灰原乙菜

■キャラクター名:灰原乙菜
■読み方:はいばら・おとな
■性別:女性

特殊能力『神の見えざる手(ゴッドハンド)

浮遊する不可視の手を操る能力。ここでの手は手首よりも先を指す。
弾丸さえ受け止める。最大で81。
手が触れた感触は本体と共有できる。

設定

誕生日:8月1日。
すらりとした手足、スマートな長身の宝塚歌劇団のトップスタァを思わせる端正な顔立ちの男装の麗人。
髪型はショートカット。一人称はボク。
ファッションとしてフィンチ型眼鏡をかけ、スーツを好んで着用している。

何でも屋を営むが、人間性に問題があるため、依頼が少ない。
業界では、「まだ捕まっていないだけの犯罪者」「いつか官憲にお縄になってもおかしくないのでは?」と評判である。

プロローグ

「いい加減にしろ、このバカ!!!」

怒声が事務所に響く。
その声とともに刃が飛び出したままのカッターナイフが放物線を描いて、真っすぐにソファに座るスーツの女性に向かって飛んでいく。

だが、スーツの女性は目前に迫る危険に慌てふためく様子もなく、足を組んだまま大きな伸びをした。
勢いよく投げ込まれたカッターナイフはそのまま彼女に直撃するかと思われた。

しかし、次の瞬間、カッターナイフは空中で動きを止めた。
そしてゆっくりと事務所の床に降りていった。

「危ないじゃないか、密君。僕が『神の見えざる手(ゴッドハンド)』で受け止めたからよかったものの、普通の人間だったら大怪我をしているところだぞ」
「当てようとして投げたんですからそれでいいんですよ!!!乙菜さんのアホ!!lバカ!!マヌケ!!」

密と呼ばれた眼鏡の女性が、さらに事務机の上のものを片っ端から投げつける。
ホッチキス、ボールペン、様々な文具が次々と空を舞い、先程と同じように乙菜の周囲で動きを止める。

樋園密(ひぞの・ひそか)、この事務所の唯一の事務員であり、彼女の秘書のようなことも行っている。
元々は乙菜の学校時代の後輩だったのだが、事務所を立ち上げた時に彼女に雇われ、現在に至るというわけだ。

「やれやれ、何を怒っているのか。そんなに怒っていると、顔が皺だらけになってよくないぞ」

両手を広げ、肩をすくめる乙菜。

「本気でわからないとでもいうんですか!!さっきの依頼人の事に決まってるじゃないですか!!!」
「ああ、先ほどのおっぱいの大きな彼女」
「おっぱいの大きな彼女、じゃないんですよ!!!何なんですか!!あれは!!」

依頼者を見た乙菜の第一声が「素敵なおっぱいですね」であり、その後も口を開くたびに依頼者の胸に言及を繰り返したために、何も依頼をせず、帰ってしまった。
なお、乙菜はこれまでにも似たようなセクハラを繰り返しており、業界内での評判は最悪だ。
彼女の事務所に警察が来るとすれば、殺人などではなく性犯罪の捜査だろうと彼女は知るものはみんな思っている。
なお、男性が依頼人の場合、露骨にやる気をなくすため、性別がどちらにしろ問題があるのは付け加えておく必要があるだろう。

「何って、素晴らしいおっぱいを見て褒めるのは、人類として当然の義務だろう」
「そんな人類の義務があるか!!!」

何が問題なのかわからないと首を傾げる乙菜に密がコップを投げつけるが、これも乙菜の正面で受け止められる。
見目麗しい乙菜がやるとそんな表情すらも様になって見えるから不思議なものだ。
まあ、実態はただのおっぱい好きのセクハラ魔なのだが。

「乙菜さんのせいで依頼者が帰ったの、今回が初めてじゃないんですよ!!!いい加減反省してください!!!」

もう一度怒鳴った後、はぁ、と密が溜息をつく。
何故この人はこうなのか、と頭が痛くなる。
実のところ、この事務所は乙菜の道楽のようなものだ。
依頼料がなくても運営費に困っているわけでもないし、密の給料にしても事実上乙菜の財産から出ているようなものだ。
依頼人が0でも実は問題がないのだ。

ふと事務所の隅に置かれた真っ赤なゼラニウムの鉢植えが目に入る。
密が事務所の一員になった時乙菜が彩りが必要だろうと置いたものだ。

「まあ縁がなかったんだ。仕方ない話だよ」
「仕方はありますよ」

はぁ、と密が二度目の溜息をつく
密はまだ忘れられないのだ。
かつて、密が憧れ、この事務所へ押しかけるに至った灰原乙菜の活躍を。
あの時は乙菜の姿が誰よりも輝いているように見えて、彼女についていきたいと思ってしまったのだ。
こんな奴なのに。

だから、彼女の才能がこのまま浪費されてしまうのはとても口惜しく感じている。
どうにかならないものか。

「そろそろ終わりかな。じゃあ、僕は素晴らしいおっぱいを探すため、ネットサーフィンする業務に戻るから」
「仕事をしろ!!」
「特にない」
「自分のせいじゃないですか!!」


これまでも何度も繰り返されたやり取りがまた始まる。
これがこの事務所の日常であった。
最終更新:2021年02月21日 21:51