ダークリンセ

■キャラクター名:ダークリンセ
■読み方:
■性別:女性

特殊能力『ダークアブソーブ』

 暗黒の本質、それは光の吸収。
 暗黒物質は象られた元の物体(光の存在)の形・性質を吸収し、我がものとする。
 王女リンセを象ったダークリンセは、今や王女の全てをコピーした存在である。

設定

 インボウズ=マーク王国のトゥビキリー・ノワール大臣が闇の力を手に入れ謀反を起こした際に暗黒物質から造り上げた、王女リンセと瓜二つの疑似生命体。
 当初はノワールの命令に忠実で、王女の失脚を謀るべく国内各地で作戦を展開していた。そこに王女本人と騎士シューゴが現れ、ノワールの立てた計画を次々と打破していく。二人を恐れたノワールは作戦を変更、ダークリンセに王女を直接的に排除するよう命令する。シューゴを罠に陥れたダークリンセは王女と二人きりで対面、あっけなく殺害に成功した。
 ダークリンセは、リンセに成り代わり王女の座に就いた。唯一成り代わりを知ったシューゴは本物の王女の死に自暴自棄になりかけるが、使命を胸に再び立ち上がった。

プロローグ

 それから、時が経ち、

「最後だから教えてあげる。私なの、あなたに私の正体を知らせたのは」

「なん、だって……?」

 ふたりきりの地下室に、小さなひとつの灯りだけがゆらめく。

「いいえ、正確には私であって私ではない」
「リンセ……あの女は暗黒物質の特性に気付き、自らの命と引き換えにそれを利用した」
「私は『王国への忠義』を吸収させられた」

 そして、『もうひとつの感情』も。

「酷い呪いだわ」

 自分だけ『その感情』から解放されるなんて。
 ダークリンセは心の中で自分のオリジナルに悪態をついた。

「でも、それももうおしまい。あなたさえいなくなれば、王国の崩壊を阻止する障害はもう何もない」

 彼女は自らの一部を暗黒物質に還元すると周囲に展開、シューゴを飲み込もうとした。
 シューゴは小さくうめく。

「に……げろ…………」

「ハッタリのつもり? 無駄よ。あなたはもう永遠に……私のもの!」

 しかしその瞬間、地下室の天井が崩れ――落ちた――――――――――




「クッ、クククククククッ! これで全てはワシのもの!」

 今しがた崩壊した小屋の残骸を、ノワールが確認に来た。

「しかしアレが裏切るとはの。まあおかげで同時に処分することができたが……」

「そう、私を、切り捨てたのですね、ノワール様!」

「!」

 見ると、重症のシューゴを抱え這い出してきたダークリンセの姿があった。

「なぜだ! あの地下室の壁にはアンチ暗黒物質を使用していた! お前もぺしゃんこのはずだ!」

「本当、馬鹿な人。『私は偽物』だって言ったのに」

 ダークリンセは、シューゴの無くなった右腕を愛おしそうに見つめる。

「まあいい。お前では、暗黒物質の扱いに長けるワシは止められん。」

「それは……」

 事実だった。地下室から助かったところで、ダークリンセにノワールに対抗する手段などない。
 彼女だけなら。

「う……俺の……剣を!」

「シューゴ!」

 彼が目を覚ました。剣も、ある。だが、利き腕は失った。

「それでも……俺は、ヤツを……止めねば……」

「クックックッ、涙ぐましい忠義よのお」

 ノワールが近づいてくる。
 ダークリンセは、決断した。

「私は、あなたと一緒になりたかった。今、それを!」

 ダークリンセは自らの右腕を切り落とし、シューゴの傷に継ぐ。
 暗黒物質はシューゴの右腕の情報を吸収し、元の太くたくましい腕を形成する。

「なっ!」

「今よっ!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 影が交差し、ノワールは崩れ落ちた。




『私はもう、この国にいるべきではありません』

 最後のその言葉の通り、ダークリンセは王女の死を公表し、どこかへと姿を消した。

「だが、きっとまた会えるだろう」

 騎士を引退したシューゴは、彼女を探す旅の途中、空を見つめてそうつぶやいた。
最終更新:2021年02月21日 21:53