死期島 喪中
■キャラクター名:死期島 喪中
■読み方:しきしま もなか
■性別:女性
特殊能力『マジカルモーフ★バイオレット』
魔法のステッキの力を借りて、『魔法少女マジカル★バイオレット』に変身する。
バイオレットの名の通りすみれ色を基調としたいかにも魔法少女という感じのドレス姿になり、髪の色も黒からすみれ色に変わる。
空を飛んだり、魔法の霧で相手を拘束したりして戦う。
しかし、喪中は「あんなヒラヒラフリフリした格好したくない」という理由で変身したがらない。
代わりに、独学で習得した黒魔術で戦う。
魔法を使う少女なので、彼女は間違いなく魔法少女なのだ。
設定
市立角兎第一中学校に通う中学2年生。
黒いストレートの長髪。三白眼。
黒魔術に傾倒しており、独学で習得した召喚魔術や呪詛を使う。
中学校に入ってすぐの頃はいじめを受けていたが、いじめっ子たちに交通事故や家の火事や親の会社の倒産などの不幸が起こってからはいじめられなくなった。
休みの日に出かけるときも学校指定の黒のセーラー服を着ているため、周囲からは「制服と体操着しか服を持っていないんじゃないか」と思われているが、
実際はパジャマと儀式用の黒いローブも持っている。
魔法の世界からやってきた謎の生き物『クルリン』の頼みで、魔法のステッキを狙う怪人と戦う日々を送っている。
プロローグ
死期島 喪中 プロローグ
ある日の放課後、死期島 喪中(しきしま もなか)は学校帰りに遠回りをしてコンビニに向かっていた。
「モナカちゃん、なんで帰り道のコンビニじゃなくて、わざわざ遠くのコンビニに行くクル?」
かばんの中から白いリスのような生き物が顔を出した。
魔法のステッキを守ってくれる人を探すため、魔法の世界からやってきた『クルリン』だ。
「今日は月刊少年黒魔術の発売日なのよ。向こうのコンビニや本屋じゃ置いてないから、わざわざこっちまでこないとなの」
「その本、モナカちゃん以外に買う人いるクル……?いや、それよりも…」
クルリンは身を乗り出して、周囲をキョロキョロと見回す。
「このあたりから嫌な気配がするクル。ステッキを狙う怪人がいそうクル」
「そう、じゃあ見かけたら倒すわ」
「見かけたらじゃなくて、積極的に倒しに行ってほしいクル~!」
クルリンの心配をよそに、喪中は何事もなくコンビニについた。
店内の雑誌コーナーには、月刊少年黒魔術が大量に平積みされていた。
「今月号もちゃんとあるわね」
「店長の商才が不安になるクル」
月刊少年黒魔術を手に取り、ついでに飲み物でも買おうかと、店の奥に入った、その時である。
「動くな!金を出せ!!」
「ひ、ひえぇ~~!?」
サングラスとマスクで顔を隠した男が、店員にナイフを突きつけていた。
コンビニ強盗だ。
「あら、ついてないわね。いなくなるまでここでやり過ごしましょう」
「モナカちゃん、あいつの中から怪人の気配がするクル!きっと怪人に操られているクル!」
クルリンには、強盗の体を覆う、黒いオーラのようなものが見えていた。
「放っておくわけにはいかないクル!ステッキを使って、マジカル★バイオレットに変身するクル!」
「え?嫌よ」
「クル!?」
「別に放っておくわけじゃないわ。見かけたら倒すって言っちゃったしね」
喪中はかばんの中から一枚の大きな布を取り出して地面に敷いた。
布には複雑な円形の模様が描かれている。
「非常事態だし、お金は後で払いましょう」
そう言って商品棚からロウソクとライターを手に取り、火をつけて布の四隅に置く。
「モタモタすんな!早く金を入れろ!!」
「ひ、ひえぇ…」
「店員さんどんくさすぎないクル?」
「都合がいいわね」
円の中心に立った喪中は、胸ポケットから小瓶を取り出す。中には自分の血液が入っていた。
その血液を足元に垂らし、呪文を唱える。
「ゴナヒ ヤシサカ トショデノハ マウス…」
呪文を唱える声を聞いて、強盗が喪中の存在に気づいた。
「おい、お前そこで何を…ホントに何してんの!?」
「ヨン ダロルイブス ブマ ルノヲ シクルカタ…」
「その妙な…儀式?をやめろ!さもないと……ウグッ!?」
強盗が突然苦しみだす。その首には見えない何者かの手によって絞められているような跡ができている。
「グ……グガッ…ギィ…」
「ひ、ひえぇ……!?」
「モナカちゃんこれ大丈夫クル!?」
「大丈夫よ。殺せとは言ってないし」
泡を吹いて地面をのたうち回る強盗。その体から黒いモヤが吹き出し、一箇所に集まっていく。
やがて、モヤが晴れると、覆面をかぶった強盗を二頭身にデフォルメしたようなやつがうずくまっていた。
「クソッ、ニンゲン界で悪事を働けば、ステッキを持ったやつが来るって聞いてたのによお……」
「私で合ってるわよ」
「な、なんだと!?だが、ステッキを持ったニンゲンは変身するって聞いたが…」
「あんな恥ずかしい格好するわけないじゃない」
「そ、そうなのか…?へへっ、そいつはツイてるぜ」
怪人はニヤリと笑みを浮かべながら立ち上がる。
「変身してねえニンゲンの攻撃なんざ、この強盗怪人ゴートン様には効かねえ!おとなしくステッキを渡してもらおうかぁ!」
「怪人には人間の攻撃は効かないらしいけど……この世のものではない存在からの攻撃はどうかしら?」
「え?」
ポタリ、と、ゴートンのそばに黒い水滴が落ちる。
ゴートンが上を見ると、そこには先の見えない暗い穴が空いていた。
「な、何だぁ!?」
「殺せとは言ってないけど、『その男の中に潜んでいるものを、連れてって好きにしていい』って言ったのよ」
「はぁ!?」
穴の中から、無数の黒い手がゴートンに伸び、穴へと引きずり込もうとする。
「おい…やめろ!離せ!こ、こんなの聞いてない!!」
「うるさいわね。さっさと行きなさい」
「ひ、ひえぇ…」
「あわわわ……」
ゴートンが穴の中に完全に引きずり込まれると、穴は閉じ、そこには倒れた男だけが残った。
警察の事情聴取を終え、喪中が解放されたのは外がすっかり暗くなってからだった。
「やっぱり人を助けると気分がいいわね」
「絶対人を助けたからじゃなくてタダでものをもらえたからクル」
喪中は店員からお礼として、月刊少年黒魔術とミルクティー、余ったロウソクとライターを無料でもらっていた。
「あら、短い付き合いなのによく分かるわね」
「そんな性格なのに、どうしてモナカちゃんは怪人を追い払ってくれるクル?」
「人を助けると気分がいいからよ」
「……本当は?」
「捧げても法に触れない生贄が向こうからやってきてくれるからよ」
「やっぱりそんな理由クル~~~!」
帰路につく一人と一匹を、月明かりが照らしていた。
最終更新:2021年02月21日 21:57