいだ、朱桃を残していくのがとても心残りだ
 朱桃、正義になれ、正義であればきっと、きっとだ……お前に“本当の正しさ”を教えてくれる人が現れるはずだ
 朱桃……お前の……信じる道をいき……な――)


× × ×


 朝火が逃げ出して2時間後

「はぁはぁ……ここまでくればなんとか巻いたか」

 どこかの路地裏に逃げてきた。人もいないようだ。

「くそ! なんだあの女は……木林さん……茶保呂さん……三鳥さん……ケンさん……」

 朝火の目に火が灯り、壁を思いっきり叩く。

「この仇は必ず晴らします、どうか見守ってください……」

「ふぁ……」

 そこで子どもが起きた。

「やっと起きたかお前一体ナニモンなんだ?」

「おなかすいた」

「俺の質問に答えろ!」

「……オイラもわからないんだ」

 しゅんとなる子ども、幸い最低限のコミュニケーションはとれるみたいだ
 見ると子どもの目の下に小さく「XXX-000」と書かれているのが見える、何かの型番だろうか。

「なんだこの数字? もう俺にもわからんどうしたらいいんだみんな!」
 癖なのだろうか後ろを見てしまう朝火しかしもうみんなはいない。
 今は朝火と子どもだけなのだ。
 朝火は決意する、二人で生きることを。

「そうだな、上も当てにできない以上俺がやらないとな、一体お前が誰なのかはさておき、お前名前は?」
「わからない」

「あれヴィオェンセじゃないのか? 発音を聞きたかったが、まぁこれから逃亡生活だ名前を考えないとな
俺朝火だが酒みないな名前って呼ばれてからアサヒ・スーパードライでいいだろう、これから乾いた生活が待ってる俺に相応しい」

 それって偽名になっているのか? 子どもは思ったが黙っていることにした

「お前はそうだな。ジャック・ダニエルってのはどうだ、いやそれだとどちらも名前みたいだな
よしジャックダニエル・ブラックニッカにしよう、あと裸だとアレだ、そこに捨ててあるパーカーでも着ろ、俺も何か着るか」

「ジャックダニエル・ブラックニッカ……うんわかった」
満足げにジャックダニエルは言った。

「よしジャックダニエル……長いからJDと呼ぶぞ、あと俺のことはアニキと呼べ腹が空いてるだろまずは飯だ、なにか嫌いなものあるか?」

「ないよ」

「そうか、でも生きていれば嫌いなものの一つや二つできるもんだ今が一番幸せかもな……」

「何を食べるんだいアニキ?」

アサヒについていくジャックダニエル

「そうだな、まずハンバーガーで食べに行こうか」




 朝火の逃亡したと思っているが警察からは特に追われることはなかった。
なぜならあの肉塊の惨状の中で朝火も死んだと思われていたからだ、つまり戸籍上は朝火は死亡扱いになっている
そして研究室の子どもに関しても消息不明によりそして警察がこれにかかわりたくないのか特に捜査が行わることなく闇に消えていくことになる

裸繰埜がなぜ狙ったのか。子どもが何者なのか、まだ明かされていない。

このあと二人が危険で暴力な二人として表舞台に現れるのは2年後のグロリアス・オリュンピアまで飛ぶことになる。
最終更新:2021年02月21日 21:46